「訓練」ではなく「暮らし」を取り戻す―リハビリテーションの原則を総点検
第103回医師国家試験 B問題 第34問
国試問題にチャレンジ
リハビリテーションで正しいのはどれか。
- a.疾病の急性期には行わない。
- b.理学療法に医師の処方は不要である。
- c.生活の場を想定してプログラムを立てる。
- d.自立できない重度障害者は対象とならない。
- e.退院後の機能訓練を回復期リハビリテーションという。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
リハビリテーションは「疾病」ではなく「障害」を対象とし、ADLの自立や社会参加、QOLの向上を通じて全人間的復権を目指す医療です。廃用症候群を防ぐため急性期から開始し、理学療法・作業療法は医師の指示(リハビリテーション処方)のもとで行い、自立が難しい重度障害者も残存機能を生かす対象となります。病期は急性期、回復期(入院での集中訓練)、生活期(維持期、退院後の在宅・施設でのリハ)に分けられ、退院後の訓練を回復期とは呼びません。プログラムは患者が実際に暮らす場や家族・仕事などを想定して個別に組み立て、これはICFの環境因子・個人因子を重視する考え方と一致します。多職種チームで「その人の生活」を見据える視点は、どの診療科に進んでも患者を支える基本になります。
解答・解説
正解はcです
リハビリテーションの基本理念
リハビリテーション(rehabilitation)は「再び(re-)ふさわしい状態にする(habilitare)」という語源をもち、単なる機能訓練ではなく、障害をもった人が人間らしく生きる権利を回復すること(全人間的復権)を目指す考え方である。治療医学が主に「疾病」を対象とするのに対し、リハビリテーション医学は疾病によって生じた「障害」を対象とし、心身機能の回復だけでなく、日常生活活動(ADL)の自立、家庭・職場・地域社会への復帰、生活の質(QOL)の向上までを目標とする。
本問の考え方
選択肢は、リハビリテーションの①開始時期(急性期から行うか)、②実施の法的手続き(医師の指示が必要か)、③目標設定の考え方、④対象者の範囲、⑤病期区分の用語、を問うている。 ・開始時期:廃用症候群を防ぐため、急性期から開始する。 ・手続き:理学療法・作業療法などは医師の指示(リハビリテーション処方)に基づいて行う。 ・目標:患者本人が実際に暮らす場(自宅・施設・職場など)と生活様式を想定し、個別にプログラムを組む。 ・対象:自立が難しい重度障害者も対象である。 ・病期区分:急性期→回復期→生活期(維持期)と分けられ、退院後に在宅・地域で行うものは生活期(維持期)リハビリテーションである。 これらを踏まえると、正しいのは「生活の場を想定してプログラムを立てる」である。
選択肢考察
- ×a. 疾病の急性期には行わない。
誤り。安静臥床が続くと、筋萎縮・関節拘縮・骨萎縮、起立性低血圧、深部静脈血栓症、褥瘡、心肺機能低下、認知機能低下などの廃用症候群が急速に進む。これらの二次的障害を予防し、早期の機能回復を促すため、全身状態が許す範囲で発症直後の急性期から体位変換、関節可動域訓練、早期離床などを開始する。脳卒中や心筋梗塞、術後などで早期リハビリテーションの有効性が示されている。
- ×b. 理学療法に医師の処方は不要である。
誤り。理学療法士及び作業療法士法では、理学療法士・作業療法士は「医師の指示の下に」理学療法・作業療法を行う者と規定されている。言語聴覚士の嚥下訓練なども医師(または歯科医師)の指示のもとで行う。したがって医療として理学療法を開始する際には、医師がリハビリテーション処方(診断名、障害の内容、リスク・禁忌、訓練内容、目標など)を出す必要がある。
- ○c. 生活の場を想定してプログラムを立てる。
正しい。リハビリテーションの最終目標は、患者がその人らしい生活に戻り社会に参加することである。同じ障害であっても、段差の多い一戸建てか集合住宅か、同居家族の介護力、仕事や趣味、利用できる福祉サービスなどによって、必要な動作能力や訓練内容、住宅改修・福祉用具の選択は変わる。そのため、退院後に暮らす場とそこでの生活を具体的に想定し、多職種で目標を共有して個別のプログラムを立てる。
- ×d. 自立できない重度障害者は対象とならない。
誤り。リハビリテーションは完全な自立が見込める人だけを対象とするものではない。重度の障害があっても、残された機能(残存機能)を最大限に活用し、寝返りや座位保持、車椅子への移乗など一部の動作ができるようになることで、介護負担の軽減、合併症の予防、QOLの向上につながる。重度障害者も当然対象となる。
- ×e. 退院後の機能訓練を回復期リハビリテーションという。
誤り。回復期リハビリテーションは、急性期治療を終えて全身状態が安定した後、機能回復が最も期待できる時期に、主に回復期リハビリテーション病棟などの入院で集中的に行う訓練を指す。退院後に在宅や通所・訪問サービス、介護保険施設などで、獲得した機能・生活を維持・向上させる目的で行うものは生活期(維持期)リハビリテーションと呼ばれる。
リハビリテーションの病期による区分
・急性期:発症直後〜全身状態が安定するまで。主に急性期病院で、リスク管理をしながら廃用症候群の予防と早期離床を図る。 ・回復期:状態が安定し、機能回復が大きく期待できる時期。回復期リハビリテーション病棟などで集中的に訓練し、ADLの改善と在宅復帰を目指す。 ・生活期(維持期):退院後。在宅・施設で、通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションなど主に介護保険サービスを利用し、機能と生活の維持・向上、社会参加を支援する。かつては維持期と呼ばれたが、現在は生活期という呼称が広く用いられている。
リハビリテーションの4つの分野(WHO)
医学的リハビリテーション、教育的リハビリテーション、職業的リハビリテーション、社会的リハビリテーションに分けられ、これらが連携して全人間的復権を目指す。
障害の捉え方:ICF
WHOの国際生活機能分類(ICF)では、人の生活機能を「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3レベルで捉え、それらに「環境因子」「個人因子」が相互に影響すると考える。生活の場を想定したプログラム作成は、この環境因子・個人因子を重視する考え方と一致する。
チーム医療
リハビリテーションは、医師、看護師、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、医療ソーシャルワーカー(MSW)、義肢装具士などが連携するチームで行われる。
POINT
・リハビリテーションの対象は「疾病」ではなく「障害」であり、目標は生活復帰と社会参加(全人間的復権)である。 ・廃用症候群予防のため急性期から開始する。 ・理学療法・作業療法は医師の指示(処方)のもとで行う。 ・重度障害者も対象であり、残存機能を最大限に生かす。 ・病期は急性期→回復期(入院での集中訓練)→生活期(維持期、退院後)。
