真ん中で切ると何が見える?―正中矢状断MRIは「写るもの・写らないもの」で解く
第103回医師国家試験 B問題 第5問
国試問題にチャレンジ
頭部単純MRIのT1強調正中矢状断像を別に示す。 組合せで正しいのはどれか。

- a.① ―― 松果体
- b.② ―― 脳梁
- c.③ ―― 橋
- d.④ ―― 小脳半球
- e.⑤ ―― 被殻
対話形式の解説
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ドクターまとめ
頭部MRIの正中矢状断には、脳梁、第三脳室、視床間橋、中脳・橋・延髄、小脳虫部、下垂体、松果体など正中に位置する構造が写り、小脳半球や被殻のような左右一対で正中から離れた構造は原則として写りません。側脳室の上を弓状に走る白質が脳梁、トルコ鞍内が下垂体、中脳水道の入口上方が松果体、中脳水道の前が中脳、第四脳室の前が橋、第四脳室の背側が小脳虫部と、位置関係で同定するのが基本です。T1強調像では脳脊髄液が低信号、下垂体後葉は高信号を示すことが多く、中枢性尿崩症ではこの高信号が消失することがあります。「位置関係による同定」と「正中に写るかどうかによる消去」を組み合わせる考え方は、下垂体・松果体部腫瘍や水頭症など正中病変の読影の土台になります。
解答・解説
正解はbです
画像の読み方
頭部単純MRIのT1強調像の正中矢状断である。正中矢状断とは、頭を左右に二分する正中面で切った断面であり、ここに写るのは脳梁、透明中隔、第三脳室、視床間橋、中脳・橋・延髄(脳幹)、小脳虫部、下垂体、松果体、中脳水道、第四脳室など「正中に位置する構造」、あるいは正中にまたがる構造である。T1強調像では脳脊髄液が低信号(黒)、白質が灰白質よりやや高信号に写り、解剖構造の把握に適している。
各番号の同定
①:トルコ鞍の中にある構造で、下垂体である。内部に高信号部分がみられる。正常でもT1強調像では下垂体後葉が高信号(後葉の高信号スポット)として写るが、本画像の高信号はやや大きく、Rathke嚢胞などの可能性も考えられる。いずれにしても松果体ではない。 ②:側脳室の上縁を前後に弓状に走る白質の板で、脳梁(体部)である。前方の膨らみが膝部、後方の膨らみが膨大部である。 ③:脳幹の上部、第三脳室の後下方で中脳水道の前方にある部分で、中脳(被蓋部)である。その下方で前方に大きく膨らむ部分が橋である。 ④:第四脳室の背側にあり、樹枝状の白質(小脳活樹)がみえる構造で、正中に位置する小脳虫部である。 ⑤:第三脳室の中で左右の視床をつなぐ構造で、視床間橋(中間質)である。
考え方
正中矢状断に写る構造かどうかという視点が重要である。小脳半球や被殻は左右一対の構造で正中から離れた位置にあるため、正中矢状断には原則として写らない。この点だけでもd、eは否定できる。
選択肢考察
- ×a. ① ―― 松果体
①はトルコ鞍内に位置する下垂体である。下垂体は漏斗(下垂体茎)で視床下部とつながり、T1強調像では後葉が高信号に写ることが多い。本画像では内部の高信号がやや大きく、Rathke嚢胞などの存在も考えられる。松果体は第三脳室後端、中脳水道入口の上方で四丘体(中脳蓋)の上に位置する小さな構造であり、①の位置とは全く異なる。
- ○b. ② ―― 脳梁
②は側脳室の上方を前後に弧を描いて走る白質の帯で、脳梁である。脳梁は左右の大脳半球を連絡する最大の交連線維の束で、前から吻部、膝部、体部、膨大部に分けられる。正中矢状断ではC字形(弓形)に明瞭に描出され、②はその体部を指している。
- ×c. ③ ―― 橋
③は脳幹の最上部、中脳水道の前方にあたる中脳(被蓋部)を指している。橋は中脳の下方にあり、正中矢状断では前方(腹側)へ大きく膨らんだ部分として認められる。橋の背側には第四脳室があり、さらにその背側に小脳が位置する。
- ×d. ④ ―― 小脳半球
④は第四脳室の背側にある正中の小脳部分、すなわち小脳虫部である。矢状断で白質が樹の枝のように分岐してみえる像は小脳活樹と呼ばれる。小脳半球は虫部の左右に広がる構造であり、正中矢状断には写らない。
- ×e. ⑤ ―― 被殻
⑤は第三脳室の内部で左右の視床をつなぐ視床間橋(中間質)である。視床間橋は存在しない人もいる構造である。被殻は大脳基底核の一部で、左右それぞれ内包の外側に位置し、その内側に淡蒼球、さらに内側に内包がある。正中から十分離れているため、正中矢状断に写ることはない。
正中矢状断で確認できる主な構造
・大脳:脳梁(吻部・膝部・体部・膨大部)、透明中隔、脳弓、帯状回 ・間脳:視床(内側面)、視床間橋、視床下部、第三脳室、松果体、乳頭体、視交叉 ・下垂体:トルコ鞍内。漏斗で視床下部とつながる。T1強調像で後葉が高信号に写ることが多い(後葉に貯蔵されるバソプレシンなどを含む分泌顆粒の影響と考えられている)。中枢性尿崩症ではこの高信号が消失することがある。 ・脳幹:中脳(中脳蓋=四丘体、被蓋、大脳脚)、橋、延髄。中脳には中脳水道が通る。 ・小脳:小脳虫部、第四脳室
正中矢状断に写らない主な構造
小脳半球、大脳基底核(被殻・淡蒼球・尾状核)、内包、島、海馬など、左右一対で正中から離れた構造。
MRIの信号の基本
T1強調像:脳脊髄液は低信号、白質は灰白質より高信号。脂肪、亜急性期の出血(メトヘモグロビン)、高蛋白の液体、ガドリニウム造影剤の増強部などは高信号となる。 T2強調像:脳脊髄液は高信号、白質は灰白質より低信号。浮腫などの水分の多い病変は高信号となる。
POINT
・正中矢状断では、脳梁、第三脳室、視床間橋、中脳、橋、延髄、小脳虫部、下垂体、松果体などの正中構造を同定する。 ・小脳半球、被殻などの左右一対の構造は正中矢状断には写らない。 ・脳梁は側脳室上方の弓状の白質、松果体は中脳水道入口の上方、下垂体はトルコ鞍内に位置する。 ・T1強調像では下垂体後葉が高信号を示すことが多い。
