StudyMed医師国家試験

カテーテル検査のあとに好酸球が増える?―名前の罠とコレステロール塞栓症

第118回医師国家試験 C問題 第1問

国試問題にチャレンジ

第118回 C問題 第1問

好酸球増加がみられる疾患はどれか。

  1. a.IgA腎症
  2. b.遺伝性血管性浮腫
  3. c.抗リン脂質抗体症候群
  4. d.コレステロール塞栓症
  5. e.多発血管炎性肉芽腫症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は「好酸球増加をきたす疾患」を5つの候補から選ぶ知識問題だ。ポイントは、好酸球が増える原因を頭の中で分類できているかどうか、そして名前のよく似た疾患にだまされないこと。まず、好酸球が増える代表的な原因を挙げてみてくれるかな。
医学生医学生
アレルギーと寄生虫が真っ先に浮かびます。免疫学の講義で、Th2細胞のIL-5が好酸球を増やすと習いました。
ドクタードクター
その通り。IL-4がIgEへのクラススイッチを、IL-5が好酸球の分化・増殖を担う。だからアレルギー性疾患や組織に侵入する蠕虫の感染では、IgEと好酸球がそろって増えやすい。ほかには、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症などの一部の血管炎、好酸球増多症候群やHodgkinリンパ腫といった血液疾患、副腎不全もある。そして忘れがちなのが、コレステロール塞栓症だ。
医学生医学生
え、コレステロール塞栓症で好酸球が増えるんですか。てっきり多発血管炎性肉芽腫症を選びそうになっていました。
ドクタードクター
そこがまさにこの問題の落とし穴だね。著明な好酸球増加をきたすのは「好酸球性」多発血管炎性肉芽腫症、旧称Churg-Strauss症候群のほう。気管支喘息が先行して、MPO-ANCAと関連することがある。一方の多発血管炎性肉芽腫症、旧称Wegener肉芽腫症は主にPR3-ANCA陽性で、上気道・肺・腎を侵す。炎症で好中球主体の白血球増加はあっても、好酸球増加は特徴ではないんだ。
医学生医学生
「好酸球性」の3文字があるかないかで全然違うんですね。CBTの勉強のときも混同していました。
ドクタードクター
名前が長いから読み飛ばしやすいよね。では正解のコレステロール塞栓症について説明しよう。大動脈などの粥状硬化のプラークが崩れて、中のコレステロール結晶が飛び散り、末梢の小動脈に詰まる病気だ。きっかけとして多いのは何だと思う?
医学生医学生
血管の中をいじる処置でしょうか。循環器内科を回ったとき、心臓カテーテル検査を何度も見学しました。
ドクタードクター
正解。心臓カテーテル検査や血管内治療、心臓血管外科手術のほか、抗凝固薬や血栓溶解薬の使用も誘因になる。処置から数日〜数週たって発症することが多い。結晶に対する炎症反応として、好酸球増加、低補体血症、CRP上昇、赤沈亢進がみられるんだ。
医学生医学生
腎臓に詰まると腎機能が落ちますよね。造影剤腎症とはどう区別するんでしょう。
ドクタードクター
良い疑問だね。造影剤腎症は比較的早期に起こり回復することが多いのに対して、コレステロール塞栓症による腎障害は数日〜数週遅れて亜急性に進行しやすい。加えて、足の網状皮斑や足趾が紫色になるblue toe症候群、末梢血や尿中の好酸球といった全身のサインがそろえば強く疑える。
医学生医学生
残りの選択肢も確認させてください。IgA腎症は血清IgAが上がることはあっても、好酸球とは関係ないですよね。
ドクタードクター
そう。IgA腎症は糖鎖異常のあるIgA1を含む免疫複合体がメサンギウムに沈着する慢性糸球体腎炎で、わが国で最も多い原発性糸球体腎炎だ。上気道炎のあとの肉眼的血尿や健診の尿異常で見つかるけれど、好酸球増加は特徴ではない。
医学生医学生
遺伝性血管性浮腫は、むくむのでアレルギーっぽく感じてしまいます。
ドクタードクター
そう感じる人は多いね。でも遺伝性血管性浮腫はC1インヒビターの欠損や機能異常による病気で、主役はブラジキニン。補体古典経路が過剰に動いてC4が低値になる。蕁麻疹を伴わず、好酸球やIgEは病態に関わらないから、抗ヒスタミン薬も効きにくいんだ。
医学生医学生
抗リン脂質抗体症候群はAPTTが延びるのに血栓ができる、という逆説的な病気でしたね。
ドクタードクター
よく覚えているね。ループスアンチコアグラントは試験管内ではリン脂質依存性の凝固反応を邪魔してAPTTを延長させるけれど、生体内ではむしろ血栓傾向になる。動静脈血栓や習慣流産を繰り返し、血小板減少を伴うことはあっても、好酸球増加はみられない。
医学生医学生
つまり、それぞれの疾患に「特徴的な検査異常」があって、好酸球増加が当てはまるのはコレステロール塞栓症だけ、ということですね。
ドクタードクター
その整理で完璧だ。最後に臨床での注意点を。コレステロール塞栓症の確定診断は皮膚や腎の生検で、小動脈内に針状の空隙、つまりコレステロール結晶が標本作製で溶けて抜けた跡を確認する。網膜動脈にHollenhorst斑として見えることもある。治療に確立したものはなく、抗凝固薬の中止の検討、スタチンによるプラーク安定化、ステロイドなどの支持療法が中心だ。だからこそ、カテーテル検査後に腎機能が悪化した高齢の動脈硬化患者では、足先を見て、好酸球数を確認する習慣をもってほしい。
医学生医学生
臨床実習で採血結果を見るとき、白血球の分画まで目を通すようにします。

まとめ

好酸球増加の原因は、アレルギー性疾患、寄生虫感染、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症などの一部の血管炎、血液腫瘍、副腎不全、そしてコレステロール塞栓症に整理できます。コレステロール塞栓症は、心臓カテーテル検査などの血管内操作や抗凝固療法を契機に、数日〜数週遅れて腎機能障害、網状皮斑、blue toe症候群を起こし、好酸球増加や低補体血症を伴うのが特徴です。多発血管炎性肉芽腫症(主にPR3-ANCA)では好酸球は増えず、好酸球増加をきたすのは喘息が先行する好酸球性多発血管炎性肉芽腫症である点に注意が必要です。IgA腎症、遺伝性血管性浮腫(C4低値・ブラジキニン)、抗リン脂質抗体症候群(APTT延長と血栓傾向)にはそれぞれ別の特徴的な検査異常があります。疾患ごとの「代表的な検査異常」を軸に覚えておくと、血管内処置後の腎障害のような臨床場面でも見逃しを防げます。

解答・解説

正解はdです

テーマ

末梢血の好酸球増加(一般に好酸球数500/μL以上を好酸球増多とし、1,500/μL以上が持続するものを好酸球増多症〈hypereosinophilia〉と呼ぶ)をきたす疾患を選ぶ問題である。

好酸球増加の原因の整理

好酸球は、ヘルパーT細胞の一種であるTh2細胞などが産生するインターロイキン5(IL-5)によって骨髄での分化・増殖が促される。好酸球増加の代表的な原因は次のように整理できる。 ・アレルギー性疾患:気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、薬剤アレルギー(薬疹、薬剤性間質性腎炎など) ・寄生虫感染症:特に組織に侵入する蠕虫(回虫の幼虫移行期、糞線虫、肺吸虫など) ・血管炎・膠原病の一部:好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)、好酸球性筋膜炎 ・血液疾患・腫瘍:好酸球増多症候群、慢性好酸球性白血病、Hodgkinリンパ腫など ・その他:副腎不全(Addison病)、コレステロール塞栓症など

正解を導く考え方

選択肢の中で、上記の「その他」に含まれるコレステロール塞栓症が好酸球増加をきたす疾患である。紛らわしいのは多発血管炎性肉芽腫症で、名前の似た「好酸球性多発血管炎性肉芽腫症」との区別を問う意図がある。残りの3疾患は、それぞれ特徴的な検査異常(IgA沈着、補体C4低下、APTT延長など)が別にあり、好酸球増加は特徴ではない。

選択肢考察

  1. ×a.  IgA腎症

    IgA腎症は、糖鎖異常をもつIgA1を含む免疫複合体が腎糸球体のメサンギウム領域に沈着して起こる慢性糸球体腎炎で、わが国で最も多い原発性糸球体腎炎である。上気道感染に続く肉眼的血尿や、健診での顕微鏡的血尿・蛋白尿で見つかることが多い。血清IgAが上昇する例はおよそ半数程度にみられるが、好酸球増加は特徴ではない。

  2. ×b.  遺伝性血管性浮腫

    遺伝性血管性浮腫(HAE)は、C1インヒビター(C1-INH)の量的欠損または機能異常による常染色体顕性(優性)遺伝性疾患である。C1-INHが働かないため補体古典経路が過剰に活性化されてC4が消費され、血清C4が低値となる。また接触系(カリクレイン系)の制御も失われてブラジキニンが過剰に産生され、これが血管透過性を高めて皮膚・消化管・喉頭などに発作性の浮腫を起こす。ブラジキニンが主因であり、蕁麻疹を伴わず、好酸球やIgEは病態に関与しない。

  3. ×c.  抗リン脂質抗体症候群

    抗リン脂質抗体症候群(APS)は、抗カルジオリピン抗体、抗β2グリコプロテインI抗体、ループスアンチコアグラントといった抗リン脂質抗体の存在下に、動静脈血栓症や習慣流産などの妊娠合併症を繰り返す自己免疫疾患である。ループスアンチコアグラントは試験管内でリン脂質依存性の凝固反応を阻害するためAPTTが延長するが、生体内ではむしろ血栓傾向となる点が特徴である。血小板減少を伴うことはあるが、好酸球増加はみられない。

  4. ○d.  コレステロール塞栓症

    コレステロール塞栓症は、大動脈などの粥状硬化巣(プラーク)が崩れ、内部のコレステロール結晶が飛散して末梢の小動脈を閉塞する疾患である。心臓カテーテル検査や血管内治療などの血管内操作、抗凝固療法・血栓溶解療法を契機に、数日〜数週後に発症することが多い。結晶に対する炎症反応として末梢血の好酸球増加がしばしばみられ、ほかに血清補体の低下、CRP上昇、赤沈亢進などを伴う。腎臓では急性〜亜急性の腎機能障害を起こし、尿中に好酸球がみられることもある。皮膚では網状皮斑(リベド)や足趾の紫色変化(blue toe症候群)が特徴的である。

  5. ×e.  多発血管炎性肉芽腫症

    多発血管炎性肉芽腫症(GPA、旧称Wegener肉芽腫症)は、上気道(鼻・副鼻腔・中耳)、肺、腎臓を主に侵すANCA関連血管炎で、主にPR3-ANCA(プロテイナーゼ3に対する抗好中球細胞質抗体)が陽性となる。炎症に伴い好中球主体の白血球増加はみられるが、好酸球増加は特徴ではない。著明な好酸球増加をきたすのは、気管支喘息が先行し主にMPO-ANCAと関連する好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA、旧称Churg-Strauss症候群)であり、両者を混同しないことが重要である。

コレステロール塞栓症のまとめ

・背景:高齢、動脈硬化の危険因子(喫煙、高血圧、脂質異常症、糖尿病)をもつ男性に多い。 ・誘因:心臓カテーテル検査・血管造影、血管内治療、心臓血管外科手術、抗凝固薬・血栓溶解薬の使用。自然発症もある。 ・症状:網状皮斑、blue toe症候群、足趾の疼痛・潰瘍・壊疽、腎機能障害(造影剤腎症より遅れて数日〜数週後に進行することが多い)、腸管虚血、網膜動脈のコレステロール結晶(Hollenhorst斑)など。 ・検査:好酸球増加、低補体血症、CRP上昇、赤沈亢進、尿中好酸球。 ・確定診断:皮膚・腎・筋などの生検で、小動脈内に針状の空隙(標本作製の過程でコレステロール結晶が溶けて抜けた跡、cholesterol cleft)を認める。 ・治療:確立した特異的治療はなく、抗凝固薬の中止の検討、スタチンによるプラーク安定化、ステロイドの使用などの支持療法が中心となる。

ANCA関連血管炎の比較

・顕微鏡的多発血管炎(MPA):MPO-ANCA、肉芽腫なし、腎・肺(肺胞出血)病変。 ・多発血管炎性肉芽腫症(GPA):主にPR3-ANCA、壊死性肉芽腫性炎、上気道・肺・腎(E-L-K)。 ・好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA):MPO-ANCA陽性は一部、先行する気管支喘息・アレルギー性鼻炎、著明な好酸球増加、多発単神経炎。

好酸球・IgEとサイトカイン

IgEへのクラススイッチはIL-4(およびIL-13)が、好酸球の分化・増殖・活性化はIL-5が担う。いずれもTh2細胞が主に産生するサイトカインであり、アレルギー性疾患や寄生虫感染で好酸球とIgEがそろって増える理由となっている。重症喘息やEGPAでは、抗IL-5抗体(メポリズマブ)などの生物学的製剤が用いられる。

POINT

・好酸球増加の原因:アレルギー、寄生虫、EGPAなどの血管炎、血液腫瘍、副腎不全、コレステロール塞栓症。 ・コレステロール塞栓症:血管内操作後の腎機能障害+網状皮斑・blue toe+好酸球増加・低補体血症。 ・GPA(PR3-ANCA)では好酸球は増えない。好酸球増加はEGPAの特徴。 ・遺伝性血管性浮腫:C1-INH異常、C4低値、ブラジキニンによる浮腫。 ・好酸球の分化・増殖はIL-5、IgE産生はIL-4。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。