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ピークは20歳、80%と70%が境界線―グラフが語る「骨」の一生

第103回医師国家試験 F問題 第1問

国試問題にチャレンジ

第103回 F問題 第1問

年齢による体組織の変化を図に示す。  このような変化がみられるのはどれか。

第103回 F問題 第1問の問題画像
  1. a.骨格筋
  2. b.脂肪
  3. c.神経
  4. d.脈管
  5. e.骨

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、年齢による体組織の量の変化を示したグラフから、どの組織かを当てる問題だ。カギはグラフの形と、縦軸の目盛りに書かれた区分。どこに注目すればよいか、一緒に見ていこう。まずグラフの形をざっくり言葉にするとどうなる?
医学生医学生
子どものころから増えて20歳前後でピークになり、40歳くらいまで横ばい、そのあと下がっていく形です。
ドクタードクター
いいね。それに加えて、40歳以降の下がり方に3本の矢印が描かれていて、低下の速さに個人差が大きいことを示している。さらに縦軸は個人のピーク値に対する割合で、80%以上が「正常」、70〜80%が「量減少」、70%未満が「合併症危険域」と区切られているね。
医学生医学生
年をとると減るものなら、筋肉かなと最初は思いました。サルコペニアの話を老年医学の講義で聞いたので。
ドクタードクター
自然な発想だね。確かに骨格筋も20〜30歳代をピークに減っていく。でも、サルコペニアの診断は四肢骨格筋量指数や握力、歩行速度といった実測値の基準で行うもので、「ピーク値の何%」という区分は使わないんだ。
医学生医学生
ピーク値に対する割合で80%と70%……あ、骨密度のYAMですか?
ドクタードクター
その通り。わが国の原発性骨粗鬆症の診断基準では、骨密度を若年成人平均値、つまりYAMに対する割合で表す。80%以上が正常、70%超〜80%未満が骨量減少、70%以下が骨粗鬆症だ。グラフの区分とぴったり重なるね。
医学生医学生
じゃあ「合併症危険域」というのは、骨粗鬆症になって骨折しやすくなる領域ということですね。
ドクタードクター
そう。椎体骨折や大腿骨近位部骨折のリスクが高まる領域を指している。もう一つ、下がり方の個人差が大きいというのも骨らしい特徴だ。何が関係していると思う?
医学生医学生
閉経でしょうか。エストロゲンが減ると骨吸収が亢進すると、内分泌の講義で習いました。
ドクタードクター
正解。閉経後の女性では骨量が急速に減少するから、同じ年齢でも人によって骨量がかなり違ってくる。これが3本の矢印の意味だと考えられる。では、ほかの選択肢も確認しておこう。脂肪はどうかな。
医学生医学生
脂肪は、年をとるとむしろ増えるイメージがあります。中年太りとか。
ドクタードクター
そうだね。体脂肪、特に内臓脂肪は加齢とともに増える傾向があって、筋肉が減る一方で脂肪の割合が増える。中年期以降に減っていく図とは逆の動きだ。
医学生医学生
神経はどうでしょう。脳も年をとると萎縮しますよね。
ドクタードクター
脳重量は成人期早期に最大となって、加齢とともにゆるやかに萎縮していく。ただ、ピーク値の80%や70%で正常か危険かを分けるような臨床的な評価基準はない。脈管、つまり血管はどうだろう。
医学生医学生
血管は動脈硬化が進むので、量が減るというより、壁が厚く硬くなる変化ですね。
ドクタードクター
その通り。動脈硬化の病変はむしろ年齢とともに増える方向の変化で、図の推移には当てはまらない。結局、ピーク値に対する割合と80%・70%という区分、そして閉経による個人差、この3点がすべて骨を指しているわけだ。
医学生医学生
グラフの形だけだと筋肉と迷いますが、縦軸の区分が決め手になるんですね。
ドクタードクター
そういうこと。発展知識として診断基準をもう少し補足しておこう。低骨量をきたす他の疾患や続発性骨粗鬆症を除外したうえで、椎体骨折か大腿骨近位部骨折があれば骨密度にかかわらず骨粗鬆症と診断できる。その他の脆弱性骨折があればYAM80%未満、骨折がなければYAM70%以下か−2.5SD以下が基準だ。測定は腰椎や大腿骨近位部のDXAが原則になる。
医学生医学生
整形外科の実習で、大腿骨近位部骨折で入院した高齢の女性がとても多かったのを覚えています。骨折してから骨粗鬆症がわかる人もいるんですね。
ドクタードクター
そうなんだ。だから予防が大切になる。予防の柱は2つで、成長期にカルシウムやビタミンDを十分にとり、運動で骨に荷重をかけて最大骨量を高めておくこと、そして中年期以降の減少速度を抑えることだ。喫煙、過度の飲酒、やせ、運動不足、ステロイド薬の使用なども骨量を減らす因子だから、外来では問診で意識的に拾うようにしたいね。
医学生医学生
若いうちの貯金と、その後の減り方の両方が大事ということですね。
ドクタードクター
うまい表現だ。グラフのピークの高さと、矢印の傾きの両方に介入できると考えると覚えやすいよ。

まとめ

骨量は成長期に増加して20歳前後で最大骨量に達し、40歳ごろまで維持された後に減少しますが、閉経後の女性ではエストロゲン低下により急速に減るため、低下速度の個人差が大きいのが特徴です。骨密度は若年成人平均値(YAM)に対する割合で評価され、80%以上が正常、70%超〜80%未満が骨量減少、70%以下が骨粗鬆症とされ、図の区分と一致します。骨格筋も加齢で減少しますがサルコペニアは実測値で評価し、脂肪は加齢で増え、脳の萎縮や動脈硬化にはピーク値に対する割合での区分はありません。椎体骨折や大腿骨近位部骨折があれば骨密度にかかわらず骨粗鬆症と診断されうること、最大骨量を高め減少速度を抑えることが予防の2本柱であることも押さえておきましょう。グラフの軸や区分の意味から診断基準を思い起こす力は、骨粗鬆症の診療と予防指導の理解に直結します。

解答・解説

正解はeです

図の読み取り

縦軸は「個人のピーク値に対する量(%)」、横軸は年齢である。図から次の特徴が読み取れる。 ・幼少期から直線的に増加し、20歳前後でピーク(100%)に達する。 ・20~40歳ごろまではピーク値がほぼ維持される。 ・40歳ごろ以降は低下に転じるが、低下の速さには個人差が大きく、3本の矢印で示されている。 ・ピーク値の80%以上が「正常」、70~80%が「量減少」、70%未満が「合併症危険域」と区分されている。

考え方

「若い時期の最大値(ピーク値)に対する割合」で評価し、80%と70%を境に正常・減少・病的状態を区分する方法は、骨密度の評価法そのものである。わが国の原発性骨粗鬆症の診断基準では、骨密度を若年成人平均値(YAM:young adult mean、20~44歳の平均値)に対する割合で表し、80%以上を正常、70%超~80%未満を骨量減少、70%以下を骨粗鬆症とする。図の「合併症危険域」は、骨粗鬆症となり骨折(椎体骨折、大腿骨近位部骨折など)の危険が高まる領域を指している。また、閉経後の女性では骨量が急速に減少するなど、中年期以降の低下速度に大きな個人差がある点も骨の特徴であり、図の複数の矢印と合致する。以上から、この図は骨(骨量・骨密度)の加齢変化を示している。

選択肢考察

  1. ×a.  骨格筋

    骨格筋量や筋力も20~30歳代をピークに加齢とともに減少し、高齢者では筋量・筋力が著しく低下したサルコペニアが問題となる。しかし、サルコペニアの診断は筋量(四肢骨格筋量指数)、握力、歩行速度などの実測値に基づく基準値で行われ、「ピーク値の80%・70%」という区分は用いられない。また、図のように20~40歳ごろまでピーク値を保つ平坦な期間が明示される評価法でもない。

  2. ×b.  脂肪

    体脂肪は成人以降、むしろ加齢とともに増加する傾向があり(特に内臓脂肪)、筋肉量が減る一方で脂肪の割合が増える。中年期以降に減少していく図の変化とは合わない。

  3. ×c.  神経

    脳重量は成人期早期に最大となり、加齢に伴いゆるやかに萎縮していくが、ピーク値の80%・70%で正常・減少・合併症危険域を分けるような臨床的な評価基準は存在しない。図に示された区分とは一致しない。

  4. ×d.  脈管

    血管では加齢に伴って動脈硬化が進行し、血管壁の肥厚や弾性の低下が起こる。これは「量の減少」として表される変化ではなく、動脈硬化の病変はむしろ年齢とともに増える方向の変化である。図の推移には当てはまらない。

  5. ○e.  骨

    骨量は成長期に増加して20歳前後で最大骨量(peak bone mass)に達し、40歳ごろまでほぼ維持された後、加齢とともに減少する。特に女性では閉経後にエストロゲンが低下して骨吸収が亢進し、骨量が急速に減少するため、低下速度の個人差が大きい。骨密度は若年成人平均値(YAM)に対する割合で評価され、80%以上が正常、70%超~80%未満が骨量減少、70%以下が骨粗鬆症(骨折の危険が高い状態)とされる。これは図の「正常」「量減少」「合併症危険域」の区分と一致する。

原発性骨粗鬆症の診断基準(日本骨代謝学会・日本骨粗鬆症学会、2012年度改訂版)の要点

低骨量をきたす他の疾患や続発性骨粗鬆症を除外したうえで、以下のいずれかを満たすものを原発性骨粗鬆症と診断する。 ・脆弱性骨折あり:椎体骨折または大腿骨近位部骨折がある場合(骨密度にかかわらず)、あるいはその他の脆弱性骨折があり骨密度がYAMの80%未満の場合 ・脆弱性骨折なし:骨密度がYAMの70%以下、または−2.5SD以下の場合 YAMの70%超~80%未満は「骨量減少(骨減少)」と呼ばれる。骨密度の測定は、腰椎または大腿骨近位部の二重エネルギーX線吸収法(DXA)が原則である。

骨量の加齢変化に影響する因子

・最大骨量を高める因子:成長期の十分なカルシウム・ビタミンD摂取、運動(骨への荷重) ・骨量を減らす因子:閉経(エストロゲン低下)、加齢、運動不足、やせ、喫煙、過度の飲酒、ステロイド薬の使用など 最大骨量を高めておくことと、中年期以降の減少速度を抑えることが骨粗鬆症予防の2本柱である。

他の組織の加齢変化

・骨格筋:20~30歳代をピークに減少し、高齢者ではサルコペニアが問題となる。 ・脂肪:体脂肪率は加齢とともに増加しやすい。 ・神経:脳は加齢に伴い萎縮する。 ・血管:動脈硬化が進行する。

POINT

・骨量は20歳前後で最大となり、40歳ごろ以降は減少する。閉経後女性では急速に減少し、低下速度の個人差が大きい。 ・骨密度は若年成人平均値(YAM)に対する割合で評価する:80%以上が正常、70%超~80%未満が骨量減少、70%以下が骨粗鬆症。 ・椎体骨折や大腿骨近位部骨折などの脆弱性骨折がある場合は、骨密度の値にかかわらず骨粗鬆症と診断されうる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。