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「背が縮んだ」は骨折のサイン―閉経後骨粗鬆症で椎骨がつぶれる理由

第105回医師国家試験 E問題 第19問

国試問題にチャレンジ

第105回 E問題 第19問

閉経後骨粗鬆症における身長の低下に関連するのはどれか。

  1. a.頭頂骨
  2. b.椎骨
  3. c.大腿骨
  4. d.脛骨
  5. e.踵骨

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は閉経後骨粗鬆症で身長が低くなる仕組みを問う問題だ。ポイントは、閉経によってどの種類の骨が弱くなりやすいか、そして身長を形づくっている骨はどこか、の2つ。まず、閉経後に骨量が減る理由から確認しよう。
医学生医学生
エストロゲンが減るからですよね。でも、エストロゲンが骨にどう効いているのかは、正直あいまいです。
ドクタードクター
骨は破骨細胞が壊し、骨芽細胞が作るというリモデリングを常に繰り返している。エストロゲンには破骨細胞の分化や活性を抑える働きがあるから、閉経でそれが急に減ると骨吸収が骨形成を上回って、骨量が減っていくんだ。原発性骨粗鬆症のなかで最も多いタイプだよ。
医学生医学生
生理学の講義で出てきた骨リモデリングの話ですね。では、全身の骨が同じように弱くなるのでしょうか。
ドクタードクター
そこが大事なところ。骨には外側の硬い皮質骨と、内部の網目状の海綿骨がある。閉経後の骨量減少は、代謝回転が速く表面積の大きい海綿骨で特に目立つ。海綿骨の割合が高い代表が椎体なんだ。
医学生医学生
組織学実習で見た、スポンジのような骨梁の部分ですね。そこが細く途切れてしまうと。
ドクタードクター
その通り。椎体は体重を支えて常に圧迫力がかかっているから、骨梁が弱ると、くしゃみや物を持ち上げる程度の負荷でもつぶれてしまう。これが椎体圧迫骨折だ。
医学生医学生
身長のほとんどは脊柱が占めているので、椎体がつぶれれば背が縮む、ということですね。正解は椎骨だと思います。
ドクタードクター
正解。椎体が前方から楔状につぶれたり全体が扁平化したりすると、脊柱が短くなるうえに胸椎の後弯が強まって円背になる。これが重なって身長が数cm単位で低下するんだ。しかも椎体骨折は痛みが乏しく、気づかれないまま進むことも多い。
医学生医学生
大腿骨も骨粗鬆症でよく折れますよね。整形外科の実習で、転倒して大腿骨頸部骨折になった高齢女性を担当しました。
ドクタードクター
大腿骨近位部骨折は寝たきりや生命予後に関わるとても重要な骨折だね。ただ、多くは転倒を契機に一度に起こるもので、椎体のように少しずつつぶれて身長を減らしていく機序ではない。脛骨も皮質骨の多い長管骨で、骨粗鬆症で圧潰して短くなることは通常ないんだ。
医学生医学生
踵骨は健診の骨密度測定で使われていた気がするので、少し迷いました。
ドクタードクター
鋭いね。踵骨は海綿骨が多いので、定量的超音波測定法による骨量評価の部位として健診で使われる。でも圧潰して身長低下の原因になる骨ではない。頭頂骨も頭蓋冠の扁平骨で荷重がかからないから、関係はないよ。
医学生医学生
測定部位としての踵骨と、骨折して身長が縮む椎体を区別しておく必要があるんですね。
ドクタードクター
そういうこと。発展として診断基準も押さえておこう。椎体か大腿骨近位部に脆弱性骨折があれば、骨密度にかかわらず骨粗鬆症と診断する。それ以外の脆弱性骨折があれば骨密度が若年成人平均値の80%未満、骨折がなければ70%以下または−2.5SD以下が基準だ。骨密度は原則として腰椎と大腿骨近位部をDXAで測る。
医学生医学生
椎体骨折は無症状のことも多いなら、どうやって見つければいいんでしょう。
ドクタードクター
そこで役立つのが身長の測定なんだ。若い頃と比べて4cm以上低くなっていたら椎体骨折を疑って、胸腰椎のX線撮影を検討する目安になる。円背が進むと胸郭や腹部が圧迫されて、呼吸機能の低下や逆流性食道炎、便秘の原因にもなるから、見逃さずに治療につなげたい。
医学生医学生
外来で「最近背が縮んだ」という一言を聞き流さない、ということですね。
ドクタードクター
その通り。治療ではカルシウム・ビタミンDや運動、転倒予防に加えて、ビスホスホネート薬、SERM、デノスマブ、テリパラチドなどを骨折リスクに応じて使い分ける。一つ目の椎体骨折が次の骨折を呼ぶこともあるから、早期発見と治療開始が大切だよ。

まとめ

閉経後骨粗鬆症では、エストロゲン低下により破骨細胞による骨吸収が亢進し、代謝回転の速い海綿骨が特に減少します。海綿骨に富み体重を支える椎体は軽微な負荷で圧迫骨折を起こしやすく、楔状椎・扁平椎の多発と円背によって脊柱が短縮し、身長が低下します。大腿骨近位部骨折は転倒を契機とする重要な骨折ですが身長低下の機序とは異なり、踵骨は超音波による骨量測定部位として知られるものの圧潰の原因にはなりません。椎体骨折は無症状のことも多いため、若い頃より4cm以上の身長低下は椎体骨折を疑う手がかりになり、椎体または大腿骨近位部の脆弱性骨折があれば骨密度にかかわらず骨粗鬆症と診断されます。骨の構造と骨折部位の特徴を結びつけて理解することは、骨折の早期発見と再骨折予防につながる臨床的に重要な視点です。

解答・解説

正解はbです

閉経後骨粗鬆症の病態

骨は、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成が常に釣り合いながら作り替えられている(骨リモデリング)。エストロゲンには破骨細胞の分化・活性を抑える作用があるため、閉経によってエストロゲンが急激に減少すると骨吸収が骨形成を上回り、骨量が減少する。これが閉経後骨粗鬆症であり、原発性骨粗鬆症の中で最も多い。

どの骨が影響を受けやすいか

閉経後の骨量減少は、代謝回転が速く表面積の大きい海綿骨(骨の内部にある網目状の骨)で特に目立つ。海綿骨の割合が高い代表が椎体であり、骨梁が細く途切れることで、くしゃみや物を持ち上げる程度の軽い負荷でも椎体がつぶれる脆弱性骨折(椎体圧迫骨折)を生じる。

身長低下との関係

身長の大部分を構成するのは脊柱であり、椎体が前方から楔状につぶれたり全体が扁平化したりすると、脊柱の高さが減るとともに胸椎の後弯が強まる(円背・亀背)。椎体骨折は痛みを伴わず気付かれないまま進行すること(いわゆる「いつの間にか骨折」)も多く、複数の椎体に積み重なることで身長は数cm単位で低下する。したがって閉経後骨粗鬆症の身長低下に関連する骨は椎骨である。臨床的には、若い頃と比べて身長が4cm以上低下していれば椎体骨折の存在を疑って胸腰椎X線撮影を行う、というように身長の測定は骨折の拾い上げに役立つ。

選択肢考察

  1. ×a.  頭頂骨

    誤り。頭頂骨は頭蓋冠を構成する扁平骨で、荷重がかからず骨粗鬆症で骨折して高さを失うことはない。骨粗鬆症が身長低下に結びつく部位ではない。

  2. ○b.  椎骨

    正しい。椎体は海綿骨に富み、閉経後のエストロゲン欠乏による骨量減少の影響を最も受けやすい。体重を支えるため圧迫力がかかり、椎体圧迫骨折(楔状椎・扁平椎)が多発すると脊柱が短縮し、後弯変形(円背)も加わって身長が低下する。椎体骨折は骨粗鬆症性骨折の中で最も頻度が高い。

  3. ×c.  大腿骨

    誤り。大腿骨近位部骨折(頸部骨折・転子部骨折)は骨粗鬆症の代表的な骨折で、寝たきりや生命予後の悪化につながる重要な骨折である。しかし多くは転倒を契機に一度に起こる骨折であり、椎体のように徐々につぶれて身長を減らしていく機序ではない。

  4. ×d.  脛骨

    誤り。脛骨は皮質骨の多い長管骨で、骨粗鬆症による圧潰で長さが短くなることは通常ない。骨粗鬆症の身長低下に関わる部位ではない。

  5. ×e.  踵骨

    誤り。踵骨は海綿骨に富むため、定量的超音波測定法(QUS)による骨量評価の測定部位として健診などで用いられるが、骨粗鬆症で圧潰して身長低下の原因となる骨ではない。

骨粗鬆症の定義と分類

骨粗鬆症は、骨強度(骨密度と骨質で決まる)が低下し、骨折のリスクが高まった状態をいう。原発性(閉経後骨粗鬆症、男性骨粗鬆症、特発性など)と、ステロイド薬、甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症、関節リウマチなどによる続発性に分けられる。

原発性骨粗鬆症の診断基準(日本骨代謝学会・日本骨粗鬆症学会 2012年度改訂)

他の骨量減少をきたす疾患を除外したうえで、 ・椎体骨折または大腿骨近位部骨折の脆弱性骨折がある場合は、骨密度にかかわらず骨粗鬆症と診断する。 ・その他の脆弱性骨折(前腕骨遠位端、上腕骨近位部、肋骨、骨盤など)があり、骨密度が若年成人平均値(YAM)の80%未満の場合。 ・脆弱性骨折がない場合は、骨密度がYAMの70%以下または−2.5SD以下の場合。 骨密度は原則として腰椎と大腿骨近位部を二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)で測定する。

骨粗鬆症の代表的な骨折部位

椎体、大腿骨近位部、橈骨遠位端(手関節)、上腕骨近位部の4つが代表的である。椎体骨折は身長低下・円背・慢性腰背部痛の原因となり、円背が進むと胸郭や腹部が圧迫されて呼吸機能の低下、逆流性食道炎、便秘などを招くこともある。

治療の概要

カルシウム・ビタミンDの摂取や運動、転倒予防に加え、薬物療法としてビスホスホネート薬、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、抗RANKL抗体(デノスマブ)、副甲状腺ホルモン製剤(テリパラチド)、抗スクレロスチン抗体(ロモソズマブ)、活性型ビタミンD3製剤などが用いられる。

POINT

・閉経後骨粗鬆症はエストロゲン低下により骨吸収が亢進し、海綿骨の多い椎体が最も影響を受ける。 ・椎体圧迫骨折の多発による脊柱の短縮と円背が身長低下の原因となる。 ・椎体骨折は無症状のことも多く、身長低下(若い頃から4cm以上)は椎体骨折を疑うきっかけになる。 ・椎体または大腿骨近位部の脆弱性骨折があれば、骨密度によらず骨粗鬆症と診断する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。