白髪染めのあとに耳がかぶれた―「遅れてくるアレルギー」はパッチテストで暴く
第110回医師国家試験 C問題 第24問
国試問題にチャレンジ
52歳の女性。頭皮と両耳介の皮疹とを主訴に来院した。数日前に染毛剤を使用した。同時期にシャンプーも変更したという。頭皮と両耳介とに痒みを伴う皮疹を認める。耳介部の写真を別に示す。 この皮疹の原因検索に有用な検査はどれか。

- a.針反応
- b.皮内テスト
- c.パッチテスト
- d.プリックテスト
- e.スクラッチテスト
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
染毛剤やシャンプーなど新たな製品の使用後、接触部位に一致して痒みの強い湿疹が生じた場合はアレルギー性接触皮膚炎を考えます。染毛剤皮膚炎は主にパラフェニレンジアミン(PPD)が原因で、生え際・耳介・項部に皮疹が出やすいのが特徴です。アレルギー性接触皮膚炎はⅣ型(遅延型)アレルギーであるため、原因物質の同定にはパッチテストを用い、48時間貼布したのち、はがした時点と72時間(96時間)後、1週間後に複数回判定します。プリックテスト・スクラッチテスト・皮内テストはⅠ型(即時型)アレルギーの検査で、針反応はBehçet病などで陽性となる検査です。アレルギーの「型」から適切な検査を選ぶ考え方は、皮膚科に限らず薬疹や食物アレルギーの診療にも通じる基本となります。
解答・解説
正解はcです
所見の整理
52歳の女性で、頭皮と両耳介に痒みを伴う皮疹が出現した。数日前に染毛剤を使い、同じ頃にシャンプーも変えている。耳介部の写真では、紅斑に丘疹や細かな鱗屑を伴う湿疹病変がみられる。
診断のプロセス
新たに使い始めた外用物質(染毛剤・シャンプー)が触れた部位に一致して、数日の経過で痒みの強い湿疹が生じていることから、接触皮膚炎(いわゆる「かぶれ」)が最も考えられる。染毛剤の主成分であるパラフェニレンジアミン(PPD)などの酸化染料は感作性が強く、アレルギー性接触皮膚炎の代表的な原因物質である。頭皮だけでなく、液が垂れたり付着したりしやすい生え際、耳介、耳前部、項部(うなじ)に皮疹が目立つのが典型である。一方、シャンプーはすぐに洗い流されるため頭皮との接触時間が短く、生じる皮膚炎は刺激性のものが多いが、アレルギー性の可能性も否定はできない。いずれが原因かを特定する必要がある。 画像だけを見ると、境界明瞭でわずかに隆起した辺縁をもつ紅斑から体部白癬、境界明瞭な紅斑から丹毒も鑑別に挙がる。体部白癬は鱗屑の直接鏡検(KOH法)で糸状菌を確認でき、丹毒は疼痛・圧痛、発熱などの全身症状と炎症反応の上昇を伴う点で区別できる。本例は病歴と痒みからアレルギー性接触皮膚炎が考えやすい。
設問の考え方
アレルギー性接触皮膚炎はⅣ型(遅延型)アレルギー、すなわち感作T細胞が担う反応であり、原因物質の同定には、疑わしい物質を皮膚に貼って遅れて生じる反応をみる検査を用いる。Ⅰ型(即時型)アレルギーを調べる検査や、Behçet病などで行う皮膚の過敏反応の検査とは区別して選ぶ。
選択肢考察
- ×a. 針反応
針反応(パテルギー試験)は、滅菌した注射針を前腕の皮膚に刺し、24〜48時間後に刺入部に紅斑や小膿疱が生じるかをみる検査である。好中球が過剰に反応する状態を反映し、Behçet病の診断の参考となるほか、壊疽性膿皮症やSweet病でも陽性となることがある。特定の物質に対するアレルギーを調べる検査ではなく、接触皮膚炎の原因検索には役立たない。
- ×b. 皮内テスト
皮内テストは、抗原液を少量皮内に注射し、15〜20分後に膨疹と紅斑の大きさで判定する検査で、Ⅰ型(即時型)アレルギーの検出に用いる(薬物アレルギーや吸入抗原の評価など)。抗原が直接真皮に入るため感度は高いが、即時型検査の中で全身性のアナフィラキシーを起こす危険が最も高い。Ⅳ型反応であるアレルギー性接触皮膚炎の原因検索には適さない。
- ○c. パッチテスト
パッチテスト(貼布試験)は、疑わしい物質(本例では使用した染毛剤やシャンプー、PPDなどの標準アレルゲン)を適切な濃度で専用の絆創膏に載せて背部や上腕の皮膚に貼り、48時間後に除去して判定する。遅延型反応を捉えるため、除去時に加えて72時間(または96時間)後、さらに1週間後にも紅斑・浸潤・丘疹・小水疱の有無を評価する。Ⅳ型アレルギーであるアレルギー性接触皮膚炎の原因物質を確定できる唯一の標準的検査であり、本例の原因検索に最も有用である。シャンプーのように洗い流す製品は、刺激反応を避けるため希釈して貼布するなどの工夫を要する。
- ×d. プリックテスト
プリックテスト(単刺試験)は、抗原液を皮膚に1滴置き、専用の針でごく浅く刺して15〜20分後の膨疹・紅斑を判定する検査で、Ⅰ型(即時型)アレルギーの原因検索(食物アレルギー、花粉、ダニなど)に用いる。皮内テストより安全性が高く、即時型検査では第一選択とされることが多い。遅延型反応であるアレルギー性接触皮膚炎の原因は検出できない。
- ×e. スクラッチテスト
スクラッチテスト(掻破試験)は、針で皮膚に出血しない程度の浅い引っかき傷をつけ、そこに抗原液を滴下して15〜20分後に膨疹・紅斑をみる検査で、プリックテストと同様にⅠ型(即時型)アレルギーの検出に用いる。Ⅳ型であるアレルギー性接触皮膚炎の原因検索には用いない。
接触皮膚炎の分類
・刺激性接触皮膚炎:物質そのものの毒性・刺激性による。感作を必要とせず、誰にでも濃度・接触時間に応じて起こりうる。洗剤、石けん、酸・アルカリなど。 ・アレルギー性接触皮膚炎:Ⅳ型アレルギー。一度感作が成立した人にのみ、少量の接触でも起こる。原因として金属(ニッケル、コバルト、クロム)、染毛剤(PPD)、ウルシ(ウルシオール)、ゴム製品の加硫促進剤、香料、防腐剤、外用薬などが多い。 ・光接触皮膚炎:物質が皮膚に付着した状態で紫外線が当たって生じる(光毒性・光アレルギー性)。原因検索には光パッチテストを行う。 ・接触蕁麻疹:Ⅰ型アレルギーなどにより接触後すぐに膨疹が生じるもの(ラテックスなど)。原因検索にはプリックテストなどを用いる。
皮膚アレルギー検査のまとめ
・Ⅰ型(即時型):プリックテスト、スクラッチテスト、皮内テスト。15〜20分後に膨疹・紅斑を判定。アナフィラキシーの危険度は皮内テストが最も高く、スクラッチテスト、プリックテストの順に低くなる。血液検査では特異的IgE抗体の測定がある。 ・Ⅳ型(遅延型):パッチテスト。48時間貼布し、48時間、72時間(96時間)、1週間後に判定。 ・その他:針反応(Behçet病など)。
染毛剤皮膚炎の注意点
酸化染毛剤は使用のたびに感作・増悪のリスクがあり、製品には使用前の自己テスト(皮膚アレルギー試験)が推奨されている。一度PPDに感作されると、繰り返し使用で症状が重くなり、顔面の強い腫脹などを来すこともあるため、原因と判明すれば酸化染料を含む製品の使用を中止させる。治療は原因の回避とステロイド外用が基本で、重症例ではステロイド内服を短期間用いる。
POINT
・アレルギー性接触皮膚炎はⅣ型(遅延型)アレルギーで、原因の同定にはパッチテストを行う。 ・パッチテストは48時間貼布し、48時間・72時間・1週間後などに複数回判定する。 ・プリック・スクラッチ・皮内テストはⅠ型(即時型)アレルギーの検査で、15〜20分で判定する。危険度は皮内>スクラッチ>プリック。 ・針反応はBehçet病(ほか壊疽性膿皮症など)で陽性となる。 ・染毛剤の主なアレルゲンはパラフェニレンジアミン(PPD)で、生え際・耳介・項部に皮疹が出やすい。
