StudyMed医師国家試験

バナナが選ばれる理由―「細胞を食べる」と考えればカリウムの多い食品が見えてくる

第107回医師国家試験 G問題 第27問

国試問題にチャレンジ

第107回 G問題 第27問

単位重量あたりのカリウム含有量が最も多いのはどれか。

  1. a.上白糖
  2. b.食パン
  3. c.チーズ
  4. d.バター
  5. e.バナナ

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、身近な食品の中でカリウムが一番多いものを選ぶ問題だ。栄養学の暗記問題に見えるけれど、カリウムが体のどこに多いかという生理学の知識から考えれば、ちゃんと答えにたどり着けるよ。
医学生医学生
カリウムは細胞内液に一番多い陽イオンでしたよね。生理学の講義で、細胞内はK、細胞外はNaと習いました。
ドクタードクター
その通り。体内のカリウムの約98%は細胞内にある。動植物の細胞も同じで、細胞の成分をそのまま食べる食品、つまり果物や野菜、いも類、豆類、海藻、きのこなどにはカリウムが多い。逆に、精製や加工で細胞の成分が取り除かれた食品には少ないんだ。
医学生医学生
そう考えると、果物のバナナが一番多そうですね。でも、チーズも乳製品でミネラルが豊富なイメージがあって迷いました。
ドクタードクター
いい迷いだね。チーズは牛乳を固めて、乳清、つまりホエイという水分を除いて作る。カリウムは水溶性だから、その多くはホエイ側に移ってしまうんだ。プロセスチーズで100gあたり約60mg程度で、実はそれほど多くない。むしろチーズはリンやナトリウムが多い食品として覚えておきたい。
医学生医学生
ミネラル豊富というのはカルシウムやリンのことだったんですね。バターも乳製品ですが、こちらはどうですか。
ドクタードクター
バターは乳脂肪を集めたもので、約8割が脂質だ。水に溶けるカリウムはほとんど含まれず、100gあたり約30mg程度。上白糖はもっと極端で、サトウキビやテンサイの汁からショ糖以外をほぼ取り除いて精製しているから、100gあたり約2mgとほぼゼロに近い。
医学生医学生
砂糖でも、黒砂糖なら話が変わりそうですね。
ドクタードクター
その通り。精製度の低い黒砂糖は100gあたり1,000mgを超えるカリウムを含む。精製すると減る、という原則がよく分かる例だね。食パンも、胚芽やふすまを除いた精製小麦粉が主原料だから、100gあたり約90〜100mg程度。選択肢の中ではバナナに次ぐけれど、バナナの3分の1にも届かない。
医学生医学生
そしてバナナは約360mgで、群を抜いて多いということですね。
ドクタードクター
そう、正解はバナナだ。果物の中でもカリウムが多い部類で、メロンやキウイフルーツ、アボカドも多い。ドライフルーツになると水分が抜けて濃縮されるから、さらに多くなる。
医学生医学生
腎臓内科を回ったとき、透析の患者さんが「果物は控えるように言われている」と話していました。
ドクタードクター
まさにこの知識が生きる場面だ。カリウムの排泄は約90%が腎臓から行われるから、慢性腎臓病が進むと排泄が追いつかず高カリウム血症になりやすい。高カリウム血症は致死的不整脈の原因にもなるので、ステージG3b以降ではカリウム摂取制限が考慮され、目安としてG3bで1日2,000mg以下、G4〜G5で1,500mg以下、血液透析患者では2,000mg以下とされる。実際には血清カリウム値を見ながら個別に調整するよ。
医学生医学生
でも、野菜を全部やめるのは栄養的に難しそうです。何か工夫はあるんですか。
ドクタードクター
カリウムが水溶性であることを利用するんだ。野菜やいも類は小さく切って水にさらしたり、ゆでこぼしたりすると、カリウムを減らせる。果物の缶詰も、シロップに溶け出しているから果肉だけを食べれば生の果物より摂取量を抑えられる。管理栄養士と一緒に指導することが多いね。
医学生医学生
逆に、カリウムが足りなくなる患者さんもいますよね。
ドクタードクター
そう、ループ利尿薬やサイアザイド系利尿薬を使っている人、嘔吐や下痢が続く人は低カリウム血症になりやすい。そういうときは果物や野菜を勧める。同じ知識が、制限にも補充にも使えるわけだ。
医学生医学生
「細胞をそのまま食べるものに多く、精製したものや脂肪・乳清を分けたものには少ない」と覚えれば、知らない食品でも推測できそうです。

まとめ

カリウムは細胞内液に最も多い陽イオンであり、細胞成分をそのまま含む果物・野菜・いも類・豆類・海藻などに多く、精製された砂糖、脂質主体のバター、乳清を除いたチーズ、精製小麦粉から作る食パンには少ないため、選択肢の中ではバナナ(100gあたり約360mg)が最も多くなります。腎臓はカリウム排泄の大部分を担うため、進行した慢性腎臓病や透析患者では高カリウム血症の予防としてカリウム摂取制限が考慮され、水さらしやゆでこぼしなど水溶性を利用した調理の工夫が指導されます。一方、利尿薬使用中や嘔吐・下痢による低カリウム血症では、果物や野菜による補充が勧められます。カリウムの体内分布という生理学の原則から食品の含有量を推測できるようにしておくと、腎臓病や電解質異常の患者への食事指導に直結します。

解答・解説

正解はeです

カリウム(K)は細胞内液に最も多く含まれる陽イオンであり、動植物の細胞に豊富に存在する。したがって、細胞成分をそのまま多く含む食品、特に果物・野菜・いも類・豆類・海藻・きのこなどの植物性食品はカリウムが多い。一方、精製によって細胞成分が取り除かれた食品(砂糖、油脂など)や、加工の過程で水分や細胞成分が失われた食品はカリウムが少ない。 選択肢を可食部100gあたりで比較すると(日本食品標準成分表に基づくおおよその値)、上白糖は約2mg、食パンは約90〜100mg、チーズ(プロセスチーズ)は約60mg、バター(有塩)は約30mg、バナナは約360mgであり、果物であるバナナが最も多い。 この知識は、腎不全(特に慢性腎臓病の進行例や透析患者)で高カリウム血症を防ぐための食事指導や、利尿薬使用中の低カリウム血症に対する食事での補充指導の場面で重要となる。

選択肢考察

  1. ×a.  上白糖

    上白糖はサトウキビやテンサイの汁から、ショ糖以外の成分をほぼ取り除いて精製したものであり、ミネラルはほとんど残っていない。カリウムは100gあたり約2mgと極めて少ない。なお、精製度の低い黒砂糖はカリウムを多く含む(100gあたり1,000mg超)点が対照的である。

  2. ×b.  食パン

    食パンの主原料である小麦粉は、胚芽やふすま(外皮)を除いて精製されているため、ミネラルが比較的少ない。カリウムは100gあたり約90〜100mg程度で、選択肢の中ではバナナに次いで多いが、バナナの3分の1にも満たない。

  3. ×c.  チーズ

    チーズは牛乳を凝固させて水分(ホエイ、乳清)を除いて作る。カリウムは水溶性であり、その多くはホエイ側に移るため、チーズ自体のカリウム含有量は多くない。プロセスチーズで100gあたり約60mg程度である(種類によって差があり、カマンベールなどではやや多い)。一方でリンやナトリウムは多く、腎臓病の食事指導ではリン制限の観点から注意が必要な食品である。

  4. ×d.  バター

    バターは牛乳の乳脂肪を集めた食品で、成分の大部分(約80%)が脂質である。水溶性のカリウムはほとんど含まれず、100gあたり約30mg程度と少ない。

  5. ○e.  バナナ

    バナナは果肉の細胞成分をそのまま食べる果物であり、100gあたり約360mgのカリウムを含む。これは選択肢の中で群を抜いて多い。果物の中でもカリウムが多い部類に入り(メロン、キウイフルーツなども多い)、ドライフルーツでは水分が抜けて濃縮されるため、さらに多くなる。高カリウム血症のリスクがある患者では摂取を控えるよう指導する代表的な食品である。

カリウムの多い食品・少ない食品

・多い食品:果物(バナナ、メロン、キウイフルーツ、アボカド、ドライフルーツ)、野菜(ほうれんそう、かぼちゃ、トマトなど)、いも類(じゃがいも、さといも、さつまいも)、豆類(大豆、納豆)、海藻(昆布、ひじき)、きのこ、ナッツ類、生肉・生魚、黒砂糖、コーヒー・玉露など。 ・少ない食品:精製された砂糖、油脂類(バター、植物油)、精白米、パン、うどんなどの精製穀類。

カリウム制限の食事指導

カリウムは水溶性であるため、野菜やいも類は小さく切って水にさらしたり、ゆでこぼしたりすることで含有量を減らすことができる。缶詰の果物はシロップにカリウムが溶け出しているため、果肉だけを食べれば生の果物より摂取量を抑えられる。 慢性腎臓病(CKD)では、ステージが進むとカリウム排泄能が低下し高カリウム血症となりやすい。CKD診療ガイドラインでは、G3b以降でカリウム摂取制限(G3bで2,000mg/日以下、G4〜G5で1,500mg/日以下が目安)が考慮され、血清カリウム値を見ながら調整する。血液透析患者では2,000mg/日以下が目安とされる。

カリウム補充の食事指導

ループ利尿薬やサイアザイド系利尿薬の使用中、嘔吐・下痢などで低カリウム血症になりやすい患者には、果物や野菜の摂取を勧める。

体内のカリウム

体内のカリウムの約98%は細胞内に存在し、血清カリウムの基準値は約3.5〜5.0mEq/Lである。排泄の大部分(約90%)は腎臓から行われる。

POINT

・カリウムは細胞内に多いため、細胞成分をそのまま含む果物・野菜・いも類・豆類・海藻に多い。 ・精製された砂糖や油脂(バター)、乳清を除いたチーズ、精製穀類(パン)には少ない。 ・バナナは100gあたり約360mgと多く、高カリウム血症の患者では制限の対象となる代表的食品である。 ・カリウムは水溶性であり、水さらしやゆでこぼしで減らすことができる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。