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FFPは「凝固因子の製剤」―目的で選ぶ血液製剤の基本

第105回医師国家試験 F問題 第5問

国試問題にチャレンジ

第105回 F問題 第5問

新鮮凍結血漿輸血の適応があるのはどれか。

  1. a.血漿フィブリノゲン低下
  2. b.血清γ-グロブリン低下
  3. c.血清アルブミン低下
  4. d.循環血漿量減少
  5. e.低栄養状態

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、新鮮凍結血漿、つまりFFPを何のために輸血するのかを問う問題だ。着眼点はひとつ、「FFPに期待する成分は何か」。それが分かれば、適応は自然に絞り込めるよ。
医学生医学生
血漿ですから、アルブミンも免疫グロブリンも凝固因子も全部入っていますよね。どれでも補えそうに思えてしまいます。
ドクタードクター
そこが多くの人がつまずくところだね。確かに血漿にはいろいろな蛋白が含まれている。でも、FFPをわざわざ採血後すぐに凍結する理由を考えてみてほしい。
医学生医学生
凍結しないと失活してしまう成分がある、ということでしょうか。
ドクタードクター
その通り。第Ⅴ因子や第Ⅷ因子のような不安定な凝固因子は、室温に置くとすぐに活性が落ちる。凍結することで全ての凝固因子の活性を保っているんだ。だからFFPの主な目的は「凝固因子の補充」で、複数の凝固因子が足りなくて出血している、あるいは出血のおそれがある場面が適応になる。
医学生医学生
血液内科の講義で、フィブリノゲンは第Ⅰ因子だと習いました。凝固カスケードの最後でフィブリンになる材料ですよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。フィブリノゲンが不足すると、トロンビンができても血栓の材料がなくて止血できない。血液製剤の使用指針でも、フィブリノゲンがおおむね150mg/dL未満、あるいはそこまで下がる危険があって、出血や観血的処置がある場合にFFPの適応としている。大量出血による希釈や消費、DIC、L-アスパラギナーゼによる産生低下などが代表的な状況だ。だから血漿フィブリノゲン低下が正解になる。
医学生医学生
では、γ-グロブリンが低いときはどうでしょう。FFPにも入っているなら少しは効きそうですが。
ドクタードクター
入ってはいるけれど量が少なくて、補充効果は乏しいんだ。無γ-グロブリン血症のような原発性免疫不全や、リンパ系腫瘍・抗がん薬による二次性の低下には、濃縮された免疫グロブリン製剤を静注や皮下注で補充するのが筋だね。
医学生医学生
アルブミン低下も同じ考え方ですか。臨床実習で消化器内科を回ったとき、肝硬変の方にアルブミン製剤を使っていました。
ドクタードクター
そう、同じ発想だ。膠質浸透圧が保てずに難治性の腹水や循環不全が起きるなら、5%や20〜25%のアルブミン製剤を使う。FFPで同じ量のアルブミンを補おうとすると大量投与が必要になり、容量負荷や副作用のリスクが増すだけなんだ。ちなみにアルブミン製剤でも、数値を保つだけ、栄養補給だけが目的の使用は推奨されていない。
医学生医学生
循環血漿量が減っているときは、血漿そのものを入れるのが理にかなっている気がしてしまいます。
ドクタードクター
直感的にはそう思えるよね。でも量を補うだけなら、まずは生理食塩液や乳酸リンゲル液などの細胞外液補充液で十分で、必要に応じて人工膠質液やアルブミン製剤を使う。循環血漿量の補充目的のFFPは、使用指針で不適切な使用の代表例として明記されているんだ。ただし大量出血で凝固因子まで薄まってしまった場合は、凝固因子の補充という目的でFFPを使う。目的が違うことに注意してね。
医学生医学生
低栄養も、蛋白質の補給という意味ではFFPは使わないということですね。
ドクタードクター
そう。輸注された血漿蛋白はゆっくり分解されるから栄養源としての効率が悪いし、感染症やアレルギーのリスクまで背負うことになる。低栄養には経口・経腸栄養を優先し、難しければ静脈栄養を考える。
医学生医学生
つまり、FFPは同種血由来でリスクがあるから、ほかの安全な製剤や輸液で代わりがきく目的には使わない、という整理でいいでしょうか。
ドクタードクター
完璧なまとめだ。FFPの副作用としては、アレルギー反応やアナフィラキシー、輸血関連急性肺障害のTRALI、循環過負荷のTACO、感染症の伝播、クエン酸による低カルシウム血症などがある。だからこそ、目的に合った製剤を選ぶことが大切なんだ。
医学生医学生
ほかにFFPが活躍する場面はありますか。
ドクタードクター
肝障害で複数の凝固因子が下がって出血している場合や、TTPでの血漿交換の置換液がよく出てくるね。TTPではADAMTS13を補いつつ、その自己抗体を除去する意味がある。一方、血友病のように特定の因子だけが欠乏しているなら、その因子の濃縮製剤を使う。ワルファリンの緊急拮抗も、現在は濃縮プロトロンビン複合体製剤が優先されるよ。
医学生医学生
血液型の選び方も、赤血球とは逆なんですよね。OSCE前の輸血の勉強で混乱した記憶があります。
ドクタードクター
そう、血漿には抗A・抗B抗体が含まれるから、AB型の血漿は全ての型の患者に適合する。赤血球製剤ではO型が万能に近いのと逆の関係だ。それから、FFPは使用直前に30〜37℃で融解して速やかに使うこと。病棟で実際に扱うときに役立つ知識だよ。

まとめ

新鮮凍結血漿(FFP)は、失活しやすい第Ⅴ・第Ⅷ因子を含む全ての凝固因子の活性を保つために採血後すぐに凍結した製剤であり、その目的は凝固因子の補充です。低フィブリノゲン血症(おおむね150mg/dL未満)、肝障害による複合的凝固因子欠乏、大量出血に伴う希釈性凝固障害、DIC、TTPの血漿交換などが代表的な適応となります。一方、γ-グロブリンの低下には免疫グロブリン製剤、アルブミンの低下にはアルブミン製剤、循環血漿量の減少には細胞外液補充液、低栄養には経腸・静脈栄養を用いるのが原則で、これらの目的でのFFP投与は不適切です。FFPはアレルギー、TRALI、TACO、感染症伝播などのリスクを伴う同種血製剤であるため、「何を補いたいのか」から製剤を選ぶ姿勢が、安全な輸血療法の基本となります。

解答・解説

正解はaです

本問は、新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma:FFP)を何の目的で輸血するのかを理解しているかを問う問題である。

FFPの役割

FFPは、採血した全血から分離した血漿、または成分採血で得た血漿を採血後短時間のうちに凍結したものである。凍結により、不安定で失活しやすい凝固因子(特に第Ⅴ因子、第Ⅷ因子)を含む全ての凝固因子の活性が保たれている。したがって、FFPの主な目的は「凝固因子の補充」であり、複数の凝固因子が不足して出血している、あるいは出血のおそれがある状況が適応となる。厚生労働省の「血液製剤の使用指針」でも、FFPの使用は凝固因子の補充による治療的投与を原則とし、予防的投与は観血的処置時などに限られるとされている。

考え方

FFPは同種血由来の製剤であり、感染症の伝播、アレルギー反応・アナフィラキシー、輸血関連急性肺障害(TRALI)、輸血関連循環過負荷(TACO)などのリスクを伴う。このため、ほかの安全な製剤や輸液で代替できる目的(アルブミンや免疫グロブリンの補充、循環血漿量の維持、栄養補給)には使用しない。選択肢のうち、凝固因子(フィブリノゲン=第Ⅰ因子)の不足を示すものが適応に当たる。

選択肢考察

  1. ○a.  血漿フィブリノゲン低下

    正しい。フィブリノゲンは凝固第Ⅰ因子であり、凝固カスケードの最終段階でトロンビンによりフィブリンへ変換されて血栓を形成する。血液製剤の使用指針では、低フィブリノゲン血症(おおむね150mg/dL未満、またはこれ以下に進展する危険がある場合)で出血がある、あるいは観血的処置を行う場合にFFPの投与が適応とされる。大量出血に伴う希釈性・消費性の凝固障害、播種性血管内凝固(DIC)、L-アスパラギナーゼ投与による産生低下などが代表的な状況である。

  2. ×b.  血清γ-グロブリン低下

    誤り。FFPにも免疫グロブリンは含まれるが、量が少なく補充効果は乏しい。低γ-グロブリン血症(無γ-グロブリン血症などの原発性免疫不全症や、抗がん薬・リンパ系腫瘍に伴う二次性の低下)には、濃縮された免疫グロブリン製剤を静注または皮下注で補充する方が効果的であり、FFPの適応ではない。

  3. ×c.  血清アルブミン低下

    誤り。低アルブミン血症により血漿膠質浸透圧が保てず、難治性の腹水・胸水や循環不全をきたす場合には、アルブミン製剤(等張5%製剤、高張20〜25%製剤)を用いる。FFPで同量のアルブミンを補うには大量の投与が必要となり、容量負荷や副作用のリスクが増すため、アルブミン補充を目的としたFFP投与は不適切である。なお、アルブミン製剤であっても、単にアルブミン濃度を維持する目的や栄養補給目的での使用は推奨されない。

  4. ×d.  循環血漿量減少

    誤り。循環血漿量の減少(出血や脱水による循環血液量減少)に対しては、まず生理食塩液や乳酸リンゲル液などの細胞外液補充液を用い、必要に応じて人工膠質液(ヒドロキシエチルデンプンなど)やアルブミン製剤を用いる。循環血漿量の補充はFFPの不適切な使用の代表例として使用指針に明記されている。ただし、大量出血で凝固因子が低下した場合には、凝固因子補充の目的でFFPを用いる。

  5. ×e.  低栄養状態

    誤り。蛋白質源としての栄養補給を目的としたFFP投与は、使用指針で不適切な使用として明示されている。輸注された血漿蛋白はゆっくり分解されるため栄養源としての効率が悪く、しかも感染症やアレルギーのリスクを伴う。低栄養状態には経口・経腸栄養を優先し、それが困難な場合に中心静脈栄養(高カロリー輸液)などの静脈栄養を行う。

血液製剤の使用指針(厚生労働省)におけるFFPの適応の概要

凝固因子の補充を目的とし、次のような場合に適応となる。 ・複合的な凝固因子の欠乏:肝障害(肝硬変など)による凝固因子産生低下で出血がある、または観血的処置を行う場合。目安はPT(プロトロンビン時間)がINR 2.0以上または活性30%以下、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)が基準上限の2倍以上または活性25%以下。 ・大量輸血に伴う希釈性凝固障害、DIC。 ・低フィブリノゲン血症(150mg/dL未満が目安)。 ・濃縮製剤のない凝固因子の欠乏症(第Ⅴ因子欠乏症、第Ⅺ因子欠乏症など)。 ・血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)における血漿交換の置換液(ADAMTS13の補充と、その自己抗体の除去)。 ・ワルファリンなどビタミンK拮抗薬の効果の緊急是正(現在は濃縮プロトロンビン複合体製剤が優先される)。

FFPの不適切な使用

・循環血漿量の減少の改善・補充 ・蛋白質源としての栄養補給 ・創傷治癒の促進 ・終末期患者への投与 ・DICを伴わない熱傷や重症感染症の治療 ・人工心肺使用時の出血予防 ・非代償性肝硬変での出血予防(出血や観血的処置がない場合)

目的別に用いる製剤の整理

・凝固因子の複合的補充:FFP ・特定の凝固因子欠乏:各因子の濃縮製剤(血友病Aに第Ⅷ因子製剤、血友病Bに第Ⅸ因子製剤など) ・フィブリノゲン製剤:先天性低(無)フィブリノゲン血症の出血傾向に用いられ、日本では2021年に産科危機的出血に伴う後天性低フィブリノゲン血症にも適応が拡大された。 ・膠質浸透圧の維持:アルブミン製剤 ・免疫グロブリンの補充:免疫グロブリン製剤 ・循環血液量の補充:細胞外液補充液、人工膠質液

FFPの取り扱いと副作用

・−20℃以下で凍結保存し、使用直前に30〜37℃で融解して速やかに使用する。 ・ABO血液型は同型、または患者に対して抗A・抗B抗体の問題が生じない型を選ぶ(赤血球製剤とは逆で、AB型血漿は全ての型の患者に適合する)。 ・副作用:アレルギー反応、アナフィラキシー、TRALI、TACO、ウイルスなどの感染症伝播、クエン酸中毒による低カルシウム血症など。

POINT

・FFPの目的は凝固因子の補充であり、フィブリノゲン(第Ⅰ因子)を含む凝固因子の低下で出血またはそのおそれがある場合が適応。 ・低フィブリノゲン血症(150mg/dL未満が目安)、肝障害による複合的凝固因子欠乏、大量輸血時の希釈性凝固障害、DIC、TTPの血漿交換が代表的な適応。 ・循環血漿量の補充、アルブミン・免疫グロブリンの補充、栄養補給目的のFFP投与は不適切で、それぞれ輸液、アルブミン製剤、免疫グロブリン製剤、栄養療法を用いる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。