引っかき傷に沿って皮疹が並ぶ―Köbner現象で見分ける乾癬と扁平苔癬
第103回医師国家試験 D問題 第11問
国試問題にチャレンジ
Köbner現象を示すのはどれか。2つ選べ。
- a.Bowen病
- b.扁平苔癬
- c.尋常性狼瘡
- d.菌状息肉症
- e.尋常性乾癬
対話形式の解説
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ドクターまとめ
Köbner現象(同形反応)とは、一見正常な皮膚に掻破・摩擦・外傷・手術創・日焼けなどの刺激が加わった部位に、元の疾患と同じ皮疹が通常1〜3週間ほどで新たに生じる現象です。代表的疾患は尋常性乾癬と扁平苔癬で、ほかに尋常性白斑や光沢苔癬が知られ、いずれもT細胞が関与する免疫学的炎症が背景にあります。Bowen病や菌状息肉症のような腫瘍性疾患、尋常性狼瘡のような皮膚結核ではこの現象はみられず、疣贅の線状配列はウイルスの自家接種による仮性Köbner現象として区別されることがあります。Auspitz現象(乾癬)、Nikolsky現象(天疱瘡など)、針反応(Behçet病)、Darier徴候(肥満細胞症)と対比して覚えると混同を防げます。皮疹の分布を刺激との関係で読み解く視点は、診断だけでなく患者への生活指導にも役立ちます。
解答・解説
正解はb, eです
Köbner現象とは
Köbner現象(同形反応)とは、皮疹のない一見正常な皮膚に、掻く・こする・圧迫・外傷・手術創・日焼けなどの刺激が加わると、その刺激を受けた部位に元の疾患と同じ皮疹が新たに出現する現象である。引っかき傷に沿って線状に皮疹が並ぶ形で観察されることが多い。刺激から皮疹出現までは通常1〜3週間ほどかかる。
正解を導く考え方
Köbner現象を示す代表的な疾患は、尋常性乾癬、扁平苔癬、尋常性白斑である。これらはいずれも免疫学的な炎症(T細胞の関与)を背景にもつ疾患で、外的刺激が引き金となって同じ病変が誘発されると考えられている。また扁平疣贅や尋常性疣贅でも掻破部位に線状の皮疹が生じるが、これはウイルスが傷に沿って自家接種されることによるもので、仮性Köbner現象として区別されることがある。一方、腫瘍性疾患(Bowen病、菌状息肉症)や感染症である皮膚結核(尋常性狼瘡)は、正常皮膚への刺激で同じ病変が誘発される疾患ではない。以上より、扁平苔癬と尋常性乾癬を選ぶ。
選択肢考察
- ×a. Bowen病
Bowen病は表皮内にとどまる有棘細胞癌(表皮内癌、上皮内癌)であり、進行すると真皮へ浸潤してBowen癌となる。境界明瞭で、表面に鱗屑や痂皮を伴う褐色〜紅色の扁平な局面として体幹や四肢に単発することが多い。ヒ素の曝露、紫外線、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染などが関与する。腫瘍性病変であり、正常皮膚への刺激で同じ病変が生じるKöbner現象はみられない。治療は外科的切除が基本である。
- ○b. 扁平苔癬
扁平苔癬は、表皮の基底細胞をT細胞が攻撃する炎症性角化症である。紫紅色で扁平に隆起した多角形の丘疹が四肢屈側(特に手関節屈側)などに生じ、強い瘙痒を伴う。表面には白色の細かい網目状の線条(Wickham線条)がみられ、口腔粘膜にはレース状の白色病変が生じる。薬剤(降圧薬など)やC型肝炎との関連が知られる。掻破や外傷の部位に同じ丘疹が線状に並んで生じるKöbner現象を示す代表的疾患である。病理では基底層の液状変性と、表皮直下の帯状のリンパ球浸潤が特徴である。
- ×c. 尋常性狼瘡
尋常性狼瘡は、結核菌が皮膚そのものに病変をつくる真性皮膚結核の代表的な病型である。顔面(特に頬や鼻)に好発し、軟らかい褐色の結節が集まって局面をつくり、ガラス板で圧迫すると黄褐色のりんご・ゼリー様の小結節が透けて見える(硝子圧法)。潰瘍化と瘢痕化を繰り返しながら慢性に経過する。感染症による肉芽腫性病変であり、正常皮膚への刺激で同じ病変が誘発されるKöbner現象はみられない。治療は抗結核薬の多剤併用である。
- ×d. 菌状息肉症
菌状息肉症は皮膚T細胞リンパ腫の中で最も多い病型で、主にCD4陽性の異常T細胞が皮膚で増殖する。数年〜数十年の経過で、紅斑期(湿疹様の紅斑)→扁平浸潤期(浸潤を触れる局面)→腫瘤期へとゆっくり進行し、一部はリンパ節や血液、内臓に広がる。病理では表皮内に異型リンパ球が集まる像(Pautrier微小膿瘍)が特徴である。腫瘍性疾患であり、Köbner現象はみられない。
- ○e. 尋常性乾癬
尋常性乾癬は、IL-23/Th17系を中心とした免疫異常により表皮細胞の増殖とターンオーバーが著しく亢進する慢性炎症性角化症である。境界明瞭な紅斑の上に厚い銀白色の鱗屑がのった局面が、肘・膝・頭部・腰殿部など外的刺激を受けやすい部位に好発する。Köbner現象を示す最も代表的な疾患であり、こすれやすい部位に皮疹が多いこともこの現象で説明される。鱗屑をはがすと点状出血がみられるAuspitz現象も特徴である。病理では表皮突起の規則的な延長、錯角化、角層内の好中球の集簇(Munro微小膿瘍)がみられる。
Köbner現象を示す主な疾患
・尋常性乾癬 ・扁平苔癬 ・尋常性白斑 ・光沢苔癬 ・扁平疣贅、尋常性疣贅(ウイルスの自家接種による線状の皮疹で、仮性Köbner現象とされることがある)
皮膚科でよく問われる理学的所見の整理
・Köbner現象:正常皮膚への刺激で同じ皮疹が出る(乾癬、扁平苔癬、白斑)。 ・Auspitz現象:乾癬の鱗屑をはがすと点状出血が出る。 ・Nikolsky現象:一見正常な皮膚をこすると表皮がはがれる(尋常性天疱瘡、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群、中毒性表皮壊死症)。 ・針反応(パテルギー):注射針を刺した部位に膿疱や紅斑が出る(Behçet病)。 ・Darier徴候:皮疹をこすると膨疹と発赤が出る(色素性蕁麻疹=肥満細胞症)。 ・皮膚描記症:皮膚をこすった形に一致して膨疹が出る(蕁麻疹、特に機械性蕁麻疹)。
選択肢の疾患の分類
炎症性角化症:尋常性乾癬、扁平苔癬 表皮内癌:Bowen病 皮膚リンパ腫:菌状息肉症 皮膚結核(真性):尋常性狼瘡
POINT
・Köbner現象:正常皮膚への掻破・外傷などの刺激部位に、元の疾患と同じ皮疹が生じる現象。 ・代表疾患は尋常性乾癬、扁平苔癬、尋常性白斑(疣贅でも線状の皮疹がみられる)。 ・腫瘍性疾患(Bowen病、菌状息肉症)や皮膚結核(尋常性狼瘡)では示さない。 ・Auspitz現象(乾癬)、Nikolsky現象(天疱瘡など)、針反応(Behçet病)、Darier徴候(肥満細胞症)と区別して覚える。
