枝を出さずに頭蓋へ一直線―頸部MRAで内頸動脈を見分けるコツ
第104回医師国家試験 E問題 第30問
国試問題にチャレンジ
頸部MRAの左側面像を別に示す。 矢印で示すのはどれか。

- a.外頸動脈
- b.総頸動脈
- c.椎骨動脈
- d.内頸動脈
- e.後頭動脈
対話形式の解説
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ドクターまとめ
頸部MRAの側面像では、まず前方を上行する頸動脈系と、後方の横突孔を上行する椎骨動脈系を区別します。総頸動脈はおおむね甲状軟骨上縁の高さで内頸動脈と外頸動脈に分かれ、分岐直後から上甲状腺動脈・舌動脈・顔面動脈・後頭動脈などの枝を次々と出すのが外頸動脈、頸部では枝を出さずに頭蓋底へまっすぐ上行するのが内頸動脈です。内頸動脈は頭蓋内で眼動脈を最初の主な枝として出し、前大脳動脈と中大脳動脈に分かれて大脳の前方約3分の2を栄養します。頸動脈分岐部はアテローム硬化の好発部位で、内頸動脈起始部の狭窄は脳梗塞の重要な原因となるため、画像上で血管を正確に同定できることは脳血管疾患の診療に直結する基本技能です。
解答・解説
正解はdです
頸部MRA(磁気共鳴血管撮影:造影剤を使わずに血流信号から血管像を描出するMRIの撮像法)の側面像で、頸部を上行する動脈を同定させる解剖の問題である。
同定の考え方
頸部の動脈は、前方を上行する頸動脈系と、後方を上行する椎骨動脈系の2系統に大別される。側面像ではまず前後の位置で両者を区別し、次に頸動脈系の中で「どこで分岐し、分岐後に枝を出すかどうか」を見ればよい。 1. 総頸動脈は下方から上行する太い幹で、途中で目立った枝を出さず、おおむね甲状軟骨上縁(第4頸椎付近)の高さで内頸動脈と外頸動脈に分かれる。 2. 分岐後、顔面・頸部の軟部組織を栄養する外頸動脈は、すぐに上甲状腺動脈・舌動脈・顔面動脈・後頭動脈などの枝を次々と出すため、樹枝状に広がって見える。 3. これに対し内頸動脈は、頭蓋底の頸動脈管に入るまで頸部では原則として枝を出さない。そのため分岐部から頭蓋底まで1本の管としてまっすぐ上行する像となる。 4. 椎骨動脈は鎖骨下動脈から起こり、頸動脈よりも後方で頸椎の横突孔の中を上行する。 矢印の血管は総頸動脈の分岐部から起こり、頭蓋底に達するまで分枝を出さずに上行しているので、内頸動脈と判断できる。
選択肢考察
- ×a. 外頸動脈
外頸動脈は総頸動脈の分岐部から起こり、内頸動脈より前方(起始部では前内側)を上行する。分岐直後から上甲状腺動脈、舌動脈、顔面動脈などを出すため、MRA上では多数の枝をもつ血管として見える。矢印の血管は枝を出していないので外頸動脈ではない。
- ×b. 総頸動脈
総頸動脈は右は腕頭動脈から、左は大動脈弓から直接起こり、頸部を上行して内頸動脈と外頸動脈に分かれるまでの太い幹である。途中で大きな枝は出さない。矢印はこの分岐部より上方の血管を指しており、総頸動脈ではない。
- ×c. 椎骨動脈
椎骨動脈は鎖骨下動脈の第一枝として起こり、通常は第6頸椎から上の横突孔を通って上行し、大後頭孔から頭蓋内に入る。側面像では頸動脈系よりも後方に位置し、延髄と橋の境界付近で左右が合流して脳底動脈となる。頸動脈の分岐部から出る血管ではないため誤り。
- ○d. 内頸動脈
矢印の血管は総頸動脈の分岐部から起こり、頭蓋底まで一本も枝を出さずに上行している。これは内頸動脈の特徴と一致する。内頸動脈は頸動脈管を通って頭蓋内に入ってから初めて主要な枝を出し、その最初の主な枝が眼動脈である。その後、後交通動脈・前脈絡叢動脈を出し、前大脳動脈と中大脳動脈に分かれて大脳半球の前方約3分の2を栄養する。
- ×e. 後頭動脈
後頭動脈は外頸動脈の枝で、後上方へ向かい後頭部の頭皮や筋を栄養する。外頸動脈から分かれる枝なので、総頸動脈の分岐部から直接起こり枝をもたない矢印の血管とは合わない。
頸部の動脈の走行
・大動脈弓からは右から順に腕頭動脈、左総頸動脈、左鎖骨下動脈が起こる。腕頭動脈は右総頸動脈と右鎖骨下動脈に分かれる。 ・総頸動脈は甲状軟骨上縁の高さで内頸動脈と外頸動脈に分かれる。分岐部の内頸動脈起始部はやや膨らんでおり(頸動脈洞)、血圧の変化を感じ取る圧受容器がある。分岐部の近くには化学受容器である頸動脈小体もある。 ・外頸動脈の主な枝:上甲状腺動脈、上行咽頭動脈、舌動脈、顔面動脈、後頭動脈、後耳介動脈、そして終枝の浅側頭動脈と顎動脈(中硬膜動脈は顎動脈の枝)。 ・内頸動脈は頸部で枝を出さず、頭蓋内で眼動脈、後交通動脈、前脈絡叢動脈を出したのち、前大脳動脈と中大脳動脈に分かれる。 ・椎骨動脈は鎖骨下動脈から起こり、横突孔を上行して大後頭孔から頭蓋内に入り、後下小脳動脈を出したのち、左右が合流して脳底動脈となる。前方循環(内頸動脈系)と後方循環(椎骨脳底動脈系)はウィリス動脈輪でつながる。
臨床との関連
頸動脈分岐部は粥状硬化(アテローム硬化)が起きやすく、内頸動脈起始部の狭窄は脳梗塞の重要な原因となる。頸部MRAや頸動脈エコーでの評価、頸動脈内膜剝離術やステント留置術の適応判断に、この解剖の理解が欠かせない。
POINT
・総頸動脈は内頸・外頸動脈に分かれるまで枝を出さない。 ・分岐後すぐに多くの枝を出すのは外頸動脈、頸部で枝を出さずに頭蓋底へ上行するのは内頸動脈。 ・内頸動脈の頭蓋内での最初の主な枝は眼動脈。 ・椎骨動脈は鎖骨下動脈から起こり、頸動脈より後方の横突孔を上行し、延髄と橋の境界付近で左右が合流して脳底動脈となる。 ・後頭動脈は外頸動脈の枝。
