StudyMed医師国家試験

赤くて、ぶつぶつして、かゆい―湿疹三角で読み解く急性湿疹の皮疹

第103回医師国家試験 B問題 第10問

国試問題にチャレンジ

第103回 B問題 第10問

急性湿疹でみられるのはどれか。2つ選べ。

  1. a.硬化
  2. b.丘疹
  3. c.紅斑
  4. d.膨疹
  5. e.紫斑

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は皮膚科の基本、発疹学の問題だ。急性湿疹でどんな皮疹が出るかを問われているけれど、丸暗記より「その皮疹が皮膚のどの層で、何が起きてできるのか」を考えると一気に整理しやすくなる。まず湿疹とはどんな炎症か、説明できるかな。
医学生医学生
刺激物やアレルゲンなどで起こる皮膚の炎症で、とにかくかゆい、というイメージです。
ドクタードクター
そうだね。湿疹(皮膚炎)は表皮を主な場とする炎症で、病理では表皮細胞の間に液体がたまる海綿状態と、真皮上層の血管拡張・リンパ球浸潤が特徴だ。そして皮疹が時間とともに姿を変えていくのが大きな特徴で、それを図にしたのが湿疹三角なんだ。
医学生医学生
湿疹三角、CBTの勉強で見ました。紅斑から始まって、丘疹、小水疱……と続いていく図ですよね。
ドクタードクター
その通り。まず血管拡張で紅斑ができ、そこに丘疹が出て、漿液性丘疹・小水疱、膿疱へと進む。破れるとびらんになって滲出液が固まり痂皮、やがて鱗屑を経て治っていく。急性湿疹では、これらの段階の皮疹が一つの病変の中に混在する。これを多様性(多形性)というんだ。
医学生医学生
ということは、選択肢の中では紅斑と丘疹が当てはまりますね。
ドクタードクター
正解。紅斑は真皮乳頭層付近の毛細血管が拡張・充血してできる、盛り上がらない赤い斑。血管の中の血液の色だから、ガラス板で押さえる硝子圧法で赤みが消える。湿疹の炎症は血管拡張から始まるから、紅斑は最初期から見られる基本の皮疹だ。
医学生医学生
丘疹は、1cmくらいまでの盛り上がり、でしたっけ。
ドクタードクター
そう、直径1cm程度以下の充実性、つまり中に液体を含まない隆起だ。湿疹では海綿状態や炎症細胞浸潤で小さな丘疹が多発し、進むと頂点に小水疱をのせた漿液性丘疹になる。では残りの選択肢も見ていこう。膨疹はどうかな。
医学生医学生
膨疹も赤くて盛り上がるので、湿疹の初期に出てもおかしくない気がしてしまいます。
ドクタードクター
見た目が似ているから迷いやすいね。膨疹は真皮上層の一過性の限局性浮腫で、肥満細胞から出たヒスタミンなどで血管透過性が亢進して起こる。蕁麻疹の皮疹で、個々の膨疹は数時間から通常24時間以内に跡形もなく消えるのがポイントだ。湿疹の紅斑や丘疹は持続して姿を変えていくから、性質がまったく違う。
医学生医学生
皮膚科の臨床実習で、蕁麻疹の患者さんが「受診したときには消えていた」と話していたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにそれが膨疹らしさだね。次に紫斑。紅斑との違いを説明できる?
医学生医学生
紫斑は出血なので、硝子圧で押しても色が消えない、でしたね。
ドクタードクター
その通り。血管の外に赤血球が漏れ出た状態だから圧迫しても消えない。血小板減少などの出血傾向、IgA血管炎などの血管炎、老人性紫斑で見られる皮疹で、湿疹とは関係がない。最後に硬化はどうだろう。
医学生医学生
慢性湿疹で皮膚がごわごわ厚くなるのは、硬化とは違うんですか。
ドクタードクター
いい疑問だ。慢性湿疹で掻き壊しが続いて皮膚が厚くなり、皮溝・皮丘が目立つ状態は苔癬化と呼ぶ。硬化は真皮や皮下で膠原線維が増えるなどして広い範囲が硬くなり、つまみにくくなった状態で、全身性強皮症やモルフェアが代表だ。そもそも急性湿疹は表皮中心の滲出性炎症だから、硬化は起こらない。
医学生医学生
皮疹ごとに「どの層の、どんな変化か」を対応させると覚えやすいですね。
ドクタードクター
そう、それが発疹学の核心だ。発展として、原発疹と続発疹の区別も押さえておこう。紅斑、丘疹、水疱、膨疹、紫斑は最初に現れる原発疹。びらん、潰瘍、痂皮、鱗屑、苔癬化は原発疹に続いて生じる続発疹だ。びらんは表皮までの欠損で瘢痕を残さず、潰瘍は真皮以下に及んで瘢痕を残す、という違いもよく問われる。
医学生医学生
臨床で湿疹を診るときに気をつけることはありますか。
ドクタードクター
まず、急性期にしっかり炎症を抑えないと、苔癬化や色素沈着を伴う慢性湿疹へ移行しやすいこと。そして「湿疹だと思ったら違った」という落とし穴だね。短時間で消えるなら蕁麻疹、押しても消えない赤紫なら紫斑、硬くつまめないなら硬化性疾患と、皮疹の性質を一つずつ確かめる習慣が誤診を防ぐ。カルテに皮疹を正確な用語で記載できることも大切だよ。

まとめ

急性湿疹は表皮を主な場とする炎症で、湿疹三角に沿って紅斑、丘疹、漿液性丘疹・小水疱、びらん、痂皮などが一つの病変に混在し、強いかゆみを伴います。紅斑は血管拡張による赤い斑で硝子圧で消え、丘疹は1cm程度以下の充実性隆起であり、いずれも急性湿疹の代表的な皮疹です。一方、膨疹は真皮の一過性浮腫で短時間に消える蕁麻疹の皮疹、紫斑は皮内出血で硝子圧でも消えず、硬化は強皮症などで真皮・皮下が硬くなる変化で、慢性湿疹の苔癬化とも区別されます。皮疹を「どの層に何が起きた結果か」で理解しておくことは、皮膚疾患の鑑別と正確な記載の土台になります。

解答・解説

正解はb, cです

湿疹(皮膚炎)は、外来の刺激物質やアレルゲン、あるいは体質的要因により表皮を主な場として起こる炎症反応である。病理学的には、表皮細胞の間に液体がたまる海綿状態(spongiosis)と、真皮上層の血管拡張・リンパ球浸潤が特徴である。 湿疹の皮疹は時間経過とともに姿を変え、その流れは「湿疹三角」として図式化される。まず血管拡張による紅斑が生じ、そこに丘疹が現れ、さらに漿液性丘疹・小水疱、膿疱へと進む。これらが破れるとびらん(湿潤面)となり、滲出液が固まって痂皮を形成し、やがて鱗屑(落屑)を経て治癒する。炎症が長引くと慢性湿疹へ移行し、皮膚が厚く硬くなって皮溝・皮丘が目立つ苔癬化や色素沈着がみられるようになる。一つの病変の中にこれらの段階の皮疹が混在する多様性(多形性)と、強いかゆみが湿疹の特徴である。 したがって、急性湿疹でみられる皮疹は紅斑・丘疹・小水疱・びらん・痂皮などであり、選択肢の中では丘疹と紅斑が該当する。本問は、皮膚科の基本である発疹学(個々の皮疹の定義と、それがどの組織の変化によって生じるか)を理解しているかを問うている。

選択肢考察

  1. ×a.  硬化

    硬化とは、真皮や皮下組織が比較的広い範囲で硬くなり、つまみ上げにくくなった状態をいい、膠原線維の増加などによって生じる。全身性強皮症や限局性強皮症(モルフェア)が代表的である。急性湿疹は表皮中心の滲出性炎症であり、硬化は生じない。なお、慢性湿疹で皮膚が厚くごわごわする変化は「苔癬化」と呼ばれ、硬化とは区別される。誤り。

  2. ○b.  丘疹

    丘疹は、直径1cm程度以下の、皮膚から盛り上がった充実性(中に液体を含まない)の発疹である。湿疹では、紅斑に続いて表皮の海綿状態や炎症細胞浸潤による小さな丘疹が多発する。急性湿疹を構成する代表的な皮疹であり、さらに進むと頂点に小水疱をのせた漿液性丘疹となる。正しい。

  3. ○c.  紅斑

    紅斑は、真皮乳頭層や乳頭下層の毛細血管が拡張・充血することで生じる赤い斑(皮膚から盛り上がらない色調の変化)である。血管内の血液による色なので、ガラス板で圧迫する硝子圧法を行うと赤みが消える。湿疹の炎症は血管拡張から始まるため、紅斑は急性湿疹で最初期からみられる基本的な皮疹である。正しい。

  4. ×d.  膨疹

    膨疹は、真皮上層の一過性の限局性浮腫によって生じる扁平な隆起で、多くは数時間以内(通常24時間以内)に跡を残さず消える。肥満細胞から放出されたヒスタミンなどにより血管透過性が亢進して起こり、蕁麻疹の特徴的な皮疹である。個々の皮疹が短時間で消える点で、紅斑・丘疹が持続し経時的に変化していく湿疹とは異なる。誤り。

  5. ×e.  紫斑

    紫斑は、皮膚の血管外に赤血球が漏れ出た出血による紫紅色の斑である。血管外の血液なので硝子圧法でも色が消えない点で紅斑と区別できる。血小板減少症などの出血傾向や、IgA血管炎などの血管炎、老人性紫斑などでみられ、湿疹の皮疹ではない。誤り。

湿疹三角(湿疹の皮疹の経時的変化)

紅斑 → 丘疹 → 漿液性丘疹・小水疱 → 膿疱 → びらん → 痂皮 → 鱗屑(落屑) → 治癒 急性期に治らず炎症が続くと、苔癬化・色素沈着を伴う慢性湿疹へ移行する。

主な原発疹(最初に現れる皮疹)の定義

・紅斑: 血管拡張による赤い斑。硝子圧で消える。 ・紫斑: 皮内出血による斑。硝子圧で消えない。点状出血、斑状出血などに分けられる。 ・白斑: メラニン減少などによる白い斑(尋常性白斑など)。 ・丘疹: 直径1cm程度以下の充実性隆起。 ・結節: 丘疹より大きい充実性隆起。 ・膨疹: 真皮の一過性浮腫による隆起。短時間で消退する(蕁麻疹)。 ・水疱: 内部に透明な液体を含む隆起。小さいものを小水疱という。 ・膿疱: 内容が膿性の水疱。

主な続発疹(原発疹に続いて生じる皮疹)

・びらん: 表皮までの欠損。瘢痕を残さず治る。 ・潰瘍: 真皮以下に及ぶ欠損。瘢痕を残す。 ・痂皮: 滲出液や血液が固まったもの(かさぶた)。 ・鱗屑: 角質が異常に蓄積してはがれかけたもの。 ・苔癬化: 慢性的な掻破などで皮膚が厚くなり、皮溝・皮丘が明瞭になった状態。

その他

・硬化: 真皮・皮下の線維化などで皮膚が硬くなった状態(強皮症など)。

POINT

・急性湿疹の皮疹: 紅斑、丘疹、小水疱、びらん、痂皮などが混在する(多様性)+強いかゆみ ・慢性湿疹: 苔癬化、色素沈着 ・膨疹は真皮の一過性浮腫で蕁麻疹の皮疹 ・紫斑は皮内出血で硝子圧で消えない(紅斑は消える) ・硬化は真皮・皮下の変化で強皮症などにみられる

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。