StudyMed医師国家試験

子宮口8 cm、元気な赤ちゃん―「陣痛」と「心拍」の両方で読むCTG

第107回医師国家試験 G問題 第52問

国試問題にチャレンジ

第107回 G問題 第52問

31歳の2回経妊1回経産婦。妊娠39週2日。陣痛発来のため入院した。分娩は順調に進行し,入院3時間後に子宮口8 cm開大,未破水である。規則的な陣痛を認めており,胎児心拍数パターンに異常を認めない。胎児心拍数陣痛図(①~⑤)を別に示す。  このときの胎児心拍数陣痛図として考えられるのはどれか。

第107回 G問題 第52問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は分娩中の胎児心拍数陣痛図、いわゆるCTGを選ぶ問題だ。ポイントは2つ。ひとつは子宮収縮の記録が今の分娩の進み具合に合っているか、もうひとつは胎児心拍数が正常といえるか。この2条件を同時に満たす図を探すことになる。まず、子宮口8 cm開大というのは分娩のどの段階かな。
医学生医学生
陣痛開始から子宮口全開大までが分娩第1期なので、その活動期の後半ですね。
ドクタードクター
その通り。活動期が進むほど陣痛の間隔は短く、持続は長くなる。目安として子宮口4~6 cmで約3分、7~8 cmで2分30秒前後、全開大近くで2分程度だ。つまり今回は、2~3分ごとに規則的な山が並ぶ収縮曲線が期待される。
医学生医学生
産婦人科の実習で分娩に立ち会ったとき、全開大が近づくと陣痛計の山がどんどん詰まっていったのを覚えています。でも正直、上段の心拍数ばかり見ていて下段はあまり意識していませんでした。
ドクタードクター
そこがこの問題の落とし穴なんだ。CTGは上段が胎児心拍数、下段が子宮収縮。判読は「収縮の頻度と規則性」「心拍数基線」「基線細変動」「一過性変動」の順で進めると漏れがない。では、正常な胎児心拍数の条件を言えるかな。
医学生医学生
基線が110~160 bpm、細変動が6~25 bpmの中等度、一過性徐脈がない、ですね。一過性頻脈があればなお良い。
ドクタードクター
完璧だ。この条件で各図を見ていこう。正解は、基線約140 bpmで細変動が保たれ、一過性頻脈が散見されて一過性徐脈がなく、しかも下段で約2分30秒ごとの規則的な収縮が記録されている図だ。陣痛と心拍の両方が問題文に合う唯一のものになる。
医学生医学生
心拍数がきれいな図はもう一つありましたよね。そちらでも良さそうに見えたんですが。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。その図は心拍数自体は基線130~140 bpm、細変動も一過性頻脈もあって良好なんだけど、下段の子宮収縮曲線がほぼ平坦なんだ。規則的な陣痛があるという状況と矛盾する。妊婦健診で行うNST、つまりノンストレステストの記録に近い像だね。
医学生医学生
なるほど、心拍だけで選ぶと引っかかるわけですね。急に深く落ち込む徐脈がある図はどう読めばいいですか。
ドクタードクター
心拍数が開始から最下点まで30秒未満で急速に15 bpm以上落ち、すぐ戻る。形もV字やU字で不揃いで、収縮との時間関係も一定しない。これは変動一過性徐脈で、主に臍帯圧迫が原因だ。この図では60 bpm台まで達する深いものもあり、異常なしとはいえない。
医学生医学生
収縮のピークより遅れてゆっくり下がる徐脈の図は、遅発一過性徐脈ですね。講義で「特に注意すべき一過性徐脈」と習いました。
ドクタードクター
そうだね。遅発一過性徐脈は子宮胎盤循環の予備能が低下し、収縮のたびに胎児が低酸素にさらされていることを示唆する。この図は細変動もやや乏しく、収縮の間隔も約5分と長くて活動期の陣痛にも合わない。胎児機能不全を疑う所見だ。
医学生医学生
残りの図は基線が180 bpmくらいで、ほとんど揺れていない平坦な線でした。
ドクタードクター
160 bpmを超える頻脈に加えて、細変動が消失している。頻脈は母体発熱や絨毛膜羊膜炎、胎児低酸素などで起こり、細変動の消失は胎児の中枢神経抑制や重度のアシドーシスを示唆する重大なサインだ。収縮も弱く不規則で、条件に合わない。
医学生医学生
整理すると、心拍は正常か、陣痛は臨床状況に合っているか、の両方をチェックして初めて選べるということですね。
ドクタードクター
その通り。最後に一過性徐脈の分類を整理しておこう。子宮収縮と同時に緩やかに下がり、最下点が収縮の頂点とほぼ一致するのが早発一過性徐脈で、児頭圧迫による迷走神経反射なので通常は問題にならない。遅発は収縮に遅れて緩やかに下がる。変動は急速な下降で形が不定。そして15 bpm以上の低下が2分以上10分未満続くのが遷延一過性徐脈だ。
医学生医学生
「下がり方の速さ」と「収縮とのタイミング」の2軸で分ければ覚えやすいですね。
ドクタードクター
そう。実際の臨床では、これらの所見の組み合わせからレベル1の正常波形からレベル5の異常波形まで分類し、経過観察、監視強化、急速遂娩の準備など対応を決めていく。細変動は胎児の自律神経が健全に働いているかの指標で、特に重視される。1枚の図を部分ではなく全体で読む習慣をつけておこう。

まとめ

分娩中のCTGは、上段の胎児心拍数と下段の子宮収縮をセットで読み、臨床状況と合っているかを確認することが大切です。正常な胎児心拍数は基線110~160 bpm、基線細変動6~25 bpm、一過性徐脈なしで、一過性頻脈があればさらに良好と判断します。子宮口8 cm開大の活動期では約2分30秒ごとの規則的な収縮がみられるはずで、心拍が良好でも収縮が記録されていなければ合致しません。一過性徐脈は下降の速さと収縮との時間関係で早発・遅発・変動・遷延に分類し、遅発は子宮胎盤循環不全、変動は臍帯圧迫を示唆し、頻脈と細変動消失は胎児の危険を示す重要所見です。CTGを系統的に判読する力は、分娩管理で胎児の安全を守るための基本となります。

解答・解説

正解はbです

状況の整理

・31歳、2回経妊1回経産婦(経産婦)、妊娠39週2日の正期産。 ・陣痛発来で入院し、3時間後に子宮口8 cm開大、未破水。分娩第1期の活動期(加速期を過ぎた極期)にあたる。 ・規則的な陣痛があり、胎児心拍数パターンに異常はない。 したがって、選ぶべき胎児心拍数陣痛図(CTG: cardiotocogram)は次の2条件を同時に満たすものである。 (1) 活動期にふさわしい、短い間隔で規則的に繰り返す子宮収縮が記録されている。 (2) 胎児心拍数が正常所見(reassuring)である。すなわち、心拍数基線が110~160 bpmの正常範囲、基線細変動が中等度(振幅6~25 bpm)、一過性徐脈がない(一過性頻脈はあればさらに良好を示す)。

CTGの読み方

CTGは上段が胎児心拍数(bpm)、下段が子宮収縮(陣痛計の圧曲線)である。次の順で判読する。 1. 子宮収縮: 頻度(間隔)と規則性。 2. 心拍数基線: 一過性の変動を除いた10分間の平均的な心拍数。110~160 bpmが正常。 3. 基線細変動: 基線の細かな揺れの振幅。6~25 bpmが正常(中等度)で、胎児の自律神経が健全に働いている指標となる。5 bpm以下は減少、肉眼的に認めなければ消失とする。 4. 一過性変動: 一過性頻脈(胎児の健常性を示す)と一過性徐脈(早発・遅発・変動・遷延)の有無。一過性徐脈は、子宮収縮との時間関係と、下降の速さ(開始から最下点まで30秒未満なら急速、30秒以上なら緩やか)で分類する。

各図の概要

①は急速に深く落ち込む一過性徐脈(変動一過性徐脈)、③は心拍数は良好だが子宮収縮がない、④は子宮収縮の後に遅れて緩やかに下がる一過性徐脈(遅発一過性徐脈)、⑤は基線が約180 bpmの頻脈で細変動もほとんどない。②のみが、規則的な陣痛と正常な心拍数所見をともに満たす。

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    心拍数基線は約140 bpmだが、心拍数が急激に(開始から最下点まで30秒未満で)15 bpm以上低下し、すぐに回復する一過性徐脈が認められる。子宮収縮との時間関係は一定しておらず、形もV字・U字状で不揃いである。これは変動一過性徐脈であり、主に臍帯の圧迫によって生じる。定義は、15 bpm以上の急速な心拍数低下で、開始から元に戻るまでが15秒以上2分未満のものである。特に後半の徐脈は60 bpm台まで達する深いもので、「胎児心拍数パターンに異常を認めない」という条件に合わない。

  2. ○b.  ②

    子宮収縮はおよそ2分30秒ごとに規則的に繰り返しており、子宮口8 cm開大の活動期に相当する陣痛の頻度である。胎児心拍数は基線約140 bpmで正常範囲(110~160 bpm)にあり、基線細変動も保たれ、一過性頻脈が散見され、一過性徐脈は認めない。規則的な陣痛と正常な胎児心拍数パターンという、問題文の2つの条件をともに満たす唯一の図である。

  3. ×c.  ③

    胎児心拍数は基線約130~140 bpmで、細変動と一過性頻脈を認め、一過性徐脈もなく、心拍数の所見そのものは良好である。しかし下段の子宮収縮曲線はほぼ平坦で、陣痛が記録されていない。子宮口8 cm開大で規則的な陣痛があるという状況とは一致しない。妊娠中の非ストレステスト(NST)で得られる所見に近い。

  4. ×d.  ④

    子宮収縮の頂点より遅れて、心拍数がゆっくりと(開始から最下点まで30秒以上かけて)低下し、収縮が治まった後に遅れて基線に戻る一過性徐脈がみられる。これは遅発一過性徐脈で、子宮胎盤循環の予備能が低下し、収縮のたびに胎児が低酸素にさらされていることを示唆する。基線細変動もやや乏しい。また収縮の間隔が長く、活動期の陣痛としても合わない。胎児機能不全を疑う所見であり、異常のない経過とはいえない。

  5. ×e.  ⑤

    心拍数基線が約180 bpmと高く、160 bpmを超える頻脈である。さらに基線はほぼ平坦で、細変動が消失している。頻脈は母体発熱・子宮内感染(絨毛膜羊膜炎)や胎児の低酸素などで起こり、細変動の消失は胎児の中枢神経系の抑制や重度のアシドーシスを示唆する重大な所見である。子宮収縮も弱く不規則であり、条件に合わない。

胎児心拍数の基準(日本産科婦人科学会の定義に準じる)

・心拍数基線: 正常110~160 bpm、徐脈は110 bpm未満、頻脈は160 bpmを超えるもの。 ・基線細変動: 消失(肉眼で認めない)、減少(5 bpm以下)、中等度(6~25 bpm、正常)、増加(26 bpm以上)。 ・一過性頻脈: 15 bpm以上の心拍数増加が15秒以上2分未満持続するもの(妊娠32週未満では10 bpm以上・10秒以上)。胎児が元気であることを示す。

一過性徐脈の種類

・早発一過性徐脈: 子宮収縮と同時に緩やかに下降し、最下点が収縮の頂点とほぼ一致する。児頭圧迫による迷走神経反射で、通常は問題にならない。 ・遅発一過性徐脈: 収縮に遅れて緩やかに下降し、最下点が収縮の頂点より遅れる。子宮胎盤循環不全による胎児低酸素を示す。 ・変動一過性徐脈: 15 bpm以上の急速な下降(30秒未満)で、開始から回復まで15秒以上2分未満。形や収縮との関係は一定しない。主に臍帯圧迫による。 ・遷延一過性徐脈: 15 bpm以上の低下が2分以上10分未満持続するもの。

胎児の状態が良好と判断できるCTG

心拍数基線が正常範囲、基線細変動が正常、一過性徐脈がなく、一過性頻脈がある(一過性頻脈はなくてもよい)場合、胎児は健常(reassuring)と判断される。日本では、これらの所見の組み合わせから波形をレベル1(正常波形)~レベル5(異常波形・高度)に分類し、レベルに応じた対応(経過観察、監視強化、急速遂娩の準備など)が示されている。

分娩第1期の陣痛

分娩第1期は、陣痛開始から子宮口全開大(10 cm)までである。子宮口の開大が進むにつれて陣痛の間隔は短く、持続は長くなり、子宮口4~6 cmではおよそ3分、7~8 cmで2分30秒、9~10 cmで2分程度が目安となる。

POINT

・正常なCTGは、心拍数基線110~160 bpm、基線細変動6~25 bpm、一過性徐脈なし(一過性頻脈ありならより良好)である。 ・一過性徐脈は、子宮収縮との時間関係と下降の速さで早発・遅発・変動・遷延に分類する。 ・遅発一過性徐脈は子宮胎盤循環不全、変動一過性徐脈は臍帯圧迫を示唆する。 ・基線の頻脈(160 bpm超)と細変動消失は胎児の危険を示す重要所見である。 ・CTGは心拍数だけでなく、子宮収縮の頻度が臨床状況(分娩の進行度)と合っているかも確認する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。