妊娠27週、張りと短い頸管―「1日でも長く」を守る切迫早産の初期対応
第106回医師国家試験 E問題 第47問
国試問題にチャレンジ
33歳の1回経妊1回経産婦。妊娠27週。腹部緊満感を主訴に来院した。2週前から腹部の緊満を感じていたという。昨日から上腹部の圧迫感を自覚するようになったため受診した。身長156 cm,体重62 kg。脈拍84/分,整。血圧116/58 mmHg。子宮底長35 cm,腹囲92 cm。内診で子宮口は閉鎖している。腟分泌物は少量,淡血性である。経腟超音波検査で,頸管長12 mm,内子宮口付近にfunneling〈内子宮口の楔状の開大〉を認める。腹部超音波検査で胎児は頭位であり,胎児推定体重1,008 g,羊水指数〈AFI〉28 cmである。胎盤は子宮底部に位置している。胎児心拍数陣痛図を別に示す。 現時点の対応として適切なのはどれか。

- a.経過観察
- b.経腹的羊水除去
- c.子宮頸管縫縮術
- d.子宮収縮抑制薬の点滴静注
- e.帝王切開術
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
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ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
妊娠22週以降37週未満に規則的な子宮収縮と頸管の短縮・開大がみられる状態が切迫早産であり、経腟超音波での頸管長25 mm未満やfunnelingは早産の高リスク所見です。胎児のwell-beingが保たれ母体も安定していれば、未熟性に伴う合併症を避けるため、子宮収縮抑制薬(リトドリン、硫酸マグネシウム)の点滴静注で妊娠延長を図り、34週未満では母体ステロイド投与による胎児肺成熟促進も検討します。子宮頸管縫縮術は子宮収縮のない頸管無力症が適応で、収縮や感染があれば禁忌となり、経腹的羊水除去は母体症状の強い高度羊水過多に限られる対症療法です。羊水過多は子宮の過伸展を介して切迫早産の原因となるため、母体糖代謝異常や胎児の消化管閉鎖などの原因検索も並行して行います。「娩出すべき理由があるか」と「妊娠を延ばす余地があるか」を胎児・母体の両面から評価する姿勢は、周産期管理全般の基本となります。
解答・解説
正解はdです
所見の整理
・妊娠27週の経産婦。2週前から腹部緊満感があり、昨日から上腹部の圧迫感を自覚している。 ・母体バイタルは安定(脈拍84/分、血圧116/58 mmHg)。 ・子宮底長35 cm:妊娠27週の目安(おおむね24〜27 cm前後)より明らかに大きい。 ・子宮口は閉鎖しているが、少量の淡血性分泌物(いわゆる産徴に相当)がある。 ・経腟超音波で頸管長12 mmと著明に短縮し、内子宮口の楔状開大(funneling)を認める。 ・胎児は頭位、推定体重1,008 gで27週として週数相当。胎盤は子宮底部で前置胎盤ではない。 ・羊水指数(AFI:子宮を4分割して測った羊水ポケットの最大深度の合計)28 cm。 ・胎児心拍数陣痛図:心拍数基線は約130〜140 bpmで正常範囲、基線細変動は保たれ、一過性徐脈はない。子宮収縮は約8分間に4回程度と頻回(おおむね2〜3分ごと)である。
診断
(1) 切迫早産:妊娠22週以降37週未満に、規則的な子宮収縮と頸管の短縮・開大などの頸管熟化がみられ、早産の危険が高い状態である。頻回の子宮収縮、頸管長の短縮(妊娠中期で25 mm未満が早産高リスクの目安であり、12 mmは高度短縮)、funneling、淡血性分泌物がそろっており、切迫早産と診断できる。 (2) 羊水過多:AFI 24〜25 cm以上(あるいは最大羊水深度8 cm以上)を羊水過多の目安とし、本例のAFI 28 cmと週数に比して大きな子宮底長はこれに合致する。子宮の過伸展は子宮収縮を誘発し、切迫早産の原因となる。上腹部圧迫感も増大した子宮による症状と考えられる。ただし母体の呼吸困難などの強い圧迫症状はなく、羊水過多の程度は中等度にとどまる。
胎児の状態
胎児心拍数陣痛図は安心できるパターン(reassuring)であり、胎児機能不全はない。推定体重も週数相当で、胎児のwell-being(健常性)は保たれている。
対応の考え方
妊娠27週での娩出は、救命率は高いものの呼吸窮迫症候群、脳室内出血、壊死性腸炎など未熟性に伴う合併症のリスクが高く、1日でも長く妊娠を継続させる意義が大きい。胎児・母体とも急いで娩出すべき状態にはないため、第一選択は入院安静のうえで子宮収縮抑制薬を点滴静注し、妊娠の延長を図ることである。あわせて、34週未満で1週間以内の早産が予想される場合は胎児肺成熟を目的とした母体へのステロイド投与(ベタメタゾン筋注)を行い、NICUを備えた周産期母子医療センターでの管理(必要なら母体搬送)を考える。羊水過多については、原因検索として母体の糖代謝異常(妊娠糖尿病など)や胎児の形態異常(消化管閉鎖など)の評価を並行して行う。
選択肢考察
- ×a. 経過観察
2〜3分ごとの子宮収縮に加え、頸管長12 mmと高度に短縮し、funnelingと淡血性分泌物もある。すでに頸管の熟化が進行している切迫早産であり、無治療で様子をみれば早産に至る危険が高い。妊娠27週での早産は児に重大な合併症を残し得るため、入院のうえ積極的に子宮収縮を抑制すべきである。
- ×b. 経腹的羊水除去
経腹的羊水除去(治療的羊水穿刺)は、高度の羊水過多で母体に呼吸困難や強い腹部圧迫症状がある場合などに、症状緩和と妊娠延長を目的として行う対症療法である。穿刺に伴う破水、陣痛誘発、感染、出血、急激な子宮内圧低下による常位胎盤早期剥離などの危険がある。本例の羊水過多は中等度(AFI 28 cm)で、母体の症状も上腹部の圧迫感程度と軽いため、まずは通常の切迫早産として子宮収縮抑制を行うのが適切であり、第一の対応ではない。
- ×c. 子宮頸管縫縮術
子宮頸管縫縮術(シロッカー手術、マクドナルド手術)は、子宮収縮を伴わずに頸管が開大・短縮する頸管無力症(子宮頸管不全症)に対して行う手術である。本例では頻回の子宮収縮があり、頸管短縮は陣痛様の収縮による切迫早産の一部と考えられる。子宮収縮がある状態での手術操作は収縮や破水、感染を誘発し状態を悪化させるおそれがあり、適応とならない(子宮収縮や感染の存在は頸管縫縮術の禁忌とされる)。また、妊娠27週は一般に縫縮術が行われる時期(おおむね妊娠26週ごろまで)を過ぎている。
- ○d. 子宮収縮抑制薬の点滴静注
本例は頻回の子宮収縮と頸管熟化を伴う切迫早産であり、胎児の状態は良好で母体も安定しているため、妊娠の延長を目的に子宮収縮抑制薬を投与するのが現時点の適切な対応である。わが国ではβ2刺激薬の塩酸リトドリンや硫酸マグネシウムの持続点滴静注が用いられる。リトドリンは動悸・頻脈、振戦、低カリウム血症、高血糖、肺水腫、顆粒球減少などに、硫酸マグネシウムは高マグネシウム血症による呼吸抑制・腱反射消失などに注意して投与する。併用として、34週未満の早産が差し迫っている場合の母体ステロイド投与による胎児肺成熟促進や、周産期母子医療センターでの管理体制の確保を行う。なお、絨毛膜羊膜炎など子宮内感染が明らかな場合は子宮収縮抑制を続けるべきではないため、発熱、白血球数・CRP、腟分泌物の性状などで感染の有無も確認する。
- ×e. 帝王切開術
胎児心拍数陣痛図は基線・基線細変動とも正常で一過性徐脈もなく、胎児機能不全は認めない。常位胎盤早期剥離や前置胎盤からの大量出血、重症妊娠高血圧症候群など母体側の急速遂娩の適応もない。胎児は頭位で推定体重約1,000 gの未熟児であり、今娩出すれば未熟性に伴う合併症の危険が大きい。現時点で帝王切開により娩出する理由はなく、妊娠延長を目指すべきである。
切迫早産
早産は妊娠22週0日から36週6日までの分娩をいう。切迫早産は、この時期に規則的な子宮収縮があり、頸管の熟化(短縮・開大・軟化)が進行して早産の危険が高い状態である。 ・危険因子:早産既往、頸管長短縮、絨毛膜羊膜炎・細菌性腟症などの感染、多胎妊娠、羊水過多、子宮奇形、頸管円錐切除後、喫煙など。 ・頸管長:経腟超音波で測定し、妊娠24週前後で25 mm未満は早産のハイリスクとされる。funnelingは内子宮口側から頸管が開大していることを示し、早産リスクをさらに高める。 ・治療:入院安静、子宮収縮抑制薬(リトドリン、硫酸マグネシウム)、感染があれば抗菌薬、妊娠34週未満で早産が予想される場合は母体への副腎皮質ステロイド(ベタメタゾン12 mgを24時間間隔で2回筋注)による胎児肺成熟促進。妊娠32週未満の早産が差し迫る場合、硫酸マグネシウムには児の脳性麻痺を減らす神経保護作用も報告されている。 ・子宮収縮抑制を行わない、または中止する状況:子宮内感染(絨毛膜羊膜炎)、胎児機能不全、常位胎盤早期剥離、重症妊娠高血圧症候群、胎児死亡、致死的胎児異常など。
羊水過多
羊水量が異常に多い状態で、超音波ではAFI 24〜25 cm以上、または最大羊水深度(MVP)8 cm以上を目安とする。羊水過多に母体の自覚症状(腹部膨満、呼吸困難、悪心など)を伴うものを羊水過多症と呼ぶ。 原因は、 ・胎児の羊水嚥下・吸収障害:食道閉鎖、十二指腸閉鎖などの上部消化管閉鎖、無脳症などの中枢神経異常、筋疾患(筋強直性ジストロフィーなど)による嚥下障害、18トリソミーなどの染色体異常 ・胎児尿量の増加:母体糖尿病(胎児高血糖による浸透圧利尿)、双胎間輸血症候群の受血児、胎児貧血(血液型不適合、パルボウイルスB19感染)などによる高心拍出状態、胎盤血管腫、胎児Bartter症候群 ・胎児水腫、多胎妊娠 ・特発性(原因不明のものも少なくない) 合併症として切迫早産、前期破水、破水時の臍帯脱出・常位胎盤早期剥離、胎位異常、分娩後の弛緩出血などがある。
胎児心拍数陣痛図の正常所見
心拍数基線110〜160 bpm、基線細変動6〜25 bpm、一過性頻脈あり、一過性徐脈なし。妊娠32週未満では一過性頻脈の基準は「15 bpm以上・15秒以上」ではなく「10 bpm以上・10秒以上」を用いる。
POINT
・頻回の子宮収縮+頸管長短縮(25 mm未満)・funneling → 切迫早産。 ・胎児well-beingが保たれた妊娠34週未満の切迫早産では、子宮収縮抑制薬(リトドリン、硫酸マグネシウム)点滴で妊娠延長を図り、母体ステロイド投与を検討する。 ・子宮頸管縫縮術は子宮収縮のない頸管無力症が適応で、子宮収縮や感染があれば行わない。 ・経腹的羊水除去は母体症状の強い高度羊水過多に限る対症療法。 ・羊水過多(AFI 24〜25 cm以上)をみたら、母体糖尿病・胎児消化管閉鎖などの原因検索を行う。
