矢状縫合は「斜め」を語る―内診所見から読み解く児頭回旋のいま
第106回医師国家試験 G問題 第43問
国試問題にチャレンジ
28歳の1回経妊1回経産婦。妊娠38週。2時間前に水様帯下があり来院した。第1子は自然経腟分娩であった。来院後,3分間隔の規則的な陣痛が発来した。内診で子宮口は4 cm開大,児頭下降度SP±0である。先進部は小泉門で2時の位置に触れ,矢状縫合を2時から8時にかけて認める。 児頭の回旋時期の判断で正しいのはどれか。
- a.第1回旋の直後
- b.第2回旋の途上
- c.第2回旋の直後
- d.第3回旋の途上
- e.第3回旋の直後
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
ドクター
医学生
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医学生
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ドクターまとめ
児頭の回旋は、第1回旋(屈曲)、第2回旋(内回旋)、第3回旋(伸展)、第4回旋(外回旋)の順に進み、内診で触れる泉門と矢状縫合の向きから現在の段階を判断できます。小泉門が先進していれば屈曲は完了しており、矢状縫合が骨盤の横径から斜径を経て前後径へ向かう途中なら第2回旋の途上、前後径に一致して小泉門が恥骨直下にあれば第2回旋の完了を意味します。これは横長の骨盤入口と前後に長い骨盤出口に合わせた運動であり、骨盤の形と結びつけて覚えると理解しやすくなります。内診の時計表示(12時が恥骨側、3時が母体左)や児頭下降度、胎向(小泉門が左前方なら第1前方後頭位)もあわせて読み取れるようにしておくと、後方後頭位などの回旋異常に早く気づくことにつながります。
解答・解説
正解はbです
所見の整理
・28歳、1回経妊1回経産婦(前回は自然経腟分娩)、妊娠38週(正期産)。 ・2時間前の水様帯下は破水と考えられ、陣痛発来前の破水であるから前期破水である。来院後に3分間隔の規則的な陣痛が始まり、子宮口4 cm開大で分娩第1期にある。 ・児頭下降度SP±0:先進部(児頭の最も下の部分)が坐骨棘を結ぶ線の高さにある。この高さでは通常、児頭の最大周囲径は骨盤入口を通過しており、児頭は骨盤内に嵌入している。 ・内診所見:先進部が小泉門であり、矢状縫合が2時から8時の方向に斜めに走っている。
内診所見の読み方
内診時の時計表示では、母体の恥骨結合側を12時、仙骨側を6時とし、母体の左側が3時、右側が9時となる。 ・小泉門(後頭部にある三角形の泉門)が先進している → 児頭が十分に屈曲し、後頭部が先に下降している。つまり第1回旋(屈曲)は済んでいる。 ・小泉門が2時(母体の左前方)にある → 児の後頭(すなわち児背)が母体の左側で、しかも前方寄りにある。児背が母体の左にあるので第1胎向、後頭が前方に向かっているので前方後頭位であり、第1前方後頭位(左前方後頭位)と判断できる。 ・矢状縫合が2時〜8時の斜め方向(骨盤の斜径)にある → 骨盤入口では横径(3時〜9時)に一致していた矢状縫合が、前後径(12時〜6時)に向かって回っている最中である。
設問の考え方
児頭の回旋は、第1回旋(屈曲)→第2回旋(内回旋)→第3回旋(伸展)→第4回旋(外回旋)の順に進む。第2回旋は、骨盤腔を下降しながら後頭が母体の前方(恥骨側)へ回り、矢状縫合が横径から斜径を経て前後径に一致していく運動である。小泉門先進(屈曲済み)で、矢状縫合が斜径にあり、まだ前後径に一致していない本例は、第2回旋の途中にあると判断できる。児頭の高さ(SP±0で骨盤内に嵌入し、まだ骨盤出口には達していない)もこの判断と矛盾しない。
選択肢考察
- ×a. 第1回旋の直後
第1回旋は骨盤入口部で児頭が屈曲し、おとがいを胸に近づけて小泉門が先進するようになる運動である。第1回旋が終わった直後は、まだ第2回旋が始まっておらず、矢状縫合は骨盤入口の横径(3時〜9時方向)に一致しているのが普通である。本例では矢状縫合がすでに斜径(2時〜8時)まで回っており、第2回旋が始まっているので、第1回旋の直後ではない。
- ○b. 第2回旋の途上
小泉門が先進していることから第1回旋(屈曲)は完了している。そのうえで小泉門が2時(母体の左前方)にあり、矢状縫合が2時〜8時の斜径に位置していることは、後頭が母体の前方へ回りつつあり、矢状縫合が横径から前後径へ向かう途中であることを意味する。これは第2回旋(内回旋)が進行中の状態であり、正しい。
- ×c. 第2回旋の直後
第2回旋が完了すると、後頭(小泉門)は恥骨結合の直下、すなわち12時方向に向き、矢状縫合は骨盤出口の前後径(12時〜6時方向)に一致する。本例では小泉門が2時、矢状縫合が斜め方向にあり、まだ回旋が完了していないため誤りである。
- ×d. 第3回旋の途上
第3回旋は、第2回旋を終えた児頭が骨盤出口に達し、後頭結節付近を恥骨結合下縁に当てて支点とし、児頭が伸展(反屈)しながら前頭・顔面・おとがいの順に娩出される運動である。この段階では児頭はかなり下降しており(SP+4〜+5程度で排臨・発露の時期)、矢状縫合は前後径に一致している。子宮口4 cm開大、SP±0、矢状縫合斜めの本例は、第3回旋の段階には至っていない。
- ×e. 第3回旋の直後
第3回旋が終わった直後は児頭が娩出された状態であり、その後に肩甲の通過に伴う第4回旋(外回旋)が起こる。子宮口4 cm開大で児頭がSP±0にある本例とはまったく段階が異なり、誤りである。
児頭の回旋(前方後頭位の場合)
・第1回旋(屈曲):骨盤入口部。児頭が屈曲して小泉門が先進部となる。これにより最も小さい周囲径(小斜径周囲)で産道を通過できる。矢状縫合は骨盤入口の横径に一致する。 ・第2回旋(内回旋):骨盤腔〜骨盤出口部。後頭が母体の前方(恥骨側)へ回り、矢状縫合が横径 → 斜径 → 前後径の順に向きを変える。骨盤入口は横に長く、骨盤出口は前後に長いという骨盤の形に合わせた動きである。 ・第3回旋(伸展、反屈):骨盤出口部。項部(後頭結節付近)を恥骨結合下縁に当てて支点とし、児頭が伸展して前頭・顔面・おとがいが会陰から娩出される。 ・第4回旋(外回旋):娩出された児頭が、母体内で肩甲が回旋(肩の横径が骨盤出口の前後径に一致)するのに伴って回り、顔が母体の大腿の内側を向く。第1胎向では母体の右大腿側を向く。
胎向と胎勢の用語
・第1胎向:児背が母体の左側。第2胎向:児背が母体の右側。 ・前方後頭位:後頭(小泉門)が母体の前方に向かう正常な回旋。後方後頭位:後頭が母体の後方(仙骨側)に回る回旋異常で、分娩が遷延しやすい。 ・小泉門:矢状縫合とラムダ縫合が交わる三角形の泉門(後頭側)。大泉門:矢状縫合・冠状縫合・前頭縫合が交わるひし形の泉門(前頭側)。内診でどちらの泉門が触れるかで、児頭の屈曲の程度と向きを判断する。
児頭下降度(station)
・坐骨棘を結ぶ線を0(SP±0)とし、それより上(入口側)を−、下(出口側)を+で、cm単位で表す。 ・SP±0前後では、通常、児頭の最大周囲径が骨盤入口を通過しており、児頭は嵌入した状態にある。SP−2〜−1程度では最大周囲径が骨盤入口にかかった固定の状態にあることが多い。 ・児頭の高さはBishopスコアの評価項目の一つでもある。
前期破水
陣痛発来前に卵膜が破れる状態を前期破水という。正期産では多くの場合24時間以内に自然に陣痛が始まる。破水後は上行性感染(絨毛膜羊膜炎)や臍帯脱出に注意し、発熱・胎児頻脈・羊水の混濁や悪臭などを観察する。
POINT
・回旋の順:第1回旋=屈曲(小泉門先進)→第2回旋=内回旋(矢状縫合が横径→斜径→前後径)→第3回旋=伸展(恥骨結合下縁を支点に娩出)→第4回旋=外回旋。 ・小泉門先進 → 第1回旋は完了。矢状縫合が斜め → 第2回旋の途上。矢状縫合が縦(12時〜6時) → 第2回旋完了。 ・内診の時計表示:12時=恥骨側、6時=仙骨側、3時=母体左、9時=母体右。 ・小泉門が左前方(1〜2時)→ 第1前方後頭位(児背が母体左、後頭が前方)。 ・SP±0は先進部が坐骨棘の高さにあり、通常は児頭が嵌入している状態。
