心電図は「電気」、PETは「放射線」―英語名から読み解く検査の物理学
第107回医師国家試験 H問題 第20問
国試問題にチャレンジ
検査と物理現象の組合せで正しいのはどれか。
- a.electrocardiography ―― sound
- b.endoscopy ―― heat
- c.magnetic resonance imaging ―― light
- d.positron emission tomography ―― radiation
- e.ultrasonography ―― gravitation
対話形式の解説
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ドクターまとめ
各検査が利用する物理現象は、心電図=電気、内視鏡=光、MRI=磁気とラジオ波、PET=放射線、超音波=音と整理でき、正しい組合せはPETと放射線です。PETは陽電子の消滅で生じる一対のγ線を同時計測する核医学検査で、FDG-PETは癌細胞の糖代謝亢進(Warburg効果)を利用しますが、脳・心筋・尿路や炎症巣への集積に注意が必要です。心音を記録するのは心音図、熱を画像化するのはサーモグラフィーと、紛らわしい検査も区別しておきましょう。electro-、endo-、sono-などの語源を手がかりにすれば英語表記の問題にも対応でき、原理の理解は被曝や禁忌といった臨床上の注意点を考える土台になります。
解答・解説
正解はdです
代表的な検査法について、その検査が何の物理現象を利用して情報を得ているかを英語表記で問う問題である。各検査の原理を一言で整理すると次のようになる。 ・electrocardiography(心電図検査):心筋の興奮に伴って生じる電気(電位変化) ・endoscopy(内視鏡検査):光(照明光とその反射光) ・magnetic resonance imaging(MRI、磁気共鳴画像):磁気と電磁波(ラジオ波) ・positron emission tomography(PET、陽電子放出断層撮影):放射線(陽電子の消滅で生じるγ線) ・ultrasonography(超音波検査):音(人の耳には聞こえない高い周波数の音波) それぞれの英語名から検査内容を正しく思い浮かべ、原理と対応させれば、放射線を利用する PET の組合せだけが正しいと判断できる。英単語では、electro-(電気)、endo-(内部の)+-scopy(観察)、magnetic(磁気の)、positron(陽電子)、ultra-(超える)+sono-(音)といった語の成り立ちが手がかりになる。
選択肢考察
- ×a. electrocardiography ―― sound
誤り。心電図検査は、心筋細胞の脱分極・再分極によって生じる電位変化を体表面の電極で記録するもので、利用する物理現象は電気である。心臓の音(心音や心雑音)を記録する検査は心音図(phonocardiography)であり、混同しないようにする。
- ×b. endoscopy ―― heat
誤り。内視鏡検査は、先端から照射した光が粘膜で反射したものを、光ファイバーや先端の撮像素子(CCD や CMOS)でとらえて観察する光学的な検査であり、利用するのは光である。特定の波長の光で血管や表面構造を強調する狭帯域光観察(NBI)なども光の性質を応用したものである。体表から放射される赤外線(熱)を画像化する検査はサーモグラフィーである。
- ×c. magnetic resonance imaging ―― light
誤り。MRI は、強い静磁場の中に置いた体内の水素原子核(プロトン)に特定の周波数のラジオ波(電磁波の一種)を照射し、共鳴現象によって生じる信号を受信して画像化する検査である。利用するのは磁気と電磁波(ラジオ波)であり、可視光ではない。X線を用いないため、放射線被曝がないことが特徴である。
- ○d. positron emission tomography ―― radiation
正しい。PET は、陽電子(ポジトロン)を放出する放射性核種で標識した薬剤(トレーサー)を投与し、その体内分布を画像化する核医学検査である。放出された陽電子が近くの電子と結合して消滅する際に、反対方向へ一対のγ線(各511 keV)が放出され、これを周囲の検出器で同時に計測する。したがって利用する物理現象は放射線である。代表的なトレーサーはブドウ糖の類似物質を18F で標識した FDG(フルオロデオキシグルコース)であり、糖代謝が亢進した悪性腫瘍や炎症巣に集積する。
- ×e. ultrasonography ―― gravitation
誤り。超音波検査は、人の可聴域(約20 kHz まで)を超える高い周波数の音波を体内に送り、組織の境界で反射して戻ってくるエコーを受信して画像化する検査である。利用するのは音(音波)であり、重力とは関係がない。血流の評価にはドプラ効果(動くものに反射した音の周波数が変化する現象)も用いられる。
主な検査と利用する物理現象
・単純X線撮影、CT(computed tomography、コンピュータ断層撮影):X線(放射線)の透過性の違い ・核医学検査(シンチグラフィ、SPECT、PET):体内に投与した放射性核種から出るγ線(放射線) ・MRI:静磁場とラジオ波による核磁気共鳴 ・超音波検査:超音波の反射(エコー)、ドプラ効果 ・内視鏡検査:光 ・サーモグラフィー:体表から放射される赤外線(熱) ・心電図、脳波、筋電図:生体の電気活動 ・心音図:音
PET の補足
・陽電子放出核種は半減期が短いものが多い(18F は約110分)ため、サイクロトロンで製造した薬剤を速やかに使用する必要がある。 ・FDG は細胞にブドウ糖と同様に取り込まれてリン酸化されるが、その先の代謝が進まないため細胞内にとどまり、糖代謝の盛んな部位が描出される。 ・癌細胞は酸素が十分にある環境でも解糖系に強く依存してブドウ糖を大量に消費する(Warburg 効果)。1920年代に報告されたこの性質が FDG-PET の理論的基盤となっている。 ・脳、心筋など生理的にブドウ糖を多く取り込む臓器や、尿路(排泄経路)にも集積するため、読影時に注意が必要である。検査前の絶食や血糖管理も重要となる。 ・現在は CT と一体化した PET/CT が広く用いられ、代謝情報と解剖学的位置を同時に評価できる。
POINT
・心電図=電気、内視鏡=光、MRI=磁気・電磁波(ラジオ波)、PET=放射線、超音波=音。 ・PET は陽電子の消滅で生じる一対のγ線(511 keV)を同時計測する核医学検査である。 ・FDG-PET は癌細胞の糖代謝亢進(Warburg 効果)を利用する。 ・心音を記録するのは心音図、熱を画像化するのはサーモグラフィーである。
