StudyMed医師国家試験

「訓練」ではなく「暮らし」を取り戻す―リハビリテーションの原則を総点検

第103回医師国家試験 B問題 第34問

国試問題にチャレンジ

第103回 B問題 第34問

リハビリテーションで正しいのはどれか。

  1. a.疾病の急性期には行わない。
  2. b.理学療法に医師の処方は不要である。
  3. c.生活の場を想定してプログラムを立てる。
  4. d.自立できない重度障害者は対象とならない。
  5. e.退院後の機能訓練を回復期リハビリテーションという。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はリハビリテーションの基本的な考え方を問う問題だ。選択肢は、いつ始めるか、誰の指示で行うか、何を目標にするか、誰が対象か、病期をどう呼ぶか、という5つの観点に分かれている。一つずつ原則に照らしていこう。
医学生医学生
リハビリというと、病気が落ち着いてから筋トレや歩行練習をするイメージがあります。
ドクタードクター
多くの人がそう思うんだけど、そこがまず誤解なんだ。リハビリテーションの語源は「再びふさわしい状態にする」。単なる機能訓練ではなく、障害をもった人が人間らしく生きる権利を取り戻す「全人間的復権」を目指す考え方なんだ。治療医学が「疾病」を相手にするのに対し、リハビリテーション医学は疾病によって生じた「障害」を相手にする。
医学生医学生
だとすると、急性期には行わない、というのは違いそうですね。
ドクタードクター
その通り。安静臥床が続くと、筋萎縮や関節拘縮、骨萎縮、起立性低血圧、深部静脈血栓症、褥瘡、心肺機能や認知機能の低下といった廃用症候群があっという間に進む。だから全身状態が許す範囲で、発症直後から体位変換や関節可動域訓練、早期離床を始めるんだ。
医学生医学生
脳神経内科の実習で、脳梗塞で入院した翌日にはもうPTさんがベッドサイドに来ていて驚きました。
ドクタードクター
まさにそれが早期リハビリテーションだね。脳卒中や心筋梗塞、術後などで有効性が示されている。では、理学療法に医師の処方は不要、という選択肢はどうかな。
医学生医学生
PTさんは専門職なので、独自に判断して進めてもいいような気もしますが……。
ドクタードクター
実際の訓練内容はPTの専門性が大きいけれど、法律上は違う。理学療法士及び作業療法士法では、PT・OTは「医師の指示の下に」理学療法・作業療法を行うと定められている。だから医師が、診断名や障害の内容、リスクや禁忌、目標などを書いたリハビリテーション処方を出す必要があるんだ。
医学生医学生
では、自立できない重度障害者は対象外、というのも違いますよね。
ドクタードクター
そう。完全な自立が見込めなくても、残存機能を生かして寝返りや座位保持、車椅子への移乗ができるようになれば、介護負担が減り、合併症も防げて、QOLが上がる。重度障害者こそリハビリの大事な対象だよ。
医学生医学生
退院後の機能訓練を回復期と呼ぶ、という選択肢は正しそうに聞こえて迷いました。
ドクタードクター
ここは用語の整理が必要だね。病期は急性期、回復期、生活期の3つに分ける。回復期は全身状態が落ち着いて機能回復が最も期待できる時期で、主に回復期リハビリテーション病棟に入院して集中的に訓練する。退院後に在宅や通所・訪問サービス、施設などで行うのは生活期、かつての呼び方では維持期リハビリテーションだ。
医学生医学生
なるほど、回復期はまだ入院中なんですね。そうすると正解は、生活の場を想定してプログラムを立てる、ですね。
ドクタードクター
正解。同じ片麻痺でも、段差の多い一戸建てに住むのか、エレベーターのある集合住宅か、同居家族の介護力はどうか、仕事や趣味は何か、によって必要な動作や訓練内容、住宅改修や福祉用具の選び方は変わる。退院後に暮らす場を具体的に思い描いて、個別のプログラムを組むことが欠かせないんだ。
医学生医学生
社会医学の講義で習ったICFの環境因子・個人因子の考え方とつながりますね。
ドクタードクター
よく結びつけたね。ICFでは生活機能を心身機能・身体構造、活動、参加の3つのレベルで捉え、そこに環境因子と個人因子が影響すると考える。生活の場を想定したプログラムは、まさにこの発想の実践なんだ。
医学生医学生
退院前に自宅訪問をして手すりの位置を確認する、というのもその一環でしょうか。
ドクタードクター
そう、家屋調査はよく行われる。そのほか、リハビリテーションは医学的・教育的・職業的・社会的の4分野が連携して進めるもので、医師、看護師、PT、OT、ST、医療ソーシャルワーカー、義肢装具士などがチームで目標を共有することが大切だ。臨床では、処方を出す医師がリスク管理と全体の目標設定に責任をもつことを忘れないでほしい。

まとめ

リハビリテーションは「疾病」ではなく「障害」を対象とし、ADLの自立や社会参加、QOLの向上を通じて全人間的復権を目指す医療です。廃用症候群を防ぐため急性期から開始し、理学療法・作業療法は医師の指示(リハビリテーション処方)のもとで行い、自立が難しい重度障害者も残存機能を生かす対象となります。病期は急性期、回復期(入院での集中訓練)、生活期(維持期、退院後の在宅・施設でのリハ)に分けられ、退院後の訓練を回復期とは呼びません。プログラムは患者が実際に暮らす場や家族・仕事などを想定して個別に組み立て、これはICFの環境因子・個人因子を重視する考え方と一致します。多職種チームで「その人の生活」を見据える視点は、どの診療科に進んでも患者を支える基本になります。

解答・解説

正解はcです

リハビリテーションの基本理念

リハビリテーション(rehabilitation)は「再び(re-)ふさわしい状態にする(habilitare)」という語源をもち、単なる機能訓練ではなく、障害をもった人が人間らしく生きる権利を回復すること(全人間的復権)を目指す考え方である。治療医学が主に「疾病」を対象とするのに対し、リハビリテーション医学は疾病によって生じた「障害」を対象とし、心身機能の回復だけでなく、日常生活活動(ADL)の自立、家庭・職場・地域社会への復帰、生活の質(QOL)の向上までを目標とする。

本問の考え方

選択肢は、リハビリテーションの①開始時期(急性期から行うか)、②実施の法的手続き(医師の指示が必要か)、③目標設定の考え方、④対象者の範囲、⑤病期区分の用語、を問うている。 ・開始時期:廃用症候群を防ぐため、急性期から開始する。 ・手続き:理学療法・作業療法などは医師の指示(リハビリテーション処方)に基づいて行う。 ・目標:患者本人が実際に暮らす場(自宅・施設・職場など)と生活様式を想定し、個別にプログラムを組む。 ・対象:自立が難しい重度障害者も対象である。 ・病期区分:急性期→回復期→生活期(維持期)と分けられ、退院後に在宅・地域で行うものは生活期(維持期)リハビリテーションである。 これらを踏まえると、正しいのは「生活の場を想定してプログラムを立てる」である。

選択肢考察

  1. ×a.  疾病の急性期には行わない。

    誤り。安静臥床が続くと、筋萎縮・関節拘縮・骨萎縮、起立性低血圧、深部静脈血栓症、褥瘡、心肺機能低下、認知機能低下などの廃用症候群が急速に進む。これらの二次的障害を予防し、早期の機能回復を促すため、全身状態が許す範囲で発症直後の急性期から体位変換、関節可動域訓練、早期離床などを開始する。脳卒中や心筋梗塞、術後などで早期リハビリテーションの有効性が示されている。

  2. ×b.  理学療法に医師の処方は不要である。

    誤り。理学療法士及び作業療法士法では、理学療法士・作業療法士は「医師の指示の下に」理学療法・作業療法を行う者と規定されている。言語聴覚士の嚥下訓練なども医師(または歯科医師)の指示のもとで行う。したがって医療として理学療法を開始する際には、医師がリハビリテーション処方(診断名、障害の内容、リスク・禁忌、訓練内容、目標など)を出す必要がある。

  3. ○c.  生活の場を想定してプログラムを立てる。

    正しい。リハビリテーションの最終目標は、患者がその人らしい生活に戻り社会に参加することである。同じ障害であっても、段差の多い一戸建てか集合住宅か、同居家族の介護力、仕事や趣味、利用できる福祉サービスなどによって、必要な動作能力や訓練内容、住宅改修・福祉用具の選択は変わる。そのため、退院後に暮らす場とそこでの生活を具体的に想定し、多職種で目標を共有して個別のプログラムを立てる。

  4. ×d.  自立できない重度障害者は対象とならない。

    誤り。リハビリテーションは完全な自立が見込める人だけを対象とするものではない。重度の障害があっても、残された機能(残存機能)を最大限に活用し、寝返りや座位保持、車椅子への移乗など一部の動作ができるようになることで、介護負担の軽減、合併症の予防、QOLの向上につながる。重度障害者も当然対象となる。

  5. ×e.  退院後の機能訓練を回復期リハビリテーションという。

    誤り。回復期リハビリテーションは、急性期治療を終えて全身状態が安定した後、機能回復が最も期待できる時期に、主に回復期リハビリテーション病棟などの入院で集中的に行う訓練を指す。退院後に在宅や通所・訪問サービス、介護保険施設などで、獲得した機能・生活を維持・向上させる目的で行うものは生活期(維持期)リハビリテーションと呼ばれる。

リハビリテーションの病期による区分

・急性期:発症直後〜全身状態が安定するまで。主に急性期病院で、リスク管理をしながら廃用症候群の予防と早期離床を図る。 ・回復期:状態が安定し、機能回復が大きく期待できる時期。回復期リハビリテーション病棟などで集中的に訓練し、ADLの改善と在宅復帰を目指す。 ・生活期(維持期):退院後。在宅・施設で、通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションなど主に介護保険サービスを利用し、機能と生活の維持・向上、社会参加を支援する。かつては維持期と呼ばれたが、現在は生活期という呼称が広く用いられている。

リハビリテーションの4つの分野(WHO)

医学的リハビリテーション、教育的リハビリテーション、職業的リハビリテーション、社会的リハビリテーションに分けられ、これらが連携して全人間的復権を目指す。

障害の捉え方:ICF

WHOの国際生活機能分類(ICF)では、人の生活機能を「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3レベルで捉え、それらに「環境因子」「個人因子」が相互に影響すると考える。生活の場を想定したプログラム作成は、この環境因子・個人因子を重視する考え方と一致する。

チーム医療

リハビリテーションは、医師、看護師、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、医療ソーシャルワーカー(MSW)、義肢装具士などが連携するチームで行われる。

POINT

・リハビリテーションの対象は「疾病」ではなく「障害」であり、目標は生活復帰と社会参加(全人間的復権)である。 ・廃用症候群予防のため急性期から開始する。 ・理学療法・作業療法は医師の指示(処方)のもとで行う。 ・重度障害者も対象であり、残存機能を最大限に生かす。 ・病期は急性期→回復期(入院での集中訓練)→生活期(維持期、退院後)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。