□と○で描く患者の背景―問診を家系図に落とし込む5つのチェックポイント
第107回医師国家試験 C問題 第19問
国試問題にチャレンジ
49歳の男性。病期Ⅳの大腸癌で抗癌化学療法のため入院した。以下のように家族に関する情報を得た。 「既婚です」 「子供が3人おり,上から男,男,女です」 「長男は遠方で就職しており,私は妻と下の2人の子供と同居しています」 「父は胃癌で72歳のときに亡くなりました」 「母は脳卒中で60歳のときに亡くなりました」 「4人の兄弟姉妹で上から兄,姉,私,弟です」 家系図(①~⑤)を別に示す。 家系図で適切なのはどれか。

- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
家系図では男性を□、女性を○、死亡者を斜線、患者本人を矢印で示し、夫婦は横線で結んで慣例として夫を左に、きょうだいや子どもは左から出生順に並べます。問診内容を描くときは、本人の性別、両親の死因と死亡時年齢の対応、同胞と子どもの並び順、同居者の範囲を一つずつ照合することが大切で、本問では死因が入れ替わった図や同居枠がずれた図を見抜けるかが鍵となります。家系図は大腸癌における家族性大腸腺腫症やリンチ症候群などの遺伝的素因を評価する手がかりになるだけでなく、同居者やキーパーソンといった療養支援に必要な家族背景を一目で示してくれます。正確な家系図を描く力は、遺伝診療から緩和ケア・在宅医療の計画まで、患者さんを全人的に理解するための基本技術です。
解答・解説
正解はdです
家系図を読み解く手順
問診で得た家族情報を、家系図の約束事に従って図に置き換え、各選択肢と照合する。凡例では、矢印付きの記号が発端者(本問では患者本人を示す)、斜線付きの記号が死亡者、点線の枠が同居者を表している。
家系図の基本ルール
・男性は□、女性は○で表す。 ・死亡者は記号に斜線を引く。死因や死亡時年齢は記号の近くに書き添える。 ・夫婦は横線で結び、慣例として男性(夫)を左、女性(妻)を右に置く。 ・夫婦の横線から縦線を下ろし、子ども(同胞:同じ親から生まれたきょうだい)を横に並べる。同胞は左から出生順(年長者が左)に並べる。 ・患者本人は矢印で示す。
問診情報を図にすると
1.本人:49歳男性 → 矢印付きの□。 2.両親:父(□)は胃癌で72歳で死亡、母(○)は脳卒中で60歳で死亡 → どちらも斜線付き。父を左、母を右に置き、父の横に「胃癌 72歳」、母の横に「脳卒中 60歳」と記す。 3.同胞:上から兄・姉・本人・弟 → 左から□、○、□(本人・矢印)、□。 4.配偶者:既婚 → 本人の□の右に妻の○を置き、横線で結ぶ。 5.子ども:上から男・男・女 → 左から□、□、○。 6.同居者:本人、妻、次男、長女(長男は遠方で就職して別居)→ この4人を点線で囲み、長男の□は枠の外に出す。 これらの条件をすべて満たすかを、性別・親の死因と年齢・同胞と子どもの並び順・同居者の範囲の順に確認していくと、該当するのは④のみである。
選択肢考察
- ×a. ①
矢印で示された本人が○(女性)として描かれており、本人が男性であることと合わない。また子どもが左から○、□、□(女、男、男)の順になっており、出生順(男、男、女)とも異なる。同胞も□、○(本人)、○、□となっていて、「兄、姉、本人、弟」の並びと一致しない。誤りである。
- ×b. ②
本人の性別、同胞の並び(□、○、□本人、□)、子どもの並び(□、□、○)、同居者の範囲(本人・妻・次男・長女)は正しい。しかし父(□)の横に「脳卒中 72歳」、母(○)の横に「胃癌 60歳」と書かれ、死因の対応が逆になっている。実際は父が胃癌で72歳、母が脳卒中で60歳で死亡しており、誤りである。
- ×c. ③
本人が○(女性)で描かれている点がまず誤りである。さらに両親の位置が母(○)左・父(□)右となっており、死因・年齢も母が胃癌72歳、父が脳卒中60歳と逆である。同胞(○、□、○本人、○)や子ども(○、○、□)の性別・並びも問診内容と一致しない。誤りである。
- ○d. ④
父は□に斜線で「胃癌 72歳」、母は○に斜線で「脳卒中 60歳」と正しく記載されている。同胞は左から□(兄)、○(姉)、矢印付きの□(本人)、□(弟)と出生順どおりに並ぶ。本人の右に妻の○が横線で結ばれ、子どもは左から□(長男)、□(次男)、○(長女)の順である。点線の同居者枠は本人・妻・次男・長女を囲み、遠方で就職した長男は枠外に置かれている。問診で得た情報をすべて正しく反映しており、これが適切な家系図である。
- ×e. ⑤
両親の死因と年齢、同胞の並び、本人と妻、子どもの並びまでは正しい。しかし同居者を示す点線の枠が長男・次男の2人の□を囲み、長女の○が枠外になっている。実際に同居しているのは次男と長女で、長男は別居しているため、同居者の範囲が誤っている。
家系図(pedigree)の主な記号
・□:男性、○:女性、◇:性別不明 ・記号の塗りつぶし:罹患者(その疾患・形質をもつ人) ・記号に斜線:死亡者 ・矢印:発端者(プロバンド) ・横線(婚姻線):夫婦。二重線は血族婚(いとこ婚など) ・婚姻線に斜線(//):離婚 ・婚姻線から下ろした縦線と、それにつながる横線(同胞線):子どもたち。左から年長順 ・一卵性双生児・二卵性双生児、流産、養子なども専用の記号で表す ・世代はローマ数字(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ…)、同じ世代の個人は左からアラビア数字で番号を付けることがある
発端者と来談者
厳密には、発端者(proband)は遺伝性疾患などの家系調査のきっかけとなった罹患者を指し、遺伝カウンセリングに訪れた人は来談者(consultand)と呼んで区別される。本問の胃癌や脳卒中は単一遺伝子による遺伝性疾患とはいえないため、本問の「発端者」は患者本人を示す印として用いられていると理解すればよい。
臨床での家系図(ジェノグラム)の意義
家族歴を図にすることで、次のような情報が一目でわかる。 ・遺伝的素因:大腸癌では、家族性大腸腺腫症やリンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸癌)など遺伝性腫瘍の可能性を考えるうえで、血縁者の癌の種類や発症年齢が重要となる。49歳という比較的若年での大腸癌発症では、家族歴の聴取が特に大切である。 ・家族構成と生活背景:同居者の範囲、キーパーソン、介護・支援を担える家族の有無などは、病期Ⅳの癌患者の療養方針、在宅療養の可否、社会的支援の検討に直結する。本問の点線枠のように、同居者を囲んで示すのは家族療法やプライマリ・ケアで用いられるジェノグラムの書き方である。 ・通常、本人を中心に少なくとも3世代(祖父母・親、本人・同胞・配偶者、子ども)を記載する。
POINT
・男性は□、女性は○、死亡者は斜線、患者本人(発端者)は矢印で示す。 ・夫婦は横線で結び、慣例として夫を左、妻を右に置く。 ・同胞・子どもは左から出生順(年長者が左)に並べる。 ・死因や死亡時年齢は該当者の記号の近くに書き添える。 ・家系図は遺伝的素因の評価だけでなく、同居者やキーパーソンなど療養支援に必要な家族背景の把握にも役立つ。
