両手で挟んで何がわかる?―双合診が「届く」主訴と「届かない」主訴
第105回医師国家試験 F問題 第12問
国試問題にチャレンジ
双合診の有用性が低い主訴はどれか。
- a.下腹部痛
- b.過多月経
- c.続発性無月経
- d.不正性器出血
- e.外陰部瘙痒感
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
双合診は、腟内(または直腸内)の指と下腹壁の手で子宮・付属器・ダグラス窩を挟んで触れ、骨盤内の内性器の大きさ・硬さ・可動性・圧痛を評価する診察法です。そのため下腹部痛、過多月経、続発性無月経、不正性器出血など、内性器の病変や妊娠が原因となりうる主訴で有用性が高くなります。一方、外陰部瘙痒感はカンジダ症やトリコモナス腟炎、硬化性苔癬など外陰・腟の表在性病変によるものが中心で、問診・視診・腟鏡診・帯下検査が診断の要となり、双合診の有用性は低いといえます。また双合診で得られる圧痛や可動性の情報は超音波検査では代替できず、両者は相補的です。各診察法が「どこを評価する方法なのか」を理解しておくことは、主訴に応じた効率的な診察を組み立てる基本になります。
解答・解説
正解はeです
双合診(そうごうしん)とは、一方の手の指を腟内(性交経験のない女性や小児では直腸内)に挿入し、もう一方の手を下腹壁に当てて、両手の間に子宮や卵巣・卵管(付属器)を挟み込むようにして触れる診察法である。これにより、子宮の大きさ・形・硬さ・可動性・圧痛、付属器の腫大や圧痛、ダグラス窩(直腸子宮窩)の硬結や圧痛など、骨盤内の内性器の状態を評価できる。 したがって、双合診が役立つのは「骨盤内の内性器(子宮・付属器)に原因がありそうな主訴」である。下腹部痛、過多月経、無月経、不正性器出血はいずれも子宮や卵巣の病変・妊娠などが原因となりうるため、双合診で得られる情報が診断に直結する。 一方、外陰部瘙痒感は外陰や腟の表面に生じる炎症(カンジダ外陰腟炎、トリコモナス腟炎、接触皮膚炎など)や皮膚疾患(硬化性苔癬など)によることがほとんどであり、骨盤内臓器の触診で得られる情報は乏しい。診断には問診、外陰部の視診、腟鏡診による帯下の性状観察、帯下の顕微鏡検査・培養検査などが重要となる。よって双合診の有用性が最も低いのは外陰部瘙痒感である。 設問は「有用性が低い」ものを選ぶ否定型であることに注意する。
選択肢考察
- ×a. 下腹部痛
下腹部痛の原因には、異所性妊娠(子宮外妊娠)の破裂、卵巣腫瘍の茎捻転、骨盤内炎症性疾患(PID)、子宮内膜症などの内性器疾患が多く含まれる。双合診では付属器の腫大や圧痛の有無、子宮頸部を動かしたときの痛み(子宮頸部可動痛)、ダグラス窩の圧痛・硬結などを評価でき、原因の推定に大いに役立つ。有用性は高く、誤りである。
- ×b. 過多月経
過多月経の代表的な原因は子宮筋腫(特に粘膜下筋腫)や子宮腺筋症である。双合診では子宮の大きさ、表面の凹凸(筋腫核による結節状の不整)、硬さを評価でき、子宮筋腫なら凹凸のある硬い腫大、子宮腺筋症なら全体がびまん性に腫大し月経時に圧痛を伴うといった鑑別の手がかりが得られる。有用性は高く、誤りである。
- ×c. 続発性無月経
続発性無月経(それまであった月経が3か月以上停止した状態)の原因として最も頻度が高いのは妊娠である。妊娠子宮は軟らかく腫大し、子宮峡部が特に軟化する(ヘガール徴候)ため、双合診で妊娠を疑う手がかりが得られる。また多嚢胞性卵巣症候群などにおける卵巣腫大の評価にも用いられる。有用性はあり、誤りである。なお実際には妊娠反応検査や超音波検査を併用して確認する。
- ×d. 不正性器出血
不正性器出血(月経以外の性器出血)の原因には子宮頸癌、子宮体癌、子宮筋腫、流産や異所性妊娠などがある。双合診では子宮の腫大や硬さ、可動性の低下、子宮傍組織への浸潤を思わせる硬結の有無などを評価でき、悪性腫瘍の進展の把握にも役立つ(子宮頸癌の臨床進行期決定では内診・直腸診が重視される)。有用性は高く、誤りである。
- ○e. 外陰部瘙痒感
外陰部瘙痒感の原因は、外陰腟カンジダ症、トリコモナス腟炎、細菌性腟症、接触皮膚炎、硬化性苔癬、萎縮性腟炎など、外陰や腟の粘膜・皮膚の病変が中心である。これらの診断には、問診(帯下の性状、発症の契機、使用している薬剤や下着など)、外陰部の視診、腟鏡診、帯下の鏡検・培養が有用であり、骨盤内臓器を触れる双合診から得られる情報は乏しい。したがって双合診の有用性が低い主訴として、これが正解である。
婦人科診察の基本的な流れ
1. 問診:月経歴、妊娠・分娩歴、性交経験の有無、症状の経過など。 2. 外診:腹部の視診・触診。 3. 外陰部の視診:発赤、びらん、潰瘍、白色変化、腫瘤の有無。 4. 腟鏡診:腟壁や子宮腟部を直接観察し、帯下の性状を確認する。必要に応じて細胞診や帯下検査の検体を採取する。 5. 内診(双合診):子宮・付属器・ダグラス窩を触診する。 6. 必要に応じて直腸診、経腟・経腹超音波検査。
双合診で評価する主な項目
・子宮:大きさ、形、硬さ、表面の性状、位置(前傾前屈・後傾後屈)、可動性、圧痛。 ・付属器:腫大の有無と大きさ、可動性、圧痛。 ・ダグラス窩:硬結(子宮内膜症の所見となりうる)、圧痛、膨隆。 ・子宮頸部可動痛:骨盤内炎症性疾患や異所性妊娠破裂などで陽性となる。
性交経験のない女性
腟に指を挿入できないため、直腸内に指を入れて行う直腸腹壁双合診を用いる。
超音波検査との関係
経腟超音波検査は形態の評価に優れるが、圧痛や移動痛、組織の硬さ、可動性といった情報は双合診によって得られる。両者は相補的であり、画像だけに頼らないことが大切である。
外陰部瘙痒感をきたす主な疾患と診断の手がかり
・外陰腟カンジダ症:酒粕状・ヨーグルト状の白色帯下。鏡検で菌糸や胞子を確認。 ・トリコモナス腟炎:黄緑色で泡沫状の帯下、悪臭。鏡検で運動する原虫を確認。 ・萎縮性腟炎:閉経後のエストロゲン低下による腟粘膜の菲薄化。 ・硬化性苔癬:外陰の白色で光沢のある皮膚変化。 いずれも視診・腟鏡診・帯下検査が診断の中心となる。
POINT
・双合診は子宮・付属器・ダグラス窩など骨盤内の内性器を触診する方法である。 ・下腹部痛、過多月経、続発性無月経、不正性器出血など、内性器病変や妊娠が原因となりうる主訴で有用性が高い。 ・外陰部瘙痒感は外陰・腟の表在性病変によるため、問診・視診・腟鏡診・帯下検査が優先され、双合診の有用性は低い。 ・圧痛・可動性・硬さの評価は超音波検査では代替できず、双合診が必要である。
