片目を閉じると消える感覚―立体視から学ぶ両眼視機能のしくみ
第106回医師国家試験 E問題 第19問
国試問題にチャレンジ
両眼視機能はどれか。
- a.暗所視
- b.立体視
- c.中心視力
- d.調節近点
- e.視運動眼振
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
両眼視機能とは、左右の網膜像を脳で統合して一つの像として知覚する働きで、Worthの分類により同時視・融像・立体視の3段階に整理されます。最も高次の立体視は、左右の網膜像のずれ(両眼視差)を利用して奥行きを知覚する機能であり、両眼がそろわなければ成立しません。一方、中心視力、暗所視、調節近点、視運動眼振はいずれも片眼でも成立・評価できる単眼の機能です。両眼視機能は5〜6歳頃に完成し、その感受性期の斜視や不同視は弱視や立体視欠如の原因となるため、小児の視機能評価では早期発見が重要です。「片眼を隠しても残るか」という視点で整理すると、視機能検査全体の理解にもつながります。
解答・解説
正解はbです
両眼視機能(binocular vision)とは、左右の眼の網膜にそれぞれ結ばれた像を脳(主に大脳視覚野)で統合し、一つのまとまった像として知覚する働きである。片眼ずつでも成り立つ視機能と、左右両方の眼がそろって初めて成立する視機能とを区別することが、本問を解く鍵となる。 両眼視機能は、Worth(ワース)の分類に従って次の3段階に整理される。 1. 同時視:左右の眼に映る別々の像を同時に認識できる段階 2. 融像:左右の像を一つに融合する段階(運動性融像・感覚性融像) 3. 立体視:左右の網膜像のわずかなずれ(両眼視差)を手がかりに奥行きを知覚する段階(最も高次) 選択肢のうち、両眼がそろわなければ成立しないのは立体視だけである。他の選択肢はいずれも片眼ずつ評価でき、片眼を遮閉しても失われない機能である。
選択肢考察
- ×a. 暗所視
暗所視は、暗い環境で主に杆体(桿体)細胞がはたらいて成り立つ視覚である。網膜視細胞の機能であり、片眼だけでも成立するため、両眼視機能には含まれない。なお明所視は錐体細胞が主に担う。
- ○b. 立体視
立体視は、左右の眼が少し離れた位置から対象を見ることで生じる網膜像のずれ(両眼視差)を脳が処理し、奥行きや距離を知覚する機能である。両眼からの入力がそろわなければ成立せず、同時視・融像に続く両眼視機能の最高段階に位置づけられる。臨床ではTitmus stereo test(チトマスステレオテスト)などで評価する。
- ×c. 中心視力
中心視力は、黄斑部中心窩で固視したときの視力であり、一般に「視力」と呼ばれるものである。視力検査は片眼ずつ遮閉して行うことからわかるように単眼の機能であり、両眼視機能ではない。
- ×d. 調節近点
調節近点は、最大限に調節(毛様体筋の収縮による水晶体の厚みの増加)したときに明視できる最も近い点である。調節は各眼で独立に評価でき、片眼でも成立する単眼の機能であるため、両眼視機能ではない。加齢により調節力が低下すると近点は遠ざかり、これが老視である。
- ×e. 視運動眼振
視運動眼振(optokinetic nystagmus:OKN)は、回転ドラムの縞模様など視野内を連続して動く対象を見たときに誘発される生理的な眼振である。動く対象を追う緩徐相と、元に戻る急速相からなる。片眼でも誘発されるため両眼視機能ではない。乳幼児の視力の他覚的評価や、心因性視力障害の鑑別などに利用される。
両眼視機能の発達
両眼視機能は生後まもなくから発達し始め、生後1歳頃までにおおよその機能が得られ、5〜6歳頃に完成するとされる。この感受性期に斜視や強い不同視(左右の屈折度の差)があると、両眼視機能の発達が妨げられ、弱視や立体視の欠如を来しうる。斜視は両眼視機能異常の原因にもなり、結果として生じることもある。
両眼視機能の検査
・大型弱視鏡(シノプトフォア):同時視・融像・立体視を段階的に評価できる ・Bagolini(バゴリーニ)線条レンズ試験、Worth 4 dot test:同時視・融像や抑制の有無を評価 ・Titmus stereo test、TNO test:立体視(視差の閾値)を評価
単眼で評価できる主な視機能
視力(中心視力)、視野、色覚、光覚(暗順応など)、調節など。
POINT
・両眼視機能は、同時視 → 融像 → 立体視の3段階に分類される(Worthの分類) ・立体視は両眼視差を利用して奥行きを知覚する、両眼視機能の最高段階である ・視力、暗所視、調節、視運動眼振は片眼でも成立する単眼機能である ・両眼視機能は5〜6歳頃に完成し、斜視・不同視はその発達を妨げる
