プール熱と真っ赤な白目―原因で仕分ける結膜疾患、ウイルス性はどれだ
第119回医師国家試験 D問題 第14問
国試問題にチャレンジ
ウイルスが原因となるのはどれか。2つ選べ。
- a.翼状片
- b.咽頭結膜熱
- c.春季カタル
- d.巨大乳頭結膜炎
- e.急性出血性結膜炎
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
結膜疾患は原因別に整理すると理解しやすく、ウイルス性結膜炎の三大疾患は流行性角結膜炎・咽頭結膜熱(いずれもアデノウイルス)と急性出血性結膜炎(エンテロウイルス70、コクサッキーウイルスA24変異株)です。咽頭結膜熱は発熱・咽頭炎・結膜炎を三主徴とし、小児に夏季プールを介して流行し、急性出血性結膜炎は潜伏期約1日で結膜下出血を伴うのが特徴です。一方、春季カタルと巨大乳頭結膜炎は上眼瞼結膜の巨大乳頭を特徴とするアレルギー性疾患で、前者はアトピー素因、後者はコンタクトレンズなどの刺激が背景にあり、翼状片は紫外線曝露などによる変性疾患です。ウイルス性結膜炎は感染力が強く、学校保健安全法上の扱いや院内感染対策にも直結するため、原因による分類を確実に押さえておくことが臨床でも重要です。
解答・解説
正解はb, eです
結膜・眼表面の疾患を原因別に整理できるかを問う問題である。結膜炎は大きく、感染性(ウイルス性・細菌性・クラミジア性)と非感染性(アレルギー性など)に分けられる。さらに選択肢には、結膜炎ではない変性疾患も含まれている。 選択肢を原因で分類すると次のようになる。 ・ウイルス性:咽頭結膜熱(アデノウイルス)、急性出血性結膜炎(エンテロウイルス70、コクサッキーウイルスA24変異株) ・アレルギー性:春季カタル、巨大乳頭結膜炎(コンタクトレンズなどによる機械的刺激も関与) ・変性:翼状片(紫外線曝露などによる結膜の線維血管性増殖) ウイルス性結膜炎の三大疾患として、流行性角結膜炎(アデノウイルス)、咽頭結膜熱(アデノウイルス)、急性出血性結膜炎(エンテロウイルスなど)を押さえておけば、本問は確実に解ける。
選択肢考察
- ×a. 翼状片
誤り。翼状片は、鼻側の球結膜から角膜に向かって三角形(翼のような形)に結膜組織が線維血管性に増殖し、侵入していく変性疾患である。感染症ではなく、紫外線曝露が最大の危険因子であり、日差しの強い地域での屋外作業者や高齢者に多い。慢性的な乾燥や塵埃などの刺激も関与すると考えられている。進行して瞳孔領に近づくと乱視や視力低下をきたすため、手術(切除、結膜弁移植など)を行うが、再発しやすい。
- ○b. 咽頭結膜熱
正しい。咽頭結膜熱はアデノウイルス(主に3型、そのほか4型・7型など)の感染による疾患で、発熱・咽頭炎・結膜炎の三主徴を示す。小児に多く、夏季にプールを介して流行しやすいため「プール熱」とも呼ばれる。結膜炎は充血、流涙、眼脂を伴い、耳前リンパ節腫脹がみられることもある。特異的な治療薬はなく対症療法が中心となる。学校保健安全法では第二種の感染症に指定され、主要症状が消退した後2日を経過するまで出席停止となる。
- ×c. 春季カタル
誤り。春季カタルはアレルギー性結膜疾患の重症型であり、ウイルスは関与しない。ハウスダスト、ダニ、花粉などに対するアレルギー反応(I型アレルギーに加え、好酸球やTh2リンパ球による慢性炎症)が原因で、アトピー性皮膚炎を合併することが多く、学童期の男児に好発する。上眼瞼結膜の石垣状の巨大乳頭や輪部の腫脹(トランタス斑)といった増殖性変化を特徴とし、角膜に落屑様の上皮障害やシールド潰瘍を生じることもある。治療は抗アレルギー点眼薬に加え、免疫抑制点眼薬(シクロスポリン、タクロリムス)やステロイド点眼薬を用いる。
- ×d. 巨大乳頭結膜炎
誤り。巨大乳頭結膜炎は、上眼瞼結膜に巨大な乳頭が増殖するアレルギー性結膜疾患で、ウイルス感染によるものではない。コンタクトレンズ(特にソフトコンタクトレンズ)、義眼、露出した手術縫合糸などが眼表面を機械的に刺激すること、およびレンズに付着した汚れ(変性した蛋白質)に対するアレルギー反応が原因と考えられている。かゆみ、眼脂、レンズのずれや装用感の悪化を訴える。治療は原因の除去(コンタクトレンズの装用中止、レンズの種類変更や洗浄の徹底)と抗アレルギー点眼薬である。
- ○e. 急性出血性結膜炎
正しい。急性出血性結膜炎は、エンテロウイルス70またはコクサッキーウイルスA24変異株の感染による結膜炎である。潜伏期間が約1日と短く、急激に発症する。強い眼痛、異物感、充血、流涙に加え、球結膜下出血を伴いやすいことが名称の由来であり、最大の特徴である。通常1週間程度で自然に治癒し、治療は対症療法と二次感染予防が中心となる。感染力が強いため手指や器具を介した接触感染の予防が重要であり、学校保健安全法では第三種の感染症として、医師が感染のおそれがないと認めるまで出席停止となる。なお、エンテロウイルス70ではまれに発症後に四肢の弛緩性麻痺などの神経合併症が報告されている。
主なウイルス性結膜炎の比較
流行性角結膜炎:アデノウイルス(8型、19型、37型、54型など)/潜伏期1〜2週間/充血・眼脂・流涙、耳前リンパ節腫脹、偽膜形成、治癒後に角膜の点状混濁(多発性角膜上皮下浸潤)を残すことがある/学校保健安全法 第三種 咽頭結膜熱:アデノウイルス(3型、4型、7型など)/潜伏期5〜7日程度/発熱・咽頭炎・結膜炎の三主徴、小児・夏季・プールでの流行/学校保健安全法 第二種(主要症状消退後2日を経過するまで出席停止) 急性出血性結膜炎:エンテロウイルス70、コクサッキーウイルスA24変異株/潜伏期約1日/結膜下出血、強い眼痛/学校保健安全法 第三種 アデノウイルス感染の迅速診断には、結膜擦過物を用いたイムノクロマト法の抗原検出キットが用いられる。いずれも特異的な抗ウイルス薬はなく、細菌の二次感染予防に抗菌点眼薬、炎症が強い場合に低濃度ステロイド点眼薬を用いることがある。院内感染(特に眼科外来)を防ぐため、手洗いと器具の消毒が重要である。
アレルギー性結膜疾患の分類
アレルギー性結膜炎(季節性・通年性)、アトピー性角結膜炎、春季カタル、巨大乳頭結膜炎に分類される。春季カタルと巨大乳頭結膜炎はいずれも上眼瞼結膜の巨大乳頭が特徴であり、前者はアトピー素因、後者はコンタクトレンズなどの異物刺激が背景にある。
その他の原因による結膜疾患
細菌性結膜炎(肺炎球菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌、淋菌など)、クラミジア結膜炎(トラコーマ、封入体結膜炎)、変性疾患(翼状片、瞼裂斑)などがある。
POINT
・ウイルス性結膜炎の三大疾患:流行性角結膜炎・咽頭結膜熱(アデノウイルス)、急性出血性結膜炎(エンテロウイルス70、コクサッキーウイルスA24)。 ・咽頭結膜熱=発熱・咽頭炎・結膜炎、小児、夏季、プール。 ・急性出血性結膜炎=潜伏期約1日、結膜下出血。 ・春季カタル・巨大乳頭結膜炎はアレルギー性(巨大乳頭)。 ・翼状片は紫外線などによる変性疾患。
