目は口ほどに物を言う―Down症候群の眼所見と「見逃してはいけない白内障」
第105回医師国家試験 D問題 第6問
国試問題にチャレンジ
Down症候群にみられる眼所見はどれか。
- a.兎眼
- b.白内障
- c.黄斑円孔
- d.眼瞼下垂
- e.角膜ジストロフィー
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
Down症候群(21トリソミー)では眼科的合併症が多く、外見上の特徴として眼瞼裂斜上・内眼角贅皮・Brushfield斑、視機能に関わるものとして屈折異常、斜視(内斜視が多い)、眼振、白内障、円錐角膜がみられます。選択肢の中でDown症候群の合併症として知られているのは白内障で、先天白内障や若年からの白内障の頻度が一般より高くなります。先天白内障は視覚発達期に鮮明な像が網膜に結ばれないため弱視の原因となり、新生児期からの赤色反射確認などによる早期発見が重要です。兎眼は顔面神経麻痺、眼瞼下垂は動眼神経麻痺やHorner症候群、黄斑円孔は加齢に伴う硝子体牽引で起こり、Down症候群の角膜病変は角膜ジストロフィーではなく円錐角膜である点も区別しておきましょう。自覚症状を訴えにくい児の視機能を守るため、定期的な眼科検診を全身管理の一部として位置づける視点が求められます。
解答・解説
正解はbです
Down症候群は21番染色体が3本となる(21トリソミー)ことで生じる最も頻度の高い常染色体異常症で、出生約700〜1,000人に1人の割合でみられる。発症率は母体年齢の上昇とともに高くなる。知的障害、特徴的顔貌、筋緊張低下に加え、先天性心疾患(心内膜床欠損症〈房室中隔欠損症〉、心室中隔欠損症など)、消化管奇形(十二指腸閉鎖、Hirschsprung病など)、白血病、甲状腺機能低下症、環軸椎不安定性など、全身の多くの臓器に合併症が生じる。 眼科領域でも合併症が多く、Down症候群の小児の多くが何らかの眼の異常をもつ。代表的なものは次のとおりである。 ・外見上の特徴:眼瞼裂斜上(目尻がつり上がる)、内眼角贅皮(目頭を覆う皮膚のひだ)、Brushfield斑(虹彩周辺部の白色斑点) ・屈折異常(遠視・近視・乱視)と調節力の低下 ・斜視(特に内斜視)、眼振 ・水晶体:先天白内障や若年からの白内障 ・角膜:円錐角膜 ・その他:眼瞼炎、鼻涙管閉塞 選択肢のうちDown症候群の合併症として知られているのは白内障である。先天白内障は放置すると視覚の発達(視性刺激による視覚中枢の発達)を妨げ、弱視の原因になるため、新生児期・乳児期から眼科的評価を行うことが重要である。
選択肢考察
- ×a. 兎眼
兎眼とは眼瞼が完全に閉じられず、眠っている間も角膜・結膜の一部が露出してしまう状態をいう。眼輪筋を支配する顔面神経の麻痺(Bell麻痺など)が代表的な原因で、ほかに甲状腺眼症による眼球突出や、眼瞼の瘢痕なども原因となる。露出した角膜が乾燥し、兎眼性角膜炎を起こす。Down症候群で閉瞼が障害されることはない。
- ○b. 白内障
Down症候群では、先天白内障の頻度が一般集団より明らかに高い。さらに加齢に伴う白内障も一般より若い年齢から生じやすく、成人期には高頻度となる。先天白内障は視覚の発達期に網膜へ鮮明な像が結ばれないため、早期に発見・治療しないと重い弱視を残す。このため新生児期から赤色反射(眼底からの赤い反射光)の確認などによるスクリーニングが推奨される。
- ×c. 黄斑円孔
黄斑円孔は、網膜の中心にある黄斑部(中心窩)に全層性の孔があく疾患である。多くは加齢に伴い硝子体が網膜を前方へ引っぱる力(硝子体牽引)によって生じる特発性のもので、50〜70歳代の女性に多い。強度近視や眼外傷に続発することもある。変視症(物がゆがんで見える)と中心視力低下を来し、硝子体手術で治療する。Down症候群に特徴的な所見ではない。
- ×d. 眼瞼下垂
眼瞼下垂は上眼瞼が下がって瞳孔を覆う状態で、先天性(上眼瞼挙筋の発育不全)のほか、動眼神経麻痺(上眼瞼挙筋の麻痺)、Horner症候群(Müller筋の麻痺による軽度の下垂)、重症筋無力症、加齢による腱膜性下垂などが原因となる。Down症候群の眼瞼の特徴は眼瞼裂斜上と内眼角贅皮であり、眼瞼下垂は典型的な所見ではない。
- ×e. 角膜ジストロフィー
角膜ジストロフィーは、特定の遺伝子(TGFBI遺伝子など)の変異により、角膜の特定の層に混濁や変性が両眼性・進行性に生じる遺伝性疾患群である(顆粒状角膜ジストロフィー、格子状角膜ジストロフィー、Fuchs角膜内皮ジストロフィーなど)。Down症候群の角膜病変として知られるのは、角膜の中央部が薄くなって円錐状に前方へ突出する円錐角膜である。円錐角膜は角膜ジストロフィーとは別の疾患であり、目をこする習慣が進行に関与すると考えられている。
Down症候群の眼所見の整理
・眼瞼:眼瞼裂斜上、内眼角贅皮、眼瞼炎 ・虹彩:Brushfield斑 ・屈折・調節:遠視、近視、乱視、調節力低下(眼鏡による矯正が必要になることが多い) ・眼位・眼球運動:斜視(内斜視が多い)、眼振 ・水晶体:先天白内障、若年性白内障 ・角膜:円錐角膜(急性角膜水腫を起こすことがある) ・涙道:鼻涙管閉塞 これらのうち、屈折異常、斜視、白内障、円錐角膜は弱視や視力障害につながるため、治療の対象となる。Down症候群の児では自覚症状を訴えにくいことが多く、定期的な眼科検診が勧められる。
小児の白内障の主な原因
・染色体異常:Down症候群(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーなど ・胎内感染:先天性風疹症候群(白内障・先天性心疾患・難聴が三徴)など ・代謝異常:ガラクトース血症(ガラクチトールの蓄積)、低血糖など ・その他の症候群:Lowe症候群(眼脳腎症候群)など ・遺伝性(家族性)、特発性
眼瞼に関する用語の区別
・兎眼:閉瞼できない(顔面神経麻痺など) ・眼瞼下垂:開瞼できない(動眼神経麻痺、Horner症候群、重症筋無力症など)
POINT
・Down症候群の眼所見:眼瞼裂斜上、内眼角贅皮、Brushfield斑、屈折異常、斜視(内斜視)、眼振、白内障、円錐角膜 ・先天白内障は弱視の原因となるため早期発見・早期治療が重要 ・Down症候群の角膜病変は円錐角膜であり、角膜ジストロフィーではない ・兎眼は顔面神経麻痺、眼瞼下垂は動眼神経麻痺やHorner症候群などでみられる
