息はある、でも危ない―ショックと意識混濁の傷病者に付けるタッグは何色か
第103回医師国家試験 F問題 第5問
国試問題にチャレンジ
災害時に,自発呼吸があり意識混濁を伴うショック状態の患者につけるトリアージタッグの色で正しいのはどれか。
- a.緑
- b.黄
- c.赤
- d.黒
- e.白
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
トリアージは、災害時に限られた医療資源を最大限に生かすため、傷病者の緊急度と重症度を短時間で判定して治療・搬送の優先順位を決める手順で、黒・赤・黄・緑の4色のタッグで区分します(白は存在しません)。自発呼吸があり、ショックと意識混濁を伴う傷病者は、直ちに処置すれば救命の可能性があるため最優先治療群の赤に分類されます。黒は気道確保後も呼吸がないなど救命困難な者、黄はバイタルが保たれ治療を待てる者、緑は歩行可能な軽症者です。一次トリアージのSTART法では歩行、呼吸、循環(橈骨動脈触知・CRT)、意識(指示に従えるか)の順に判定し、状態の変化に応じて各段階で繰り返し再評価します。呼吸・循環・意識という生理学的指標に基づく判断の流れを身につけることは、災害医療だけでなく日常の救急診療にも直結します。
解答・解説
正解はcです
トリアージとは
トリアージ(triage)は、多数の傷病者が同時に発生する災害現場などで、限られた医療資源(人手・物資・搬送手段)を最大限に生かすため、傷病者の緊急度と重症度を短時間で判定し、治療や搬送の優先順位を決める手順である。「最大多数に最良の医療を」という考え方に基づく。判定結果はトリアージタッグ(識別票)の色で表示し、黒・赤・黄・緑の4区分を用いる。
本問の患者の評価
本問の患者は、自発呼吸はあるので死亡(黒)ではない。しかしショック状態、つまり循環が破綻して臓器に十分な血液が届いていない状態にあり、さらに意識混濁がみられる。意識障害は脳への循環不全の表れとも考えられ、生命の危機が差し迫っている。一方で、今すぐ処置(止血、輸液など)を行えば救命できる可能性がある。このような「直ちに治療しなければ死亡するが、治療すれば助かる見込みがある」傷病者は最優先治療群に分類され、赤のタッグを付ける。
一次トリアージ(START 法)の流れで確認する
災害現場で広く用いられる START 法(Simple Triage And Rapid Treatment)では、次の順に判定する。 1. 歩ける → 緑 2. 歩けない場合、呼吸を確認。気道を確保しても呼吸がない → 黒 3. 呼吸数が多すぎる(おおむね30回/分以上)または少なすぎる(10回/分未満) → 赤 4. 橈骨動脈が触れない、または毛細血管再充満時間(CRT:爪床を圧迫して離した後、赤みが戻るまでの時間)が2秒を超える → 赤 5. 簡単な指示に従えない(意識障害) → 赤 6. 上記のいずれにも当たらない → 黄 本問の患者はショック状態(手順4に該当)かつ意識混濁(手順5に該当)であり、いずれの観点からも赤と判定される。
選択肢考察
- ×a. 緑
緑はカテゴリーⅢ(保留群・軽処置群)で、自力で歩くことができ、専門的な医療機関への緊急搬送を必要としない軽症者(軽い打撲や擦過傷など)に付ける。ショックと意識混濁を伴う本患者はこれに当たらない。
- ×b. 黄
黄はカテゴリーⅡ(待機的治療群・非緊急治療群)で、歩行は困難だが、呼吸・循環・意識は保たれており、治療開始が数時間程度遅れても生命に危険が及ばない傷病者(バイタルサインが安定した骨折など)に付ける。本患者はショックと意識障害があり、治療を待てる状態ではないので誤りである。
- ○c. 赤
赤はカテゴリーⅠ(最優先治療群・緊急治療群)で、生命に関わる重篤な状態にあり直ちに処置が必要だが、処置によって救命が見込める傷病者に付ける。気道閉塞・窒息、呼吸不全、大量出血、ショック、意識障害などが代表である。本患者は自発呼吸があるため救命の可能性が残っており、一方でショックと意識混濁があり一刻を争う。まさに最優先で治療・搬送すべき対象であり、赤が正しい。
- ×d. 黒
黒はカテゴリー0(死亡群・救命困難群)で、すでに死亡している者、または気道を確保しても自発呼吸がないなど、現在の状況下では救命が不可能と判断される者に付ける。本患者は自発呼吸があり救命の可能性があるので、黒には当たらない。
- ×e. 白
トリアージタッグの区分は黒・赤・黄・緑の4色であり、白という区分は存在しない。したがって誤りである。
トリアージの4区分
・赤(カテゴリーⅠ):最優先治療群。直ちに処置すれば救命可能。例:気道閉塞、呼吸困難、大量出血、ショック、意識障害、開放性胸部外傷など。 ・黄(カテゴリーⅡ):待機的治療群。治療が多少遅れても生命に危険がない。例:バイタルサインが安定している骨折・熱傷など。 ・緑(カテゴリーⅢ):保留群。歩行可能な軽症者。 ・黒(カテゴリー0):死亡群・救命困難群。死亡または救命の見込みがない者。 治療・搬送の優先順位は赤→黄→緑→黒の順である。
トリアージタッグの構造と運用
タッグの下端には色分けされたもぎり(切り取り部分)があり、判定した色が一番下に残るように不要な部分を切り取って使う。装着部位は原則として右手首で、困難な場合は左手首、右足首、左足首、首の順に付ける。衣服や靴など外れやすい所には付けない。
トリアージは繰り返し行う
傷病者の状態は時間とともに変化するため、トリアージは一度で終わらせず、現場、搬送前、病院到着時など各段階で繰り返し行う。一次トリアージでは START 法のように短時間で行える簡便な方法を用い、医療者が行う二次トリアージでは、生理学的評価と解剖学的評価を組み合わせた PAT 法(Physiological and Anatomical Triage)などでより詳しく判定する。
POINT
・トリアージタッグは黒・赤・黄・緑の4色(白はない)。 ・赤=直ちに治療すれば救命可能な最重症者(ショック、意識障害、気道閉塞、大量出血など)。 ・黒=死亡または救命困難。気道を確保しても自発呼吸がなければ黒。 ・START 法:歩行可→緑、呼吸なし→黒、呼吸数異常・循環不全(橈骨動脈触知不能、CRT>2秒)・指示に従えない→赤、それ以外→黄。
