1.0が出ても強すぎる眼鏡はNG―「最弱の凹レンズ」で決める近視の度数
第107回医師国家試験 I問題 第47問
国試問題にチャレンジ
20歳の男性。右眼の視力不良を主訴に来院した。前眼部,中間透光体および眼底に異常を認めない。眼圧は正常である。右眼の視力検査の結果を示す。 右眼の屈折はどれか。 矯正レンズ 視力 +0.25D 0.4 (なし) 0.5 -0.25D 0.7 -0.50D 1.0 -0.75D 1.0 -1.00D 1.0 -1.25D 1.0
- a.0.25 Dの遠視
- b.正視
- c.0.50 Dの近視
- d.1.00 Dの近視
- e.1.25 Dの近視
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
眼に器質的な異常がなく、レンズで視力が改善する場合は屈折異常を考え、凹レンズで改善すれば近視、凸レンズで改善すれば遠視と判断します。屈折値は、近視では最高視力が得られる最も弱い凹レンズ、遠視では最高視力が得られる最も強い凸レンズの度数で決めます。若年者は調節力が強く、近視に強すぎる凹レンズを入れても同じ視力が出てしまうため、最も強い度数を採ると過矯正となり、眼精疲労や頭痛の原因になります。ジオプトリーは焦点距離の逆数で、0.50Dの近視なら遠点は眼前約2mにあり、正確な測定には調節麻痺薬の点眼が役立つこともあります。調節という生理学的な仕組みを踏まえて検査結果を読み解く姿勢は、適切な眼鏡処方と患者の快適な見え方につながります。
解答・解説
正解はcです
所見の整理
20歳の男性で、右眼の見えにくさを訴えている。前眼部(角膜・前房・虹彩など)、中間透光体(水晶体・硝子体)、眼底のいずれにも異常がなく、眼圧も正常である。したがって白内障・緑内障・網膜疾患などの器質的疾患は考えにくく、視力低下の原因はまず屈折異常(ピントのずれ)と考えるのが自然である。20歳であり、調節力の衰えによる老視も問題にならない年齢である。
視力検査結果の読み取り
裸眼視力(レンズなし)は0.5である。凸レンズ(+0.25D)を入れると0.4へ悪化し、凹レンズ(-)を強めていくと0.7、1.0と改善する。つまり凹レンズで見えやすくなるので、この眼は近視である。 視力は-0.50Dで初めて1.0に達し、それ以上強い-0.75D~-1.25Dを入れても1.0のままで、それ以上は改善しない。
屈折値の決め方
眼の屈折値とは「最良の矯正視力を得るのに必要な矯正レンズの度数」で表す。ただし同じ最高視力が得られるレンズが複数ある場合、どれを採用するかにはルールがある。 ・近視:最高視力が得られる凹レンズのうち、最も弱いもの(マイナスの絶対値が最小のもの) ・遠視:最高視力が得られる凸レンズのうち、最も強いもの(プラスが最大のもの) 若年者は調節力(水晶体を厚くしてピントを手前に合わせる力)が強いため、必要以上に強い凹レンズを入れても、調節によって過剰分を打ち消して同じ視力を出せてしまう。そのため-0.75D~-1.25Dでも1.0が出ているが、これらは過矯正であり、真の屈折値ではない。本例では最高視力1.0を得る最弱の凹レンズは-0.50Dであり、右眼の屈折は0.50Dの近視である。
選択肢考察
- ×a. 0.25 Dの遠視
0.25Dの遠視であれば+0.25Dの凸レンズで矯正され、視力が改善するはずである。しかし実際には+0.25Dで視力は0.5から0.4へ低下しており、凸レンズでピント位置がさらに網膜の前方へずれたことを示す。遠視は否定される。
- ×b. 正視
正視とはレンズなしで平行光線が網膜上に焦点を結ぶ状態で、若年者なら裸眼で良好な視力(通常1.0以上)が得られる。本例は裸眼視力0.5にとどまり、凹レンズで1.0まで改善するため、正視ではない。
- ○c. 0.50 Dの近視
凹レンズを加えるほど視力が改善し、-0.50Dで初めて最高視力1.0に到達している。近視の屈折値は、最高視力を得られる最も弱い凹レンズの度数で決めるため、この眼の屈折は0.50Dの近視である。眼鏡処方の際もこの度数が基本となる。
- ×d. 1.00 Dの近視
-1.00Dでも視力1.0は得られているが、これは若年者の強い調節力で過剰な凹レンズの効果を打ち消しているためである。視力が-0.50Dと変わらない以上、それより強い度数は過矯正であり、屈折値とはしない。過矯正の眼鏡を常用すると常に調節を強いられ、眼精疲労や頭痛の原因となる。
- ×e. 1.25 Dの近視
検査した中で最も強い凹レンズであり、視力1.0は得られているものの、-0.50Dからさらに0.75Dも過剰な過矯正である。近視で最も強い度数を採るのは誤りで、「最高視力が得られる最弱の凹レンズ」を屈折値とする。
屈折異常の基本
・正視:調節をしていない状態で、平行光線が網膜上に焦点を結ぶ。 ・近視:焦点が網膜より前方にくる。眼軸が長い(軸性近視)か、角膜・水晶体の屈折力が強い(屈折性近視)ことによる。凹レンズ(-)で矯正する。遠くが見えにくく、近くは見やすい。 ・遠視:焦点が網膜より後方にくる。凸レンズ(+)で矯正する。若年者では調節で補えるため裸眼視力が良いことも多いが、疲れやすい。 ・乱視:経線によって屈折力が異なる。円柱レンズで矯正する。 ・老視:加齢で水晶体の弾性が低下し調節力が衰えた状態で、屈折異常とは別の概念である。
ジオプトリー(D)
レンズの屈折力の単位で、焦点距離(m)の逆数である。例えば-0.50Dの凹レンズの焦点距離は2mであり、0.50Dの近視眼の遠点(調節を休めた状態で明視できる最も遠い点)は眼前約2mにある。
調節と自覚的屈折検査
調節は屈折力をプラス方向にしか増やせない。そのため、近視眼に強すぎる凹レンズを入れても調節で補正できる一方、遠視眼では調節により一部の遠視が隠れる(潜伏遠視)。 ・近視は最高視力の得られる最弱度数、遠視は最高視力の得られる最強度数を採るのはこのためである。 ・調節の影響を除いて正確に屈折を測るには、調節麻痺薬(シクロペントラートやアトロピン)の点眼下で検査することがある。特に小児では調節力が強く重要である。
過矯正の弊害
近視の過矯正眼鏡では、遠くを見る際にも常に調節が必要となり、眼精疲労・頭痛・眼痛などの原因となる。
POINT
・前眼部・中間透光体・眼底・眼圧が正常で、レンズで視力が改善すれば屈折異常である。 ・凹レンズ(-)で視力が改善すれば近視、凸レンズ(+)で改善すれば遠視。 ・屈折値は、近視では最高視力を得る最弱の凹レンズ、遠視では最高視力を得る最強の凸レンズで決める。 ・若年者は調節力が強いため、近視に強すぎる凹レンズを入れても同じ視力が出る(過矯正)ことに注意する。
