心臓は何胚葉?胎児の臓器はいつ育つ?―発生と成熟の5つの基本を総点検
第106回医師国家試験 E問題 第35問
国試問題にチャレンジ
胎児期の器官形成と臓器の成熟について正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.心臓は外胚葉から発生する。
- b.胎児心拍数は妊娠中期以降に減少する。
- c.胎児副腎の胎児層は妊娠早期に退縮する。
- d.胎児赤血球の酸素親和性は成人に比べて低い。
- e.Ⅱ型肺胞上皮細胞は肺表面活性物質を産生する。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
心臓は中胚葉由来で、外胚葉からは神経系や表皮が発生します。胎児心拍数は妊娠9〜10週ごろに170〜180/分程度で最大となり、迷走神経の成熟とともに低下して満期には140/分前後になります。胎児副腎の胎児層は妊娠期間を通じて大きくDHEA-Sを産生してエストリオール合成に関わり、退縮するのは出生後です。HbFは2,3-BPGと結合しにくく酸素親和性が高いため、低酸素の胎盤環境でも母体から酸素を受け取れます。Ⅱ型肺胞上皮細胞が産生するサーファクタントは妊娠34週ごろまでに十分となり、早産児のRDS予防のための母体ステロイド投与や糖尿病合併妊娠での注意など、周産期臨床の理解に直結する知識です。
解答・解説
正解はb, eです
胎児の器官がどの胚葉から発生し、各臓器が妊娠経過とともにどのように成熟していくかを問う問題である。心臓(発生)、胎児心拍数(循環の成熟)、副腎(内分泌)、胎児ヘモグロビン(酸素運搬)、肺サーファクタント(肺の成熟)という胎児生理の代表的なテーマを、一つずつ正確に覚えているかが問われる。
考え方
・胚葉の由来:外胚葉は神経系・表皮、中胚葉は筋・骨・心血管系・腎・生殖腺・副腎皮質、内胚葉は消化管上皮・肝・膵・気道上皮に分化する。 ・胎児心拍数:妊娠初期に一度ピークを迎え、その後は自律神経(特に副交感神経)の成熟に伴い徐々に低下する。 ・胎児副腎:胎児期には胎児層が大きく発達しており、出生後に退縮する。 ・胎児ヘモグロビン(HbF):胎盤で母体血から酸素を受け取るために、成人より酸素親和性が高い。 ・肺サーファクタント:Ⅱ型肺胞上皮細胞がつくり、妊娠後期に分泌量が増えて肺が成熟する。 これらに照らすと、正しいのは胎児心拍数の変化(b)とⅡ型肺胞上皮細胞の働き(e)である。
選択肢考察
- ×a. 心臓は外胚葉から発生する。
誤り。心臓は中胚葉から発生する。胎生3週ごろ、胚の頭側にある臓側中胚葉(側板中胚葉のうち内臓側の層)に心臓の原基(心臓形成域)ができる。そこから左右一対の心内膜筒が生じて融合し、原始心筒となる。心筒は胎生3週末から4週初め(受精後22日前後)には拍動を始め、その後ループを形成し、中隔ができて4つの部屋に分かれる。心筋・心内膜・血管はいずれも中胚葉に由来する。なお、流出路(大動脈と肺動脈を分ける中隔)の形成には外胚葉系の神経堤細胞も関わるが、心臓全体としては中胚葉由来と覚えてよい。外胚葉からは中枢・末梢神経系、表皮、水晶体などが発生する。
- ○b. 胎児心拍数は妊娠中期以降に減少する。
正しい。胎児心拍は経腟超音波で妊娠6週前後から確認できる。初めは100/分前後だが急速に増加し、妊娠9〜10週ごろに170〜180/分程度で最大となる。その後は緩やかに低下し、妊娠中期から後期にかけてさらに下がり、満期には140/分前後になる。胎児心拍数モニタリングにおける正常な基線(心拍数の平均的な水準)は110〜160/分である。この低下は、心臓を抑制する副交感神経(迷走神経)の働きが成熟していくことを反映していると考えられている。したがって、妊娠中期以降には胎児心拍数が減少するといえる。
- ×c. 胎児副腎の胎児層は妊娠早期に退縮する。
誤り。胎児の副腎は体の大きさに比べて非常に大きく、その皮質の大部分(内側のおよそ3/4〜8割)を胎児層が占めている。胎児層は妊娠期間を通して発達し、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEA-S)を大量に分泌する。DHEA-Sは胎児の肝臓で16位が水酸化されたのち胎盤に運ばれ、エストリオール(E3)に変換される。そのため、母体の尿中・血中エストリオールは、かつて胎児・胎盤機能の指標として用いられた。胎児層が退縮するのは妊娠早期ではなく出生後である。出生後に急速に縮小し、生後1年ほどでほぼ消失する。代わりに外側の永久層(成人型皮質)が発達し、球状帯・束状帯となる。網状帯は小児期に遅れて形成される。
- ×d. 胎児赤血球の酸素親和性は成人に比べて低い。
誤り。胎児の赤血球には胎児ヘモグロビン(HbF、α2γ2)が多く含まれる。HbFのγ鎖は、2,3-ビスホスホグリセリン酸(2,3-BPG:ヘモグロビンに結合して酸素を放しやすくする物質)と結合しにくい。そのため、成人ヘモグロビン(HbA、α2β2)より酸素親和性が高く、酸素解離曲線は左に移動している。この性質により、胎児は酸素分圧の低い胎盤の環境でも母体血から効率よく酸素を受け取ることができる。加えて、胎児は赤血球数とヘモグロビン濃度が高く、酸素運搬能力が補われている。HbFは出生後、HbAへ徐々に置き換わる。
- ○e. Ⅱ型肺胞上皮細胞は肺表面活性物質を産生する。
正しい。肺胞の壁は2種類の上皮細胞からなる。Ⅰ型肺胞上皮細胞は薄く広がって肺胞表面の大部分を覆い、ガス交換の場をつくる。Ⅱ型肺胞上皮細胞は立方状の細胞で、細胞内の層板小体に肺表面活性物質(サーファクタント)を蓄え、分泌する。サーファクタントの主成分はリン脂質(特にジパルミトイルホスファチジルコリン=レシチン)とサーファクタント蛋白である。肺胞表面の表面張力を下げ、息を吐いたときに肺胞がつぶれないようにする。胎児ではⅡ型細胞が妊娠20〜24週ごろに現れて産生が始まり、妊娠30週以降に分泌量が増え、おおむね妊娠34週ごろまでに肺は十分に成熟する。Ⅱ型細胞は、傷ついたⅠ型細胞を補う前駆細胞としても働く。
三胚葉とその主な派生物
・外胚葉:中枢神経系(神経管)、末梢神経系・副腎髄質・メラノサイト(神経堤由来)、表皮・毛・爪、水晶体、内耳、下垂体前葉(ラトケ嚢) ・中胚葉:骨格筋・平滑筋・心筋、骨・軟骨、心臓・血管・血球、腎臓・尿管、生殖腺、副腎皮質、脾臓 ・内胚葉:消化管上皮、肝臓、膵臓、気道・肺胞上皮、甲状腺、膀胱上皮の大部分
胎児の肺の成熟と新生児呼吸窮迫症候群(RDS)
・サーファクタントが足りない早産児は、肺胞がつぶれて呼吸窮迫症候群(RDS)を起こす。 ・胎児の肺成熟の評価:羊水中のレシチン/スフィンゴミエリン比(L/S比)が2以上なら成熟と判断する。羊水を用いたマイクロバブルテストなども用いられる。 ・早産が予想されるとき(おおむね妊娠34週未満)は、母体に副腎皮質ステロイド(ベタメタゾン)を投与して胎児の肺成熟を促す。 ・出生後にRDSを発症した場合は、人工肺サーファクタントを気管内に投与する。 ・母体の糖尿病(胎児の高インスリン血症)はサーファクタント産生を遅らせ、RDSのリスクを高める。
胎児循環・酸素運搬の特徴
・HbFは酸素親和性が高く、酸素解離曲線は左に移動している。 ・静脈管・卵円孔・動脈管という3つの短絡路により、酸素の多い血液が優先的に脳と心臓へ送られる。
胎児副腎と胎児・胎盤系(フェトプラセンタルユニット)
胎児副腎(胎児層)がDHEA-Sを分泌 → 胎児の肝臓で16α-水酸化 → 胎盤でエストリオールに変換、という経路で、胎児と胎盤が協力してエストロゲンを合成している。
POINT
・心臓は中胚葉由来(外胚葉は神経系・表皮) ・胎児心拍数は妊娠9〜10週ごろに最大(170〜180/分程度)となり、以後は徐々に低下する。正常な基線は110〜160/分 ・胎児副腎の胎児層は胎児期を通じて大きく、DHEA-Sを分泌してエストリオール合成に関わる。退縮するのは出生後 ・HbFは2,3-BPGと結合しにくいため酸素親和性が高い(解離曲線は左方移動) ・Ⅱ型肺胞上皮細胞がサーファクタントを産生する。妊娠34週ごろに肺が成熟し、早産ではRDSのリスクがある
