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赤い光に浮かぶ黒い影―徹照法が映し出す白内障

第105回医師国家試験 E問題 第13問

国試問題にチャレンジ

第105回 E問題 第13問

徹照法が診断に有用なのはどれか。

  1. a.老視
  2. b.緑内障
  3. c.白内障
  4. d.糖尿病網膜症
  5. e.高血圧網膜症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は眼科の検査法、徹照法の問題だ。検査の原理さえ理解すれば、どの疾患に役立つかは自然に見えてくる。まず、徹照法がどんな検査か説明できるかな。
医学生医学生
眼底からの反射を見る検査、というくらいしか覚えていません。
ドクタードクター
大筋はそれで合っている。直像鏡や細隙灯などの光を瞳孔から眼内へ入れると、眼底で反射した光が戻ってきて、瞳孔領全体が均一な橙赤色に光って見える。これが赤色反射だ。徹照法は、この赤い光を背景にして、光の通り道を観察する方法なんだ。
医学生医学生
光の通り道というと、角膜、前房、水晶体、硝子体ですね。生理学で中間透光体と習いました。
ドクタードクター
その通り。中間透光体のどこかに混濁があると、その部分で反射光が遮られて、赤い瞳孔領の中に黒い影として浮かび上がる。つまり徹照法が得意なのは「透明であるべき場所の濁り」を見つけることだ。
医学生医学生
だとすると、網膜の病気も眼底から光が返ってくるので、何か変化が見えそうな気がします。
ドクタードクター
そこが誤解しやすいところだね。徹照法で見ているのは、眼底を「光源」として使ったシルエットなんだ。網膜そのものの病変は光の通り道を遮らないから影にはならない。網膜を見たいなら眼底検査で直接観察する必要がある。
医学生医学生
なるほど。じゃあ水晶体が濁る白内障が答えでしょうか。
ドクタードクター
正解。白内障では混濁部分が暗い影として描出されるので、混濁の有無・部位・形を簡便につかめる。特に、細隙灯の直接照明では見逃しやすい初期の混濁や、皮質の楔状混濁、後嚢下混濁といった部分的な混濁を見つけるのに役立つ。散瞳下で行うとさらに観察しやすいよ。
医学生医学生
眼科の臨床実習で、細隙灯で水晶体の楔状の影を見せてもらったのを思い出しました。あれが徹照像だったんですね。
ドクタードクター
きっとそうだね。では他の疾患がなぜ違うか確認しよう。老視も水晶体の問題だけど、どうかな。
医学生医学生
老視は水晶体の弾性が落ちて調節力が低下する状態なので、濁っているわけではない……だから影にならない、ということですね。
ドクタードクター
その理解で完璧だ。老視の評価は近点距離の測定や調節力の評価で行う。緑内障はどうだろう。
医学生医学生
緑内障は視神経の病気なので、中間透光体の混濁とは関係ないですね。
ドクタードクター
そう。視神経乳頭の陥凹拡大と視野欠損が本態だから、眼圧測定、隅角検査、眼底検査、視野検査、OCTで評価する。糖尿病網膜症と高血圧網膜症も、病変は網膜血管と網膜そのものにあるから、眼底検査や蛍光眼底造影、OCTで診るものだ。ただし、増殖糖尿病網膜症で硝子体出血を起こすと、赤色反射が弱まったり消えたりして気づかれることはある。
医学生医学生
それは網膜症そのものではなく、硝子体という中間透光体が濁った結果を見ているわけですね。
ドクタードクター
その区別ができれば十分だ。硝子体の混濁は眼球を動かすと影が揺れて動くので、水晶体の混濁と区別できる。発展として、虹彩の萎縮や欠損では逆に光が透けて見える「虹彩徹照像」が観察されることも覚えておこう。
医学生医学生
小児科の講義で、乳幼児健診の赤色反射も大切だと聞きました。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。赤色反射の左右差や消失は、先天白内障や網膜芽細胞腫による白色瞳孔のスクリーニングにつながる。先天白内障は放置すると弱視につながるおそれがあり、網膜芽細胞腫は命に関わる腫瘍だから、早く気づくことが何より大事なんだ。簡単な道具でできる検査だからこそ、原理を理解して使いこなしてほしい。

まとめ

徹照法は、瞳孔から入れた光が眼底で反射して返ってくる赤色反射を背景に、中間透光体(角膜・水晶体・硝子体)の混濁を黒い影として観察する検査です。代表的な適応は白内障で、皮質の楔状混濁や後嚢下混濁など、初期や部分的な水晶体混濁の検出に有用です。老視は調節力の低下で混濁を伴わず、緑内障は視神経、糖尿病網膜症や高血圧網膜症は網膜血管の病変であるため、徹照法ではなく眼底検査や視野検査、OCTなどで評価します。硝子体出血による赤色反射の減弱や、乳幼児の先天白内障・網膜芽細胞腫のスクリーニングにも応用されます。検査の原理から「何が見えて何が見えないか」を考える姿勢は、眼科検査全般の理解に役立ちます。

解答・解説

正解はcです

徹照法(てっしょうほう、retroillumination)は、検者が直像鏡・倒像鏡・細隙灯顕微鏡などの光を瞳孔に向けて入射させ、眼底で反射して戻ってくる光(眼底からの赤色反射、red reflex)を瞳孔領越しに観察する検査である。光の通り道である中間透光体(角膜・前房・水晶体・硝子体)に混濁があると、その部分で反射光が遮られ、橙赤色に明るく見える瞳孔領の中に黒い影として浮かび上がる。 したがって、この方法が威力を発揮するのは「透明であるべき中間透光体の混濁」を見つける場面であり、代表が水晶体の混濁である白内障である。一方、屈折・調節の異常、眼圧や視神経の障害、網膜血管そのものの病変は、反射光を遮る影としては現れないため、徹照法では評価できない。 設問を解くうえでは、各疾患の病変がどこにあり、それが光の透過を妨げる「混濁」なのかどうかを考えればよい。

選択肢考察

  1. ×a.  老視

    老視は加齢により水晶体の弾性が低下し、毛様体筋の働きに応じて水晶体が十分に厚くなれなくなる調節力の低下である。中間透光体に混濁が生じるわけではないため、徹照法では異常所見として捉えられない。診断は近点距離の測定や、近見視力・調節力の評価による。

  2. ×b.  緑内障

    緑内障は眼圧などを背景に視神経乳頭の陥凹拡大と特徴的な視野欠損をきたす進行性の視神経症であり、水晶体や硝子体の混濁は本質的な病態ではない。診断には眼圧測定、隅角鏡検査、眼底検査(視神経乳頭陥凹の評価)、視野検査、光干渉断層計(OCT)による網膜神経線維層厚の測定などを用いる。

  3. ○c.  白内障

    白内障は水晶体が混濁する疾患である。徹照法では、赤く光る瞳孔領の中に混濁部分が暗い影(陰影)として描出されるため、混濁の有無・部位・形状を簡便に把握できる。特に、細隙灯の直接照明では見逃しやすい初期の混濁や部分的な混濁(皮質の楔状混濁、後嚢下混濁など)の検出に有用であり、散瞳下で行うとより観察しやすい。

  4. ×d.  糖尿病網膜症

    糖尿病網膜症の主病変は網膜の毛細血管障害(毛細血管瘤、網膜出血、硬性白斑、軟性白斑、新生血管など)であり、網膜そのものの所見は徹照法では直接観察できない。診断・病期判定には散瞳下の眼底検査、蛍光眼底造影、OCTを用いる。なお、増殖期に硝子体出血をきたすと徹照法で赤色反射の減弱・消失として気づかれることはあるが、網膜症の診断法として有用というわけではない。

  5. ×e.  高血圧網膜症

    高血圧網膜症は網膜細動脈の狭細化・口径不同、動静脈交叉現象、出血、白斑、乳頭浮腫などを呈する網膜血管と網膜の病変である。これらは眼底検査で直接観察して評価するものであり、中間透光体の混濁を影として見る徹照法では診断できない。重症度評価にはKeith-Wagener分類やScheie分類が用いられる。

徹照法の原理と方法

光源(直像鏡・倒像鏡・細隙灯顕微鏡)の光を瞳孔から眼内へ入れ、眼底からの反射光で瞳孔領を後ろから照らして観察する。正常では瞳孔領全体が均一な橙赤色に輝く(赤色反射)。中間透光体に混濁があると、その部位が黒い影となる。検眼鏡の場合は、眼から少し離れた距離(30〜50 cm程度)から観察することが多い。

徹照法で観察しやすいもの

・水晶体の混濁(白内障):皮質白内障の楔状・車軸状混濁、後嚢下白内障など。 ・硝子体の混濁:硝子体出血、硝子体混濁(ぶどう膜炎など)。硝子体の混濁は眼球運動に伴って影が動くことで水晶体混濁と区別できる。 ・角膜の混濁。 ・虹彩の萎縮・欠損(虹彩徹照像として光が透けて見える)。

小児での応用

乳幼児では、赤色反射の左右差や消失の確認が、先天白内障や網膜芽細胞腫(白色瞳孔)のスクリーニングに役立つ。

他の疾患の主な診断法

・老視:近点測定、調節力測定。 ・緑内障:眼圧測定、隅角検査、眼底検査、視野検査、OCT。 ・糖尿病網膜症・高血圧網膜症:眼底検査、蛍光眼底造影、OCT。

POINT

・徹照法は眼底からの反射光を背景にして、中間透光体(角膜・水晶体・硝子体)の混濁を暗い影として観察する検査である。 ・最も代表的な適応は白内障であり、初期や部分的な水晶体混濁の検出に有用である。 ・網膜・視神経の病変(糖尿病網膜症、高血圧網膜症、緑内障)や調節異常(老視)は徹照法の対象ではない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。