「どうしてこうなったと思いますか」―医療面接で解釈モデルを引き出す一言
第107回医師国家試験 H問題 第5問
国試問題にチャレンジ
医療面接における解釈モデルを尋ねているのはどれか。
- a.「かかりつけ医の病状説明はどのような内容ですか」
- b.「健康のために日常生活で何か気を付けていますか」
- c.「検査結果の説明について十分に理解できましたか」
- d.「病院職員の対応について何かご不満はありますか」
- e.「病気の原因について思い当たることはありますか」
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
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ドクターまとめ
解釈モデルとは、患者自身が病気の原因、発症の理由、病態、重症度、予後、望む治療などをどう考えているかを指し、クラインマンが提唱した概念です。「病気の原因について思い当たることはありますか」のように患者自身の考えを引き出す質問がその典型で、他医の説明内容や検査説明の理解度の確認、生活習慣の聴取、病院への満足度の確認は、意義はあっても解釈モデルの聴取ではありません。解釈モデルは「かきかえ」(解釈・期待・感情・影響)の「解釈」にあたり、患者の文化的背景や経験によって大きく異なります。患者の考えを否定せずに受け止め、それを踏まえて説明を組み立てることが、納得、信頼関係、アドヒアランスの向上につながり、患者中心の医療面接の基盤となります。
解答・解説
正解はeです
解釈モデルとは
解釈モデル(explanatory model)とは、患者自身が自分の病気や症状をどのように理解・解釈しているかを指す概念であり、医療人類学者クラインマン(Kleinman)が提唱した。具体的には、症状が起きた原因、なぜ今この時期に発症したのか、病気がどのような仕組みで生じているのか、どの程度重いと感じているのか、今後どうなると思っているのか、どのような治療を望んでいるのか、といった患者側の考えの総体である。
設問の考え方
選択肢のうち、患者が「自分の病気についてどう考えているか」を引き出そうとする質問を探せばよい。医師から受けた説明の内容や理解度の確認、生活習慣の聴取、病院サービスへの満足度の確認は、いずれも医療面接で意味のある質問であるが、患者自身の病気のとらえ方を問うものではない。病気の原因についての患者自身の考えを尋ねる質問が、解釈モデルを聴く典型的な問いかけとなる。
選択肢考察
- ×a. 「かかりつけ医の病状説明はどのような内容ですか」
他の医師からどのような説明を受けたか、またその内容を患者がどの程度把握しているかを確かめる質問である。これまでの経過や医療情報の収集には役立つが、問われているのは医師側の説明内容であり、患者自身が病気をどう考えているかを尋ねているわけではない。したがって解釈モデルの聴取には当たらない。
- ×b. 「健康のために日常生活で何か気を付けていますか」
食事・運動・喫煙・飲酒などの生活習慣や健康行動を把握するための質問であり、生活歴や社会歴の聴取に相当する。患者の健康意識の一端はうかがえるが、現在の病気の原因や重さ、見通しについて患者がどう解釈しているかを問うものではないので、解釈モデルの質問ではない。
- ×c. 「検査結果の説明について十分に理解できましたか」
医療者が行った説明を患者が理解できたかどうかを確認する質問である。インフォームド・コンセントや患者教育の場面で重要な確認であるが、焦点は説明に対する理解度であり、患者が自ら抱いている病気のとらえ方を尋ねてはいない。
- ×d. 「病院職員の対応について何かご不満はありますか」
病院職員の接遇や医療サービスに対する満足度を問う質問である。患者満足度の把握や医療の質の改善には意味があるが、病気そのものに対する患者の考えとは無関係であり、解釈モデルの聴取ではない。
- ○e. 「病気の原因について思い当たることはありますか」
患者が自分の病気の原因を何だと考えているかを引き出す質問であり、解釈モデルの中核となる要素(病因についての患者の考え)を直接尋ねている。例えば頭痛の患者が「脳腫瘍ではないか」と心配している、腹痛の患者が「前日に食べたものが原因だ」と考えている、といった思いがこの質問で明らかになり、患者の不安に即した説明や検査計画を立てる手がかりとなる。
解釈モデルの主な構成要素
・病因:何が原因でこの症状が起きたと考えているか ・発症の時期:なぜ今このタイミングで起きたと思うか ・病態:体の中で何が起きていると考えているか ・重症度:どの程度深刻な病気だと感じているか ・経過・予後:今後どうなると思っているか ・治療への期待:どのような治療や検査を望んでいるか
解釈モデルを聴く意義
患者の解釈モデルは、年齢、教育、文化的背景、家族や知人の病歴、メディアの情報などに影響されるため人によって大きく異なる。医師の医学的判断と患者の解釈モデルが食い違ったままだと、説明が患者に届かず、不安が解消されなかったり、服薬などの治療を継続しなかったりする原因になる。解釈モデルを把握したうえで説明を組み立てると、患者の納得が得られやすく、医師患者関係の構築や治療への主体的参加(アドヒアランス)の向上につながる。
関連する概念
患者中心の医療面接では、患者の病い体験を「かきかえ」の枠組みで聴くことが勧められる。すなわち、解釈(患者は病気をどう考えているか)、期待(医療に何を望んでいるか)、感情(どんな気持ちでいるか、特に不安や心配)、影響(病気が日常生活や仕事にどう影響しているか)の4つである。解釈モデルはこのうち「解釈」に相当し、期待・感情とも密接に関連する。
質問例
「ご自分ではどうしてこうなったとお考えですか」「何か心配されている病気はありますか」「この症状はこれからどうなると思われますか」などが、解釈モデルを引き出す代表的な問いかけである。
POINT
・解釈モデル=患者自身が病気の原因・病態・重症度・予後・治療をどのように考えているか。 ・「原因について思い当たることは」「何の病気だと心配していますか」などの質問で引き出す。 ・医師の説明内容や理解度の確認、生活習慣の聴取、満足度の確認は解釈モデルの聴取ではない。 ・解釈モデルの把握は、患者の納得、信頼関係の構築、アドヒアランスの向上に役立つ。
