StudyMed医師国家試験

胎児は12週で「息」をするか?―超音波で見える胎児の動きのタイムライン

第103回医師国家試験 B問題 第36問

国試問題にチャレンジ

第103回 B問題 第36問

超音波画像下に観察が可能な胎児の運動・機能と時期の組合せで誤っているのはどれか。

  1. a.心拍動 ―― 妊娠10週
  2. b.呼吸様運動 ―― 妊娠12週
  3. c.四肢運動 ―― 妊娠15週
  4. d.排尿行動 ―― 妊娠20週
  5. e.嚥下運動 ―― 妊娠30週

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、胎児のさまざまな運動や機能が、超音波で妊娠何週ごろから観察できるかを問う問題だ。「誤っているもの」を選ぶ形式だから、それぞれの機能がいつ見えはじめるかを時系列で並べ、選択肢の週数が早すぎないかをチェックするのがコツだよ。
医学生医学生
選択肢の週数はどれも、観察できるようになる時期より後ならセーフ、早すぎたらアウト、という考え方ですね。
ドクタードクター
その通り。まずは一番早い心拍動から。胎嚢は経腟超音波で妊娠5週ごろ、胎芽は6週ごろから見えはじめ、心拍動は6〜7週ごろに確認できる。
医学生医学生
産婦人科の実習で、妊娠初期の外来で心拍を確認して「おめでとうございます」と伝える場面を見学しました。10週なら余裕で見えますね。
ドクタードクター
そうだね。心拍の確認は子宮内に生存胎児がいることの証明として大切なんだ。次に胎動、つまり体や手足の動きはどうだろう。
医学生医学生
お母さんが胎動を感じるのは20週前後だと習ったので、15週で四肢運動が見えるのは早すぎる気がします。
ドクタードクター
そこがよくある誤解だね。母体が胎動を自覚するのは経産婦で16〜18週、初産婦で18〜20週ごろだけど、それは「お母さんが感じられる強さになる時期」の話。超音波では、妊娠8週ごろから体全体の動きが、10〜12週ごろには四肢を個別に動かす様子が見えるんだ。
医学生医学生
なるほど、自覚胎動と超音波で見える胎動は別物なんですね。15週なら十分見えるので正しい組合せですね。
ドクタードクター
そう。次は排尿と嚥下。胎児の腎臓は10〜12週ごろから尿をつくりはじめ、12週ごろには膀胱がふくらんだり縮んだりする様子が超音波で見える。嚥下も10〜12週ごろから始まって、口の開閉や胃内の羊水として観察できる。
医学生医学生
それなら排尿の20週、嚥下の30週はどちらも問題なく観察できますね。残る呼吸様運動の12週が誤りでしょうか。
ドクタードクター
正解。胎児の呼吸様運動は、横隔膜の収縮で胸郭と腹壁が交互に動く運動のことだ。妊娠初期にも散発的に起こりうるとされるけれど、頻度が低くて持続も短いから、超音波で定常的に観察できるのは一般に妊娠20週ごろ以降とされている。12週では早すぎるんだ。
医学生医学生
呼吸様運動というと、羊水を肺にたくさん吸い込んでいるイメージでした。
ドクタードクター
そう思いがちだけど、羊水を大きく出し入れする運動ではないんだ。生まれた後の呼吸に備えた練習のようなもので、肺の発達にも関わると考えられている。
医学生医学生
生理学の講義で、胎児の肺はサーファクタントが出そろうのが遅いと習いました。呼吸関連の機能はゆっくり整うと覚えておけばよさそうですね。
ドクタードクター
いい結びつけ方だね。ここで発展知識。排尿と嚥下は羊水の出入りそのものなんだ。妊娠中期以降、羊水の主な供給源は胎児尿で、主な排出経路は嚥下。だから腎無形成や後部尿道弁のように尿が出ないと羊水過少、食道閉鎖や十二指腸閉鎖、無脳症のように飲み込めないと羊水過多になる。
医学生医学生
Potter症候群が羊水過少で肺低形成になる、という話もここにつながるんですね。
ドクタードクター
その通り。もうひとつ臨床で大事なのがBPS、biophysical profile scoreだ。NST、呼吸様運動、胎動、筋緊張、羊水量の5項目を各2点で評価して、胎児の健常性を判定する。呼吸様運動は30分の観察で30秒以上続くものが1回以上あれば正常とされる。
医学生医学生
低酸素になると、呼吸様運動や胎動が減るから評価項目に入っているんですね。
ドクタードクター
そう。妊娠後期には呼吸様運動が規則的になるからこそ、その消失が胎児の状態悪化のサインとして意味を持つんだ。見えはじめる時期と、臨床での使われ方をセットで押さえておこう。

まとめ

超音波で観察できる胎児の機能は、心拍動が妊娠6〜7週ごろ、体幹・四肢の運動が8〜12週ごろ、嚥下が10〜12週ごろ、排尿が12週ごろから確認でき、呼吸様運動の定常的な観察は20週ごろ以降とされるため、「呼吸様運動を妊娠12週」とする組合せが誤りです。母体の胎動自覚(初産婦で18〜20週ごろ)と超音波で見える胎動の時期は区別して覚える必要があります。妊娠中期以降の羊水は主に胎児尿で産生され嚥下で吸収されるので、尿路の異常では羊水過少、嚥下の障害では羊水過多となります。呼吸様運動はBPSの評価項目の一つで、胎児低酸素で減少するため胎児健常性の評価に用いられます。胎児機能の発達順序を理解することは、羊水量異常の病態や胎児評価法を読み解く基盤になります。

解答・解説

正解はbです

問われていること

経腹・経腟超音波検査で胎児のどのような運動・機能が、妊娠何週ごろから観察できるかを問う問題である。「誤っているのはどれか」という形式なので、実際にはその週数ではまだ観察が難しい組合せを選ぶ。

考え方

胎児の運動・機能が超音波で確認できる時期は、おおむね次の順に早い。 ・心拍動:妊娠6〜7週ごろ(経腟超音波) ・体幹・四肢の運動:妊娠8〜12週ごろ ・嚥下運動:妊娠10〜12週ごろ ・排尿(膀胱の充満と排出):妊娠12週ごろ ・呼吸様運動:出現自体は妊娠初期からとされるが、ごく短時間・不規則で、超音波で定常的に観察できるのは妊娠20週ごろ以降 各選択肢の週数をこの時期と比べると、心拍動10週・四肢運動15週・排尿20週・嚥下30週はいずれも観察可能時期を過ぎており正しい組合せである。一方、呼吸様運動を妊娠12週に観察できるとする組合せは、観察可能とされる時期(20週以降)より早すぎるため誤りとなる。

選択肢考察

  1. ×a.  心拍動 ―― 妊娠10週

    胎児心拍動は、経腟超音波では妊娠6〜7週ごろから胎芽の中の拍動として確認できる。妊娠10週であれば経腹超音波でも十分に確認可能であり、組合せとして正しい。なお、胎嚢(GS)は妊娠5週ごろ、胎芽は妊娠6週ごろから見えはじめ、心拍の確認は正常妊娠(子宮内の生存胎児)の証明として重要である。

  2. ○b.  呼吸様運動 ―― 妊娠12週

    これが誤っている組合せである。胎児呼吸様運動(fetal breathing movement)は、横隔膜の収縮によって胸郭と腹壁が交互に動く運動で、羊水を大きく出し入れするものではない。妊娠初期にも散発的に生じうるが、出現頻度が低く持続も短いため、妊娠12週で超音波により観察するのは困難であり、一般に観察可能となるのは妊娠20週ごろ以降とされる。妊娠後期には規則的になり、呼吸様運動の有無はBPS(biophysical profile score、胎児の健常性評価法)の評価項目の一つとなる。

  3. ×c.  四肢運動 ―― 妊娠15週

    胎児の自発運動は妊娠8週ごろから体全体の動きとして現れ、四肢を個別に動かす運動は妊娠10〜12週ごろには超音波で確認できる。妊娠15週であれば四肢運動は明瞭に観察でき、組合せとして正しい。なお、母体が胎動を自覚するのはこれより遅く、経産婦で妊娠16〜18週ごろ、初産婦で18〜20週ごろである。

  4. ×d.  排尿行動 ―― 妊娠20週

    胎児の腎臓は妊娠10〜12週ごろから尿をつくりはじめ、妊娠12週ごろには超音波で膀胱の充満と、その後の縮小(排尿)が観察されるようになる。妊娠20週であれば排尿行動は十分に観察可能であり、組合せとして正しい。妊娠中期以降は胎児尿が羊水の主な供給源となるため、腎無形成や下部尿路閉塞では羊水過少をきたす。

  5. ×e.  嚥下運動 ―― 妊娠30週

    胎児は妊娠10〜12週ごろから羊水を飲み込む嚥下運動を始め、超音波では口の開閉や咽頭・胃内の羊水の動きとして観察される。妊娠30週であれば嚥下運動は確実に観察でき、組合せとして正しい。嚥下は羊水の主な排出経路であり、食道閉鎖や嚥下障害を伴う中枢神経系の異常では羊水過多をきたす。

超音波で確認できる胎児の構造・運動の目安

・胎嚢(GS):妊娠5週ごろ(経腟超音波) ・胎芽・心拍動:妊娠6〜7週ごろ ・胎動(体幹・四肢の運動):妊娠8〜12週ごろ ・嚥下運動:妊娠10〜12週ごろ ・排尿(膀胱の充満・排出):妊娠12週ごろ ・呼吸様運動:定常的な観察は妊娠20週ごろ以降

羊水の産生と吸収

羊水は妊娠中期以降、主に胎児尿によってつくられ、主に胎児の嚥下によって取り除かれる。このほか胎児肺からの肺胞液も羊水の一部となる。したがって、尿がつくられない・排出されない異常(腎無形成、後部尿道弁など)では羊水過少、嚥下できない異常(食道閉鎖、十二指腸閉鎖、無脳症など)では羊水過多となる。

BPS(biophysical profile score)

胎児の健常性(well-being)を評価する方法で、NST(ノンストレステスト)、胎児呼吸様運動、胎動、筋緊張、羊水量の5項目を各2点で評価し、合計10点満点で判定する。呼吸様運動は30分間の観察中に30秒以上持続するものが1回以上あれば正常とされる。胎児の低酸素状態では呼吸様運動や胎動が減少するため、胎児機能評価に用いられる。

POINT

・胎児心拍動は妊娠6〜7週ごろから確認できる。 ・四肢運動は妊娠10〜12週ごろ、嚥下は妊娠10〜12週ごろ、排尿は妊娠12週ごろから観察できる。 ・呼吸様運動が超音波で定常的に観察できるのは妊娠20週ごろ以降であり、妊娠12週は早すぎる。 ・胎児尿は羊水の主な供給源、嚥下は主な排出経路である。 ・呼吸様運動はBPSの評価項目の一つである。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。