生後2日の「異常に見える正常」―閉じているはずのない大泉門を見抜く
第105回医師国家試験 B問題 第7問
国試問題にチャレンジ
在胎39週0日,3,210 gで出生した女児の生後2日の所見として病的なのはどれか。
- a.体重3,050 g
- b.大泉門閉鎖
- c.乳汁分泌
- d.性器出血
- e.総ビリルビン4.5 mg/dL
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
新生児期には、生理的体重減少(出生体重の10%以内)、生理的黄疸(生後2〜3日に出現し4〜5日でピーク)、母体由来ホルモンの影響による魔乳(男女とも)や新生児月経(女児)など、異常に見えても生理的な現象が多くみられます。一方、大泉門は出生時に開いていて1歳〜1歳半頃に閉鎖するため、生後2日での閉鎖は頭蓋縫合早期癒合症や小頭症を疑う病的所見です。小泉門は生後1〜2か月までに閉じるので、両者を混同しないことが重要です。泉門は閉鎖遅延なら水頭症やくる病、甲状腺機能低下症、膨隆なら頭蓋内圧亢進、陥凹なら脱水を示唆し、乳幼児診察の基本となる所見です。生理的変化の機序を理解しておくことは、病的所見を見抜く力と、保護者への的確な説明の両方につながります。
解答・解説
正解はbです
問われていること
在胎39週0日(正期産:37週0日〜41週6日)、出生体重3,210 g(適正体重)で生まれた健康な女児の、生後2日に見られる所見のうち「病的」なものを選ぶ問題である。新生児期には、出生に伴う環境の変化や、胎内で母体から移行したホルモンの影響によって、一見異常に見えるが実際には生理的な現象が多く見られる。これらを病的所見と区別できるかが問われている。
考え方
各選択肢を次の視点で整理するとよい。 ・生理的体重減少:生後数日で出生体重の10%以内の減少は正常。 ・母体由来ホルモンの離脱・影響:乳汁分泌(魔乳)、性器出血(新生児月経)、乳房腫大など。性別を問わず見られるものと、女児特有のものがある。 ・生理的黄疸:生後2〜3日頃に出現し、4〜5日頃にピークとなる。 ・頭蓋の発達:大泉門は出生時には開いており、1歳〜1歳半頃に閉鎖する。 この中で、生後2日の時点で大泉門が閉鎖していることは正常の発達経過からは説明できず、頭蓋縫合早期癒合症や小頭症などを疑う所見である。
選択肢考察
- ×a. 体重3,050 g
出生体重3,210 gから160 gの減少で、減少率は160÷3,210≒5.0%である。新生児は出生後、不感蒸泄(皮膚や呼気からの水分喪失)、排尿、胎便の排泄に対して哺乳量がまだ少ないため、生後3〜5日頃までに体重が減少する。これを生理的体重減少といい、出生体重の10%以内であれば正常である。通常は生後7〜14日頃までに出生体重に戻る。本例は正常範囲内である。
- ○b. 大泉門閉鎖
大泉門は前頭骨と左右の頭頂骨の間にある菱形の膜性部分で、出生時は開いており、生後しばらくはむしろやや拡大することもある。通常は1歳〜1歳半頃(遅くとも2歳頃まで)に閉鎖する。生後2日で閉鎖しているのは明らかに早すぎ、頭蓋縫合早期癒合症(狭頭症)や、脳の発育不全による小頭症などを疑う病的所見である。なお、小泉門(後頭骨と頭頂骨の間)は出生時にほぼ閉じているか、生後1〜2か月頃までに閉鎖するので、混同しないこと。
- ×c. 乳汁分泌
胎盤を通じて移行していた母体のエストロゲンが出生後に急速に消退すると、それまで抑えられていた乳汁分泌が起こる(プロラクチンの作用も関与するとされる)。新生児の乳房が腫大し、乳汁様の分泌物が出ることがあり、魔乳(奇乳)と呼ばれる。男女ともに見られる生理的現象で、多くは数週間以内に自然に消失する。乳房を圧迫して絞り出すと乳腺炎の原因になるため、触らずに経過観察する。
- ×d. 性器出血
女児では、胎内で母体由来のエストロゲンとプロゲステロンの作用により子宮内膜が増殖・肥厚している。出生によってこれらのホルモンが急激に消退すると、消退出血として内膜が剝がれ、生後数日〜1週間頃に少量の性器出血が見られることがある。これを新生児月経(新生児仮性月経)といい、生理的なもので治療は不要である。白色の帯下(おりもの)を伴うこともある。
- ×e. 総ビリルビン4.5 mg/dL
新生児は赤血球が多く寿命も短いためビリルビン産生が多い一方、肝臓でのグルクロン酸抱合能が未熟であるため、多くの児で生理的黄疸が見られる。正期産児では生後2〜3日頃に肉眼的黄疸が出現し、4〜5日頃にピーク(おおむね10〜12 mg/dL程度まで)となり、1〜2週で消退する。生後2日で総ビリルビン4.5 mg/dLは生理的範囲で、光線療法の基準にも遠く及ばない。生後24時間以内に出現する黄疸(早発黄疸)や、基準を超える急速な上昇は病的と考える。
新生児の主な生理的現象
・生理的体重減少:生後3〜5日頃に出生体重の5〜10%程度減少し、7〜14日で回復する。10%を超える減少は哺乳不足や脱水などを考える。 ・生理的黄疸:生後2〜3日に出現、4〜5日でピーク、1〜2週で消退する。 ・母体ホルモンの影響:魔乳(男女とも)、乳房腫大、新生児月経・白色帯下(女児)など。いずれも一過性で治療不要である。 ・その他:新生児中毒性紅斑、稗粒腫、蒙古斑、胎便の排泄(生後24時間以内が多い)など。
泉門の閉鎖時期
・大泉門:出生時は約2〜3 cm程度開いており、1歳〜1歳半頃に閉鎖する。 ・小泉門:出生時にほぼ閉鎖しているか、生後1〜2か月頃までに閉鎖する。
泉門の異常
・早期閉鎖:頭蓋縫合早期癒合症、小頭症、甲状腺機能亢進症など。 ・閉鎖遅延・開大:水頭症、くる病、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)、骨形成不全症、ダウン症候群など。 ・大泉門膨隆:頭蓋内圧亢進(髄膜炎、水頭症、頭蓋内出血など)。 ・大泉門陥凹:脱水。
POINT
・大泉門は1歳〜1歳半頃に閉鎖する。新生児期の閉鎖は頭蓋縫合早期癒合症や小頭症を疑う病的所見である。 ・生理的体重減少は出生体重の10%以内なら正常(本例は約5%)。 ・魔乳(男女とも)と新生児月経(女児)は、母体由来ホルモンの影響・消退による生理的現象である。 ・生理的黄疸は生後2〜3日に出現し4〜5日でピーク。生後24時間以内の黄疸は病的と考える。
