バナナが選ばれる理由―「細胞を食べる」と考えればカリウムの多い食品が見えてくる
第107回医師国家試験 G問題 第27問
国試問題にチャレンジ
単位重量あたりのカリウム含有量が最も多いのはどれか。
- a.上白糖
- b.食パン
- c.チーズ
- d.バター
- e.バナナ
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生まとめ
カリウムは細胞内液に最も多い陽イオンであり、細胞成分をそのまま含む果物・野菜・いも類・豆類・海藻などに多く、精製された砂糖、脂質主体のバター、乳清を除いたチーズ、精製小麦粉から作る食パンには少ないため、選択肢の中ではバナナ(100gあたり約360mg)が最も多くなります。腎臓はカリウム排泄の大部分を担うため、進行した慢性腎臓病や透析患者では高カリウム血症の予防としてカリウム摂取制限が考慮され、水さらしやゆでこぼしなど水溶性を利用した調理の工夫が指導されます。一方、利尿薬使用中や嘔吐・下痢による低カリウム血症では、果物や野菜による補充が勧められます。カリウムの体内分布という生理学の原則から食品の含有量を推測できるようにしておくと、腎臓病や電解質異常の患者への食事指導に直結します。
解答・解説
正解はeです
カリウム(K)は細胞内液に最も多く含まれる陽イオンであり、動植物の細胞に豊富に存在する。したがって、細胞成分をそのまま多く含む食品、特に果物・野菜・いも類・豆類・海藻・きのこなどの植物性食品はカリウムが多い。一方、精製によって細胞成分が取り除かれた食品(砂糖、油脂など)や、加工の過程で水分や細胞成分が失われた食品はカリウムが少ない。 選択肢を可食部100gあたりで比較すると(日本食品標準成分表に基づくおおよその値)、上白糖は約2mg、食パンは約90〜100mg、チーズ(プロセスチーズ)は約60mg、バター(有塩)は約30mg、バナナは約360mgであり、果物であるバナナが最も多い。 この知識は、腎不全(特に慢性腎臓病の進行例や透析患者)で高カリウム血症を防ぐための食事指導や、利尿薬使用中の低カリウム血症に対する食事での補充指導の場面で重要となる。
選択肢考察
- ×a. 上白糖
上白糖はサトウキビやテンサイの汁から、ショ糖以外の成分をほぼ取り除いて精製したものであり、ミネラルはほとんど残っていない。カリウムは100gあたり約2mgと極めて少ない。なお、精製度の低い黒砂糖はカリウムを多く含む(100gあたり1,000mg超)点が対照的である。
- ×b. 食パン
食パンの主原料である小麦粉は、胚芽やふすま(外皮)を除いて精製されているため、ミネラルが比較的少ない。カリウムは100gあたり約90〜100mg程度で、選択肢の中ではバナナに次いで多いが、バナナの3分の1にも満たない。
- ×c. チーズ
チーズは牛乳を凝固させて水分(ホエイ、乳清)を除いて作る。カリウムは水溶性であり、その多くはホエイ側に移るため、チーズ自体のカリウム含有量は多くない。プロセスチーズで100gあたり約60mg程度である(種類によって差があり、カマンベールなどではやや多い)。一方でリンやナトリウムは多く、腎臓病の食事指導ではリン制限の観点から注意が必要な食品である。
- ×d. バター
バターは牛乳の乳脂肪を集めた食品で、成分の大部分(約80%)が脂質である。水溶性のカリウムはほとんど含まれず、100gあたり約30mg程度と少ない。
- ○e. バナナ
バナナは果肉の細胞成分をそのまま食べる果物であり、100gあたり約360mgのカリウムを含む。これは選択肢の中で群を抜いて多い。果物の中でもカリウムが多い部類に入り(メロン、キウイフルーツなども多い)、ドライフルーツでは水分が抜けて濃縮されるため、さらに多くなる。高カリウム血症のリスクがある患者では摂取を控えるよう指導する代表的な食品である。
カリウムの多い食品・少ない食品
・多い食品:果物(バナナ、メロン、キウイフルーツ、アボカド、ドライフルーツ)、野菜(ほうれんそう、かぼちゃ、トマトなど)、いも類(じゃがいも、さといも、さつまいも)、豆類(大豆、納豆)、海藻(昆布、ひじき)、きのこ、ナッツ類、生肉・生魚、黒砂糖、コーヒー・玉露など。 ・少ない食品:精製された砂糖、油脂類(バター、植物油)、精白米、パン、うどんなどの精製穀類。
カリウム制限の食事指導
カリウムは水溶性であるため、野菜やいも類は小さく切って水にさらしたり、ゆでこぼしたりすることで含有量を減らすことができる。缶詰の果物はシロップにカリウムが溶け出しているため、果肉だけを食べれば生の果物より摂取量を抑えられる。 慢性腎臓病(CKD)では、ステージが進むとカリウム排泄能が低下し高カリウム血症となりやすい。CKD診療ガイドラインでは、G3b以降でカリウム摂取制限(G3bで2,000mg/日以下、G4〜G5で1,500mg/日以下が目安)が考慮され、血清カリウム値を見ながら調整する。血液透析患者では2,000mg/日以下が目安とされる。
カリウム補充の食事指導
ループ利尿薬やサイアザイド系利尿薬の使用中、嘔吐・下痢などで低カリウム血症になりやすい患者には、果物や野菜の摂取を勧める。
体内のカリウム
体内のカリウムの約98%は細胞内に存在し、血清カリウムの基準値は約3.5〜5.0mEq/Lである。排泄の大部分(約90%)は腎臓から行われる。
POINT
・カリウムは細胞内に多いため、細胞成分をそのまま含む果物・野菜・いも類・豆類・海藻に多い。 ・精製された砂糖や油脂(バター)、乳清を除いたチーズ、精製穀類(パン)には少ない。 ・バナナは100gあたり約360mgと多く、高カリウム血症の患者では制限の対象となる代表的食品である。 ・カリウムは水溶性であり、水さらしやゆでこぼしで減らすことができる。
