StudyMed医師国家試験

骨から「生えてきた」痛くないこぶ―母床骨との連続性で見抜く骨軟骨腫

第102回医師国家試験 I問題 第54問

国試問題にチャレンジ

第102回 I問題 第54問

12歳の男児。6か月前から自覚していた左下腿遠位の無痛性の隆起を主訴に来院した。膝関節と足関節との可動域は正常である。左下腿骨エックス線単純写真を別に示す。  最も考えられるのはどれか。

第102回 I問題 第54問の問題画像
  1. a.骨腫
  2. b.骨軟骨腫
  3. c.類骨骨腫
  4. d.骨巨細胞腫
  5. e.単発性骨嚢腫

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、成長期の子どもの下腿にできた痛みのない隆起から、骨腫瘍を絞り込む問題だ。骨腫瘍の画像診断は「年齢」「骨のどの部位か」「骨の外に突き出しているのか、中にあるのか」「骨破壊や骨膜反応があるか」の順に整理すると迷いにくい。この順番でエックス線を見ていこう。
医学生医学生
12歳なので骨端線がまだ開いている年齢ですね。痛くないというのは、良性を考えていいんでしょうか。
ドクタードクター
いい出発点だね。半年も続いているのに痛みがなく、急に大きくなった様子もない。夜間痛や安静時痛を伴わないのは、炎症や急速に増大する悪性腫瘍を考えにくくする情報だ。関節の動きも正常だから、関節内の病変でもなさそうだね。では画像だ。脛骨の遠位、骨端線のすぐ近位で骨が太さを変えていく骨幹端から、腓骨側に向かって幅広い骨性の隆起が張り出している。
医学生医学生
病理の講義で骨腫瘍は骨幹端に多いと習いました。隆起があるなら、骨腫でしょうか。
ドクタードクター
「骨のこぶ=骨腫」と考えたくなるのは自然だけど、ここが分かれ道。決め手は、隆起の皮質と髄腔が、もとの脛骨の皮質・髄腔と途切れずにつながっていることなんだ。骨の外にできた塊がくっついているのではなく、骨そのものが横に「生えてきた」ような形をしている。
医学生医学生
母床骨と連続している……それなら骨軟骨腫ですね。外骨腫とも呼ぶものでしょうか。
ドクタードクター
正解。骨軟骨腫は原発性骨腫瘍の中で最も多い良性腫瘍で、10代を中心に20歳以下に多い。成長軟骨板の一部が骨幹端の横にずれて増殖し、軟骨内骨化で骨になっていくと考えられている。先端は軟骨帽で覆われていて、その下の骨が母床骨と連続するわけだ。今回は茎をもたない広基性のタイプで、隣の腓骨を押して細く変形させているのも特徴的だね。
医学生医学生
好発部位は膝のまわりだと覚えていましたが、足首の近くにもできるんですね。
ドクタードクター
大腿骨遠位、脛骨近位、上腕骨近位の骨幹端が代表だけど、成長軟骨板がある長管骨ならどこでも生じうる。今回の脛骨遠位もその一つだよ。では他の選択肢も確認しよう。骨腫はどうかな。
医学生医学生
骨腫は頭蓋骨や副鼻腔にできるイメージです。耳鼻科の実習で、CTで真っ白な塊を見せてもらいました。
ドクタードクター
よく覚えているね。骨腫は成熟した骨が増える過誤腫的な病変で、頭蓋・顔面骨に好発し、均一で真っ白な塊として写る。母床骨の髄腔とつながる構造はもたないから、今回とは違う。多発していたら大腸ポリポーシスを伴うGardner症候群を思い出そう。
医学生医学生
類骨骨腫は、夜に痛くてアスピリンが効く、というのがCBTの定番でした。
ドクタードクター
その通り。類骨骨腫は長管骨骨幹の皮質に1cmほどの透亮像、つまりnidusがあって、周囲に厚い骨硬化を伴う。最大の特徴は夜間痛とNSAIDsがよく効くことだから、痛みのない今回とは合わない。骨巨細胞腫は骨端線が閉じた20〜40歳代の骨端部に、石けんの泡のような溶骨像をつくる腫瘍だ。
医学生医学生
単発性骨嚢腫は年齢も10歳前後で、無症状なことも多いので似ている気がします。
ドクタードクター
年齢と無痛性だけ見ると確かに近いね。でも単発性骨嚢腫は上腕骨近位や大腿骨近位の骨幹端の「骨の中」にできる境界明瞭な透亮像で、病的骨折で見つかることが多い。骨折片が嚢腫の中に落ち込むfallen fragment signも有名だ。骨の外へ突き出す今回の像とは根本的に違う。
医学生医学生
骨の外に出ているか、中にあるかで、候補がかなり絞れるんですね。
ドクタードクター
そう、それが冒頭の整理法の3番目だね。では発展知識。骨軟骨腫は成長とともに大きくなり、骨端線が閉じると増大も止まる。だから無症状なら経過観察でよく、腱や神経・血管を圧迫して痛む、関節の動きを妨げる、骨が変形する、といった場合に切除を考える。
医学生医学生
悪性化することはあるんでしょうか。
ドクタードクター
まれだけど、軟骨肉腫への悪性化がある。骨端線が閉じた後にまた大きくなる、新たに痛みが出る、MRIで軟骨帽が厚くなっている、成人でおおむね2cmを超える、といったサインは要注意だ。また、EXT1やEXT2遺伝子の変異による多発性骨軟骨腫症では、単発例より悪性化しやすいとされている。
医学生医学生
単発でも、大人になってから大きくなったら再評価が必要ということですね。
ドクタードクター
その通り。軟骨帽はエックス線に写らないから、評価にはMRIが役立つ。「子どものうちは育つが、大人になって育つのは危険信号」と覚えておくと実臨床でも役に立つよ。

まとめ

成長期の小児の長管骨骨幹端から骨外へ突出し、隆起の皮質・髄腔が母床骨と連続する無痛性の骨性隆起は、最も頻度の高い良性骨腫瘍である骨軟骨腫(外骨腫)に典型的な所見です。先端は軟骨帽に覆われ、成長に伴って増大し骨端線閉鎖とともに止まるため、無症状なら経過観察とし、圧迫症状や変形があれば切除を考えます。骨腫は頭蓋・顔面骨、類骨骨腫は夜間痛とnidus、骨巨細胞腫は骨端線閉鎖後の骨端部のsoap bubble像、単発性骨嚢腫は骨内の透亮像と、年齢・部位・病変の位置で鑑別できます。骨端線閉鎖後の再増大や疼痛、軟骨帽の肥厚は軟骨肉腫への悪性化を示唆し、とくに多発性骨軟骨腫症では注意が必要です。「年齢・部位・骨外か骨内か・骨破壊の有無」という順序立てた読影は、骨腫瘍全般の診断の基本となります。

解答・解説

正解はbです

所見の整理

・12歳男児:骨端線(成長軟骨板)がまだ開いている成長期である。 ・6か月前から気づいていた左下腿遠位の隆起:長期間続いているが、痛みはなく急速な増大をうかがわせる記載もない。 ・無痛性:夜間痛や安静時痛がなく、炎症や急速に増大する悪性腫瘍を示唆しない。 ・膝関節・足関節の可動域は正常:関節内病変や関節周囲の機能障害はない。

画像所見

正面像では、脛骨遠位の骨幹端(骨端線のすぐ近位で、骨が太さを変える部分)から外側の腓骨側へ向かって、幅の広い基部をもつ骨性の隆起が張り出している。隆起の皮質と髄腔は母床である脛骨の皮質・髄腔と途切れずにつながっており、骨幹端がいびつに膨らんだように見える。隣り合う腓骨の遠位部は、この隆起に押されて細く変形している。骨膜反応、骨破壊(溶骨像)、骨内の透亮像や嚢胞状の変化は認めない。

診断へのプロセス

成長期の小児で、長管骨の骨幹端から外側へ突出し、皮質・髄腔が母床骨と連続する骨性隆起を認め、痛みを伴わないことから骨軟骨腫(外骨腫)と診断できる。本例は茎(くき)をもたない広基性(無茎性)の骨軟骨腫で、隣の腓骨を圧排して変形させている。長く存在するのに痛みがないこと、骨膜反応や骨破壊がないことから悪性腫瘍は考えにくい。また、骨の内側に透亮像や嚢胞がないことから、骨巨細胞腫や単発性骨嚢腫のように骨の内部に病変をつくる腫瘍とは区別できる。

考え方

骨腫瘍の画像診断では、①年齢、②部位(骨端・骨幹端・骨幹のどこか、どの骨か)、③病変が骨の外へ突出しているのか骨の内部にあるのか、④溶骨性か造骨性か・境界は明瞭か・骨膜反応はあるか、の順で整理すると鑑別しやすい。本問は「10代・長管骨骨幹端・骨外へ突出・母床骨と連続」という典型的な組み合わせである。

選択肢考察

  1. ×a.  骨腫

    骨腫は成熟した緻密骨(または海綿骨)が増殖する良性病変で、過誤腫的な性格をもつと考えられている。好発部位は頭蓋骨や顔面骨(副鼻腔など)であり、四肢の長管骨の骨幹端に生じることは少ない。画像では境界明瞭で均一な高吸収(真っ白な)塊として見え、母床骨の髄腔と連続する構造はもたない。多発性骨腫では大腸ポリポーシスなどを伴うGardner症候群を考える。本例の部位・形態とは一致しない。

  2. ○b.  骨軟骨腫

    骨軟骨腫は最も頻度の高い良性骨腫瘍で、10歳代を中心とした20歳以下に多い。成長軟骨板の一部が骨幹端から横へずれて増殖することで生じると考えられ、大腿骨遠位・脛骨近位(膝周囲)や上腕骨近位の骨幹端に好発するが、本例のように脛骨遠位にも生じる。先端は軟骨帽(cartilage cap)で覆われ、その下の骨の皮質と髄腔が母床骨と連続するのが画像上の決め手である。形態には茎をもつ有茎性と、基部の広い広基性(無茎性)があり、本例は後者で隣接する腓骨を圧排・変形させている。通常は無痛性の硬い腫瘤として気づかれ、骨端線の閉鎖とともに増大が止まる。本例の年齢・部位・無痛性・画像所見はすべてこれに合致する。

  3. ×c.  類骨骨腫

    類骨骨腫は10〜20歳代の男性に多い良性骨腫瘍で、大腿骨や脛骨の骨幹部皮質に好発する。症状の特徴は夜間に強くなる痛みで、アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)がよく効く。エックス線では直径1cm前後の小さな透亮像(nidus:ナイダス)と、その周囲の厚い反応性骨硬化を示す。本例は無痛性で、骨外へ突出する隆起を示しており合致しない。

  4. ×d.  骨巨細胞腫

    骨巨細胞腫は骨端線閉鎖後の20〜40歳代に多い腫瘍で、大腿骨遠位・脛骨近位・橈骨遠位などの骨端部(骨幹端に及ぶ)に好発する。良性に分類されるが局所で再発しやすく、まれに肺転移をきたす。エックス線では骨の内部に偏在性に広がる溶骨性病変で、皮質が薄く膨らみ、石けんの泡のような(soap bubble)隔壁状の透亮像を示す。本例は骨端線が開いている12歳であり、骨内の溶骨像もないので合致しない。

  5. ×e.  単発性骨嚢腫

    単発性骨嚢腫は20歳未満、特に10歳前後の男児に多い、内部に液体をいれた嚢腫性病変で、上腕骨近位や大腿骨近位の骨幹端に好発する。通常は無症状で、病的骨折をきっかけに見つかることが多い。エックス線では骨の中心部にある境界明瞭な透亮像で、皮質が薄くなり、骨折片が嚢腫内に落ち込む fallen fragment sign を示すことがある。年齢や無痛性は本例と似るが、骨の内部に透亮像をつくる病変であり、骨外へ突出する本例の像とは異なる。

骨軟骨腫(外骨腫)の要点

・原発性骨腫瘍の中で最も多い良性腫瘍である。 ・発生:成長軟骨板の一部が骨幹端の側方に取り残されて増殖し、軟骨内骨化によって骨性の隆起となる。そのため成長期に増大し、骨端線閉鎖とともに増大が止まる。 ・好発部位:大腿骨遠位、脛骨近位、上腕骨近位の骨幹端。関節から離れる方向(骨幹方向)へ伸びるのが典型である。 ・画像:骨外へ突出する骨性隆起で、皮質・髄腔が母床骨と連続する。先端の軟骨帽はエックス線には写らず、MRIで厚さを評価できる。 ・症状:無痛性の硬い腫瘤。周囲の腱・神経・血管の圧迫や、茎部の骨折、滑液包炎を起こすと痛みが出る。隣接骨の変形や、前腕・下腿では骨の長さの不均衡を起こすこともある。 ・治療:無症状なら経過観察。疼痛・機能障害・変形があれば切除する。 ・多発性の場合:多発性骨軟骨腫症(遺伝性多発性外骨腫、EXT1/EXT2遺伝子変異による常染色体顕性遺伝)では、軟骨肉腫への悪性化が単発例より起こりやすい。 ・悪性化を疑う所見:骨端線閉鎖後の再増大、新たな疼痛、軟骨帽の肥厚(成人でおおむね2cmを超える)。

年齢と部位による主な骨腫瘍の整理

・骨端(骨端線閉鎖後):骨巨細胞腫 ・骨端(骨端線閉鎖前):軟骨芽細胞腫 ・骨幹端:骨軟骨腫、単発性骨嚢腫、骨肉腫、非骨化性線維腫 ・骨幹:Ewing肉腫、類骨骨腫(皮質)、線維性骨異形成 ・頭蓋・顔面骨:骨腫 ・手足の短管骨:内軟骨腫

POINT

・10代の長管骨骨幹端に生じる無痛性の骨性隆起は骨軟骨腫を第一に考える。 ・画像の決め手は、隆起の皮質と髄腔が母床骨と連続していること。 ・骨端線閉鎖後に増大・疼痛が出れば軟骨肉腫への悪性化を疑う。 ・鑑別:骨腫は頭蓋・顔面骨、類骨骨腫は夜間痛とnidus、骨巨細胞腫は骨端線閉鎖後の骨端部のsoap bubble像、単発性骨嚢腫は上腕骨・大腿骨近位の骨内透亮像。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。