「はやり目」は2週間後にも牙をむく―流行性角結膜炎と角膜上皮下混濁
第107回医師国家試験 I問題 第22問
国試問題にチャレンジ
流行性角結膜炎について正しいのはどれか。
- a.エンテロウイルスが原因である。
- b.潜伏期は1~2日である。
- c.膿性眼脂が特徴である。
- d.角膜上皮下混濁を生じる。
- e.プロスタグランディン関連薬の点眼治療を行う。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
流行性角結膜炎はアデノウイルス(8型など)による急性濾胞性結膜炎で、潜伏期は約1〜2週間と長く、漿液性〜粘液性の眼脂、耳前リンパ節腫脹を伴います。発症1〜2週後に免疫反応による角膜の点状上皮下混濁が生じ、羞明や視力低下が数か月続くことがある点が最大の特徴です。エンテロウイルスによる急性出血性結膜炎は潜伏期約1日で結膜下出血が目立ち、膿性眼脂は細菌性結膜炎に典型的で、プロスタグランディン関連薬は緑内障治療薬であるため鑑別できます。特異的治療薬はなく、抗菌薬や低濃度ステロイド点眼による対症療法が中心で、アルコールが効きにくいため手洗いと次亜塩素酸ナトリウムでの器具消毒が感染対策の要です。ウイルス性結膜炎を原因・潜伏期・特徴的所見で整理しておくことは、外来での診断だけでなく院内感染防止にも直結します。
解答・解説
正解はdです
テーマ
流行性角結膜炎(epidemic keratoconjunctivitis:EKC、いわゆる「はやり目」)は、アデノウイルスによる感染力の強い結膜炎である。原因ウイルス、潜伏期、臨床像、合併症、治療・予防の要点を整理しておく必要がある。
要点
・原因:アデノウイルス(8型、37型、53型、54型、56型、64型〈旧19a型〉など。古くから8型が代表的とされてきた)。 ・潜伏期:約1〜2週間と比較的長い。そのため、発症前から周囲に感染が広がりやすい。 ・症状:急性の濾胞性結膜炎(瞼結膜のリンパ濾胞形成)で、強い充血、流涙、異物感、漿液性〜粘液性の眼脂がみられる。しばしば片眼に始まり数日後に他眼にも及ぶ。耳前リンパ節の腫脹・圧痛を伴うことが多く、乳幼児では偽膜形成をみることがある。 ・角膜病変:発症から1〜2週間ほどで、角膜に点状の上皮下混濁(多発性角膜上皮下浸潤)が現れることが多い。ウイルス抗原に対する免疫反応によるもので、羞明(まぶしさ)や視力低下の原因となり、数か月にわたって残ることがある。 ・診断:臨床所見に加え、結膜ぬぐい液を用いたイムノクロマト法によるアデノウイルス抗原迅速検査が補助となる。 以上より、本症の特徴として正しいのは角膜上皮下混濁である。
選択肢考察
- ×a. エンテロウイルスが原因である。
流行性角結膜炎の原因はアデノウイルスである。エンテロウイルス(エンテロウイルス70型)やコクサッキーウイルスA24型変異株が原因となるのは急性出血性結膜炎であり、結膜下出血を特徴とし、潜伏期が約1日と短い点で区別される。
- ×b. 潜伏期は1~2日である。
流行性角結膜炎の潜伏期はおよそ1〜2週間(7〜14日程度)である。1〜2日と短い潜伏期は急性出血性結膜炎などの特徴である。潜伏期が長く、その間も感染源になりうるため、院内感染や家族内感染が起こりやすい。
- ×c. 膿性眼脂が特徴である。
ウイルス性結膜炎の眼脂は、漿液性〜粘液性(さらさらした涙のような眼脂)が主体である。膿性眼脂を伴うこともあるが、膿性眼脂は細菌性結膜炎(特に淋菌性結膜炎では大量の膿性眼脂)で典型的であり、流行性角結膜炎に特徴的な所見とはいえない。
- ○d. 角膜上皮下混濁を生じる。
発症後1〜2週間ほどで、角膜に多発する点状の上皮下混濁が出現することが多い。ウイルス抗原に対する免疫反応による浸潤と考えられ、羞明や視力低下の原因となり、数か月以上残ることもある。感染症発生動向調査での届出に必要な臨床症状(重症の急性濾胞性結膜炎、角膜点状上皮下混濁、耳前リンパ節腫脹・圧痛のうち2つ以上)の一つにも挙げられている。混濁が強い場合は低濃度の副腎皮質ステロイド点眼が用いられる。
- ×e. プロスタグランディン関連薬の点眼治療を行う。
プロスタグランディン関連薬(ラタノプロストなど)は、ぶどう膜強膜流出路からの房水流出を促して眼圧を下げる、緑内障治療の第一選択薬である。流行性角結膜炎には有効な抗ウイルス薬がなく、治療は対症療法が中心となる。二次的な細菌感染の予防に抗菌薬点眼、炎症や角膜上皮下混濁・偽膜に対して低濃度ステロイド点眼を用いる。
アデノウイルスによる眼感染症
・流行性角結膜炎:アデノウイルス8・37・53・54・56・64型など。角膜上皮下混濁、耳前リンパ節腫脹。 ・咽頭結膜熱(プール熱):アデノウイルス3型など。発熱、咽頭炎、結膜炎の三主徴。小児に多い。
ウイルス性結膜炎の比較
・流行性角結膜炎:アデノウイルス、潜伏期約1〜2週間、角膜上皮下混濁。 ・急性出血性結膜炎:エンテロウイルス70型、コクサッキーウイルスA24型変異株、潜伏期約1日、結膜下出血。
感染対策
・感染力が非常に強く、手指や器具(眼圧計、タオルなど)を介して接触感染する。医療機関での院内感染にも注意が必要である。 ・予防の基本は流水と石けんによる手洗い、タオルなどの共用を避けること、器具の消毒である。アデノウイルスはエンベロープをもたないため、アルコールが効きにくく、器具の消毒には次亜塩素酸ナトリウムなどを用いる。 ・学校保健安全法では第三種の感染症に分類され、医師が感染のおそれがないと認めるまで出席停止となる。 ・感染症法では5類感染症(定点把握)であり、指定された眼科定点医療機関が届け出る。
POINT
・流行性角結膜炎の原因はアデノウイルス(エンテロウイルスは急性出血性結膜炎)。 ・潜伏期は約1〜2週間と長い。 ・眼脂は漿液性〜粘液性が主体。膿性眼脂は細菌性結膜炎に典型的。 ・耳前リンパ節腫脹と角膜点状上皮下混濁が特徴。 ・特異的な治療薬はなく、手洗いなどによる感染予防が最も重要。 ・プロスタグランディン関連薬は緑内障の治療薬。
