胎児は12週で「息」をするか?―超音波で見える胎児の動きのタイムライン
第103回医師国家試験 B問題 第36問
国試問題にチャレンジ
超音波画像下に観察が可能な胎児の運動・機能と時期の組合せで誤っているのはどれか。
- a.心拍動 ―― 妊娠10週
- b.呼吸様運動 ―― 妊娠12週
- c.四肢運動 ―― 妊娠15週
- d.排尿行動 ―― 妊娠20週
- e.嚥下運動 ―― 妊娠30週
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
超音波で観察できる胎児の機能は、心拍動が妊娠6〜7週ごろ、体幹・四肢の運動が8〜12週ごろ、嚥下が10〜12週ごろ、排尿が12週ごろから確認でき、呼吸様運動の定常的な観察は20週ごろ以降とされるため、「呼吸様運動を妊娠12週」とする組合せが誤りです。母体の胎動自覚(初産婦で18〜20週ごろ)と超音波で見える胎動の時期は区別して覚える必要があります。妊娠中期以降の羊水は主に胎児尿で産生され嚥下で吸収されるので、尿路の異常では羊水過少、嚥下の障害では羊水過多となります。呼吸様運動はBPSの評価項目の一つで、胎児低酸素で減少するため胎児健常性の評価に用いられます。胎児機能の発達順序を理解することは、羊水量異常の病態や胎児評価法を読み解く基盤になります。
解答・解説
正解はbです
問われていること
経腹・経腟超音波検査で胎児のどのような運動・機能が、妊娠何週ごろから観察できるかを問う問題である。「誤っているのはどれか」という形式なので、実際にはその週数ではまだ観察が難しい組合せを選ぶ。
考え方
胎児の運動・機能が超音波で確認できる時期は、おおむね次の順に早い。 ・心拍動:妊娠6〜7週ごろ(経腟超音波) ・体幹・四肢の運動:妊娠8〜12週ごろ ・嚥下運動:妊娠10〜12週ごろ ・排尿(膀胱の充満と排出):妊娠12週ごろ ・呼吸様運動:出現自体は妊娠初期からとされるが、ごく短時間・不規則で、超音波で定常的に観察できるのは妊娠20週ごろ以降 各選択肢の週数をこの時期と比べると、心拍動10週・四肢運動15週・排尿20週・嚥下30週はいずれも観察可能時期を過ぎており正しい組合せである。一方、呼吸様運動を妊娠12週に観察できるとする組合せは、観察可能とされる時期(20週以降)より早すぎるため誤りとなる。
選択肢考察
- ×a. 心拍動 ―― 妊娠10週
胎児心拍動は、経腟超音波では妊娠6〜7週ごろから胎芽の中の拍動として確認できる。妊娠10週であれば経腹超音波でも十分に確認可能であり、組合せとして正しい。なお、胎嚢(GS)は妊娠5週ごろ、胎芽は妊娠6週ごろから見えはじめ、心拍の確認は正常妊娠(子宮内の生存胎児)の証明として重要である。
- ○b. 呼吸様運動 ―― 妊娠12週
これが誤っている組合せである。胎児呼吸様運動(fetal breathing movement)は、横隔膜の収縮によって胸郭と腹壁が交互に動く運動で、羊水を大きく出し入れするものではない。妊娠初期にも散発的に生じうるが、出現頻度が低く持続も短いため、妊娠12週で超音波により観察するのは困難であり、一般に観察可能となるのは妊娠20週ごろ以降とされる。妊娠後期には規則的になり、呼吸様運動の有無はBPS(biophysical profile score、胎児の健常性評価法)の評価項目の一つとなる。
- ×c. 四肢運動 ―― 妊娠15週
胎児の自発運動は妊娠8週ごろから体全体の動きとして現れ、四肢を個別に動かす運動は妊娠10〜12週ごろには超音波で確認できる。妊娠15週であれば四肢運動は明瞭に観察でき、組合せとして正しい。なお、母体が胎動を自覚するのはこれより遅く、経産婦で妊娠16〜18週ごろ、初産婦で18〜20週ごろである。
- ×d. 排尿行動 ―― 妊娠20週
胎児の腎臓は妊娠10〜12週ごろから尿をつくりはじめ、妊娠12週ごろには超音波で膀胱の充満と、その後の縮小(排尿)が観察されるようになる。妊娠20週であれば排尿行動は十分に観察可能であり、組合せとして正しい。妊娠中期以降は胎児尿が羊水の主な供給源となるため、腎無形成や下部尿路閉塞では羊水過少をきたす。
- ×e. 嚥下運動 ―― 妊娠30週
胎児は妊娠10〜12週ごろから羊水を飲み込む嚥下運動を始め、超音波では口の開閉や咽頭・胃内の羊水の動きとして観察される。妊娠30週であれば嚥下運動は確実に観察でき、組合せとして正しい。嚥下は羊水の主な排出経路であり、食道閉鎖や嚥下障害を伴う中枢神経系の異常では羊水過多をきたす。
超音波で確認できる胎児の構造・運動の目安
・胎嚢(GS):妊娠5週ごろ(経腟超音波) ・胎芽・心拍動:妊娠6〜7週ごろ ・胎動(体幹・四肢の運動):妊娠8〜12週ごろ ・嚥下運動:妊娠10〜12週ごろ ・排尿(膀胱の充満・排出):妊娠12週ごろ ・呼吸様運動:定常的な観察は妊娠20週ごろ以降
羊水の産生と吸収
羊水は妊娠中期以降、主に胎児尿によってつくられ、主に胎児の嚥下によって取り除かれる。このほか胎児肺からの肺胞液も羊水の一部となる。したがって、尿がつくられない・排出されない異常(腎無形成、後部尿道弁など)では羊水過少、嚥下できない異常(食道閉鎖、十二指腸閉鎖、無脳症など)では羊水過多となる。
BPS(biophysical profile score)
胎児の健常性(well-being)を評価する方法で、NST(ノンストレステスト)、胎児呼吸様運動、胎動、筋緊張、羊水量の5項目を各2点で評価し、合計10点満点で判定する。呼吸様運動は30分間の観察中に30秒以上持続するものが1回以上あれば正常とされる。胎児の低酸素状態では呼吸様運動や胎動が減少するため、胎児機能評価に用いられる。
POINT
・胎児心拍動は妊娠6〜7週ごろから確認できる。 ・四肢運動は妊娠10〜12週ごろ、嚥下は妊娠10〜12週ごろ、排尿は妊娠12週ごろから観察できる。 ・呼吸様運動が超音波で定常的に観察できるのは妊娠20週ごろ以降であり、妊娠12週は早すぎる。 ・胎児尿は羊水の主な供給源、嚥下は主な排出経路である。 ・呼吸様運動はBPSの評価項目の一つである。
