StudyMed医師国家試験

横になると上がらない、寝かせると開く脚―重力で読み解く徒手筋力テスト

第104回医師国家試験 H問題 第17問

国試問題にチャレンジ

第104回 H問題 第17問

右股関節の外転筋力を測定した。左側臥位で外転を指示した場面(A)と仰臥位で外転を指示した場面(B)とを別に示す。  徒手筋力テストの段階はどれか。

第104回 H問題 第17問の問題画像
  1. a.5(Normal)
  2. b.4(Good)
  3. c.3(Fair)
  4. d.2(Poor)
  5. e.1(Trace)

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は徒手筋力テスト、いわゆるMMTの段階づけを問う問題だ。注目してほしいのは、同じ右股関節の外転を「側臥位」と「仰臥位」という2つの肢位で試していること。それぞれの肢位で重力がどう関わっているかを考えると、答えが見えてくるよ。
医学生医学生
OSCEの神経診察で上肢のMMTは練習しましたけど、股関節外転を肢位まで意識したことはあまりなかったです。
ドクタードクター
上肢だと座ったまま評価することが多いから、肢位の意味を意識しにくいよね。まずMMTの6段階の境目を確認しよう。いちばん大事な基準線はどこだと思う?
医学生医学生
3(Fair)の「重力に抗して全可動域を動かせる」かどうか、ですよね。
ドクタードクター
その通り。3を境に、上は「抵抗にどれだけ耐えられるか」で4と5を分け、下は「重力を除けば動かせるか」「筋収縮があるか」で2・1・0を分ける。では、左側臥位で右脚を外転するとき、重力との関係はどうなる?
医学生医学生
右脚が上になっているので、外転すると脚を天井に向かって持ち上げることになります。重力に逆らう運動ですね。
ドクタードクター
そう、側臥位は股関節外転の抗重力肢位だ。図Aでは、この肢位で脚を持ち上げられず外転できていない。つまり重力に抗して動かす力はなく、この時点で3には届かないことがわかる。
医学生医学生
じゃあ1(Trace)かなと一瞬思ったんですが、仰臥位の場面がまだありますね。
ドクタードクター
そこで早合点しないのが大事。仰臥位では脚をベッドの面に沿って横に滑らせることになる。運動の方向が重力と直交するから、重力の影響がほぼ除かれるんだ。図Bでは、この肢位で最大外転まで動かせている。
医学生医学生
重力さえなければ全可動域を動かせる、ということは2(Poor)ですね。
ドクタードクター
正解。2は「重力を除いた肢位なら全可動域の運動が可能」という定義で、本例にぴったり一致する。ほかの段階も確認しておこう。5(Normal)と4(Good)はどう違う?
医学生医学生
どちらも重力に抗して全可動域を動かせて、最大の抵抗にも耐えられるのが5、中等度の抵抗には耐えるけど最大抵抗に負けるのが4です。
ドクタードクター
そうだね。今回は抗重力運動そのものができていないから、両方とも当てはまらない。3も同じ理由で外れる。1は筋収縮を目で見たり触れたりして確認できても関節は動かない状態で、仰臥位で最大外転まで動いている本例はそれより筋力が保たれている。
医学生医学生
判定の流れとしては、まず抗重力肢位で試して、だめなら重力を除いた肢位に移る、という順番なんですね。
ドクタードクター
その通り。抗重力肢位で全可動域動けば抵抗をかけて4・5を見分け、動かなければ重力除去肢位で2かを確かめ、それも無理なら大転子の近くで中殿筋の収縮を触れて1か0かを判断する。この手順を頭に入れておけば、どの筋でも迷わない。
医学生医学生
整形外科の実習で、リハビリの先生が患者さんの骨盤を手で押さえながら検査していたのを思い出しました。あれは何のためだったんでしょう。
ドクタードクター
代償運動を防ぐためだよ。股関節外転では、骨盤を引き上げたり、股関節を屈曲・外旋させたりしてごまかす動きが出やすい。見逃すと筋力を過大評価してしまうから、体幹と骨盤を固定して運動方向を正しく保たせるんだ。
医学生医学生
中殿筋が弱いと、歩き方にも影響が出ますよね。
ドクタードクター
そう。片脚立ちで反対側の骨盤が下がるTrendelenburg徴候がみられ、歩行時には体幹が患側へ傾く。MMTの数字だけでなく、歩行や立位の観察と組み合わせて評価すると、筋力低下の実像がつかみやすくなるよ。

まとめ

徒手筋力テスト(MMT)は筋力を0〜5の6段階で評価し、「重力に抗して全可動域を動かせるか」が3(Fair)の境界となります。股関節外転では、検査側を上にした側臥位が抗重力肢位、仰臥位で脚をベッド面上で滑らせる運動が重力除去肢位にあたり、側臥位で外転できず仰臥位で全可動域動かせる本例は2(Poor)と判定されます。3以上なら抵抗の強さで4・5を、3未満なら重力除去肢位での運動や筋収縮の有無で2・1・0を見分けるという手順で考えると、どの筋でも一貫して判定できます。股関節外転の検査では骨盤の引き上げなどの代償運動に注意し、中殿筋の筋力低下はTrendelenburg徴候として歩行にも現れます。肢位と重力の関係を理解しておくことは、リハビリテーションや神経診察での正確な筋力評価の基本です。

解答・解説

正解はdです

徒手筋力テスト(manual muscle testing:MMT)は、検者が手で抵抗を加えたり、重力の影響を変えたりしながら筋力を0〜5の6段階で評価する方法である。判定の鍵は「重力に抗して全可動域を動かせるか」であり、これが3(Fair)の境界となる。

図の読み取り

・場面A(左側臥位で右股関節を外転):右下肢を天井方向へ持ち上げる動きで、重力に逆らう運動になる。図では外転できていない。つまり、重力に抗して動かす筋力はない(3未満)。 ・場面B(仰臥位で外転):下肢をベッド面上で横に滑らせる動きで、運動の方向が重力と直交するため重力の影響がほぼ除かれる。図では最大外転まで動かせている。

判定の考え方

重力の影響を除けば全可動域を動かせるが、重力に抗しては動かせない状態は、MMTの2(Poor)に該当する。 判定の手順としては、まず抗重力肢位で全可動域の運動ができるかを確かめ、できれば抵抗を加えて4・5を見分け、できなければ重力を除いた肢位で2かどうかを確かめ、それもできなければ筋収縮の有無で1・0を見分ける、と進める。

選択肢考察

  1. ×a.  5(Normal)

    5(Normal)は、重力に抗して全可動域を動かせ、さらに検者が最大の抵抗を加えてもその肢位を保持できる筋力である。場面Aで重力に抗した外転すらできていないので該当しない。

  2. ×b.  4(Good)

    4(Good)は、重力に抗して全可動域を動かせ、中等度の抵抗には耐えられるが、最大抵抗には負けてしまう筋力である。抗重力運動ができていない本例は該当しない。

  3. ×c.  3(Fair)

    3(Fair)は、抵抗を加えなければ重力に抗して全可動域を動かせるが、抵抗を加えると保持できない筋力である。股関節外転では側臥位で下肢を持ち上げられることが条件となるが、本例は場面Aで外転できないので3に達していない。

  4. ○d.  2(Poor)

    2(Poor)は、重力の影響を除いた肢位であれば全可動域を動かせるが、重力に抗しては動かせない筋力である。本例は側臥位(抗重力肢位)では外転できず(場面A)、仰臥位(重力を除いた肢位)では最大外転まで可能(場面B)であり、この定義にちょうど一致する。

  5. ×e.  1(Trace)

    1(Trace)は、筋の収縮は目で見たり触れたりして確認できるが、関節運動は起こらない状態である。本例は重力を除いた肢位で最大外転まで関節が動いているので、1より筋力は保たれている。

MMTの6段階

・5(Normal):重力と最大抵抗に抗して全可動域の運動が可能 ・4(Good):重力といくらかの抵抗に抗して全可動域の運動が可能 ・3(Fair):重力に抗して全可動域の運動が可能だが、抵抗には抗せない ・2(Poor):重力を除けば全可動域の運動が可能 ・1(Trace):筋収縮はあるが関節運動は起こらない ・0(Zero):筋収縮もみられない

股関節外転筋(主に中殿筋)のMMT肢位

・3以上の評価:検査側を上にした側臥位で、下肢を天井方向へ外転させる(重力に抗する運動)。4・5は大腿遠位部(膝の近く)に抵抗を加えて判定する。 ・2以下の評価:仰臥位で、下肢をベッド面上で滑らせるように外転させる(重力の影響を除いた運動)。2に満たなければ、大転子の近くで中殿筋の収縮を触知して1か0かを判定する。

検査時の注意

股関節外転の検査では、骨盤を引き上げたり、股関節を屈曲・外旋させたりする代償運動が起こりやすい。代償運動を見逃すと筋力を過大評価するため、体幹・骨盤を固定し、運動方向を正しく保たせることが重要である。

臨床的意義

中殿筋の筋力低下では、片脚立ちで反対側の骨盤が下がるトレンデレンブルグ(Trendelenburg)徴候がみられ、歩行時に体幹が患側へ傾く。

POINT

・MMTの境界は「3=重力に抗して全可動域を動かせる」 ・抗重力肢位で動かせない+重力除去肢位で全可動域動かせる=2(Poor) ・股関節外転:側臥位は抗重力(3以上の評価)、仰臥位は重力除去(2以下の評価) ・1は筋収縮のみ、0は収縮なし

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。