心臓と血液が教える染色体―房室中隔欠損症と白血病から21トリソミーを導く
第104回医師国家試験 D問題 第9問
国試問題にチャレンジ
房室中隔欠損症〈心内膜床欠損症〉や白血病を合併することの多い染色体核型はどれか。
- a.45,X
- b.47,XX,+13
- c.47,XX,+18
- d.47,XX,+21
- e.47,XXY
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
房室中隔欠損症(心内膜床欠損症)と白血病の組み合わせはDown症候群を強く示唆し、その標準型核型は21トリソミー(女性では47,XX,+21)です。Down症候群では房室中隔欠損症が最も特徴的な心疾患であり、白血病では新生児期の一過性骨髄異常増殖症(TAM)、乳幼児期の急性巨核芽球性白血病、急性リンパ性白血病の頻度が高くなります。45,XのTurner症候群は大動脈縮窄症・二尖大動脈弁、13トリソミーと18トリソミーは心室中隔欠損症などが中心で、47,XXYのKlinefelter症候群は性腺機能低下が主体です。核型表記の読み方と、各染色体異常症に特徴的な合併症の対応を押さえておくことは、先天異常をもつ子どもの診断と長期的な健康管理の基礎になります。
解答・解説
正解はdです
問われていること
合併症の組み合わせから染色体異常症を特定し、その核型表記を選ぶ問題である。
核型表記の読み方
核型は「染色体の総数, 性染色体構成, 異常の内容」の順に書く。正常女性は46,XX、正常男性は46,XYである。「+21」は21番染色体が1本余分にある(21トリソミー)ことを、「45,X」は性染色体がX1本のみ(Xモノソミー)であることを示す。
考え方
房室中隔欠損症(atrioventricular septal defect:AVSD。心内膜床欠損症 endocardial cushion defect:ECDとも呼ばれる)は、心内膜床の発生異常によって房室弁と心房・心室中隔が一体として形成不全となる先天性心疾患である。AVSD(特に完全型)の患者の多くがDown症候群であり、逆にDown症候群に合併する先天性心疾患の中でAVSDは最も特徴的なものである。 さらにDown症候群では白血病の発症リスクが一般小児より高い(おおむね10〜20倍とされる)。新生児期の一過性骨髄異常増殖症(transient abnormal myelopoiesis:TAM)、乳幼児期の急性巨核芽球性白血病(AML-M7)、急性リンパ性白血病(ALL)がいずれも多い。 したがって「AVSD+白血病」はDown症候群を示し、その標準型核型である21トリソミー(女性なら47,XX,+21)を選べばよい。
選択肢考察
- ×a. 45,X
Turner症候群の核型である。合併する心血管異常としては大動脈縮窄症や二尖大動脈弁が代表的で、AVSDは特徴的ではない。低身長、翼状頸、原発性無月経(性腺異形成)、馬蹄腎などが特徴であり、白血病の好発は知られていない。
- ×b. 47,XX,+13
13トリソミー(Patau症候群)の核型である。全前脳胞症、口唇口蓋裂、小眼球症、多指症、頭皮欠損などを伴い、先天性心疾患としては心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、動脈管開存症が多い。血液所見としては好中球核の突起状の形態異常や胎児ヘモグロビン(HbF)の残存がみられることがあるが、白血病の好発は特徴ではない。生命予後は極めて不良である。
- ×c. 47,XX,+18
18トリソミー(Edwards症候群)の核型である。子宮内発育不全、後頭部突出、手指の重なり(握りこぶし)、揺り椅子状足底などが特徴で、先天性心疾患は高頻度(心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、動脈管開存症など)だが、AVSDが特に多いわけではない。白血病の合併も特徴的ではない(肝芽腫やWilms腫瘍の報告はある)。
- ○d. 47,XX,+21
21トリソミー、すなわちDown症候群(女性)の核型である。約半数に先天性心疾患を合併し、中でも房室中隔欠損症(心内膜床欠損症)が最も特徴的で、ほかに心室中隔欠損症、動脈管開存症、Fallot四徴症なども多い。血液疾患では新生児期の一過性骨髄異常増殖症(TAM)、急性巨核芽球性白血病(AML-M7)、急性リンパ性白血病の頻度が高い。設問の2つの合併症の組み合わせに合致する。
- ×e. 47,XXY
Klinefelter症候群の核型である。高身長、小さく硬い精巣、無精子症による男性不妊、女性化乳房、高ゴナドトロピン性性腺機能低下症が特徴で、思春期以降に気づかれることが多い。AVSDや白血病の合併は特徴的ではない(乳癌や縦隔胚細胞腫瘍のリスク上昇が知られる)。
Down症候群の概要
・頻度:出生約600〜800人に1人。母体年齢の上昇とともに頻度が高まる。 ・核型:標準型21トリソミー(約95%、主に母親の減数分裂時の染色体不分離による)、転座型(約3〜4%、ロバートソン転座。親が均衡型転座保因者のことがあり、両親の染色体検査が勧められる)、モザイク型(約1〜2%)。 ・身体所見:つり上がった眼裂、内眼角贅皮、平坦な顔貌、巨舌、短頸、手掌単一屈曲線(猿線)、筋緊張低下、知的障害。 ・合併症:先天性心疾患(AVSD、VSDなど)、消化管奇形(十二指腸閉鎖、Hirschsprung病、鎖肛)、甲状腺機能低下症、環軸椎不安定性、滲出性中耳炎、白内障、早期のAlzheimer型認知症など。
Down症候群と白血病
・TAM:新生児の約10%前後にみられ、GATA1遺伝子変異を伴う巨核芽球系の芽球が末梢血に出現する。多くは数か月以内に自然消退するが、一部は数年以内にAML-M7へ進展する。 ・Down症候群に伴う骨髄性白血病は化学療法への反応性がよく、治療毒性が出やすいため減量した治療が行われる。
主な染色体異常症と心疾患の整理
・21トリソミー:AVSD、VSD ・18トリソミー:VSD、ASD、PDA(多弁性病変も) ・13トリソミー:VSD、ASD、PDA ・Turner症候群(45,X):大動脈縮窄症、二尖大動脈弁 ・22q11.2欠失症候群:円錐動脈幹異常(Fallot四徴症、総動脈幹症、大動脈弓離断) ・Williams症候群:大動脈弁上狭窄、末梢性肺動脈狭窄
POINT
・房室中隔欠損症(心内膜床欠損症)+白血病(TAM、AML-M7、ALL)→ Down症候群(21トリソミー)。 ・核型表記:総数, 性染色体, 異常(例:47,XX,+21)。 ・45,X=Turner、+13=Patau、+18=Edwards、47,XXY=Klinefelter。 ・Turner症候群の心疾患は大動脈縮窄症・二尖大動脈弁。
