赤ちゃんのお尻の青いあざ―5つの「生まれつきの斑」を色と場所で見分ける
第105回医師国家試験 G問題 第26問
国試問題にチャレンジ
新生児期から乳児期にみられる皮膚所見(①~⑤)を別に示す。 日本人で最も頻度が高いのはどれか。

- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
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ドクターまとめ
新生児・乳児の皮膚病変は、青い病変(真皮メラノサイトーシス)と赤い病変(血管性病変)に分け、部位を合わせて判別します。腰仙部の青灰色斑である蒙古斑は日本人のほぼ全員にみられ、学童期までに自然消退するため治療は不要で、5つの中で最も頻度が高い病変です。顔面正中のサーモンパッチは新生児の20〜30%にみられ多くが消退する一方、片側性の太田母斑は自然消退せずレーザー治療の対象となり、三叉神経第1枝領域のポートワイン母斑ではSturge-Weber症候群(脳軟膜血管奇形・けいれん・緑内障)を疑います。乳児血管腫は生後に出現・増大して数年で退縮しますが、機能障害をきたす部位ではプロプラノロール内服で治療します。病変ごとの頻度と自然経過を知ることは、家族への説明や精査・治療の要否を判断する基本になります。
解答・解説
正解はdです
画像の整理
5枚の写真は、新生児期〜乳児期に目にする代表的な血管性病変と色素性病変である。色調と部位に注目して判別する。 ・①:前額部の正中から眉間にかけて広がる、境界がやや不明瞭な淡紅色の平坦な斑。正中部の毛細血管奇形(サーモンパッチ)である。 ・②:片側の頬部から眼周囲にかけての青褐色〜灰青色の色素斑。三叉神経第1・2枝領域の真皮メラノサイトーシスである太田母斑である。 ・③:片側の前額部から上眼瞼にかけて、正中を越えずに広がる境界明瞭な赤色斑。三叉神経第1枝領域の毛細血管奇形(ポートワイン母斑)で、Sturge-Weber症候群を疑う所見である。 ・④:腰仙部〜殿部の青灰色の平坦な色素斑。蒙古斑である。 ・⑤:体幹の側腹部にある、鮮紅色で表面が顆粒状に盛り上がった腫瘤。乳児血管腫(いちご状血管腫)である。
設問の考え方
日本人を含む東アジア人の新生児では、腰仙部の蒙古斑がほぼ全員(90%以上、ほぼ100%とされる)にみられる。他の病変の頻度は、サーモンパッチが新生児の約20〜30%、乳児血管腫が日本人で約1%前後、太田母斑が約0.1〜0.2%、Sturge-Weber症候群は数万人に1人程度であり、蒙古斑の頻度が際立って高い。したがって正解は④である。
選択肢考察
- ×a. ①
前額部正中〜眉間の淡紅色斑で、サーモンパッチ(正中部母斑)である。毛細血管奇形(旧称:単純性血管腫)の一型で、前額部正中、眉間、上眼瞼、鼻の下(人中)などの顔面正中部に生じる。新生児の約20〜30%にみられ比較的多いが、蒙古斑には及ばない。顔面のものは多くが1〜2歳ころまでに自然に消退するため、経過観察でよい。項部(うなじ)に生じるものはUnna母斑と呼ばれ、こちらは成人まで残ることが多い。
- ×b. ②
片側の頬部から眼周囲にかけての青褐色斑で、太田母斑である。真皮にメラノサイトが存在する真皮メラノサイトーシスの一つで、三叉神経第1・2枝領域に主に片側性に生じ、眼球結膜(強膜)や口蓋に色素沈着を伴うこともある。日本人での頻度は約0.1〜0.2%とされ、女性に多い。発症時期は生後まもなくと思春期の2つのピークがあり、思春期ころに色調が濃くなる傾向がある。蒙古斑と異なり自然消退しないため、Qスイッチレーザーなどによる治療の対象となる。
- ×c. ③
片側の前額部から上眼瞼にかけての境界明瞭な赤色斑で、三叉神経第1枝領域の毛細血管奇形(ポートワイン母斑)である。この分布の毛細血管奇形はSturge-Weber症候群を強く疑わせる。Sturge-Weber症候群では、顔面の毛細血管奇形に加え、同側の脳軟膜の血管奇形(けいれん、片麻痺、精神発達遅滞、頭部CTでの脳回に沿った石灰化)と眼脈絡膜の血管奇形による緑内障を伴う。頻度は数万人に1人程度とまれであり、最も頻度が高いものではない。毛細血管奇形は自然消退せず、パルス色素レーザーで治療する。
- ○d. ④
腰仙部から殿部にかけての青灰色の平坦な斑で、蒙古斑である。胎生期に神経堤から表皮へ移動するメラノサイトの一部が真皮内に残ったもの(真皮メラノサイトーシス)で、真皮深くのメラニンがチンダル現象により青く見える。日本人を含む東アジア人ではほぼ全員(90%以上)にみられ、選択肢中で最も頻度が高い。通常は学童期ころまでに自然に消退するため治療は不要である。ただし、腰仙部以外の部位(四肢、背部上方、顔面など)にできる異所性蒙古斑は消えにくく、色の濃いものはレーザー治療の対象となることがある。
- ×e. ⑤
鮮紅色で表面が顆粒状に隆起した腫瘤で、乳児血管腫(いちご状血管腫)である。毛細血管の内皮細胞が増殖する良性腫瘍で、出生時には目立たないか小さな紅斑程度であり、生後1〜2週ころから明らかになって急速に増大・隆起する。生後数か月(おおむね半年前後)で最大となり、その後数年かけて徐々に退縮する。日本人での頻度は約1%前後とされ、白人より少ない。多くは経過観察でよいが、眼瞼(視機能障害)、気道周囲、口唇などの機能や整容面で問題となる部位や潰瘍化するものでは、プロプラノロール内服による治療が第一選択となる。
血管性病変の整理(ISSVA分類に基づく)
血管の異常は、細胞が増殖する「血管性腫瘍」と、血管の形成異常である「血管奇形」に大別される。 ・血管性腫瘍:乳児血管腫(いちご状血管腫)が代表。生後に出現・増大し、その後自然退縮する。 ・血管奇形:毛細血管奇形(従来の単純性血管腫・ポートワイン母斑)、静脈奇形、リンパ管奇形、動静脈奇形など。出生時から存在し、体の成長に比例して大きくなり、自然消退しない(ただしサーモンパッチは例外的に消えやすい)。
毛細血管奇形が関連する主な症候群
・Sturge-Weber症候群:三叉神経第1枝領域の顔面毛細血管奇形+脳軟膜血管奇形+緑内障。 ・Klippel-Trenaunay症候群:四肢の毛細血管奇形+静脈瘤・静脈奇形+患肢の骨・軟部組織の肥大。
真皮メラノサイトーシスの比較
・蒙古斑:腰仙部・殿部。東アジア人のほぼ全員。多くは学童期までに自然消退。 ・異所性蒙古斑:腰仙部以外。消退しにくい。 ・太田母斑:三叉神経第1・2枝領域の片側。自然消退せず、レーザー治療の対象。 ・伊藤母斑:肩峰・肩甲部から上腕にかけて生じる、太田母斑と同様の病変。
家族への説明のポイント
乳児期の皮膚病変には、蒙古斑やサーモンパッチのように自然に消えるもの、乳児血管腫のように増大した後に退縮するが部位によって早期治療を要するもの、太田母斑やポートワイン母斑のように自然消退せず治療を検討するもの、Sturge-Weber症候群のように重大な合併症の検索が必要なものがある。病変の種類を見極めて、経過観察か治療・精査かを判断する。
POINT
・蒙古斑:腰仙部の青灰色斑。日本人のほぼ全員にみられ、学童期までに自然消退する。 ・サーモンパッチ:顔面正中の淡紅色斑。新生児の20〜30%。多くが自然消退(項部のUnna母斑は残りやすい)。 ・太田母斑:三叉神経第1・2枝領域の片側性青褐色斑。自然消退せずレーザー治療。 ・三叉神経第1枝領域のポートワイン母斑→Sturge-Weber症候群(脳軟膜血管奇形、けいれん、緑内障)を疑う。 ・乳児血管腫:生後1〜2週で出現・増大、数年で退縮。治療が必要ならプロプラノロール内服が第一選択。
