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二重らせんは誰が描いたのか―生命科学の巨人たちと業績を結びつける

第105回医師国家試験 C問題 第15問

国試問題にチャレンジ

第105回 C問題 第15問

DNAの三次元立体構造と役割の解明に貢献したのは誰か。

  1. a.Charles R Darwin
  2. b.Barbara McClintock
  3. c.Gregor J Mendel
  4. d.Jacques L Monod
  5. e.James D Watson

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、生命科学や遺伝学の歴史に名を残した研究者と、その業績を正しく結びつけられるかを問う問題だ。キーワードは「DNAの三次元立体構造」と「役割」。この2つが同時に説明された発見は何だったか、思い出しながら考えてみよう。
医学生医学生
DNAの立体構造といえば二重らせんですよね。生化学の講義で最初に習った気がします。
ドクタードクター
そう、そこが出発点。では少し歴史をさかのぼろう。1940〜50年代には、Averyらの肺炎球菌の形質転換実験や、HersheyとChaseのバクテリオファージの実験で、遺伝物質はDNAらしいとわかりつつあった。でも、DNAがどんな形をしていて、どうやって情報をコピーするのかはまだ謎だったんだ。
医学生医学生
遺伝物質だとはわかっても、仕組みまでは説明できていなかったんですね。
ドクタードクター
その通り。そこで1953年、James D WatsonとFrancis Crickが、DNAの二重らせん構造モデルをNature誌に発表した。2本の鎖が逆向き、つまり逆平行に絡み合い、内側で塩基どうしが相補的に対合するというモデルだ。
医学生医学生
AとT、GとCがペアになるというルールですね。水素結合はA–Tが2本、G–Cが3本でした。
ドクタードクター
よく覚えているね。このモデルが画期的だったのは、形を示しただけでなく、「片方の鎖がもう片方の鋳型になる」ことから、DNAが正確に複製される仕組みを自然に説明できた点なんだ。だから問題文の「立体構造と役割の解明」にぴったり当てはまる。正解はWatsonだ。
医学生医学生
でも、二重らせんの話になるとRosalind Franklinの名前も出てきますよね。選択肢にないのが少し気になりました。
ドクタードクター
鋭いね。FranklinはDNAの鮮明なX線回折像、いわゆる写真51を撮影して、らせん構造の決定に欠かせないデータを提供した。1962年のノーベル生理学・医学賞はWatson、Crick、Wilkinsの3人が受賞したけれど、Franklinは1958年に亡くなっていて、存命者しか対象にならないノーベル賞の受賞者には含まれていないんだ。では、ほかの選択肢も見ていこう。Darwinはどうかな。
医学生医学生
『種の起源』の進化論ですよね。自然選択説だったと思います。
ドクタードクター
そう。1859年に、生存に有利な変異をもつ個体がより多く子孫を残すことで生物が変化していく、という自然選択説を中心に進化論を唱えた。当時はDNAの存在すら知られていなかったから、構造解明とは関係がない。次にMendelは?
医学生医学生
エンドウマメの交配実験ですね。高校の生物で、優性・分離・独立の法則を習いました。
ドクタードクター
その通り。1865年に、形質は粒子状の遺伝因子によって親から子へ伝わることを示した遺伝学の祖だ。ただ、その因子の化学的な正体や構造までは扱っていない。生前はほとんど注目されず、1900年に再発見されたことでも知られているね。
医学生医学生
McClintockとMonodは、正直どちらも名前を聞いたことがある程度です。
ドクタードクター
ここが差のつくところだ。Barbara McClintockはトウモロコシの粒の斑入り模様を研究して、ゲノム上を移動する遺伝因子、つまりトランスポゾンを発見した。いわゆる「動く遺伝子」で、1983年に単独でノーベル賞を受賞している。Jacques L MonodはFrançois Jacobとともに、大腸菌のラクトース代謝の研究からオペロン説を提唱した人物だ。
医学生医学生
オペロン説は分子生物学の講義でlacオペロンとして出てきました。リプレッサーがオペレーターに結合して転写をまとめて止める、という話ですよね。
ドクタードクター
そう。遺伝子の働きの調節を明らかにした業績で、これもDNAの立体構造とは別の話だね。整理すると、Darwinは進化論、Mendelは遺伝の法則、McClintockはトランスポゾン、Monodはオペロン説、そしてWatsonとCrickがDNA二重らせんだ。
医学生医学生
人物と業績を年代順に並べると、遺伝学の流れが一本のストーリーになりますね。
ドクタードクター
いい捉え方だ。発展として押さえておきたいのは、二重らせんモデルから予想された半保存的複製が、1958年にMeselsonとStahlの実験で証明されたこと。さらにCrickは、遺伝情報がDNAからRNA、タンパク質へと流れるセントラルドグマを提唱した。こうした基礎の積み重ねが、今日の遺伝子検査やPCR、分子標的薬といった臨床医学を支えているんだ。
医学生医学生
実習で見たがんの遺伝子パネル検査も、元をたどればこの二重らせんの発見につながっているんですね。
ドクタードクター
その通り。歴史上の人物問題は暗記に見えるけれど、業績の中身と意義をセットで覚えると忘れにくいし、医学の土台を理解することにもなるよ。

まとめ

DNAの三次元立体構造と遺伝物質としての役割を明らかにしたのは、1953年に二重らせん構造モデルを提唱したJames D WatsonとFrancis Crickであり、Franklinらが得たX線回折像がその基盤となりました。このモデルは、逆平行の2本鎖とA–T・G–Cの相補的塩基対によって、一方の鎖が鋳型となる半保存的複製の仕組みを説明した点で画期的でした。Darwinは自然選択説による進化論、Mendelは遺伝の法則、McClintockはトランスポゾンの発見、Monodはオペロン説と、それぞれ業績が異なるため区別して覚えておく必要があります。人物と業績を年代順にたどると遺伝学の発展が一本の流れとして理解でき、現在の遺伝子検査や分子標的治療を支える基礎知識にもつながります。

解答・解説

正解はeです

本問は、生命科学・遺伝学の歴史に名を残した研究者と、その業績を正しく結びつけられるかを問う問題である。 DNA(デオキシリボ核酸)が遺伝情報の担い手であることは1940〜50年代の研究(Averyらの肺炎球菌の形質転換実験、Hershey と Chase のバクテリオファージ実験など)で示されつつあったが、DNAがどのような立体構造をとり、どうやって情報を複製・伝達するのかは不明であった。1953年、James D Watson と Francis Crick は、Rosalind Franklin や Maurice Wilkins が得たDNAのX線回折像などをもとに、2本のポリヌクレオチド鎖が逆向き(逆平行)に絡み合い、内側で塩基どうしが相補的に対合する「二重らせん構造モデル」を Nature 誌に発表した。 このモデルは、単に形を示しただけではなく、「一方の鎖が他方の鎖の鋳型になる」ことから、DNAが正確に複製される仕組み(半保存的複製)を自然に説明できる点で画期的であった。すなわち、DNAの立体構造と遺伝物質としての役割の両方を明らかにしたことになる。この業績により、Watson、Crick、Wilkins の3名は1962年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。 したがって、各選択肢の人物の代表的業績を思い出し、「DNAの三次元構造」に直結するのは誰かを選べばよい。

選択肢考察

  1. ×a.  Charles R Darwin

    英国の博物学者で、1859年に『種の起源』を著し、生存に有利な変異をもつ個体が子孫を多く残すことで生物が変化していくという「自然選択(自然淘汰)説」を中心とする進化論を唱えた。ビーグル号での航海、特にガラパゴス諸島での観察が着想の一助となったことで知られる。遺伝の物質的な実体(DNA)は当時知られておらず、DNAの構造解明とは無関係である。

  2. ×b.  Barbara McClintock

    米国の細胞遺伝学者で、トウモロコシの粒の色の斑入り模様を研究する中で、ゲノム上の位置を移動する遺伝因子(転移因子、トランスポゾン、いわゆる「動く遺伝子」)を発見した。発表当初は評価されなかったが、のちに細菌などでも確認され、1983年に単独でノーベル生理学・医学賞を受賞した。遺伝子の動的なふるまいを示した業績であり、DNAの二重らせん構造の解明ではない。

  3. ×c.  Gregor J Mendel

    オーストリアの修道士で、エンドウマメの交配実験から、優性(顕性)の法則・分離の法則・独立の法則からなる「メンデルの法則」を1865年に発表した。形質は粒子状の「遺伝因子」(現在の遺伝子)によって親から子へ伝わることを示した遺伝学の祖であるが、その因子の化学的な実体や構造は扱っていない。業績は生前ほとんど注目されず、1900年に複数の研究者により再発見された。

  4. ×d.  Jacques L Monod

    フランスの分子生物学者で、François Jacob とともに大腸菌のラクトース(乳糖)代謝酵素の発現調節を研究し、オペロン説を提唱した。リプレッサー(抑制因子)がオペレーターに結合して一群の遺伝子の転写をまとめてオン・オフするという、遺伝子発現調節の基本概念である。この業績で Jacob、André Lwoff とともに1965年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。遺伝子の働きの調節を明らかにしたものであり、DNAの立体構造の解明ではない。

  5. ○e.  James D Watson

    米国の分子生物学者で、1953年に Francis Crick とともにDNAの二重らせん構造モデルを提唱した。2本の鎖が逆平行に向かい合い、アデニン(A)とチミン(T)、グアニン(G)とシトシン(C)が水素結合で相補的に対合するという構造であり、一方の鎖を鋳型として他方が正確に複製される仕組みを説明した。DNAの三次元立体構造と遺伝物質としての役割を同時に示した業績であり、1962年に Crick、Wilkins とともにノーベル生理学・医学賞を受賞した。

DNA二重らせん構造の要点

・2本のポリヌクレオチド鎖が互いに逆向き(5'→3' と 3'→5')に並ぶ(逆平行)。 ・糖(デオキシリボース)とリン酸の骨格が外側、塩基が内側に位置する。 ・塩基対は A–T(水素結合2本)、G–C(水素結合3本)の相補的対合である。この規則性は、Chargaff が見いだした「A量=T量、G量=C量」という経験則(Chargaff の法則)とも一致する。 ・右巻きのらせんで、1回転あたり約10塩基対(B型DNA)である。 ・相補性により、複製時には各鎖が鋳型となり、新しい二本鎖は古い鎖1本と新しい鎖1本からなる(半保存的複製。1958年に Meselson と Stahl が実験で証明)。

構造解明に関わった人物

・Rosalind Franklin:DNAの鮮明なX線回折像(いわゆる「写真51」)を撮影し、らせん構造の決定に不可欠なデータを提供した。1958年に死去しており、ノーベル賞は存命者のみが対象のため受賞者に含まれていない。 ・Maurice Wilkins:DNAのX線結晶構造解析を進め、1962年に Watson、Crick と共同受賞した。 ・Francis Crick:のちに遺伝情報が DNA → RNA → タンパク質へと流れるという「セントラルドグマ」を提唱した。

遺伝・生命科学史上の主な人物と業績

・Darwin:自然選択説による進化論(『種の起源』1859年) ・Mendel:遺伝の法則(1865年) ・Avery:形質転換物質がDNAであることを示した(1944年) ・Watson と Crick:DNA二重らせん構造(1953年) ・Jacob と Monod:オペロン説(1961年) ・McClintock:トランスポゾンの発見(1940年代〜、1983年ノーベル賞)

POINT

・DNA二重らせん構造モデル=Watson と Crick(1953年)。X線回折像を提供したのは Franklin と Wilkins。 ・McClintock=トランスポゾン、Mendel=遺伝の法則、Monod=オペロン説、Darwin=自然選択説(進化論)。 ・二重らせんは逆平行、A–T と G–C の相補的塩基対、半保存的複製の基盤となる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。