StudyMed医師国家試験

心電図は「電気」、PETは「放射線」―英語名から読み解く検査の物理学

第107回医師国家試験 H問題 第20問

国試問題にチャレンジ

第107回 H問題 第20問

検査と物理現象の組合せで正しいのはどれか。

  1. a.electrocardiography ―― sound
  2. b.endoscopy ―― heat
  3. c.magnetic resonance imaging ―― light
  4. d.positron emission tomography ―― radiation
  5. e.ultrasonography ―― gravitation

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、代表的な検査がどんな物理現象を使って体の情報を得ているかを、英語の検査名で問う問題だ。ポイントは2つ。英単語の成り立ちから検査を正しく思い浮かべること、そしてその検査の原理を一言で言えるようにしておくことだ。
医学生医学生
英語で並ぶと一瞬ひるみますね。でも、electroは電気、ultraは「超える」と医学英語の授業で習いました。
ドクタードクター
その語源の知識がそのまま武器になる。まず心電図から。electrocardiographyと音の組合せはどうだろう。
医学生医学生
心臓だから心音と結びつけたくなりますが、名前にelectroが入っているので電気ですよね。
ドクタードクター
その通り。心電図は心筋細胞の脱分極と再分極で生じる電位変化を、体表の電極で記録する検査だ。心音や心雑音を記録するのは心音図、英語ではphonocardiographyと呼ぶ。phonoは音を表す接頭語だね。
医学生医学生
循環器内科の実習で心電図はたくさん読みましたが、心音図は実物を見たことがありません。
ドクタードクター
今は聴診と心エコーで評価することが多いから、目にする機会は少ないかもしれないね。次は内視鏡と熱の組合せだ。
医学生医学生
endoは「内部」、scopyは「見る」なので、中を見る検査です。見るなら光でしょうか。
ドクタードクター
正解。内視鏡は先端から照らした光が粘膜で反射したものを、撮像素子などでとらえて観察する光学的な検査だ。特定の波長の光で血管や表面構造を強調する狭帯域光観察も、光の性質を応用している。熱、つまり体表から出る赤外線を画像化するのはサーモグラフィーだ。
医学生医学生
MRIと光の組合せは、なんとなく違う気がします。magneticは磁気ですよね。
ドクタードクター
そう。MRIは強い静磁場の中で体内の水素原子核、つまりプロトンに特定の周波数のラジオ波を当て、共鳴によって返ってくる信号を画像化する。使うのは磁気と電磁波の一種であるラジオ波で、可視光ではない。X線を使わないので被曝がないのも特徴だね。
医学生医学生
放射線学の講義で、MRIは被曝しない代わりに金属やペースメーカーに注意が必要と習いました。
ドクタードクター
よく覚えているね。では残る2つ。PETと放射線、超音波と重力はどうかな。
医学生医学生
超音波はultra+sonoで、聞こえないほど高い音ですよね。重力は関係なさそうです。PETは核医学検査なので放射線、これが正解だと思います。
ドクタードクター
正解だ。超音波検査は可聴域を超える高い周波数の音波を送り、組織の境界で跳ね返るエコーを受け取って画像にする。血流の評価にはドプラ効果も使う。一方PETは、陽電子を放出する放射性核種で標識した薬剤を投与し、陽電子が近くの電子と結合して消滅するときに反対方向へ出る一対のγ線を、周りの検出器で同時に計測する検査だ。
医学生医学生
陽電子そのものを見ているわけではなく、消滅のときに出るγ線を捉えているんですね。
ドクタードクター
その理解で大丈夫。各511 keVのγ線が正反対に飛ぶから、同時に検出することで発生位置を割り出せる。代表的な薬剤は、ブドウ糖に似た物質を18Fで標識したFDGだ。
医学生医学生
癌のステージングでFDG-PETをよく見ました。癌細胞はブドウ糖をたくさん使うからですか。
ドクタードクター
そう。癌細胞は酸素が十分にあっても解糖系に強く頼り、ブドウ糖を大量に消費する。これがWarburg効果で、1920年代に報告された性質だ。FDGは細胞に取り込まれてリン酸化されるとその先の代謝が進まず、細胞内にとどまるから、糖代謝の盛んな部位が描き出される。
医学生医学生
逆に言えば、癌以外でも糖をよく使う場所には集まってしまうということですか。
ドクタードクター
鋭いね。脳や心筋はもともとブドウ糖を多く取り込むし、炎症巣にも集積する。尿路は排泄経路なので写る。だから検査前の絶食や血糖管理が大切で、読影ではこうした生理的集積と区別する必要がある。さらに18Fは半減期が約110分と短いので、製造した薬剤を速やかに使わなければならない。今はCTと一体化したPET/CTで、代謝情報と解剖学的な位置を同時に評価するのが一般的だ。
医学生医学生
検査ごとに「何を使って見ているか」を一言で言えれば、適応や注意点も自然につながりそうです。
ドクタードクター
まさにそこが狙いだ。X線やCTは放射線の透過、MRIは磁気とラジオ波、超音波は音、内視鏡は光、心電図や脳波は電気。原理がわかれば、被曝の有無や禁忌まで筋道立てて理解できるよ。

まとめ

各検査が利用する物理現象は、心電図=電気、内視鏡=光、MRI=磁気とラジオ波、PET=放射線、超音波=音と整理でき、正しい組合せはPETと放射線です。PETは陽電子の消滅で生じる一対のγ線を同時計測する核医学検査で、FDG-PETは癌細胞の糖代謝亢進(Warburg効果)を利用しますが、脳・心筋・尿路や炎症巣への集積に注意が必要です。心音を記録するのは心音図、熱を画像化するのはサーモグラフィーと、紛らわしい検査も区別しておきましょう。electro-、endo-、sono-などの語源を手がかりにすれば英語表記の問題にも対応でき、原理の理解は被曝や禁忌といった臨床上の注意点を考える土台になります。

解答・解説

正解はdです

代表的な検査法について、その検査が何の物理現象を利用して情報を得ているかを英語表記で問う問題である。各検査の原理を一言で整理すると次のようになる。 ・electrocardiography(心電図検査):心筋の興奮に伴って生じる電気(電位変化) ・endoscopy(内視鏡検査):光(照明光とその反射光) ・magnetic resonance imaging(MRI、磁気共鳴画像):磁気と電磁波(ラジオ波) ・positron emission tomography(PET、陽電子放出断層撮影):放射線(陽電子の消滅で生じるγ線) ・ultrasonography(超音波検査):音(人の耳には聞こえない高い周波数の音波) それぞれの英語名から検査内容を正しく思い浮かべ、原理と対応させれば、放射線を利用する PET の組合せだけが正しいと判断できる。英単語では、electro-(電気)、endo-(内部の)+-scopy(観察)、magnetic(磁気の)、positron(陽電子)、ultra-(超える)+sono-(音)といった語の成り立ちが手がかりになる。

選択肢考察

  1. ×a.  electrocardiography ―― sound

    誤り。心電図検査は、心筋細胞の脱分極・再分極によって生じる電位変化を体表面の電極で記録するもので、利用する物理現象は電気である。心臓の音(心音や心雑音)を記録する検査は心音図(phonocardiography)であり、混同しないようにする。

  2. ×b.  endoscopy ―― heat

    誤り。内視鏡検査は、先端から照射した光が粘膜で反射したものを、光ファイバーや先端の撮像素子(CCD や CMOS)でとらえて観察する光学的な検査であり、利用するのは光である。特定の波長の光で血管や表面構造を強調する狭帯域光観察(NBI)なども光の性質を応用したものである。体表から放射される赤外線(熱)を画像化する検査はサーモグラフィーである。

  3. ×c.  magnetic resonance imaging ―― light

    誤り。MRI は、強い静磁場の中に置いた体内の水素原子核(プロトン)に特定の周波数のラジオ波(電磁波の一種)を照射し、共鳴現象によって生じる信号を受信して画像化する検査である。利用するのは磁気と電磁波(ラジオ波)であり、可視光ではない。X線を用いないため、放射線被曝がないことが特徴である。

  4. ○d.  positron emission tomography ―― radiation

    正しい。PET は、陽電子(ポジトロン)を放出する放射性核種で標識した薬剤(トレーサー)を投与し、その体内分布を画像化する核医学検査である。放出された陽電子が近くの電子と結合して消滅する際に、反対方向へ一対のγ線(各511 keV)が放出され、これを周囲の検出器で同時に計測する。したがって利用する物理現象は放射線である。代表的なトレーサーはブドウ糖の類似物質を18F で標識した FDG(フルオロデオキシグルコース)であり、糖代謝が亢進した悪性腫瘍や炎症巣に集積する。

  5. ×e.  ultrasonography ―― gravitation

    誤り。超音波検査は、人の可聴域(約20 kHz まで)を超える高い周波数の音波を体内に送り、組織の境界で反射して戻ってくるエコーを受信して画像化する検査である。利用するのは音(音波)であり、重力とは関係がない。血流の評価にはドプラ効果(動くものに反射した音の周波数が変化する現象)も用いられる。

主な検査と利用する物理現象

・単純X線撮影、CT(computed tomography、コンピュータ断層撮影):X線(放射線)の透過性の違い ・核医学検査(シンチグラフィ、SPECT、PET):体内に投与した放射性核種から出るγ線(放射線) ・MRI:静磁場とラジオ波による核磁気共鳴 ・超音波検査:超音波の反射(エコー)、ドプラ効果 ・内視鏡検査:光 ・サーモグラフィー:体表から放射される赤外線(熱) ・心電図、脳波、筋電図:生体の電気活動 ・心音図:音

PET の補足

・陽電子放出核種は半減期が短いものが多い(18F は約110分)ため、サイクロトロンで製造した薬剤を速やかに使用する必要がある。 ・FDG は細胞にブドウ糖と同様に取り込まれてリン酸化されるが、その先の代謝が進まないため細胞内にとどまり、糖代謝の盛んな部位が描出される。 ・癌細胞は酸素が十分にある環境でも解糖系に強く依存してブドウ糖を大量に消費する(Warburg 効果)。1920年代に報告されたこの性質が FDG-PET の理論的基盤となっている。 ・脳、心筋など生理的にブドウ糖を多く取り込む臓器や、尿路(排泄経路)にも集積するため、読影時に注意が必要である。検査前の絶食や血糖管理も重要となる。 ・現在は CT と一体化した PET/CT が広く用いられ、代謝情報と解剖学的位置を同時に評価できる。

POINT

・心電図=電気、内視鏡=光、MRI=磁気・電磁波(ラジオ波)、PET=放射線、超音波=音。 ・PET は陽電子の消滅で生じる一対のγ線(511 keV)を同時計測する核医学検査である。 ・FDG-PET は癌細胞の糖代謝亢進(Warburg 効果)を利用する。 ・心音を記録するのは心音図、熱を画像化するのはサーモグラフィーである。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。