StudyMed医師国家試験

介護保険は「市町村・40歳・要支援は予防給付」―地域包括支援センターが守る高齢者の暮らしと権利

第103回医師国家試験 F問題 第2問

国試問題にチャレンジ

第103回 F問題 第2問

介護保険制度で正しいのはどれか。

  1. a.保険者は都道府県である。
  2. b.被保険者は75歳以上である。
  3. c.要支援者に対して介護給付が行われる。
  4. d.地域包括支援センターは高齢者に対する虐待への対応を行う。
  5. e.地域包括支援センターの活動対象は要介護区分1,2の者である。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は介護保険制度の基本構造を問う問題だ。ポイントは「誰が運営するか(保険者)」「誰が加入するか(被保険者)」「どんな給付が誰に出るか」、そして地域包括支援センターの役割の4つ。この骨組みを整理できれば迷わず解けるよ。まず、介護保険の保険者はどこだと思う?
医学生医学生
医療計画や保健所は都道府県が担当していたので、介護保険も都道府県かなと思いました。
ドクタードクター
そう考える人は多いね。でも介護保険の保険者は、住民に一番身近な自治体である市町村なんだ。東京23区の特別区も含まれる。小さな自治体では、いくつかの市町村が広域連合をつくって共同で運営することもある。国や都道府県は財政負担や保険者の支援、事業者の指定といった形で関わる立場だよ。
医学生医学生
なるほど、介護は生活に密着したサービスだから、市町村が運営するんですね。
ドクタードクター
その理解でいい。次は被保険者。75歳以上という選択肢があったけれど、どうかな。
医学生医学生
75歳というと後期高齢者医療制度の区切りですよね。公衆衛生の講義で、介護保険は40歳から保険料を払うと聞いた気がします。
ドクタードクター
よく覚えているね。介護保険の被保険者は40歳以上だ。65歳以上が第1号被保険者で、原因を問わず要介護・要支援状態になれば給付を受けられる。40〜64歳の医療保険加入者が第2号被保険者で、こちらは末期がん、関節リウマチ、脳血管疾患、初老期における認知症など、加齢に関係する16種類の特定疾病が原因の場合に限って給付が受けられる。
医学生医学生
第2号だと、交通事故で要介護になった場合は対象外ということですか。
ドクタードクター
そうなんだ。加齢に伴う疾病が原因でなければ、介護保険ではなく障害福祉など別の制度で支えることになる。では給付の種類に移ろう。要支援者に介護給付が行われる、という記述はどうだろう。
医学生医学生
要支援も要介護も、まとめて介護給付だと思っていました。
ドクタードクター
そこがよくある落とし穴だね。要介護認定では要介護1〜5、要支援1・2、非該当に分かれる。要介護1〜5の人には介護給付、要支援1・2の人には予防給付が行われる。予防給付は状態の悪化を防ぎ、自立を支えることが目的なんだ。
医学生医学生
名前の通り「予防」なんですね。じゃあ、要支援者のケアプランは誰が作るんですか。
ドクタードクター
原則として地域包括支援センターが作成する。要介護者のケアプランは、通常は居宅介護支援事業所のケアマネジャーが作るよ。ここで地域包括支援センターの話につながる。センターの活動対象が要介護1・2の者に限られる、という記述はどう思う?
医学生医学生
今の話だと、むしろ要支援の人のケアプランを担当しているので、要介護1・2に限定というのはおかしいですね。
ドクタードクター
その通り。介護予防ケアマネジメントの対象は要支援1・2の人と、要支援・要介護になるおそれのある高齢者だ。さらに総合相談や権利擁護は、地域のすべての高齢者とその家族が対象になる。そして権利擁護業務の中心のひとつが高齢者虐待への対応。だから、地域包括支援センターが高齢者虐待への対応を行う、というのが正しい記述だ。
医学生医学生
地域医療実習で地域包括支援センターを見学したとき、社会福祉士さんが虐待の通報を受けて自宅訪問に行く話をしていました。
ドクタードクター
まさにそういう仕事だね。センターには保健師(または経験のある看護師)、社会福祉士、主任介護支援専門員の3職種が配置されていて、業務は総合相談支援、権利擁護、介護予防ケアマネジメント、包括的・継続的ケアマネジメント支援の4本柱。権利擁護には虐待の早期発見・防止のほか、成年後見制度の活用支援や消費者被害の防止も含まれる。
医学生医学生
医師として、虐待を疑ったときにはどう動けばいいんでしょうか。
ドクタードクター
大事な視点だ。説明のつかないあざや骨折、低栄養、不衛生な状態、受診の遅れなどに気づいたら、高齢者虐待防止法に基づいて市町村に通報する。実際の窓口として、地域包括支援センターが市町村と連携して対応してくれる。医師は虐待を発見しやすい立場にいるから、「おかしい」と感じたら一人で抱え込まず、センターにつなぐことが重要だよ。
医学生医学生
主治医意見書を書くのも医師の役割でしたよね。
ドクタードクター
そう。申請を受けた市町村が認定調査を行い、主治医意見書と合わせて介護認定審査会で判定する。意見書の内容は認定結果に影響するから、生活機能や認知機能の状態を具体的に書くことが大切だ。地域包括ケアシステムの拠点としてのセンターを知っておくと、退院支援や在宅医療の場面できっと役立つよ。

まとめ

介護保険制度は2000年に施行された社会保険で、保険者は市町村(特別区を含む)、被保険者は40歳以上であり、65歳以上の第1号被保険者と、特定疾病が原因の場合のみ給付対象となる40〜64歳の第2号被保険者に分かれます。要介護1〜5には介護給付、要支援1・2には予防給付が行われ、75歳以上という区切りは後期高齢者医療制度のものなので混同しないよう注意が必要です。地域包括支援センターは保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員が配置される市町村設置の機関で、総合相談支援、高齢者虐待への対応を含む権利擁護、要支援者などの介護予防ケアマネジメント、ケアマネジャー支援を担います。医師は主治医意見書の作成や虐待の早期発見を通じて制度に深く関わるため、仕組みを理解しておくことは地域で患者を支える臨床の土台になります。

解答・解説

正解はdです

【テーマ】介護保険制度の基本的な仕組み(保険者・被保険者・給付の種類)と、地域包括支援センターの役割を問う問題である。

考え方

介護保険制度は2000年に施行された社会保険制度で、介護が必要になった高齢者などを社会全体で支えることを目的とする。次の4点を整理しておけば正解を導ける。 ①保険者(制度を運営し保険料を集め給付を行う主体)は、住民に最も身近な自治体である市町村(東京23区の特別区を含む)である。 ②被保険者は40歳以上の者で、65歳以上の第1号被保険者と、40~64歳の医療保険加入者である第2号被保険者に分かれる。 ③要介護認定の結果により給付の種類が分かれ、要介護1~5の者には介護給付、要支援1・2の者には予防給付が行われる。 ④地域包括支援センターは、地域の高齢者の総合相談、権利擁護(高齢者虐待への対応を含む)、介護予防ケアマネジメント、ケアマネジャー支援などを担う中核機関である。 これに照らすと、地域包括支援センターが高齢者虐待への対応を行うという記述が正しい。

選択肢考察

  1. ×a.  保険者は都道府県である。

    介護保険の保険者は市町村および特別区(東京23区)である。小規模な自治体では、複数の市町村が広域連合や一部事務組合をつくって共同で運営することもある。国や都道府県は保険者ではなく、財政負担や保険者への支援・指導、事業者の指定などの立場で制度に関与する。

  2. ×b.  被保険者は75歳以上である。

    介護保険の被保険者は40歳以上である。65歳以上の者が第1号被保険者で、原因を問わず要介護・要支援状態になれば給付を受けられる。40~64歳の医療保険加入者が第2号被保険者で、末期がん、関節リウマチ、脳血管疾患、初老期における認知症など、加齢に伴って生じる16種類の特定疾病が原因で要介護・要支援状態となった場合に限り給付を受けられる。75歳以上を対象とするのは後期高齢者医療制度であり、混同しないよう注意する。

  3. ×c.  要支援者に対して介護給付が行われる。

    介護給付の対象は要介護1~5と認定された要介護者である。要支援1・2と認定された要支援者には、状態の悪化を防ぎ自立を支えることを目的とした予防給付(介護予防サービス)が行われる。要支援者の介護予防サービス計画(ケアプラン)は、原則として地域包括支援センターが作成する。

  4. ○d.  地域包括支援センターは高齢者に対する虐待への対応を行う。

    地域包括支援センターは、2005年の介護保険法改正により創設され(2006年施行)、市町村が設置主体となる機関である。主な業務の一つが権利擁護業務であり、高齢者虐待の早期発見・防止、虐待を受けた高齢者への対応、成年後見制度の活用支援、消費者被害の防止などを行う。高齢者虐待防止法でも、市町村と連携して虐待の通報・相談に対応する役割を担う。したがって本選択肢は正しい。

  5. ×e.  地域包括支援センターの活動対象は要介護区分1,2の者である。

    地域包括支援センターが介護予防ケアマネジメントの対象とするのは、要支援1・2の者と、要支援・要介護状態になるおそれのある高齢者である(出題当時は「特定高齢者」と呼ばれ、現在は介護予防・日常生活支援総合事業の「事業対象者」などが該当する)。さらに総合相談や権利擁護は地域のすべての高齢者とその家族が対象であり、要介護1・2の者に限られるわけではない。要介護者のケアプランは、通常、居宅介護支援事業所のケアマネジャー(介護支援専門員)が作成する。

介護保険制度の概要

・施行:2000年 ・保険者:市町村・特別区 ・被保険者:第1号被保険者(65歳以上)、第2号被保険者(40~64歳の医療保険加入者) ・財源:公費(国・都道府県・市町村の税金)が50%、保険料が50% ・利用者負担:原則1割(一定以上の所得がある者は2割または3割) ・利用の流れ:市町村への申請 → 認定調査と主治医意見書 → 介護認定審査会での審査・判定 → 要介護1~5、要支援1・2、非該当(自立)のいずれかに認定 → ケアプランの作成 → サービス利用

給付の種類

・介護給付:要介護1~5の者が対象。居宅サービス(訪問介護、通所介護、短期入所など)、施設サービス(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院など)、地域密着型サービス ・予防給付:要支援1・2の者が対象。介護予防を目的とした居宅サービスなど

地域包括支援センター

・設置主体:市町村(社会福祉法人などへの委託も可能) ・配置される専門職:保健師(または経験のある看護師)、社会福祉士、主任介護支援専門員の3職種 ・主な業務  ①総合相談支援:高齢者や家族からの相談を受け、適切なサービスや制度につなぐ  ②権利擁護:高齢者虐待の防止・対応、成年後見制度の活用支援、消費者被害の防止  ③介護予防ケアマネジメント:要支援者や要支援・要介護になるおそれのある者の介護予防ケアプランの作成  ④包括的・継続的ケアマネジメント支援:地域のケアマネジャーへの助言、関係機関とのネットワークづくり 地域包括ケアシステム(住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する体制)を地域で進める拠点としても位置づけられている。

POINT

・介護保険の保険者は市町村(特別区を含む)である。 ・被保険者は40歳以上。第1号は65歳以上、第2号は40~64歳(特定疾病が原因の場合のみ給付)。 ・要介護1~5には介護給付、要支援1・2には予防給付。 ・地域包括支援センターは総合相談、権利擁護(高齢者虐待への対応)、介護予防ケアマネジメント、包括的・継続的ケアマネジメント支援を担い、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員が配置される。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。