StudyMed医師国家試験

「飲むワクチン」はどれ?―英語の疾患名と接種経路で読み解くポリオワクチン

第103回医師国家試験 F問題 第4問

国試問題にチャレンジ

第103回 F問題 第4問

予防にoral vaccineを使用するのはどれか。

  1. a.Japanese encephalitis
  2. b.German measles
  3. c.whooping cough
  4. d.poliomyelitis
  5. e.measles

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、英語で書かれた5つの疾患のうち、予防に「oral vaccine」、つまり口から飲ませる経口ワクチンを使うものを選ぶ問題だ。ポイントは2つ。英語の疾患名を正しく日本語に置き換えられるか、そしてそれぞれのワクチンの接種経路を知っているか。まずは訳から始めよう。
医学生医学生
Japanese encephalitisは日本脳炎、measlesは麻疹ですよね。German measlesは……ドイツの麻疹、ですか?
ドクタードクター
直訳するとそうなるけれど、German measlesは風疹のことなんだ。rubellaとも呼ぶ。麻疹と名前が似ているけれど、まったく別の疾患だから混同しないように。
医学生医学生
医学英語の講義で出てきた気がします。whooping coughは百日咳で、poliomyelitisはポリオ、急性灰白髄炎ですね。
ドクタードクター
その通り。whoopは、連続する咳の発作のあとに息を吸い込むときの「ヒュー」という笛のような音、吸気性笛声を指している。では次に、それぞれのワクチンがどうやって接種されるかを考えてみよう。
医学生医学生
小児科実習で見た予防接種外来では、ほとんど注射でした。飲ませていたのはロタウイルスワクチンだけだった気がします。
ドクタードクター
よく観察していたね。今の日本の定期接種で経口投与するのはロタウイルスワクチンだ。ただ、この問題が出題された当時、日本のポリオの定期接種は経口の弱毒生ワクチン、OPVを使っていた。Sabinが開発したものだね。だから正解はpoliomyelitisになる。
医学生医学生
ポリオって今は四種混合や五種混合の注射で打っていますよね。経口だった時代があったんですね。
ドクタードクター
そう。ポリオワクチンには、Sabinの経口弱毒生ワクチンと、Salkの注射用不活化ワクチン、IPVの2種類がある。日本では2012年9月にOPVからIPVへ切り替えられ、同年11月からはジフテリア・百日咳・破傷風と組み合わせた四種混合、さらに2024年4月からはヒブも加えた五種混合として接種されている。
医学生医学生
わざわざ切り替えたのは、経口ワクチンに何か問題があったからですか。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。OPVは弱毒の生ウイルスだから、ごくまれに神経毒性を取り戻してワクチン関連麻痺、VAPPを起こすことがある。数百万回に1例程度と頻度は低いけれど、野生株のポリオがほぼ見られなくなった国では、ワクチンによる麻痺のほうが問題になってしまう。それで安全性の高い不活化ワクチンに移行したんだ。
医学生医学生
逆に、OPVのいいところは何でしょう。微生物学の講義では腸管免疫の話があった気がします。
ドクタードクター
まさにそこ。ポリオウイルスは経口感染して腸管で増殖し、一部で脊髄前角細胞を侵して弛緩性麻痺を起こす。OPVは飲むだけで接種できるうえ、腸管粘膜に分泌型IgAによる免疫を誘導できるから、ウイルスの伝播そのものを抑えやすい。だから流行地域では今も集団接種にOPVが使われているんだ。
医学生医学生
なるほど。では残りの選択肢も確認させてください。日本脳炎は不活化ワクチンの注射ですよね。
ドクタードクター
そう、コガタアカイエカが媒介するフラビウイルスで、不活化ワクチンを皮下注で接種する。旧来のマウス脳由来ワクチンでADEMとの関連が疑われて2005年に積極的勧奨が差し控えられたけれど、細胞培養ワクチンの登場で2010年度から勧奨が再開されている。
医学生医学生
百日咳も注射で、三種混合や今の五種混合に含まれている無細胞の不活化ワクチンですね。麻疹と風疹はMRワクチンの皮下注です。
ドクタードクター
完璧だ。MRワクチンは弱毒生ワクチンで、1歳時の第1期と小学校入学前1年間の第2期、計2回接種する。つまり生ワクチンだからといって経口とは限らない、というのも大事な視点だね。
医学生医学生
生か不活化かという「ワクチンの種類」と、注射か経口かという「接種経路」は分けて覚えないといけないんですね。
ドクタードクター
その通り。整理しておくと、生ワクチンには麻疹・風疹・水痘・おたふくかぜ・BCG・ロタ・OPVなどがあり、免疫不全者や妊婦には原則禁忌。不活化ワクチンには日本脳炎・IPV・百日咳・インフルエンザ・B型肝炎・ヒブ・肺炎球菌などがある。接種経路は多くが皮下注か筋注で、BCGは管針による経皮接種、ロタは経口だ。海外では経口コレラワクチンや経口腸チフスワクチンもある。
医学生医学生
国試では制度の変化も絡めて出されそうなので、出題年と今の制度の違いも意識しておきます。
ドクタードクター
いい心がけだ。予防接種の制度は改正が多いから、「当時の正解」と「現在の運用」を両方押さえておくと、臨床で保護者に説明するときにも困らないよ。

まとめ

oral vaccineは経口ワクチンのことで、選択肢の中ではポリオ(poliomyelitis)に経口弱毒生ワクチン(OPV、Sabin)があり、出題当時の日本の定期接種でも用いられていました。OPVは腸管粘膜免疫を誘導でき流行阻止に優れる一方、まれにワクチン関連麻痺を起こすため、日本では2012年に注射の不活化ポリオワクチン(IPV)へ切り替えられ、現在は五種混合ワクチンとして接種されています。日本脳炎(Japanese encephalitis)・百日咳(whooping cough)は不活化ワクチン、麻疹(measles)・風疹(German measles)はMR生ワクチンで、いずれも注射で接種し、現在の日本で経口投与する定期接種ワクチンはロタウイルスワクチンです。ワクチンの「種類(生・不活化・トキソイド)」と「接種経路」を区別して整理し、疾患名の英語表記とあわせて覚えることが、国試対策にも保護者への説明にも役立ちます。

解答・解説

正解はdです

問われていること

「oral vaccine」は経口ワクチン、すなわち注射ではなく口から飲ませて接種するワクチンである。本問は、英語で書かれた疾患名を日本語に置き換えられるかという医学英語の力と、それぞれの疾患に対するワクチンの種類・接種経路を知っているかという予防接種の知識を同時に確認している。

解き方

まず各選択肢を訳す。Japanese encephalitis は日本脳炎、German measles は風疹、whooping cough は百日咳、poliomyelitis は急性灰白髄炎(ポリオ)、measles は麻疹である。 次に、それぞれのワクチンの投与経路を思い出す。日本で使われる日本脳炎・風疹・百日咳・麻疹のワクチンはいずれも注射で接種する。一方、ポリオには経口で投与する弱毒生ワクチン(OPV:oral poliovirus vaccine、Sabin ワクチン)が存在し、出題当時(2009年)の日本の定期接種はこの OPV を用いていた。したがって正解は poliomyelitis である。

現在の状況

日本では2012年9月に定期接種が OPV から注射で接種する不活化ポリオワクチン(IPV)へ切り替えられ、同年11月からはジフテリア・百日咳・破傷風と組み合わせた四種混合ワクチン(DPT-IPV)が導入された(さらに2024年4月からはヒブワクチンも加えた五種混合ワクチンが定期接種に用いられている)。そのため、現在の日本の制度に当てはめると、選択肢の中に経口ワクチンで予防する疾患は存在しないことになる。ただし世界的にはポリオ流行地域を中心に OPV が今も使われており、「ポリオには経口生ワクチンがある」という知識自体は重要である。なお、現在の日本の定期接種で経口投与するワクチンはロタウイルスワクチンである。

選択肢考察

  1. ×a.  Japanese encephalitis

    日本脳炎である。日本脳炎ウイルスはコガタアカイエカが媒介するフラビウイルスで、予防には不活化ワクチンを注射(日本では皮下注)で接種する。経口ワクチンではない。なお、旧来のマウス脳由来ワクチンと重い副反応である急性散在性脳脊髄炎(ADEM)との関連が疑われ、2005年に積極的勧奨が差し控えられた。その後、細胞培養で製造した乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンが2009年に承認され、2010年度から積極的勧奨が再開されている。

  2. ×b.  German measles

    風疹である(rubella とも呼ぶ)。予防には弱毒生ワクチンを用い、日本では通常、麻疹と組み合わせた麻疹風疹混合ワクチン(MR ワクチン)を皮下注で接種する。定期接種は1歳時(第1期)と小学校入学前の1年間(第2期)の2回である。出題当時は、2008年度から5年間の時限措置として中学1年相当(第3期)と高校3年相当(第4期)にも接種機会が設けられていた。経口投与ではないので誤りである。

  3. ×c.  whooping cough

    百日咳である(pertussis とも呼ぶ)。「whoop」は、連続する咳の発作の後に息を吸い込むときのヒューという笛のような音(吸気性笛声)を指す。予防には百日咳菌の成分を用いた不活化ワクチン(無細胞ワクチン)を注射で接種する。出題当時はジフテリア・破傷風と組み合わせた三種混合ワクチン(DPT)、2012年からはポリオを加えた四種混合ワクチン(DPT-IPV)、2024年からはヒブも加えた五種混合ワクチンとして接種される。経口ワクチンではない。

  4. ○d.  poliomyelitis

    急性灰白髄炎(ポリオ)である。ポリオウイルスは経口感染し腸管で増殖した後、一部で脊髄前角細胞を侵して弛緩性麻痺を起こす。ポリオワクチンには、Sabin が開発した経口弱毒生ワクチン(OPV)と、Salk が開発した注射用の不活化ワクチン(IPV)の2種類がある。OPV は飲ませるだけで接種でき、腸管粘膜の免疫(分泌型 IgA)も誘導できるため、集団での流行阻止に優れる。出題当時の日本の定期接種は OPV であったため、本選択肢が正解となる。一方、OPV にはまれに弱毒株が神経毒性を取り戻してワクチン関連麻痺(VAPP)を起こす欠点があり(数百万回の接種に1例程度)、日本では2012年9月に IPV へ切り替えられた。現行制度の下では日本での接種は注射であり、この点は押さえておく必要がある。

  5. ×e.  measles

    麻疹(はしか)である(rubeola とも呼ぶ)。予防には弱毒生ワクチンを用い、日本では MR ワクチンとして1歳時(第1期)と小学校入学前の1年間(第2期)の2回、皮下注で接種する。2回接種は2006年度から導入され、2008年度からの5年間は中学1年相当(第3期)・高校3年相当(第4期)の追加接種も行われた。経口ワクチンではない。「German measles(風疹)」と「measles(麻疹)」は名前が似ているが別の疾患である点に注意する。

ワクチンの種類

・生ワクチン:病原体を弱毒化したもの。体内で増殖するため強い免疫が得られるが、免疫不全者・妊婦には原則禁忌。例:麻疹、風疹、MR、水痘、おたふくかぜ、BCG、ロタウイルス、経口ポリオ(OPV)、黄熱。 ・不活化ワクチン:病原体を殺したもの、またはその成分を用いたもの。複数回の接種が必要なことが多い。例:日本脳炎、不活化ポリオ(IPV)、百日咳(無細胞)、インフルエンザ、B型肝炎、ヒブ、肺炎球菌、HPV。 ・トキソイド:細菌の毒素を無毒化したもの。例:ジフテリア、破傷風。

接種経路

日本のワクチンの多くは皮下注または筋注で接種する。BCG は経皮接種(管針法)、ロタウイルスワクチンは経口接種である。かつての経口生ポリオワクチンも経口であった。海外では経口コレラワクチンや経口腸チフスワクチンなども使われている。

疾患名の英語

・Japanese encephalitis:日本脳炎 ・German measles / rubella:風疹 ・measles / rubeola:麻疹 ・whooping cough / pertussis:百日咳 ・poliomyelitis / polio:急性灰白髄炎(ポリオ) ・mumps:流行性耳下腺炎 ・chickenpox / varicella:水痘 ・diphtheria:ジフテリア、tetanus:破傷風

予防接種法の考え方の変化

予防接種はかつて罰則付きの義務接種であったが、1994年の改正で努力義務(勧奨接種)となった。社会全体を感染症から守る集団防衛の考え方に加え、個人を守る個人防衛の考え方が重視されるようになった。

POINT

・oral vaccine=経口ワクチン。出題当時の日本では経口生ポリオワクチン(OPV、Sabin)が定期接種に用いられていた。 ・日本では2012年9月に不活化ポリオワクチン(IPV、注射)へ切り替えられ、DPT-IPV(四種混合)、2024年からは五種混合として接種されている。 ・現在の日本の定期接種で経口投与するのはロタウイルスワクチン。 ・German measles(風疹)と measles(麻疹)、whooping cough(百日咳)など、疾患名の英語を確実に覚える。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。