尿路結石は「何でできているか」で決まる―頻度・X線・尿pH・基礎疾患の4軸整理
第104回医師国家試験 I問題 第9問
国試問題にチャレンジ
尿路結石で正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.尿酸結石が最も多い。
- b.原発性アルドステロン症に生じる。
- c.尿酸結石はエックス線透過性が低い。
- d.シスチン結石に重炭酸ナトリウムは有効である。
- e.原発性副甲状腺〈上皮小体〉機能亢進症に生じる。
対話形式の解説
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ドクターまとめ
尿路結石はカルシウム含有結石が約9割を占めて最多で、尿酸結石は約5%にとどまります。尿酸結石はカルシウムを含まないためエックス線透過性が高く、単純写真に写らないX線陰性結石であり、診断には超音波やCTが有用です。尿酸結石とシスチン結石は酸性尿で形成されるため、重炭酸ナトリウムやクエン酸製剤による尿のアルカリ化が溶解・予防に有効で、逆にアルカリ尿では感染結石やリン酸カルシウム結石ができやすくなります。原発性副甲状腺機能亢進症は高カルシウム尿症を介してカルシウム結石を生じる代表的な基礎疾患であり、再発性結石では血清カルシウムとPTHの測定が欠かせません。成分・X線所見・尿pH・基礎疾患を結びつけて理解しておくことが、診断から再発予防までの一貫した診療につながります。
解答・解説
正解はd, eです
尿路結石は、尿中に溶けている成分が過飽和となって結晶化し、腎臓から尿管・膀胱・尿道にかけての尿路で結石を形成する疾患である。頻度の高い疾患であり、成分ごとの頻度、エックス線での写り方、形成されやすい尿のpH、原因となる基礎疾患、予防・治療法を整理しておくことが問われる。
成分ごとの整理
・カルシウム含有結石(シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム):全体の約90%を占め最多。エックス線不透過。 ・尿酸結石:約5%。酸性尿で形成されやすく、エックス線透過性(単純写真に写らない)。 ・感染結石(リン酸マグネシウムアンモニウム):ウレアーゼ産生菌(Proteus属など)の尿路感染で尿がアルカリ化して形成される。 ・シスチン結石:約1%。遺伝性のシスチン尿症で生じ、酸性尿で形成されやすい。
考え方
結石の成因は「尿中への排泄量が増える」と「溶けにくい尿環境(pH、尿量減少)」に分けて考える。原発性副甲状腺機能亢進症は高カルシウム血症から高カルシウム尿症を生じ、カルシウム結石の代表的な基礎疾患である。一方、酸性尿で溶けにくいシスチンや尿酸の結石は、尿をアルカリ化することで溶解・予防が期待できる。これらの知識を基に各選択肢を判断する。
選択肢考察
- ×a. 尿酸結石が最も多い。
最も多いのはカルシウム含有結石であり、全体の約90%を占める。その中でもシュウ酸カルシウム結石(単独またはリン酸カルシウムとの混合)が大部分である。尿酸結石は約5%程度にとどまる。
- ×b. 原発性アルドステロン症に生じる。
原発性アルドステロン症は、副腎からのアルドステロン過剰分泌により高血圧、低カリウム血症、代謝性アルカローシスを来す疾患であり、尿路結石の典型的な原因疾患としては扱われない。尿路結石の原因となる内分泌疾患として押さえるべきなのは、原発性副甲状腺機能亢進症(高カルシウム尿症)やCushing症候群などである。
- ×c. 尿酸結石はエックス線透過性が低い。
尿酸結石はカルシウムを含まないため、エックス線をよく通す(透過性が高い)。そのため腹部単純エックス線写真には写らない、いわゆるX線陰性結石である。診断には超音波検査(音響陰影を伴う高エコー像)やCT(尿酸結石も描出される)が有用で、排泄性尿路造影では陰影欠損として認められる。
- ○d. シスチン結石に重炭酸ナトリウムは有効である。
シスチン結石は、腎尿細管でのシスチンと二塩基性アミノ酸(リシン、アルギニン、オルニチン)の再吸収障害を来す常染色体潜性(劣性)遺伝のシスチン尿症で生じる。シスチンは酸性尿で溶けにくく、尿pHが上がると溶解度が高まるため、重炭酸ナトリウムやクエン酸カリウム製剤による尿のアルカリ化が溶解・再発予防に有効である(目標は尿pH 7.0以上)。ナトリウム負荷は尿中シスチン排泄を増やし得るため、クエン酸カリウム製剤が好まれることも多い。十分な水分摂取による尿の希釈、チオプロニンやD-ペニシラミン(シスチンと結合して溶けやすい複合体を作る薬剤)も併用される。
- ○e. 原発性副甲状腺〈上皮小体〉機能亢進症に生じる。
原発性副甲状腺機能亢進症では、副甲状腺ホルモン(PTH)の過剰により骨吸収の亢進、腸管からのカルシウム吸収増加(活性型ビタミンDの産生増加を介する)が起こり、高カルシウム血症となる。その結果、腎臓で濾過されるカルシウム量が増え、高カルシウム尿症を来す。またPTHはリンの再吸収を抑制するため、尿中リン排泄も増える。これらによりシュウ酸カルシウムやリン酸カルシウムの結石が形成されやすくなる。再発を繰り返す尿路結石では本症を鑑別に挙げ、血清カルシウムとPTHを測定することが重要である。
尿路結石の主な成分と特徴
・シュウ酸カルシウム結石:最多。エックス線不透過。原因として特発性高カルシウム尿症、高シュウ酸尿症(腸管切除後などの腸管性を含む)、低クエン酸尿症など。 ・リン酸カルシウム結石:アルカリ尿で形成されやすい。遠位尿細管性アシドーシス(1型RTA)などで生じる。 ・リン酸マグネシウムアンモニウム結石(感染結石):ウレアーゼ産生菌が尿素を分解してアンモニアを生じ、尿がアルカリ化して形成される。サンゴ状結石になりやすい。 ・尿酸結石:酸性尿、高尿酸尿症(痛風、腫瘍崩壊など)で形成。X線陰性。尿アルカリ化(クエン酸製剤)と尿酸生成抑制薬(アロプリノール、フェブキソスタット)で溶解・予防が可能。 ・シスチン結石:シスチン尿症。酸性尿で形成。単純写真では淡く写る程度。尿アルカリ化と水分摂取、チオプロニンなど。
結石を来す主な基礎疾患
原発性副甲状腺機能亢進症、Cushing症候群、サルコイドーシス(ビタミンD活性化による高カルシウム尿症)、長期臥床、腎尿細管性アシドーシス、髄質海綿腎、痛風、シスチン尿症、尿路感染症など。
疫学
日本では上部尿路(腎・尿管)結石が大部分を占め、男性に多い(男女比は約2〜2.5:1)。生涯罹患率は増加傾向にある。
症状と治療の概要
尿管結石では片側の腰背部から側腹部の疝痛、血尿、悪心・嘔吐がみられる。10mm未満(特に5mm以下)の結石は自然排石が期待でき、鎮痛薬と水分摂取、α1遮断薬による排石促進を行う。自然排石が困難な場合は体外衝撃波結石破砕術(ESWL)、経尿道的尿管砕石術(TUL)、経皮的腎砕石術(PNL)を選択する。
POINT
・尿路結石はカルシウム結石が約90%で最多、尿酸結石は約5%。 ・尿酸結石はX線透過性(単純写真に写らない)で、CT・超音波で診断。 ・尿酸・シスチン結石は酸性尿で形成され、尿アルカリ化(重炭酸ナトリウム、クエン酸製剤)が有効。 ・原発性副甲状腺機能亢進症は高カルシウム尿症からカルシウム結石を生じる。再発性結石では血清Ca・PTHを確認する。 ・感染結石はアルカリ尿で形成され、サンゴ状結石になりやすい。
