StudyMed医師国家試験

膠原病は「死因になる臓器」で覚える―MCTDと肺高血圧症の深い関係

第107回医師国家試験 I問題 第21問

国試問題にチャレンジ

第107回 I問題 第21問

疾患と病態の組合せで正しいのはどれか。

  1. a.強皮症 ―― ネフローゼ症候群
  2. b.混合性結合組織病 ―― 肺高血圧症
  3. c.Sjögren症候群 ―― 肺門リンパ節腫脹
  4. d.線維筋痛症 ―― 肺胞出血
  5. e.皮膚筋炎 ―― 高血圧緊急症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、膠原病と合併する病態の組合せを問う知識問題だ。膠原病はそれぞれ「予後を左右する特徴的な臓器病変」を持っている。疾患ごとにそれを思い浮かべて照合していくのがコツだよ。
医学生医学生
膠原病は症状が重なり合っていて、どれがどの疾患の特徴なのか混乱しやすいです。
ドクタードクター
その気持ちはよくわかる。だからこそ「この疾患といえばこれ」という軸を一つずつ持っておくといい。まず正解から。混合性結合組織病、いわゆるMCTDと肺高血圧症の組合せが正しい。
医学生医学生
MCTDは抗U1-RNP抗体が陽性で、SLEと強皮症と筋炎の症状が混ざった病気でしたよね。
ドクタードクター
そう。レイノー現象や手指のソーセージ様腫脹がよくみられる。そして肺動脈性肺高血圧症はMCTDの代表的な合併症で、わが国では主要な死因とされている。わが国の診断基準でも特徴的な臓器所見の一つに位置づけられているんだ。
医学生医学生
膠原病内科を回ったとき、MCTDの患者さんが定期的に心エコーを受けていた理由がわかりました。
ドクタードクター
まさにそれ。労作時の息切れが出てからでは進行していることもあるから、心エコーで肺動脈圧を評価して早期に見つけることが大切だ。確定診断は右心カテーテル検査で行う。では、ほかの組合せを見ていこう。強皮症とネフローゼ症候群はどうかな。
医学生医学生
強皮症も腎臓が悪くなると習った気がするので、正しそうにも見えます。
ドクタードクター
腎臓が障害されるのは正しいけれど、病態が違うんだ。強皮症の腎病変の代表は強皮症腎クリーゼ。腎の小〜中動脈の内膜が肥厚して内腔が狭くなり、腎血流が落ちてレニン-アンジオテンシン系が亢進する。その結果、急激な高血圧と急速な腎機能低下が起こる。尿所見は軽度の蛋白尿や血尿程度のことが多く、ネフローゼの形にはならないのが普通だ。
医学生医学生
膠原病でネフローゼといえば、SLEのループス腎炎ですね。
ドクタードクター
その通り。ここで最後の選択肢にもつながる。皮膚筋炎と高血圧緊急症の組合せは誤りで、膠原病で高血圧緊急症を起こす代表こそ、今話した強皮症腎クリーゼなんだ。
医学生医学生
皮膚筋炎で怖いのは、間質性肺炎と悪性腫瘍の合併でしたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。特に抗MDA5抗体陽性例では急速進行性の間質性肺炎が問題になる。悪性腫瘍の検索も欠かせない。次はSjögren症候群と肺門リンパ節腫脹だ。
医学生医学生
両側肺門リンパ節腫脹といえばサルコイドーシスだと、呼吸器の講義で何度も聞きました。
ドクタードクター
そう、BHLはサルコイドーシスで高頻度にみられる所見だ。Sjögren症候群の肺病変は間質性肺炎や気道病変が中心になる。ただし、Sjögren症候群ではMALTリンパ腫などの悪性リンパ腫を合併しやすいから、リンパ節腫大を見たらそちらを警戒する必要がある。
医学生医学生
線維筋痛症と肺胞出血は、なんだかかけ離れている感じがします。
ドクタードクター
いい感覚だね。線維筋痛症は全身の慢性疼痛と多数の圧痛点、疲労感や睡眠障害が特徴で、炎症所見や自己抗体の異常はなく、臓器障害を起こさない。肺胞出血はANCA関連血管炎、抗GBM抗体病、SLEなどで起こる重篤な病態だ。
医学生医学生
強皮症のネフローゼとか皮膚筋炎の高血圧緊急症とか、疾患と病態がずらして組み合わされているんですね。
ドクタードクター
そう、それがこの問題のつくりだ。最後に臨床での注意点を。強皮症腎クリーゼは、びまん皮膚硬化型で皮膚硬化が急速に進む発症早期に起こりやすく、抗RNAポリメラーゼIII抗体陽性や中等量以上のステロイド投与が危険因子とされる。治療はACE阻害薬による速やかな降圧が第一選択だ。
医学生医学生
膠原病だからとステロイドを増やすと、かえって腎クリーゼを誘発することがあるんですね。
ドクタードクター
その通り。強皮症の患者さんでステロイドを使うときは血圧をこまめに測ることが大切だ。肺高血圧症もMCTDだけでなく、強皮症やSLEで合併しうる予後不良因子だから、定期的なスクリーニングを意識しておこう。

まとめ

膠原病はそれぞれ予後を左右する特徴的な臓器病変を持ち、混合性結合組織病(抗U1-RNP抗体陽性)では肺動脈性肺高血圧症が代表的な合併症で、わが国では主要な死因とされます。強皮症の腎病変は急激な高血圧と腎機能低下をきたす強皮症腎クリーゼであり、ネフローゼ症候群ではなく、膠原病で高血圧緊急症を起こす代表もこの腎クリーゼです。ネフローゼ症候群はSLEのループス腎炎、両側肺門リンパ節腫脹はサルコイドーシス、肺胞出血はANCA関連血管炎や抗GBM抗体病・SLEと結びつけ、線維筋痛症は臓器障害を伴わないこと、皮膚筋炎では間質性肺炎と悪性腫瘍が重要であることを押さえます。腎クリーゼにはACE阻害薬、肺高血圧症には心エコーによる定期スクリーニングと、疾患ごとの重要病変を知ることが早期発見と適切な治療に直結します。

解答・解説

正解はbです

テーマ

膠原病(全身性自己免疫疾患)には、それぞれ特徴的で予後を左右する臓器病変がある。本問は、各疾患と代表的な合併病態の対応を正しく覚えているかを問う知識問題である。

考え方

疾患ごとに「特徴的かつ重要な臓器障害」を思い浮かべて照合する。 ・全身性強皮症:皮膚硬化、間質性肺炎、肺高血圧症、強皮症腎クリーゼ(急激な高血圧と腎不全) ・混合性結合組織病(MCTD):抗U1-RNP抗体、レイノー現象、手指のソーセージ様腫脹、肺動脈性肺高血圧症(主要な死因) ・Sjögren症候群:乾燥症状(ドライアイ・ドライマウス)、間質性肺炎、尿細管間質性腎炎、悪性リンパ腫 ・線維筋痛症:全身の慢性疼痛と圧痛。炎症や臓器障害を伴わない ・皮膚筋炎:近位筋の筋力低下、特徴的皮疹、間質性肺炎、悪性腫瘍の合併 これらと各選択肢の病態を比べると、正しい組合せは混合性結合組織病と肺高血圧症だけである。ネフローゼ症候群はループス腎炎(SLE)、肺門リンパ節腫脹はサルコイドーシス、肺胞出血は血管炎やSLE、高血圧緊急症は強皮症腎クリーゼと結びつけて覚えるとよい。

選択肢考察

  1. ×a.  強皮症 ―― ネフローゼ症候群

    強皮症の代表的な腎病変は強皮症腎クリーゼであり、腎の小〜中動脈の内膜肥厚による内腔狭窄から腎血流が低下し、レニン-アンジオテンシン系が亢進して急激な高血圧と急速な腎機能低下をきたす。尿所見は軽度の蛋白尿・血尿程度のことが多く、大量の蛋白尿と低アルブミン血症を呈するネフローゼ症候群の形はとらないのが普通である。膠原病でネフローゼ症候群をきたす代表はSLEのループス腎炎(特に膜性ループス腎炎など)である。

  2. ○b.  混合性結合組織病 ―― 肺高血圧症

    混合性結合組織病(MCTD)は、SLE、全身性強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎の症状が混在し、抗U1-RNP抗体が高値陽性となる疾患である。肺動脈性肺高血圧症は代表的な合併症で、わが国では主要な死因とされ、生命予後を左右する。労作時息切れなどがあれば心エコーで肺動脈圧を評価し、早期に発見することが重要である。わが国のMCTD診断基準でも、肺動脈性肺高血圧症は特徴的な臓器所見の一つに位置づけられている。

  3. ×c.  Sjögren症候群 ―― 肺門リンパ節腫脹

    両側肺門リンパ節腫脹(BHL)は、非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を形成するサルコイドーシスで高頻度にみられる特徴的所見である。Sjögren症候群の肺病変は間質性肺炎(特にリンパ球性間質性肺炎や非特異性間質性肺炎)や気道病変が中心であり、肺門リンパ節腫脹は特徴的な病態ではない。なお、Sjögren症候群では悪性リンパ腫(MALTリンパ腫など)の合併頻度が高く、リンパ節腫大をみた場合はこれに注意する。

  4. ×d.  線維筋痛症 ―― 肺胞出血

    線維筋痛症は、全身の広範な慢性疼痛と多数の圧痛点、疲労感、睡眠障害、抑うつなどを特徴とする疾患で、中年女性に多い。炎症所見や自己抗体の異常はなく、臓器障害を起こさない。肺胞出血は、顕微鏡的多発血管炎などのANCA関連血管炎、抗GBM抗体病(Goodpasture症候群)、SLEなどでみられる重篤な病態である。

  5. ×e.  皮膚筋炎 ―― 高血圧緊急症

    皮膚筋炎で予後を左右する合併症は、間質性肺炎(特に抗MDA5抗体陽性例の急速進行性間質性肺炎)と悪性腫瘍であり、高血圧緊急症は特徴的ではない。膠原病で高血圧緊急症を起こす代表は全身性強皮症の強皮症腎クリーゼである。強皮症腎クリーゼでは悪性高血圧に加え、血小板減少や破砕赤血球を伴う血栓性微小血管症(TMA)の像を呈することもある。

強皮症腎クリーゼ

・全身性強皮症(特にびまん皮膚硬化型で、発症早期・皮膚硬化の急速な進行期)に起こりやすい。 ・急激な血圧上昇、頭痛、視力障害、高血圧性網膜症、急速な腎機能低下を呈し、高レニン血症を伴う。 ・危険因子として、抗RNAポリメラーゼIII抗体陽性や、中等量以上の副腎皮質ステロイド投与が知られる。 ・治療はACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬による速やかな降圧が第一選択であり、作用発現の速いカプトプリルが用いられる。 ・まれに高血圧を伴わない正常血圧性の腎クリーゼや、MPO-ANCA陽性の半月体形成性糸球体腎炎を起こすこともある。

膠原病と肺高血圧症

肺動脈性肺高血圧症は、MCTD、全身性強皮症、SLEで合併しやすい。いずれも予後不良因子であり、心エコーによる定期的なスクリーニングが推奨される。確定診断は右心カテーテル検査で行う(安静時平均肺動脈圧の上昇で定義される)。

疾患と特徴的病態の整理

・SLE:ループス腎炎(ネフローゼ症候群)、漿膜炎、血球減少、肺胞出血、中枢神経ループス ・全身性強皮症:間質性肺炎、肺高血圧症、腎クリーゼ、逆流性食道炎 ・MCTD:肺動脈性肺高血圧症、無菌性髄膜炎、三叉神経障害 ・Sjögren症候群:乾燥症状、間質性肺炎、尿細管性アシドーシス、悪性リンパ腫 ・多発性筋炎/皮膚筋炎:間質性肺炎、悪性腫瘍 ・サルコイドーシス:両側肺門リンパ節腫脹、ぶどう膜炎、心病変

POINT

・MCTDの主要な死因は肺動脈性肺高血圧症(抗U1-RNP抗体陽性)。 ・強皮症の腎病変は腎クリーゼ(高血圧緊急症)であり、ネフローゼ症候群ではない。治療はACE阻害薬。 ・両側肺門リンパ節腫脹はサルコイドーシス。 ・肺胞出血はANCA関連血管炎、抗GBM抗体病、SLE。 ・線維筋痛症は臓器障害を伴わない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。