StudyMed医師国家試験

「増やす」より「つなぐ」―限られた医療資源を生かす鍵は多職種連携

第104回医師国家試験 B問題 第5問

国試問題にチャレンジ

第104回 B問題 第5問

限られた医療資源を効率的に活用する方策はどれか。

  1. a.専門医の養成
  2. b.多職種間の連携
  3. c.大病院への受診誘導
  4. d.自己完結型医療機関づくり
  5. e.急性期病院の病床数の増加

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は公衆衛生から、医療資源をどう効率よく使うかという政策の考え方を問う問題だ。着眼点は「限られた」と「効率的に活用する」という2つの言葉。資源を増やす話なのか、今あるものを上手に使う話なのかを区別できるかがポイントになるよ。まず、医療資源と聞いて何を思い浮かべるかな。
医学生医学生
医師や看護師の数、病院のベッド数、それにCTやMRIなどの医療機器でしょうか。
ドクタードクター
そうだね。さらに医薬品や、それらを支える医療費という財源も含まれる。どれも無限ではないのに、高齢化で医療の需要は増え続けている。だから「今ある資源を無駄なく、適切な場所に配分する」ことが医療政策の大きなテーマなんだ。
医学生医学生
正直、専門医をもっと養成すれば医療の質が上がるので、いい方策に見えてしまいました。
ドクタードクター
そう感じるのは自然だよ。専門医の養成は質の向上には必要だ。ただ、人材を新たに育てるのは資源の「拡充」であって、今ある資源の効率的な活用とは別の話になる。養成には長い年月と費用もかかるしね。それに専門分化が進みすぎると、複数の病気を抱える高齢者がいくつもの科を受診することになり、かえって非効率になる面もある。
医学生医学生
なるほど。そうすると急性期病院のベッドを増やすのも「拡充」なので外れますね。
ドクタードクター
その通り。しかも日本は人口当たりの病床数が国際的に多く、平均在院日数も長いことが課題とされている。むしろ急性期病床は過剰で、回復期の病床が足りないと指摘されているんだ。そこで都道府県が地域医療構想を策定し、高度急性期・急性期・回復期・慢性期の病床機能のバランスを将来の需要に合わせて再編しようとしている。
医学生医学生
大病院への受診誘導はどうでしょう。大きな病院なら設備も専門医もそろっていて、効率がよさそうに思えます。
ドクタードクター
そこが落とし穴だね。軽症の患者まで大病院に集まると、重症の患者に人手や設備を回せなくなり、外来の待ち時間が延び、勤務医も過重労働になる。一方で地域の診療所の力は十分使われない。資源が偏ってしまうんだ。実際、紹介状なしで大病院を受診すると特別な料金がかかる選定療養という制度があって、これは大病院への集中を抑える方向の政策なんだよ。
医学生医学生
臨床実習で大学病院の外来についたとき、紹介状のない患者さんに追加料金の説明をしているのを見ました。あれはそういう意味だったんですね。
ドクタードクター
いい経験をしているね。次に、自己完結型医療機関づくりについてはどう考える?
医学生医学生
一つの病院で急性期からリハビリまで全部できたら、患者さんは楽そうですが……。
ドクタードクター
患者さん個人から見ればそう感じるかもしれない。でも地域全体で見ると、どの病院も同じ設備や機能を抱え込むことになり、重複が生じて稼働率が下がる。だから今は、各医療機関が得意な機能に特化して、患者を紹介し合う「地域完結型医療」への転換が進められているんだ。
医学生医学生
ということは、正解は多職種間の連携ですね。共通しているのは「役割分担と連携」という考え方でしょうか。
ドクタードクター
まさにそれが核心だ。医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士や作業療法士、医療ソーシャルワーカーなどが情報を共有し、それぞれの専門性を生かして役割を分担する。これがチーム医療だね。特定の職種に業務が集中するのを避け、重複や無駄を減らせるし、不足している機能を他の職種が補うこともできる。限られた人員で、複雑で多様な患者の問題に対応できるわけだ。
医学生医学生
医師の業務の一部を他の職種に任せるタスク・シフトも同じ発想ですか。
ドクタードクター
そうだよ。タスク・シフト/シェアは医師の働き方改革とも結びついている。地域レベルでは、医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的に提供する地域包括ケアシステムがあり、その中核にあるのも多職種連携だ。
医学生医学生
医療機関どうしの連携についても、何か整理しておくべきことはありますか。
ドクタードクター
病院と診療所の病診連携、病院どうしの病病連携が基本だね。かかりつけ医が日常診療を担い、必要なときに病院へ紹介し、安定したら逆紹介する。脳卒中や大腿骨頸部骨折では、急性期から回復期、在宅までの診療計画を複数の医療機関で共有する地域連携クリティカルパスも使われている。かかりつけ医を支える地域医療支援病院という仕組みもあるよ。
医学生医学生
災害のときのように資源が極端に足りない場面では、また別の考え方が必要になりそうです。
ドクタードクター
鋭いね。そういう場面ではトリアージを行う。重症度と緊急度で赤・黄・緑・黒に分けて治療や搬送の優先順位を決め、限られた資源で救える命を最大化するんだ。平時でも災害時でも、資源には限りがあるという前提に立って、どう配分するかを考える姿勢は共通している。

まとめ

医療資源には人材・病床・医療機器・医薬品・財源があり、高齢化で需要が増すなか、限られた資源をいかに効率よく活用するかが医療政策の課題です。その基本は「役割分担と連携」であり、職種間では多職種連携(チーム医療、タスク・シフト/シェア)、医療機関間では病診連携・病病連携による機能分化と地域完結型医療が求められます。専門医の養成や病床の増設は資源の「拡充」であって効率的活用とは区別され、大病院への受診集中や自己完結型の医療機関づくりは資源の偏りや重複を招きます。地域医療構想や地域包括ケアシステム、災害時のトリアージも同じ発想に立つ仕組みであり、これらを理解しておくことは、将来チームの一員として地域医療を担ううえでの土台になります。

解答・解説

正解はbです

テーマ

医療資源とは、医師・看護師などの人材、病院・病床・医療機器などの施設設備、医薬品、そしてそれらを支える医療費(財源)などを指す。いずれも無限ではなく、高齢化で医療需要が増えるなか、今ある資源をいかに無駄なく適切に配分し、活用するかが医療政策の大きな課題となっている。

正解を導く考え方

設問のポイントは「限られた」資源を「効率的に活用する」という点にある。したがって、人材や病床を新たに増やす方策は、資源そのものの拡充であって、既存資源の効率的な活用とはいえない。また、特定の医療機関に患者や機能を集中させたり、一つの医療機関ですべてを抱え込んだりする方策は、資源の偏りや重複を生み、かえって非効率になる。 効率化の基本的な考え方は「役割分担と連携」である。医療機関の間では機能分化と連携(病診連携・病病連携)、医療機関の内部や地域では医師・看護師・薬剤師・リハビリテーション職・ソーシャルワーカーなどの多職種の連携(チーム医療)を進めることで、各資源がその専門性を最も生かせる場面で使われるようになる。この観点から、多職種間の連携が最も適切な方策である。

選択肢考察

  1. ×a.  専門医の養成

    誤り。専門医の養成は医療の質の向上に必要だが、新たに人材を育てることは資源の「拡充」であり、今ある限られた資源を効率的に使う方策とはいえない。養成には長い年月と費用もかかる。また、専門分化が過度に進むと、複数の疾患を抱える高齢者が多数の専門科を受診することになり、かえって非効率になる面もある。

  2. ○b.  多職種間の連携

    正しい。医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士・作業療法士、医療ソーシャルワーカーなど多くの職種が情報を共有し、それぞれの専門性を生かして役割を分担すること(チーム医療)で、特定の職種への業務の集中を避け、重複や無駄を減らすことができる。ある現場で不足している機能を他職種が補うことも可能となり、限られた人員で複雑・多様化した患者の問題に対応できる。医師の業務の一部を他職種へ移すタスク・シフト/シェアや、地域包括ケアシステムにおける医療・介護・福祉の連携も、同じ考え方に基づく方策である。

  3. ×c.  大病院への受診誘導

    誤り。軽症患者まで大病院に集中すると、高度な医療を必要とする重症患者の診療に人員や設備を回せなくなり、外来の長い待ち時間や勤務医の過重労働を招く。一方で地域の診療所などの能力は十分に使われず、資源の配分が偏る。日常的な診療はかかりつけ医が担い、専門的・高度な医療が必要な場合に紹介するという、症状に応じた医療機関の使い分けが効率的である。わが国では、紹介状なしで大病院を受診した場合に選定療養として特別の料金を徴収する制度があり、これは大病院への集中を抑える方向の政策である。

  4. ×d.  自己完結型医療機関づくり

    誤り。一つの医療機関が急性期から回復期、慢性期までのすべての機能や設備を抱え込む自己完結型の体制では、地域の複数の医療機関で同じ設備や機能が重複し、それぞれの稼働率が下がって非効率となる。各医療機関が得意な機能に特化し、互いに患者を紹介し合う「地域完結型医療」への転換が求められている。

  5. ×e.  急性期病院の病床数の増加

    誤り。病床を増やすことは資源の拡充であり、既存資源の効率的活用ではない。わが国は人口当たりの病床数が国際的にみて多く、平均在院日数も長いことが課題とされ、むしろ急性期病床が過剰で、回復期病床などが不足していると指摘されている。地域医療構想では、地域の将来の医療需要を踏まえて、高度急性期・急性期・回復期・慢性期の病床機能を適正なバランスに再編することが目指されている。

医療機関の機能分化と連携

・病診連携:病院と診療所の連携。かかりつけ医が日常診療を担い、必要時に病院へ紹介し、病状が安定したら逆紹介する。 ・病病連携:急性期病院と回復期・慢性期病院などの病院同士の連携。 ・地域医療支援病院:紹介患者への医療提供、医療機器の共同利用、救急医療、地域の医療従事者の研修などを通じて、かかりつけ医を支援する病院。 ・地域連携クリティカルパス:脳卒中や大腿骨頸部骨折などについて、急性期から回復期、在宅までの診療計画を複数の医療機関で共有する仕組み。

地域医療構想と地域包括ケア

・地域医療構想:都道府県が医療計画の一部として、将来(2025年を目標とした)の病床機能ごとの必要病床数を推計し、医療機関の機能分化と連携を進めるもの。 ・地域包括ケアシステム:高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けられるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的に提供する体制。多職種連携がその中核である。

資源が極端に不足する場面での効率的活用:トリアージ

大規模災害時など、傷病者の数に対して医療資源が著しく不足する状況では、重症度と緊急度に応じて治療や搬送の優先順位を決めるトリアージが行われる。赤(最優先治療)、黄(待機的治療)、緑(軽症・保留)、黒(救命困難・死亡)に分類し、限られた資源で救える命を最大化することを目指す。

POINT

・限られた医療資源の効率的活用の基本は「役割分担と連携」である。 ・職種間では多職種連携(チーム医療、タスク・シフト/シェア)、医療機関間では機能分化と連携(病診連携・病病連携、地域完結型医療)。 ・人材の養成や病床の増設は資源の「拡充」であり、効率的活用とは区別する。 ・大病院への集中や自己完結型の医療機関づくりは資源の偏り・重複を招き非効率。 ・極端な資源不足時の方策としてトリアージがある。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。