StudyMed医師国家試験

教室に戻るためのチーム―DKAから回復した高校生を支えるのは誰か

第103回医師国家試験 C問題 第19問

国試問題にチャレンジ

第103回 C問題 第19問

17歳の男子。糖尿病性ケトアシドーシスによる意識障害のためチーム医療が可能な病院に搬入された。インスリン治療で意識は回復した。学校生活に戻るために,多職種メンバーによる面談を主治医は計画している。  面談に加わらない職種はどれか。

  1. a.看護師
  2. b.薬剤師
  3. c.担任教師
  4. d.理学療法士
  5. e.管理栄養士

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、糖尿病性ケトアシドーシスから回復した高校生が学校生活に戻るための多職種面談で、加わらない職種を選ぶ問題だ。ポイントは「面談の目的は何か」を考えること。チーム医療は、目的に合わせてメンバーを選ぶものなんだ。まず、17歳でDKAを起こして見つかる糖尿病といえば?
医学生医学生
1型糖尿病が多いと思います。自己免疫で膵β細胞が壊されて、インスリンが絶対的に足りなくなるんですよね。
ドクタードクター
その通り。若年の2型糖尿病でも清涼飲料水の多飲などでケトアシドーシスを起こすことはあるけれど、多くは1型だ。インスリンが極端に足りないと脂肪分解が進んでケトン体がたまり、代謝性アシドーシスになる。この患者さんはインスリン治療で意識が戻った。では、これから何が課題になるかな。
医学生医学生
生涯インスリンを続けることですね。しかも学校にいる間も自分で打たないといけない。
ドクタードクター
そう。頻回注射やインスリンポンプ、血糖自己測定、食事の管理、低血糖やシックデイへの対処を身につける必要がある。こうした自己管理を支える職種が面談に必要になるんだ。まず看護師の役割は?
医学生医学生
臨床実習で糖尿病内科を回ったとき、看護師さんが患者さんにインスリン注射の手技を丁寧に指導していました。
ドクタードクター
まさにそれ。自己注射や血糖自己測定の手技指導、低血糖症状への気づき方とブドウ糖摂取などの対処、シックデイの対応といった療養指導の中心を担う。退院後の生活を見据えて本人と家族を支える要の職種だね。
医学生医学生
薬剤師さんは、インスリン製剤の説明をする立場でしょうか。
ドクタードクター
うん。超速効型や持効型といった製剤ごとの作用時間、注射器具の使い方、保管方法――未使用品は冷蔵、使用中は室温など――、低血糖を起こしやすい状況について説明し、自己注射の管理を支援する。
医学生医学生
食事は管理栄養士ですね。でも糖尿病の食事療法って、カロリー制限のイメージがあります。
ドクタードクター
そこは誤解しやすいところだ。成長期の1型糖尿病では、エネルギーを制限しすぎず、成長に必要な量をとりながら食事量とインスリン量を合わせることが大切なんだ。炭水化物量を数えてインスリン量を調節するカーボカウントや、給食・補食のとり方を管理栄養士が指導する。
医学生医学生
担任教師は医療職ではないので、外れるのかと最初は思いました。
ドクタードクター
そう考える人は多いね。でも面談の目的は「学校生活に戻ること」。学校でのインスリン注射や補食の許可と場所の確保、体育や部活での低血糖への注意、発作時の対応など、学校側の理解と協力が欠かせない。生活の場を支える担任教師、必要に応じて養護教諭も加わることが望ましいんだ。
医学生医学生
そうなると、残る理学療法士が加わらない職種ですね。
ドクタードクター
正解。理学療法士は、運動療法や物理療法で起き上がる・立つ・歩くといった基本的な動作能力の回復を図るリハビリの専門職だ。DKAから適切に回復すれば通常は神経学的な後遺症は残らないし、この患者さんは意識が戻って運動機能障害もない。1型糖尿病では運動を制限する必要はなく、低血糖に注意しながら行えばよいから、学校復帰の面談での必要性は他の職種より低い。
医学生医学生
でも、糖尿病の運動療法で理学療法士が関わることもありませんか。
ドクタードクター
鋭いね。2型糖尿病の運動療法の指導に理学療法士が関わることはあるし、日本糖尿病療養指導士の資格も、看護師・管理栄養士・薬剤師・臨床検査技師・理学療法士が取得できる。だから「糖尿病に無関係」ではないけれど、この症例の目的に照らすと優先度が低い、というのが正しい理解だよ。
医学生医学生
理学療法士と作業療法士の違いも、基礎医学の頃に混同していました。
ドクタードクター
整理しておこう。理学療法士は基本的な動作能力、作業療法士は作業活動を通じた応用的な動作能力や社会適応能力の回復を担う。経済的・社会的な問題の相談には医療ソーシャルワーカーが関わる。各職種の専門性を知っておくと、チーム医療の問題は解きやすくなるよ。
医学生医学生
臨床で気をつけることはありますか。
ドクタードクター
シックデイの指導は特に大切だ。発熱や嘔吐で食事がとれなくても、自己判断でインスリンを中止しないこと。中断はDKA再発の大きな誘因になる。思春期は心理的な負担も大きいから、学校生活管理指導表などで学校と情報を共有しつつ、心理的な支援も忘れないようにしたいね。

まとめ

若年者の糖尿病性ケトアシドーシスの多くは1型糖尿病の発症であり、回復後はインスリン自己注射、血糖自己測定、食事管理、低血糖やシックデイへの対処を生涯続ける必要があります。学校復帰に向けた多職種面談には、療養指導を担う看護師、インスリン製剤の説明と管理を支援する薬剤師、成長に配慮した食事指導やカーボカウントを行う管理栄養士、そして学校での支援体制を整える担任教師が加わります。一方、意識が回復し運動機能障害のない患者では、基本動作の回復訓練を担う理学療法士の必要性は相対的に低くなります。チーム医療では各職種の専門性を理解したうえで、面談の目的に合わせて必要なメンバーを選ぶという視点が、試験でも臨床でも重要です。

解答・解説

正解はdです

状況の整理

・17歳の男子が、糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis:DKA)による意識障害で搬入された。DKAは、インスリンの絶対的な欠乏によって脂肪の分解が進み、ケトン体が蓄積して代謝性アシドーシスとなる病態である。若年者でDKAを発症して見つかる糖尿病の多くは、自己免疫などで膵β細胞が破壊される1型糖尿病である(若年の2型糖尿病でも清涼飲料水の多飲などを契機にケトアシドーシスを起こすことはある)。 ・インスリン治療で意識は回復しており、DKAから適切に回復すれば通常は神経学的な後遺症は残らない。 ・今後の課題は、学校生活に戻りながら生涯にわたってインスリン療法(多くは頻回注射またはインスリンポンプ)を自分で続けることである。そのために、血糖自己測定、食事の管理、低血糖・シックデイ(体調不良時)への対処などを身につける必要がある。

考え方

慢性疾患を抱えた患者の社会復帰では、医師だけでなく、それぞれの専門性をもつ職種が情報を共有し、役割を分担して支援するチーム医療が重要である。本例の面談の目的は「学校生活に戻ること」である。そのため、インスリン自己注射と血糖自己測定の手技、薬の管理、食事療法、学校での低血糖時の対応など、日常生活の自己管理を支える職種が必要になる。患者が生活する場である学校の関係者も加わることが望ましい。 一方、意識が完全に回復し、麻痺などの運動機能障害もない本例では、機能回復のためのリハビリテーションを担う理学療法士が面談に加わる必要性は低い。

選択肢考察

  1. ×a.  看護師

    看護師は、インスリン自己注射や血糖自己測定の手技指導、低血糖症状への気づき方と対処(ブドウ糖の摂取など)、シックデイの対応、日常生活上の注意などの療養指導を担う。入院中から退院後の生活を見据えて患者と家族を支える中心的な職種であり、面談に加わる。

  2. ×b.  薬剤師

    薬剤師は、処方されるインスリン製剤の種類(超速効型・持効型など)と作用時間、注射器具の使い方、保管方法(未使用品は冷蔵、使用中は室温など)、飲み合わせ、低血糖を起こしやすい状況などについて説明し、服薬・自己注射の管理を支援する。インスリンを自己管理する本例では面談に加わる。

  3. ×c.  担任教師

    学校生活に戻るためには、学校側の理解と協力が欠かせない。例えば、学校でのインスリン注射や補食(低血糖予防・対処のための間食)の許可と場所の確保、体育や部活動のときの低血糖への注意、低血糖発作時の対応などである。医療職ではないが、患者の生活の場を支える担任教師(必要に応じて養護教諭なども)は面談に加わることが望ましい。

  4. ○d.  理学療法士

    理学療法士は、運動療法や物理療法によって、身体の基本的な動作能力(起き上がる、立つ、歩くなど)の回復を図るリハビリテーションの専門職である。本例は意識が回復し、後遺症や運動機能障害もないため、機能回復訓練の必要はない。1型糖尿病ではインスリン療法と食事管理が治療の中心であり、運動は制限せず、低血糖に注意しながら行えばよい。そのため、学校復帰に向けた面談に理学療法士が加わる必要性は他の職種に比べて低い。

  5. ×e.  管理栄養士

    糖尿病治療では、どの型であっても食事療法が基本となる。成長期にある1型糖尿病の若者では、エネルギーを制限しすぎず、成長に必要な量をとりながら、食事量とインスリン量を合わせることが重要である。そのため、炭水化物量を数えてインスリン量を調節するカーボカウントの指導、学校給食や補食のとり方の指導などを管理栄養士が担う。面談に加わる。

糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)

・インスリンの著しい欠乏とインスリン拮抗ホルモン(グルカゴン、コルチゾールなど)の増加によって起こる。高血糖(多くは250mg/dL以上)、ケトン体の増加、代謝性アシドーシス(pH 7.30未満、HCO₃⁻の低下、アニオンギャップ開大)が特徴である。 ・症状:口渇、多飲、多尿、脱水、悪心・嘔吐、腹痛、Kussmaul大呼吸、呼気のアセトン臭、意識障害。 ・治療:大量の生理食塩液による輸液、少量インスリンの持続静注、カリウム補充(インスリンの作用でKが細胞内に移動し、低K血症になるため)。 ・1型糖尿病の初発時や、インスリン注射の中断、感染症などを契機に起こることが多い。

1型糖尿病の若者の療養で必要なこと

・インスリン頻回注射(基礎インスリン+食事ごとの追加インスリン)またはインスリンポンプによる治療 ・血糖自己測定、持続グルコースモニタリング ・低血糖への対処(ブドウ糖の携帯、周囲への周知、重症時のグルカゴン) ・シックデイ(発熱・嘔吐などの体調不良時)の対応:食事がとれなくてもインスリンを自己判断で中止しない ・学校との連携(学校生活管理指導表などを用いた情報共有)、心理的な支援

チーム医療に関わる主な職種と役割

・医師:診断・治療方針の決定、チームの統括 ・看護師:療養上の世話・療養指導、自己注射・自己測定の手技指導 ・薬剤師:薬剤の説明・管理、服薬指導 ・管理栄養士:栄養評価と食事指導 ・臨床検査技師:検査の実施、血糖測定器の指導 ・理学療法士:身体の基本的な動作能力の回復(運動療法・物理療法) ・作業療法士:応用的な動作能力や社会適応能力の回復(作業活動を通じた訓練) ・医療ソーシャルワーカー:経済的・社会的問題の相談支援 糖尿病の療養指導では、看護師・管理栄養士・薬剤師・臨床検査技師・理学療法士が取得できる「日本糖尿病療養指導士」という資格もある。2型糖尿病の運動療法の指導には理学療法士が関わることもあるが、本例のような若年者の学校復帰では優先度は低い。

POINT

・若年者のDKAは多くが1型糖尿病の発症である。今後はインスリン自己注射、血糖自己測定、食事管理、低血糖への対処を身につけることが必要になる。 ・学校復帰に向けた多職種面談には、看護師(手技・療養指導)、薬剤師(インスリン製剤の説明と管理)、管理栄養士(食事指導)、担任教師(学校での支援)が加わる。 ・意識が回復して運動機能障害のない患者には、理学療法士による機能回復訓練は不要である。 ・チーム医療では、面談の目的に合わせて必要な職種を選ぶ。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。