StudyMed医師国家試験

紫斑の血管壁に光るのは何か―名前に答えが書いてあるIgA血管炎

第107回医師国家試験 D問題 第10問

国試問題にチャレンジ

第107回 D問題 第10問

IgA血管炎〈Schönlein-Henoch紫斑病〉〈アナフィラクトイド紫斑病〉の皮疹の生検を行った。  この生検組織で真皮上層の血管壁に沈着するのはどれか。

  1. a.IgA
  2. b.IgD
  3. c.IgE
  4. d.IgG
  5. e.IgM

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、IgA血管炎の皮疹を生検したとき、血管壁に何が沈着しているかを問う問題だ。疾患名にほぼ答えが入っているけれど、なぜそうなるのか、どうやって確かめるのかまで理解しておくと、周辺の問題にも強くなる。まずは旧名を見て、どんな印象を受けるかな。
医学生医学生
アナフィラクトイド紫斑病という名前から、アナフィラキシーのようなアレルギー、つまりIgEが関係していそうに思えてしまいます。
ドクタードクター
そう連想する人は多いんだ。でも本態はⅠ型の即時型アレルギーではなく、Ⅲ型、つまり免疫複合体型の血管炎なんだ。2012年のChapel Hill分類で、病態の中心である「IgAを主体とする免疫沈着」を反映してIgA血管炎という名前に改められた。
医学生医学生
ということは、血管壁に沈着しているのはIgAですか。
ドクタードクター
正解。糖鎖異常をもつIgA1、具体的にはガラクトースが欠損したIgA1を含む免疫複合体が、皮膚や腸管、腎糸球体の小血管壁に沈着する。そこで補体が活性化され、好中球が集まって血管炎が起こるんだ。
医学生医学生
病理実習で、白血球破砕性血管炎という言葉を習いました。それがこの組織像ですか。
ドクタードクター
その通り。真皮上層の小血管を中心に、血管壁のフィブリノイド変性、血管周囲の好中球浸潤と核破片、つまり核塵、そして赤血球の漏出がみられる。ただ、白血球破砕性血管炎という像自体はほかの血管炎でもみられるから、それだけでは確定できない。
医学生医学生
では、どうやってIgA血管炎だと決めるんでしょうか。
ドクタードクター
蛍光抗体直接法を使う。患者さんの組織に蛍光標識した抗体を反応させて、沈着物を光らせる方法だ。IgA血管炎では血管壁に顆粒状のIgA沈着が証明され、C3を伴うことが多い。これが診断の決め手になる。ほかの免疫グロブリンも確認しておこう。IgGはどうかな。
医学生医学生
IgGは多くの免疫複合体疾患で沈着しますよね。ループス腎炎とか。
ドクタードクター
そうだね。クリオグロブリン血症性血管炎やループス腎炎、低補体血症性蕁麻疹様血管炎などでIgGの沈着がみられる。だからIgGが優位なら、ほかの血管炎や膠原病を考えることになる。IgMはどうだろう。
医学生医学生
IgMというと、C型肝炎に関連したクリオグロブリン血症でリウマトイド因子活性をもつIgMが出てくるイメージです。
ドクタードクター
よく覚えているね。IgMはそうした場面で問題になるけれど、IgA血管炎の特徴的な沈着物ではない。IgDは主に未熟なB細胞の表面に抗原受容体として発現していて、血中濃度も低く、この病気の沈着には関与しない。IgEは先ほど話した通り、肥満細胞や好塩基球に結合してⅠ型アレルギーを担うもので、血管壁に沈着するわけではない。
医学生医学生
旧名に引きずられず、病態の型で考えることが大事なんですね。
ドクタードクター
その通り。ここからは臨床像も押さえておこう。小児、特に3〜10歳頃に多く、上気道感染の後に発症することが多い。症状は下肢や臀部を中心とした触知可能な紫斑、関節痛、腹痛、そして腎炎だ。
医学生医学生
小児科の実習で、紫斑があるのに血小板数が正常で、最初は血小板減少性紫斑病との鑑別が問題になった子を見ました。
ドクタードクター
いい経験だね。血小板数も凝固系も正常で、血管の炎症で出血するから触れる紫斑になるんだ。腹痛は腸管の浮腫や出血によるもので、腸重積を合併することもあるから注意が必要だ。第XIII因子活性が低下することがあり、腹痛が強い例では補充が行われることもある。
医学生医学生
腎炎はIgA腎症と似ているんですか。
ドクタードクター
そう、紫斑病性腎炎では腎糸球体のメサンギウム領域にIgAが沈着していて、IgA腎症とよく似た像を示す。多くは数週間で自然に軽快するけれど、長期予後は腎炎の有無と重症度に左右される。だから紫斑が消えても、しばらく尿検査で血尿や蛋白尿をフォローすることが大切なんだ。

まとめ

IgA血管炎(Schönlein-Henoch紫斑病)は、糖鎖異常IgA1を含む免疫複合体が小血管壁に沈着するⅢ型アレルギー性の小型血管炎で、皮疹の生検では真皮上層の小血管に白血球破砕性血管炎を認め、蛍光抗体直接法で血管壁にIgA(しばしばC3を伴う)の沈着が証明されます。旧名のアナフィラクトイド紫斑病からIgEを連想しがちですが、即時型アレルギーとは無関係であり、IgG優位の沈着ならループスやクリオグロブリン血症性血管炎など他疾患を考えます。臨床的には小児の上気道感染後に多く、血小板数正常の触知可能な紫斑、関節症状、腹痛(腸重積に注意)、腎炎を呈し、腎ではIgA腎症に類似したメサンギウムへのIgA沈着がみられます。多くは自然軽快しますが予後は腎炎に左右されるため、疾患名の由来となった病態を理解したうえで、尿所見の経過観察まで意識しておくことが重要です。

解答・解説

正解はaです

IgA血管炎は、かつてSchönlein-Henoch紫斑病やアナフィラクトイド紫斑病と呼ばれていた小血管炎である。2012年の国際会議(Chapel Hill Consensus Conference)で、病態の本質である「IgAを主体とする免疫沈着」を反映したIgA血管炎という名称に改められた。 病態の中心は、糖鎖異常をもつIgA1(ガラクトース欠損IgA1)を含む免疫複合体が、皮膚・腸管・腎糸球体などの小血管壁に沈着し、補体の活性化と好中球の集積を介して血管炎を起こすことである。 皮疹(下肢を中心とする隆起を伴う紫斑、触知可能な紫斑)の生検では、真皮上層(乳頭下層)の小血管を主座とする白血球破砕性血管炎がみられる。蛍光抗体直接法(患者の組織に蛍光標識した抗体を反応させて沈着物を検出する方法)で、この血管壁にIgA(しばしばC3を伴う)の沈着が証明されることが診断の決め手となる。設問ではこの沈着する免疫グロブリンの種類が問われている。

選択肢考察

  1. ○a.  IgA

    IgA血管炎では、IgA1を主体とする免疫複合体が真皮上層の小血管壁に沈着する。蛍光抗体直接法で血管壁に顆粒状のIgA沈着(C3を伴うことが多い)を認めることが本症の特徴であり、疾患名の由来でもある。紫斑病性腎炎を合併した場合も、腎糸球体のメサンギウム領域にIgAの沈着がみられる。

  2. ×b.  IgD

    IgDは主に未熟なB細胞の表面に抗原受容体として発現する免疫グロブリンで、血中濃度は低い。IgA血管炎の血管壁沈着には関与しない。

  3. ×c.  IgE

    IgEは肥満細胞や好塩基球に結合してⅠ型アレルギー(即時型過敏反応)を担う。IgA血管炎はアナフィラクトイド紫斑病という旧名から即時型アレルギーを連想しやすいが、本態はⅢ型アレルギー(免疫複合体型)による血管炎であり、IgEが血管壁に沈着するわけではない。

  4. ×d.  IgG

    IgGは多くの免疫複合体性血管炎(例: クリオグロブリン血症性血管炎、ループス腎炎、低補体血症性蕁麻疹様血管炎など)で沈着がみられるが、IgA血管炎で主体となる沈着物ではない。IgGの沈着が優位であれば、他の血管炎や膠原病を考える。

  5. ×e.  IgM

    IgMはクリオグロブリン血症(特にC型肝炎ウイルス関連の混合型クリオグロブリン血症ではリウマトイド因子活性をもつIgM)などで沈着が問題となるが、IgA血管炎の特徴的な沈着物ではない。

IgA血管炎の概要

・好発: 小児(特に3〜10歳頃)に多いが成人にも起こる。上気道感染の後に発症することが多い。 ・主な症状: 下肢・臀部を中心とした触知可能な紫斑(血小板数は正常)、関節痛・関節炎、腹痛(腸管の浮腫・出血、腸重積の合併もある)、腎炎(紫斑病性腎炎)。 ・検査: 血小板数・凝固系は正常。血清IgAが上昇することがある。第XIII因子活性が低下することがあり、腹痛が強い例では補充が行われる。 ・病理: 真皮上層の小血管に白血球破砕性血管炎(血管壁のフィブリノイド変性、血管周囲の好中球浸潤と核破片〈核塵〉、赤血球の漏出)。蛍光抗体直接法で血管壁にIgA沈着。 ・予後: 多くは数週間で自然軽快するが、長期予後は腎炎の有無と重症度に左右される。腎病変はIgA腎症と類似し、メサンギウムへのIgA沈着を認める。

血管炎の分類(Chapel Hill 2012)における位置づけ

小型血管炎は、ANCA関連血管炎(顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)と免疫複合体性小型血管炎に分けられ、IgA血管炎は後者に属する。同じ免疫複合体性小型血管炎には、抗GBM病、クリオグロブリン血症性血管炎、低補体血症性蕁麻疹様血管炎(抗C1q血管炎)がある。

POINT

・IgA血管炎(Schönlein-Henoch紫斑病)では、真皮上層の小血管壁にIgA(とC3)が沈着する。 ・組織像は白血球破砕性血管炎。 ・紫斑(血小板正常)・関節症状・腹痛・腎炎が主症状で、腎ではメサンギウムにIgA沈着を認める。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。