その症候、どの膠原病?―「症状から疾患を逆引き」で崩す組合せ問題
第103回医師国家試験 I問題 第25問
国試問題にチャレンジ
組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.IgA血管炎〈Schönlein-Henoch紫斑病〉 ―― 疝痛性腹痛
- b.Sjögren症候群 ―― 関節拘縮
- c.抗リン脂質抗体症候群 ―― 深部静脈血栓症
- d.若年性特発性関節炎〈JIA〉 ―― 輪状紅斑
- e.全身性エリテマトーデス〈SLE〉 ―― Gottron徴候
対話形式の解説
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ドクターまとめ
IgA血管炎は触知可能な紫斑・疝痛性腹痛・関節症状・腎炎を主徴とする小型血管炎で、腹痛が紫斑に先行すると急性腹症と紛らわしいことがあります。抗リン脂質抗体症候群はAPTTが延長しても臨床的には血栓傾向を示し、深部静脈血栓症をはじめとする動静脈血栓症や習慣流産を繰り返します。一方、関節の拘縮・変形は関節リウマチ、輪状紅斑はリウマチ熱、Gottron徴候は皮膚筋炎の特徴であり、Sjögren症候群の関節炎は非破壊性、全身型若年性特発性関節炎の皮疹はサーモンピンク疹、SLEの代表的皮疹は蝶形紅斑です。症候から疾患を逆引きする習慣をつけると組合せ問題に強くなるだけでなく、診察所見から膠原病を早期に疑い、合併症まで見通す臨床力の土台になります。
解答・解説
正解はa, cです
本問は、膠原病および類縁疾患(血管炎・自己免疫性血栓症・小児の関節炎)と、それぞれに特徴的な症候を対応させる知識問題である。 膠原病の診断では、血液検査の自己抗体に加えて、皮膚・関節・消化管・血管などに現れる「その疾患らしい所見」を把握していることが重要になる。特に皮膚所見は視診だけで疾患を強く示唆することが多く、国家試験でも頻繁に問われる。 考え方としては、各選択肢について「その症候が典型的にみられる疾患はどれか」を逆に思い浮かべるとよい。例えば、Gottron徴候と聞けば皮膚筋炎、輪状紅斑と聞けばリウマチ熱(およびSjögren症候群の環状紅斑)、関節拘縮・変形と聞けば関節リウマチ、というように症候から疾患を想起し、組合せの疾患名と一致するかを確認する。一致するのはIgA血管炎と疝痛性腹痛、抗リン脂質抗体症候群と深部静脈血栓症の2つである。
選択肢考察
- ○a. IgA血管炎〈Schönlein-Henoch紫斑病〉 ―― 疝痛性腹痛
IgA血管炎は、IgAを主体とする免疫複合体が小血管壁に沈着して起こる小型血管炎で、小児に多い。主症状は、①下肢・臀部に多い触知可能な紫斑(palpable purpura、血小板数は正常)、②腹部症状、③関節痛・関節炎、④腎炎(IgA腎症類似の糸球体腎炎)である。腹部症状は腸管壁の血管炎による浮腫・出血によるもので、差し込むような間欠的な疝痛性腹痛として現れ、下血や腸重積を合併することもある。紫斑に先行して腹痛が出現すると急性腹症と紛らわしく、診断の手がかりとして重要である。よってこの組合せは正しい。
- ×b. Sjögren症候群 ―― 関節拘縮
Sjögren症候群は涙腺・唾液腺などの外分泌腺にリンパ球が浸潤し、乾燥性角結膜炎(ドライアイ)や口腔乾燥(ドライマウス)をきたす自己免疫疾患である。関節痛や関節炎を伴うことはあるが、骨びらんを起こさない非破壊性の関節炎であり、関節拘縮や変形には通常至らない。関節の破壊・変形・拘縮が問題となる代表は関節リウマチ(尺側偏位、スワンネック変形、ボタン穴変形など)である。なお、Sjögren症候群の関節外症状としては、環状紅斑、間質性肺炎、尿細管性アシドーシス、悪性リンパ腫の合併などが重要である。
- ○c. 抗リン脂質抗体症候群 ―― 深部静脈血栓症
抗リン脂質抗体症候群(APS)は、抗カルジオリピン抗体、抗β2グリコプロテインI抗体、ループスアンチコアグラントといった抗リン脂質抗体が持続的に陽性となり、動静脈の血栓症や妊娠合併症(習慣流産・子宮内胎児死亡など)を繰り返す病態である。血栓は静脈にも動脈にも生じうるが、最も頻度が高いのは下肢の深部静脈血栓症であり、肺塞栓症の原因ともなる。動脈側では脳梗塞が代表的である。単独で発症する原発性APSのほか、SLEに合併する続発性APSも多い。よってこの組合せは正しい。
- ×d. 若年性特発性関節炎〈JIA〉 ―― 輪状紅斑
若年性特発性関節炎(JIA)は16歳未満で発症し6週間以上持続する原因不明の慢性関節炎の総称である。特に全身型JIAでは、弛張熱(1日のうちに高熱と平熱を繰り返す発熱)に一致して出現・消退するサーモンピンク色の小斑状皮疹(リウマトイド疹)が特徴的である。一方、輪状紅斑(辺縁が隆起し中心が退色する環状の紅斑)はリウマチ熱の主症状(Jones基準の大症状)の一つとして知られ、またSjögren症候群では抗SS-A抗体と関連する環状紅斑がみられる。JIAの典型的皮疹とはいえないため、この組合せは誤りである。
- ×e. 全身性エリテマトーデス〈SLE〉 ―― Gottron徴候
Gottron徴候は、手指の関節(中手指節関節や指節間関節)の伸側に生じる、角化・落屑を伴う紫紅色の紅斑ないし丘疹であり、皮膚筋炎に特徴的な皮膚所見である。皮膚筋炎ではほかに、上眼瞼の紫紅色浮腫性紅斑(ヘリオトロープ疹)、前胸部のV徴候、肩から上背部のショール徴候、機械工の手などがみられる。SLEに特徴的な皮膚所見は、鼻根部を挟んで両頬に広がる蝶形紅斑、円板状皮疹(ディスコイド疹)、光線過敏症、無痛性口腔潰瘍などである。よってこの組合せは誤りである。
膠原病・類縁疾患の特徴的な症候の整理
・全身性エリテマトーデス(SLE):蝶形紅斑、円板状皮疹、光線過敏症、口腔潰瘍、非破壊性関節炎、ループス腎炎、漿膜炎、血球減少。抗dsDNA抗体・抗Sm抗体が特異的。 ・皮膚筋炎:Gottron徴候(丘疹)、ヘリオトロープ疹、V徴候、ショール徴候、機械工の手、近位筋優位の筋力低下。悪性腫瘍や間質性肺炎の合併に注意。 ・Sjögren症候群:乾燥症状(眼・口)、環状紅斑、腺外症状(間質性肺炎、尿細管性アシドーシス)、悪性リンパ腫。抗SS-A抗体・抗SS-B抗体。 ・関節リウマチ:対称性多関節炎、朝のこわばり、骨びらんを伴う破壊性関節炎、関節の変形・拘縮、リウマトイド結節。 ・全身型JIA:弛張熱、サーモンピンク疹、関節炎、肝脾腫、血清フェリチン高値。マクロファージ活性化症候群に注意。 ・リウマチ熱:A群β溶連菌感染後に発症。Jones基準の大症状は心炎、多関節炎、舞踏病、輪状紅斑、皮下結節。 ・IgA血管炎:触知可能な紫斑、疝痛性腹痛、関節痛、腎炎。 ・抗リン脂質抗体症候群:動静脈血栓症(深部静脈血栓症、脳梗塞など)、習慣流産、血小板減少。APTT延長(ループスアンチコアグラントによる)がみられるが出血傾向ではなく血栓傾向を示す点が重要。
IgA血管炎の補足
腹部症状は小児例の半数以上にみられる。腸重積(小腸-小腸型が多い)や消化管出血を合併することがある。予後を左右するのは腎炎(紫斑病性腎炎)であり、発症後しばらくは尿検査で経過観察する。
POINT
・IgA血管炎の4主徴:触知可能な紫斑、疝痛性腹痛、関節痛、腎炎 ・抗リン脂質抗体症候群:深部静脈血栓症をはじめとする動静脈血栓症と習慣流産 ・Gottron徴候は皮膚筋炎、SLEは蝶形紅斑 ・輪状紅斑はリウマチ熱(Jones基準大症状)、JIA全身型はサーモンピンク疹 ・関節の変形・拘縮は関節リウマチの特徴で、Sjögren症候群の関節炎は非破壊性
