StudyMed医師国家試験

「人」の法律か「場所」の法律か―医師法と医療法をすっきり仕分ける

第105回医師国家試験 E問題 第2問

国試問題にチャレンジ

第105回 E問題 第2問

医療法に規定されているのはどれか。

  1. a.保健指導
  2. b.診療録の記載
  3. c.処方せんの交付
  4. d.異状死体の届出
  5. e.診療所開設の届出

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は医療に関わる2つの基本法、医師法と医療法の役割分担を問う問題だ。名前はよく似ているけれど、規定している対象がまったく違う。その違いを一言でつかめれば、迷わず解けるよ。
医学生医学生
正直、どちらも「医」がつく法律なので、CBTのときから混同しがちでした。
ドクタードクター
そういう人は多いよ。覚え方はシンプルで、医師法は「医師という人」についての法律、医療法は「医療を提供する場所と体制」についての法律だ。医師法には免許や国家試験、臨床研修、そして医師個人が診療で負う義務が書かれている。医療法には病院・診療所の定義や開設の手続き、人員や設備の基準、医療計画、医療安全などが書かれているんだ。
医学生医学生
そうすると、選択肢のうち医師個人が診療のたびに果たす義務は医師法、ということですね。
ドクタードクター
その通り。ひとつずつ確認しよう。まず保健指導。診療したら、本人や保護者に療養の方法など健康の向上に必要なことを指導する義務がある。これは医師法に規定された医師の義務だ。
医学生医学生
カルテを書くのも医師個人の義務なので、診療録の記載も医師法ですよね。臨床実習で「書いていないことはやっていないのと同じ」と指導医に言われました。
ドクタードクター
いい教えだね。診療録は遅滞なく記載し、5年間保存することが医師法で定められている。ちなみに、病院の処方せんやエックス線写真などの「診療に関する諸記録」の2年間保存は医療法施行規則のほうなので、混同しないようにね。
医学生医学生
処方せんの交付はどうでしょう。薬の話なので薬機法かと一瞬思いました。
ドクタードクター
そう迷う人もいるけれど、これも医師法だ。治療上、薬剤を投与する必要があると認めたら処方せんを交付しなければならない。ただし、患者が不要と申し出た場合や、暗示的効果を期待する場合などの例外も定められている。
医学生医学生
異状死体の届出も医師法ですね。法医学の講義で「24時間以内に警察署へ」と強調されていました。
ドクタードクター
正確だね。死体や妊娠4か月以上の死産児を検案して異状を認めたら、24時間以内に所轄の警察署へ届け出る。届出先が保健所ではなく警察署という点もよく問われる。
医学生医学生
となると、残った診療所開設の届出だけが施設についての手続きなので、医療法ということですね。
ドクタードクター
正解。臨床研修を修了した医師が自分で診療所を開設したときは、開設後10日以内に所在地の都道府県知事、保健所設置市や特別区なら市長・区長に届け出る。これが医療法の規定だ。
医学生医学生
開業するときは届出だけでいいんですか。病院も同じでしょうか。
ドクタードクター
そこが押さえておきたいポイントだ。病院の開設や、医療法人など臨床研修修了医師以外の者が診療所を開設する場合は、事前に都道府県知事などの許可が必要になる。病院は20床以上、診療所は無床か19床以下という定義も医療法で決まっているよ。
医学生医学生
医療法には医療計画や医療事故調査制度も含まれていた気がします。
ドクタードクター
そうだね。都道府県が策定する医療計画では二次医療圏や基準病床数、5疾病・6事業と在宅医療などが定められる。特定機能病院や地域医療支援病院の承認、医療法人の規定、インフォームド・コンセントの努力義務も医療法だ。一方、応招義務や無診察治療の禁止は医師法。臨床に出ると、自分がどの法律の義務を負っているかを意識する場面が意外と多いんだ。
医学生医学生
「人に関すること」か「施設や体制に関すること」かで仕分ければ、初見の選択肢でも判断できそうです。
ドクタードクター
その軸さえ持っていれば大丈夫。将来開業や病院運営に関わるときにも、この区別はそのまま役に立つよ。

まとめ

医師法は医師という「人」の資格と義務を、医療法は医療を提供する「場所と体制」を定める法律です。保健指導、診療録の記載と5年間保存、処方せんの交付、異状死体の24時間以内の警察署への届出は、いずれも医師個人の義務として医師法に規定されています。一方、臨床研修修了医師が診療所を開設した際の開設後10日以内の届出は医療法の規定であり、病院の開設は事前の許可制です。医療法には病院・診療所の定義、医療計画、医療安全、医療法人なども含まれます。「人か施設・体制か」という軸で整理しておけば、医事法規の問題を効率よく解けるだけでなく、臨床で自分が負う法的責任の理解にもつながります。

解答・解説

正解はeです

問われていること

医療に関する代表的な2つの法律、医師法と医療法の役割分担を問う問題である。

2つの法律の違い

・医師法:「医師という人」についての法律。医師免許、国家試験、臨床研修、そして診療にあたって医師個人が負う義務(応招義務、無診察治療の禁止、異状死体の届出、処方せんの交付、保健指導、診療録の記載・保存など)を定めている。 ・医療法:「医療を提供する場所と体制」についての法律。病院・診療所・助産所の定義、開設の許可・届出、人員・構造設備の基準、医療計画、医療安全、医療法人などを定めている。 選択肢a〜dはいずれも診療を行う医師個人の義務であり、医師法に規定されている。一方、診療所を開設したときの届出は医療施設に関する手続きであり、医療法に規定されている。このように「人(医師)に関するものか、施設・体制に関するものか」で区別すると判断しやすい。

選択肢考察

  1. ×a.  保健指導

    医師法の規定である(第23条)。医師は診療をしたとき、本人またはその保護者に対して、療養の方法など保健の向上に必要な事項を指導する義務を負う。診療する医師個人に課された義務であり、医療法の規定ではない。

  2. ×b.  診療録の記載

    医師法の規定である(第24条)。医師は診療をしたとき、遅滞なく診療に関する事項を診療録(カルテ)に記載しなければならない。診療録は5年間の保存が義務づけられ、病院・診療所で行った診療の記録はその管理者が、それ以外の記録は医師本人が保存する。なお、病院の診療に関する諸記録(処方せん、エックス線写真など)の2年間保存は医療法施行規則で定められており、区別して覚えるとよい。

  3. ×c.  処方せんの交付

    医師法の規定である(第22条)。医師は、治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合、患者または看護している者に処方せんを交付しなければならない。ただし、患者側が交付を必要としない旨を申し出た場合、暗示的効果を期待する場合、診断・治療を困難にするおそれがある場合など、いくつかの例外が定められている。

  4. ×d.  異状死体の届出

    医師法の規定である(第21条)。医師は、死体または妊娠4か月以上の死産児を検案して異状があると認めたとき、24時間以内に所轄の警察署へ届け出なければならない。届出先が保健所ではなく警察署であることもよく問われる。

  5. ○e.  診療所開設の届出

    医療法の規定である(第8条)。臨床研修を修了した医師・歯科医師が自ら診療所を開設したとき、または助産師が助産所を開設したときは、開設後10日以内に所在地の都道府県知事(保健所を設置する市・特別区では市長・区長)に届け出る。一方、病院の開設と、臨床研修修了医師以外の者(医療法人など)による診療所の開設には、事前に都道府県知事などの許可が必要である(第7条)。このように、医療施設の開設に関する手続きは医療法で定められている。

医師法に定める主な医師の義務

・第19条:応招義務(正当な理由がなければ診療を拒んではならない)、診断書などの交付義務 ・第20条:無診察での治療・診断書や処方せんの交付の禁止、診察せずに出生証明書・死産証書を交付することの禁止、検案せずに検案書を交付することの禁止(診療中の患者が最終診察後24時間以内に死亡した場合の死亡診断書には例外がある) ・第21条:異状死体などの届出(24時間以内、所轄警察署へ) ・第22条:処方せんの交付義務 ・第23条:保健指導を行う義務 ・第24条:診療録の記載と5年間の保存

医療法の主な内容

・病院(20床以上)、診療所(無床または19床以下)、助産所の定義 ・開設の許可・届出、人員配置や構造設備の基準 ・医療計画(都道府県が策定する。二次医療圏・三次医療圏、基準病床数、5疾病・6事業と在宅医療など) ・医療安全の確保(医療事故調査制度など) ・特定機能病院、地域医療支援病院、臨床研究中核病院の承認 ・医療法人に関する規定 ・インフォームド・コンセントの努力義務(医療の担い手は、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努める)

POINT

・医師法は医師個人の資格と義務、医療法は医療施設と提供体制を定める。 ・保健指導、診療録の記載、処方せんの交付、異状死体の届出はいずれも医師法。 ・臨床研修修了医師が診療所を開設したら、開設後10日以内に都道府県知事へ届け出る(医療法)。病院の開設は許可制。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。