大泉門は「成熟度」を語らない―足底・耳・うぶ毛で読み解く在胎週数
第106回医師国家試験 E問題 第28問
国試問題にチャレンジ
新生児の成熟度に関する評価項目に含まれないのはどれか。
- a.大泉門の大きさ
- b.耳の硬さ
- c.背部のうぶ毛
- d.外性器の性状
- e.足底のしわ
対話形式の解説
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医学生
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ドクターまとめ
新生児の成熟度評価は、Dubowitz法やNew Ballard法を用いて外表所見と神経学的所見から在胎週数を推定する方法で、週数が不確かな場合やSGA・LGAの判定に役立ちます。外表所見には皮膚、うぶ毛、足底のしわ、乳頭・乳腺、耳介の形と硬さ、外性器の性状が含まれ、いずれも週数とともに一定の方向に変化します。一方、大泉門の大きさは個人差が大きく在胎週数と相関しないため評価項目には含まれず、膨隆・陥凹や閉鎖時期の異常から頭蓋内圧や脱水、代謝・内分泌疾患を評価するために用います。神経学的所見では屈筋緊張の発達を姿勢やスカーフ徴候などで評価します。「週数とともに一定方向に変化する所見だけが成熟度の指標になる」という原則を押さえると、評価項目を丸暗記せずに理解できます。
解答・解説
正解はaです
テーマ
出生直後の新生児について、在胎週数(どのくらい成熟して生まれたか)を身体の診察から推定する方法が問われている。最終月経や妊娠初期の超音波検査による妊娠週数が不明・不確実な場合や、在胎週数に比べて体格が小さい・大きい(SGA・LGA)かを判断する場合に用いられる。
代表的な評価法
・Dubowitz法:外表所見(身体的所見)11項目と神経学的所見10項目を点数化し、合計点から在胎週数を推定する。 ・Ballard法(およびその改訂版であるNew Ballard法):Dubowitz法を簡略化したもので、神経筋成熟度6項目と身体的成熟度6項目からなり、臨床で広く用いられる。 外表所見として評価されるのは、皮膚(厚さ・色・透明度・浮腫)、うぶ毛、足底のしわ、乳頭・乳輪の形成と乳腺組織の大きさ、耳介の形と硬さ、外性器の性状などである。いずれも在胎週数が進むにつれて一定の方向に変化するため、成熟度の指標となる。
正解の導き方
選択肢のうち、耳の硬さ、背部のうぶ毛、外性器の性状、足底のしわは上記の外表所見の評価項目に含まれる。一方、大泉門の大きさは個人差が大きく、在胎週数と一定の関係をもたないため、成熟度の評価項目には含まれない。
選択肢考察
- ○a. 大泉門の大きさ
大泉門は前頭骨と左右の頭頂骨の間にある菱形の骨の未閉鎖部で、出生時は約2.5cm程度だが個人差が大きい。生後しばらくは頭囲の拡大に伴いやや大きくなることもあり、その後縮小して1歳6か月頃までに閉鎖する。大きさは在胎週数と一定の相関をもたないため、Dubowitz法やBallard法の評価項目には含まれない。大泉門の診察は、膨隆(頭蓋内圧亢進)や陥凹(脱水)、閉鎖時期の異常(早期閉鎖では小頭症・狭頭症、遅延ではくる病・甲状腺機能低下症・水頭症など)の評価に用いる。
- ×b. 耳の硬さ
評価項目に含まれる。耳介軟骨は在胎後期に発達する。未熟な児では耳介が平坦で軟らかく、折り曲げても元に戻らない。成熟するにつれ耳介の辺縁が巻き込んで形が整い、軟骨を触れて硬くなり、折り曲げるとすぐに跳ね返るようになる。
- ×c. 背部のうぶ毛
評価項目に含まれる。うぶ毛(胎毛)は胎生中期に全身に生え、在胎週数が進むと抜け落ちていく。背部全体に長く密なうぶ毛がある場合は未熟、うぶ毛がまばらで薄くなり、禿げた部分が目立つ場合は成熟していると判断する。ただしきわめて未熟な児(在胎20週台前半)ではうぶ毛がまだ生えていないこともある。
- ×d. 外性器の性状
評価項目に含まれる。男児では精巣が鼠径管から陰嚢内へ下降し、陰嚢のしわ(皺襞)が増えるほど成熟している。精巣が未下降で陰嚢が平滑なら未熟である。女児では、未熟な児は大陰唇が小さく離れていて陰核・小陰唇が突出して見え、成熟するにつれ大陰唇が発達して小陰唇と陰核を覆うようになる。
- ×e. 足底のしわ
評価項目に含まれる。未熟な児では足底のしわがないか、前方にかすかな赤い線がみられる程度である。成熟するにつれてしわが足底の前方から踵の方向へ広がり、深い溝となる。正期産児では足底全体に深いしわがみられる。
外表所見による成熟度評価の主な項目(未熟→成熟)
・皮膚:薄く透明で静脈がよく見え、ゼラチン様・暗赤色→厚く、ピンク色で、表皮のひび割れ・落屑がみられる。浮腫は未熟な児ほど目立つ。 ・うぶ毛:背部全体に密生→まばらになり消失。 ・足底のしわ:なし・かすかな赤い線→足底全体の深いしわ。 ・乳頭・乳輪:ほとんど認めない→乳輪が隆起し、乳腺組織を5〜10mm程度触れる。 ・耳介:平坦で軟らかく、曲げても戻らない→辺縁が巻き込み、軟骨が硬く、すぐ跳ね返る。 ・外性器:男児は精巣未下降・陰嚢平滑→精巣下降・陰嚢のしわ多数。女児は陰核・小陰唇突出→大陰唇が小陰唇を覆う。
神経学的所見による評価
姿勢(未熟な児は四肢を伸展、成熟児は四肢を屈曲)、スカーフ徴候(腕を反対側の肩へ引いたとき肘が正中線を越えるか)、膝窩角、踵耳試験、手首の角度(square window)、上肢・下肢の反跳(recoil)など。成熟に伴い屈筋の緊張が増すことを利用している。
関連:在胎週数と出生体重による分類
在胎週数から推定される標準体重に比べ、出生体重が10パーセンタイル未満ならSGA(small for gestational age)、90パーセンタイルを超えればLGA(large for gestational age)とする。この判定の前提として正確な在胎週数の推定が必要であり、成熟度評価が役立つ。
POINT
・新生児の成熟度評価(Dubowitz法、New Ballard法)は、外表所見と神経学的所見から在胎週数を推定する。 ・外表所見の項目:皮膚、うぶ毛、足底のしわ、乳頭・乳腺、耳介の形と硬さ、外性器。 ・大泉門の大きさは個人差が大きく成熟度とは無関係で、評価項目に含まれない(大泉門は1歳6か月頃に閉鎖)。
