StudyMed医師国家試験

Caを押し上げる3つのエンジン―PTH・PTHrP・活性型ビタミンDで解く高カルシウム血症

第104回医師国家試験 E問題 第10問

国試問題にチャレンジ

第104回 E問題 第10問

高カルシウム血症を呈するのはどれか。2つ選べ。

  1. a.Cushing症候群
  2. b.サルコイドーシス
  3. c.原発性胆汁性肝硬変〈原発性胆汁性胆管炎〉
  4. d.慢性甲状腺炎〈橋本病〉
  5. e.多発性内分泌腫瘍〈MEN〉I型

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、高カルシウム血症をきたす疾患を選ぶ問題だ。暗記で片づけたくなるけれど、血清カルシウムを上げる「仕組み」から考えると迷わなくなる。まず、血清カルシウムを上げるホルモンを2つ挙げられるかな。
医学生医学生
副甲状腺ホルモンと、活性型ビタミンDです。生理学の講義でカルシウム代謝の図を何度も描かされました。
ドクタードクター
その通り。PTHは骨吸収を促し、腎尿細管でカルシウムの再吸収を増やし、さらに腎の1α水酸化酵素を活性化して活性型ビタミンDを増やす。活性型ビタミンDは腸管からのカルシウム吸収を増やす。だから高カルシウム血症は「PTH過剰」「悪性腫瘍によるPTHrPや骨破壊」「活性型ビタミンD過剰」の3系統で整理するといい。
医学生医学生
その枠組みで見ると、多発性内分泌腫瘍I型は副甲状腺の病変があるので、PTH過剰の系統ですね。
ドクタードクター
正解。MEN1はMEN1遺伝子の変異による常染色体顕性遺伝の疾患で、副甲状腺、膵十二指腸の内分泌腫瘍、下垂体腺腫の「3P」が特徴。中でも原発性副甲状腺機能亢進症はほぼ全例に近い頻度でみられ、初発病変になることが多い。4腺すべてが過形成になりやすいのもポイントだ。
医学生医学生
サルコイドーシスは肺と目とリンパ節の病気という印象で、カルシウムとの関係がぴんときません。
ドクタードクター
そこがこの問題の核心だね。サルコイドーシスの類上皮細胞肉芽腫では、活性化したマクロファージが1α水酸化酵素を持っていて、PTHの調節を受けずに活性型ビタミンDをつくってしまう。その結果、腸管吸収と骨吸収が増えて高カルシウム血症や高カルシウム尿症が起こる。
医学生医学生
ということは、PTHはむしろ抑えられているんですね。
ドクタードクター
そう、負のフィードバックでPTHは低くなる。PTH非依存性の代表だ。高カルシウム血症は一部の患者にみられ、高カルシウム尿症はそれより多い。結核や一部の悪性リンパ腫でも同じ機序が起こりうるよ。
医学生医学生
Cushing症候群は骨粗鬆症になるので、骨からカルシウムが溶け出して上がりそうに思えたんですが。
ドクタードクター
よくある誤解だね。グルココルチコイドは腸管からのカルシウム吸収を抑え、尿中排泄を増やし、骨芽細胞の働きを抑えて骨形成を落とす。骨粗鬆症や尿路結石は起こしやすいけれど、血清カルシウムはおおむね正常にとどまる。むしろステロイドはサルコイドーシスやビタミンD中毒の高カルシウム血症の治療に使われるくらいだ。
医学生医学生
原発性胆汁性胆管炎も骨がもろくなる病気だと消化器内科の実習で聞きました。
ドクタードクター
そうだね。胆汁うっ滞で脂溶性ビタミンの吸収が落ち、ビタミンD不足などを背景に骨粗鬆症や骨軟化症を合併しやすい。でも血清カルシウムは正常か、ビタミンD欠乏が強ければ低下傾向になる。上がる方向ではないんだ。
医学生医学生
橋本病は、甲状腺ホルモンが骨に関係しそうなので迷いました。
ドクタードクター
いい着眼点だ。甲状腺ホルモン過剰、つまりBasedow病などでは骨吸収が亢進して軽い高カルシウム血症をきたすことがある。でも橋本病は進行すると機能低下症になり、骨代謝回転はむしろ落ちる。だから高カルシウム血症の原因とは言えない。
医学生医学生
骨が弱くなる病気と、血清カルシウムが上がる病気は別物、と整理しておきます。
ドクタードクター
それが大事な視点だね。最後に臨床的なまとめを。外来で偶然見つかる高カルシウム血症は原発性副甲状腺機能亢進症が多く、入院患者では悪性腫瘍に伴うものが多い。この2つで大半を占める。まずPTHを測って、高ければPTH依存性、抑制されていればPTHrPや活性型ビタミンDを調べていく流れだ。
医学生医学生
症状は口渇・多尿、便秘、意識障害、心電図でQT短縮でしたよね。CBTでよく出ました。
ドクタードクター
その通り。高度な場合は高カルシウム血症クリーゼとして、生理食塩水の補液、ビスホスホネート、カルシトニンで治療する。MEN1を見つけたら、家族のスクリーニングや他の腫瘍の検索も忘れないようにしよう。

まとめ

高カルシウム血症は、PTH過剰、悪性腫瘍(PTHrP産生・骨破壊)、活性型ビタミンD過剰の3系統で整理すると理解しやすくなります。MEN1では原発性副甲状腺機能亢進症がほぼ必発でPTH依存性に、サルコイドーシスでは肉芽腫のマクロファージがPTHの制御を受けずに活性型ビタミンDを産生してPTH非依存性に、それぞれ高カルシウム血症をきたします。一方、Cushing症候群や原発性胆汁性胆管炎は骨粗鬆症を起こしても血清カルシウムは上げず、橋本病による甲状腺機能低下症も原因にはなりません。「骨がもろくなること」と「血清カルシウムが上がること」を区別し、PTH測定から鑑別を進める考え方は、日常診療での高カルシウム血症の評価に直結します。

解答・解説

正解はb, eです

【テーマ】高カルシウム血症の原因疾患を、カルシウム(Ca)代謝の調節機構から整理できるかを問う。

血清Caを上げる仕組み

血清Caは主に副甲状腺ホルモン(PTH)と活性型ビタミンD〔1,25-ジヒドロキシビタミンD:1,25(OH)2D〕によって調節される。PTHは骨吸収の促進、腎尿細管でのCa再吸収の促進、腎での1α水酸化酵素の活性化(活性型ビタミンDの産生増加)を通して血清Caを上げる。活性型ビタミンDは腸管からのCa吸収を増やす。したがって高Ca血症は大きく次のように分けて考える。 1. PTH依存性:原発性副甲状腺機能亢進症(腺腫が最多。MEN1・MEN2Aなどの遺伝性のものを含む)、家族性低Ca尿性高Ca血症など 2. PTH非依存性:悪性腫瘍(PTH関連蛋白〈PTHrP〉産生腫瘍、骨転移、多発性骨髄腫)、活性型ビタミンDの過剰(肉芽腫性疾患、ビタミンD製剤の過量)、甲状腺機能亢進症、不動(長期臥床)、ビタミンA過剰、サイアザイド系利尿薬、ミルク・アルカリ症候群など 【考え方】選択肢の中で、上記のPTH過剰(MEN1に伴う原発性副甲状腺機能亢進症)と活性型ビタミンD過剰(サルコイドーシスの肉芽腫)に当てはまるものを選べばよい。Cushing症候群、原発性胆汁性胆管炎、橋本病は骨代謝に影響はあっても、血清Caを上昇させる疾患ではない。

選択肢考察

  1. ×a.  Cushing症候群

    グルココルチコイド過剰は腸管からのCa吸収を抑え、腎からのCa排泄を増やし(高Ca尿症)、骨芽細胞の機能を抑制して骨形成を低下させる。その結果、骨粗鬆症や尿路結石を起こしやすいが、血清Ca値はおおむね正常範囲にとどまり、高Ca血症は呈さない。むしろ糖質コルチコイドはビタミンD中毒やサルコイドーシスの高Ca血症の治療に用いられるほどで、Caを下げる方向に働く。

  2. ○b.  サルコイドーシス

    サルコイドーシスの類上皮細胞肉芽腫では、活性化したマクロファージが1α水酸化酵素を発現しており、PTHの調節を受けずに25-ヒドロキシビタミンDを活性型の1,25(OH)2Dへ変換する。過剰な活性型ビタミンDにより腸管からのCa吸収と骨吸収が亢進し、高Ca血症・高Ca尿症をきたす。このときPTHは負のフィードバックで抑制されている(PTH非依存性)。高Ca血症は患者の一部(10〜20%程度)にみられ、高Ca尿症はそれより多い。治療には糖質コルチコイドが有効である。結核などほかの肉芽腫性疾患や一部の悪性リンパ腫でも同じ機序の高Ca血症が起こる。

  3. ×c.  原発性胆汁性肝硬変〈原発性胆汁性胆管炎〉

    原発性胆汁性胆管炎(PBC)は肝内の小葉間胆管が自己免疫的に破壊される慢性胆汁うっ滞性疾患で、中年女性に多く、抗ミトコンドリア抗体が陽性となる。胆汁うっ滞により脂肪と脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収が障害され、ビタミンD不足などを背景に骨粗鬆症・骨軟化症(肝性骨異栄養症)を高頻度に合併する。しかし血清Caは正常か、ビタミンD欠乏が高度なら低下傾向であり、高Ca血症にはならない。

  4. ×d.  慢性甲状腺炎〈橋本病〉

    橋本病は甲状腺の臓器特異的自己免疫疾患で、抗甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)抗体・抗サイログロブリン抗体が陽性となり、進行すると甲状腺機能低下症をきたす。甲状腺機能低下症では骨代謝回転が低下するため、血清Caを上げる方向には働かず、高Ca血症は呈さない。なお甲状腺ホルモン過剰(Basedow病など)では骨吸収が亢進して軽度の高Ca血症をきたすことがあり、無痛性甲状腺炎など破壊性の一過性甲状腺中毒症でも起こりうるが、橋本病の典型像ではない。

  5. ○e.  多発性内分泌腫瘍〈MEN〉I型

    MEN1は常染色体顕性(優性)遺伝で、がん抑制遺伝子MEN1(メニン蛋白をコード)の変異による。副甲状腺・膵十二指腸内分泌腫瘍(ガストリノーマ、インスリノーマなど)・下垂体腺腫(プロラクチノーマが多い)の「3P」が特徴である。このうち原発性副甲状腺機能亢進症の浸透率が最も高く(ほぼ90〜100%)、初発病変になることが多い。4腺すべての過形成・多発腺腫の形をとりやすく、PTH過剰により高Ca血症をきたす。

高Ca血症の主な原因(頻度の高いもの)

外来で偶然見つかる高Ca血症は原発性副甲状腺機能亢進症が多く、入院患者では悪性腫瘍に伴うものが多い。両者で全体の大半(約90%)を占める。 ・原発性副甲状腺機能亢進症:PTH高値、低リン血症 ・悪性腫瘍:PTHrP産生(肺扁平上皮癌、頭頸部癌、成人T細胞白血病・リンパ腫など)、溶骨性骨転移(乳癌など)、多発性骨髄腫(破骨細胞活性化因子)。PTHは抑制される ・活性型ビタミンD過剰:サルコイドーシス、結核、悪性リンパ腫、ビタミンD製剤の過量 ・その他:甲状腺機能亢進症、長期臥床、サイアザイド系利尿薬、ビタミンA過剰、ミルク・アルカリ症候群、家族性低Ca尿性高Ca血症(CaSR遺伝子変異)

MENの整理

MEN1(MEN1遺伝子):副甲状腺機能亢進症、膵十二指腸内分泌腫瘍、下垂体腺腫 MEN2A(RET遺伝子):甲状腺髄様癌、褐色細胞腫、副甲状腺機能亢進症 MEN2B(RET遺伝子):甲状腺髄様癌、褐色細胞腫、粘膜神経腫、Marfan様体型(副甲状腺病変はまれ)

高Ca血症の症状

口渇・多尿(腎性尿崩症様)、悪心・嘔吐・便秘、食欲不振、意識障害、尿路結石、心電図でQT短縮。高度の場合(おおむね14 mg/dL以上、または症状を伴う場合)は高Ca血症クリーゼとして、生理食塩水による補液、ビスホスホネート、カルシトニンなどで治療する。

POINT

・高Ca血症は「PTH過剰」「PTHrP・骨破壊(悪性腫瘍)」「活性型ビタミンD過剰(肉芽腫)」の3系統で整理する。 ・サルコイドーシス:肉芽腫のマクロファージが1α水酸化酵素をもち、PTH非依存性に活性型ビタミンDを産生する。 ・MEN1:副甲状腺機能亢進症がほぼ必発で、高Ca血症をきたす。 ・Cushing症候群・PBCは骨粗鬆症を起こすが、血清Caは上がらない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。