ピークは20歳、80%と70%が境界線―グラフが語る「骨」の一生
第103回医師国家試験 F問題 第1問
国試問題にチャレンジ
年齢による体組織の変化を図に示す。 このような変化がみられるのはどれか。

- a.骨格筋
- b.脂肪
- c.神経
- d.脈管
- e.骨
対話形式の解説
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ドクターまとめ
骨量は成長期に増加して20歳前後で最大骨量に達し、40歳ごろまで維持された後に減少しますが、閉経後の女性ではエストロゲン低下により急速に減るため、低下速度の個人差が大きいのが特徴です。骨密度は若年成人平均値(YAM)に対する割合で評価され、80%以上が正常、70%超〜80%未満が骨量減少、70%以下が骨粗鬆症とされ、図の区分と一致します。骨格筋も加齢で減少しますがサルコペニアは実測値で評価し、脂肪は加齢で増え、脳の萎縮や動脈硬化にはピーク値に対する割合での区分はありません。椎体骨折や大腿骨近位部骨折があれば骨密度にかかわらず骨粗鬆症と診断されうること、最大骨量を高め減少速度を抑えることが予防の2本柱であることも押さえておきましょう。グラフの軸や区分の意味から診断基準を思い起こす力は、骨粗鬆症の診療と予防指導の理解に直結します。
解答・解説
正解はeです
図の読み取り
縦軸は「個人のピーク値に対する量(%)」、横軸は年齢である。図から次の特徴が読み取れる。 ・幼少期から直線的に増加し、20歳前後でピーク(100%)に達する。 ・20~40歳ごろまではピーク値がほぼ維持される。 ・40歳ごろ以降は低下に転じるが、低下の速さには個人差が大きく、3本の矢印で示されている。 ・ピーク値の80%以上が「正常」、70~80%が「量減少」、70%未満が「合併症危険域」と区分されている。
考え方
「若い時期の最大値(ピーク値)に対する割合」で評価し、80%と70%を境に正常・減少・病的状態を区分する方法は、骨密度の評価法そのものである。わが国の原発性骨粗鬆症の診断基準では、骨密度を若年成人平均値(YAM:young adult mean、20~44歳の平均値)に対する割合で表し、80%以上を正常、70%超~80%未満を骨量減少、70%以下を骨粗鬆症とする。図の「合併症危険域」は、骨粗鬆症となり骨折(椎体骨折、大腿骨近位部骨折など)の危険が高まる領域を指している。また、閉経後の女性では骨量が急速に減少するなど、中年期以降の低下速度に大きな個人差がある点も骨の特徴であり、図の複数の矢印と合致する。以上から、この図は骨(骨量・骨密度)の加齢変化を示している。
選択肢考察
- ×a. 骨格筋
骨格筋量や筋力も20~30歳代をピークに加齢とともに減少し、高齢者では筋量・筋力が著しく低下したサルコペニアが問題となる。しかし、サルコペニアの診断は筋量(四肢骨格筋量指数)、握力、歩行速度などの実測値に基づく基準値で行われ、「ピーク値の80%・70%」という区分は用いられない。また、図のように20~40歳ごろまでピーク値を保つ平坦な期間が明示される評価法でもない。
- ×b. 脂肪
体脂肪は成人以降、むしろ加齢とともに増加する傾向があり(特に内臓脂肪)、筋肉量が減る一方で脂肪の割合が増える。中年期以降に減少していく図の変化とは合わない。
- ×c. 神経
脳重量は成人期早期に最大となり、加齢に伴いゆるやかに萎縮していくが、ピーク値の80%・70%で正常・減少・合併症危険域を分けるような臨床的な評価基準は存在しない。図に示された区分とは一致しない。
- ×d. 脈管
血管では加齢に伴って動脈硬化が進行し、血管壁の肥厚や弾性の低下が起こる。これは「量の減少」として表される変化ではなく、動脈硬化の病変はむしろ年齢とともに増える方向の変化である。図の推移には当てはまらない。
- ○e. 骨
骨量は成長期に増加して20歳前後で最大骨量(peak bone mass)に達し、40歳ごろまでほぼ維持された後、加齢とともに減少する。特に女性では閉経後にエストロゲンが低下して骨吸収が亢進し、骨量が急速に減少するため、低下速度の個人差が大きい。骨密度は若年成人平均値(YAM)に対する割合で評価され、80%以上が正常、70%超~80%未満が骨量減少、70%以下が骨粗鬆症(骨折の危険が高い状態)とされる。これは図の「正常」「量減少」「合併症危険域」の区分と一致する。
原発性骨粗鬆症の診断基準(日本骨代謝学会・日本骨粗鬆症学会、2012年度改訂版)の要点
低骨量をきたす他の疾患や続発性骨粗鬆症を除外したうえで、以下のいずれかを満たすものを原発性骨粗鬆症と診断する。 ・脆弱性骨折あり:椎体骨折または大腿骨近位部骨折がある場合(骨密度にかかわらず)、あるいはその他の脆弱性骨折があり骨密度がYAMの80%未満の場合 ・脆弱性骨折なし:骨密度がYAMの70%以下、または−2.5SD以下の場合 YAMの70%超~80%未満は「骨量減少(骨減少)」と呼ばれる。骨密度の測定は、腰椎または大腿骨近位部の二重エネルギーX線吸収法(DXA)が原則である。
骨量の加齢変化に影響する因子
・最大骨量を高める因子:成長期の十分なカルシウム・ビタミンD摂取、運動(骨への荷重) ・骨量を減らす因子:閉経(エストロゲン低下)、加齢、運動不足、やせ、喫煙、過度の飲酒、ステロイド薬の使用など 最大骨量を高めておくことと、中年期以降の減少速度を抑えることが骨粗鬆症予防の2本柱である。
他の組織の加齢変化
・骨格筋:20~30歳代をピークに減少し、高齢者ではサルコペニアが問題となる。 ・脂肪:体脂肪率は加齢とともに増加しやすい。 ・神経:脳は加齢に伴い萎縮する。 ・血管:動脈硬化が進行する。
POINT
・骨量は20歳前後で最大となり、40歳ごろ以降は減少する。閉経後女性では急速に減少し、低下速度の個人差が大きい。 ・骨密度は若年成人平均値(YAM)に対する割合で評価する:80%以上が正常、70%超~80%未満が骨量減少、70%以下が骨粗鬆症。 ・椎体骨折や大腿骨近位部骨折などの脆弱性骨折がある場合は、骨密度の値にかかわらず骨粗鬆症と診断されうる。
