StudyMed医師国家試験

35歳で「約300人に1人」―母体年齢とDown症候群の数字を機序から覚える

第107回医師国家試験 E問題 第18問

国試問題にチャレンジ

第107回 E問題 第18問

35歳の女性から21 trisomyの児が出生する確率に最も近いのはどれか。

  1. a.1/10
  2. b.1/300
  3. c.1/1,000
  4. d.1/3,000
  5. e.1/10,000

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、母体年齢と21トリソミー(Down症候群)の出生頻度の関係を問う問題だ。数字の暗記問題に見えるけれど、なぜ年齢とともに頻度が上がるのかという機序と、代表的な年齢の目安をセットで押さえておくと迷わなくなるよ。まず、35歳という年齢にはどんな印象があるかな。
医学生医学生
産婦人科の講義で「35歳以上は高年妊娠」と習いました。リスクが上がる境目、というイメージです。
ドクタードクター
その通り。では、その35歳で21トリソミー児が生まれる確率はどのくらいだと思う?
医学生医学生
全出生で約1/1,000と覚えていたので、35歳でもそれくらいかなと思ってしまいました。
ドクタードクター
そこがよくある引っかけだね。1/1,000前後というのは、母体年齢を問わず全出生児でみたときのおおよその頻度で、年齢別にみると30歳前後に相当する。35歳ではそれより約3倍高く、約1/300というのが試験上の目安だ。資料によっては1/350〜1/400とするものもあるけれど、選択肢の中で最も近いのは1/300になる。
医学生医学生
そもそも、なぜ母親の年齢でそんなに変わるんでしょうか。
ドクタードクター
いい質問だ。21トリソミーの約95%は標準型で、その大部分は母親の卵子ができる過程での染色体不分離、とくに第一減数分裂での不分離が原因なんだ。卵母細胞は胎児期に第一減数分裂の前期で止まったまま、排卵まで何十年も待機している。待機期間が長いほど不分離が起こりやすくなると考えられている。
医学生医学生
発生学で習った「卵母細胞は出生前から減数分裂を止めて待っている」という話が、ここにつながるんですね。精子とは違って作り直しがきかない。
ドクタードクター
そういうこと。では年齢ごとの目安を整理しよう。20歳で約1/1,500、30歳で約1/900、35歳で約1/300、40歳で約1/100、45歳で約1/30。30代後半から急に立ち上がるカーブだ。
医学生医学生
そうすると1/10はかなり高すぎますね。45歳でも1/30なので。
ドクタードクター
そう、1/10前後になるのは40代後半になってからだ。逆に1/3,000や1/10,000は、最もリスクの低い20歳前後でも約1/1,500だから、どの年齢にも当てはまらない。1/10,000はむしろまれな疾患の頻度の水準だね。
医学生医学生
35歳1/300、40歳1/100、全体で1/1,000、と三つの数字を軸にすれば、ほかの選択肢は自然に外せますね。
ドクタードクター
その覚え方で十分だ。ここで一つ補足しておくと、こうした数値は「出生時」の頻度か「妊娠中期」の頻度かで少し異なる。妊娠中期の数字は、その後の自然流産や死産の分を含むので、出生時よりやや高くなるんだ。
医学生医学生
転座型のDown症候群も母体年齢と関係するんですか。
ドクタードクター
転座型は約3〜4%で、多くは21番と13・14・15・21・22番などの端部着糸型染色体が融合したRobertson転座による。こちらは母体年齢との相関は乏しく、親が均衡型転座保因者のことがある。次の子での再発率が高くなりうるから、両親の染色体検査が勧められるんだ。モザイク型は1〜2%で、症状が軽いこともある。
医学生医学生
小児科の実習で、Down症候群の赤ちゃんが心エコーで房室中隔欠損を指摘されていました。
ドクタードクター
先天性心疾患は約40〜50%に合併し、房室中隔欠損や心室中隔欠損が代表的だ。ほかにも十二指腸閉鎖やHirschsprung病、甲状腺機能低下症、一過性骨髄異常増殖症や白血病、環軸椎不安定性など、成長に沿ってフォローすべき合併症が多い。臨床でもう一つ大切なのが出生前検査の扱いだ。NT計測や母体血清マーカー、NIPTは非確定的検査で、羊水検査や絨毛検査が確定的検査になる。確定的検査には流産のリスクがあるから、検査の前後には十分な遺伝カウンセリングを行い、妊婦さんとパートナーの自己決定を尊重することが欠かせないよ。
医学生医学生
数字を知っておくのは、患者さんに正確な情報を伝えるためでもあるんですね。
ドクタードクター
その通り。リスクを過大にも過小にも伝えないために、根拠のある数字を自分の言葉で説明できるようにしておこう。

まとめ

21トリソミー(Down症候群)の約95%は標準型で、主に母親の卵子形成における減数分裂時の染色体不分離によって生じるため、出生頻度は母体年齢とともに上昇します。目安は20歳で約1/1,500、30歳で約1/900、35歳で約1/300、40歳で約1/100、45歳で約1/30で、全出生児では約1/700〜1/1,000です。一方、転座型は母体年齢と関係が乏しく、親が均衡型転座保因者である可能性から両親の染色体検査が勧められます。出生前検査には非確定的検査と確定的検査があり、いずれも前後の遺伝カウンセリングが必須です。代表的な数字を機序とともに理解しておくことは、試験対策だけでなく、妊婦さんへの正確で中立的な情報提供の土台になります。

解答・解説

正解はbです

21トリソミー(Down症候群)は、21番染色体が3本存在することによって生じる、出生児で最も頻度の高い常染色体異数性である。原因の約95%は標準型トリソミーで、その大部分は母親の卵子形成過程における減数分裂時の染色体不分離(とくに第一減数分裂での不分離)によって生じる。卵母細胞は胎生期に第一減数分裂の前期で停止したまま排卵まで長期間保持されるため、母体年齢が高くなるほど不分離が起こりやすくなり、21トリソミー児の出生頻度は母体年齢とともに増加する。 出生時の頻度の目安は、母体年齢20歳で約1/1,500、25歳で約1/1,200、30歳で約1/900、35歳で約1/300〜1/400、40歳で約1/100、45歳で約1/30である。30歳代後半から急峻に上昇するのが特徴である。したがって35歳の女性から21トリソミー児が出生する確率として最も近いのは1/300である。 なお、年齢の数値は「出生時」の頻度か「妊娠中期(羊水検査時期)」の頻度かで異なる。妊娠中期の頻度は、その後の自然流産・死産の分が含まれるため出生時よりやや高い。国家試験では「35歳で約1/300、40歳で約1/100、全体で約1/1,000」という数値を押さえておけばよい。

選択肢考察

  1. ×a.  1/10

    1/10は高すぎる。母体年齢45歳でも約1/30であり、1/10前後となるのは母体年齢が40歳代後半(約49歳)に達したときである。35歳女性の確率とはかけ離れている。

  2. ○b.  1/300

    35歳の女性が21トリソミー児を出産する確率は約1/300(資料により1/350〜1/400程度)とされ、選択肢の中で最も近い。母体年齢35歳以上が「高年妊娠」と呼ばれ、出生前検査について情報提供を行う目安とされてきたのは、この年齢でリスクが明らかに上昇し始めるためである。

  3. ×c.  1/1,000

    1/1,000は、母体年齢を問わず全出生児を対象としたときの21トリソミーのおおよその頻度(約1/700〜1/1,000)である。母体年齢別にみると、1/1,000前後は30歳前後の女性に相当する。35歳女性ではこれより約3倍高い。

  4. ×d.  1/3,000

    1/3,000は低すぎる。最もリスクの低い20歳前後の若年女性でも約1/1,500であり、どの年齢層にも該当しない。

  5. ×e.  1/10,000

    1/10,000はさらに低く、21トリソミーの頻度としては該当する年齢層がない。これはむしろまれな疾患の頻度の水準である。

21トリソミー(Down症候群)の核型

・標準型トリソミー(47,XX/XY,+21):約95%。母体年齢と相関する。 ・転座型:約3〜4%。多くはRobertson転座(21番染色体と13・14・15・21・22番などの端部着糸型染色体の融合)による。親が均衡型転座保因者のことがあり、次子の再発率が高くなるため、両親の染色体検査が勧められる。母体年齢との相関は乏しい。 ・モザイク型:約1〜2%。正常細胞と21トリソミー細胞が混在し、症状が軽いことがある。

主な臨床像

特徴的顔貌(眼瞼裂斜上、内眼角贅皮、鼻根部平坦、舌の突出)、筋緊張低下、知的障害、単一手掌屈曲線(猿線)、先天性心疾患(約40〜50%。房室中隔欠損症、心室中隔欠損症など)、消化管奇形(十二指腸閉鎖、Hirschsprung病)、甲状腺機能低下症、白血病(一過性骨髄異常増殖症、急性巨核芽球性白血病、急性リンパ性白血病)、環軸椎不安定性、早期のAlzheimer病様変化など。

出生前検査と遺伝カウンセリング

・非確定的検査:母体血清マーカー検査、胎児超音波検査(後頸部浮腫〈NT〉の計測など)、母体血を用いた非侵襲性出生前遺伝学的検査(NIPT)。 ・確定的検査:羊水検査(妊娠15〜16週以降)、絨毛検査(妊娠11〜14週ごろ)。流産などのリスクを伴う。羊水検査に伴う流産率はかつて約1/200〜1/300(0.3〜0.5%)とされ、35歳女性の21トリソミー児出生確率とほぼ同じであることが、35歳を検査提示の目安とする根拠の一つとされた。近年の報告では0.1〜0.3%程度とより低く見積もられている。 ・いずれの検査も、実施前後に十分な遺伝カウンセリングを行い、妊婦とパートナーの自己決定を尊重することが必須である。

POINT

・21トリソミー児の出生頻度は母体年齢とともに上昇する(主に卵子の減数分裂時の不分離による)。 ・母体年齢別の目安:20歳約1/1,500、30歳約1/900、35歳約1/300、40歳約1/100、45歳約1/30。 ・全出生児では約1/700〜1/1,000。 ・転座型は母体年齢と関係せず、親の保因者検索が必要。 ・出生前検査の前後には遺伝カウンセリングが必須。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。