StudyMed医師国家試験

皮膚は膠原病の名刺―網状皮斑とソーセージ様手指を正しく結びつける

第102回医師国家試験 I問題 第31問

国試問題にチャレンジ

第102回 I問題 第31問

疾患と皮膚所見の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.結節性多発動脈炎 ―― 多形皮膚萎縮
  2. b.抗リン脂質抗体症候群 ―― 網状皮斑
  3. c.IgA血管炎〈Schönlein-Henoch紫斑病〉 ―― Raynaud現象
  4. d.混合性結合組織病〈MCTD〉 ―― ソーセージ様手指
  5. e.全身性エリテマトーデス〈SLE〉 ―― Gottron徴候

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、膠原病や血管炎と皮膚所見の組合せを問う問題だ。皮膚所見は診断の大きな手がかりになるから、「その所見はどの疾患に特徴的か」という逆引きで整理しておくのがコツだよ。正しい組合せを2つ選ぶから、1つずつ吟味していこう。
医学生医学生
皮膚科の講義で写真をたくさん見ましたが、名前と疾患が頭の中で混ざりがちです。
ドクタードクター
だからこそ疾患ごとに軸を作ろう。たとえば皮膚筋炎ならGottron徴候、ヘリオトロープ疹、多形皮膚萎縮、機械工の手。SLEなら蝶形紅斑、円板状皮疹、光線過敏、口腔潰瘍。この軸で選択肢を眺めると、何か気づくかな。
医学生医学生
Gottron徴候と多形皮膚萎縮は、どちらも皮膚筋炎の所見ですね。SLEや結節性多発動脈炎と組み合わされているのはおかしい気がします。
ドクタードクター
その通り。Gottron徴候は手指のMP関節やPIP関節の伸側にできる、角化を伴う紫紅色の丘疹や紅斑で、肘や膝の伸側にも出る。SLEの手の皮疹はむしろ関節と関節の間に出やすいので、対照的なんだ。
医学生医学生
多形皮膚萎縮は、どんな見た目でしたっけ。
ドクタードクター
色素沈着と色素脱失がまだらに混ざり、毛細血管拡張と皮膚の萎縮を伴う所見で、ポイキロデルマとも呼ぶ。前胸部のVネック徴候や上背部のショール徴候としてみられることが多い。一方、結節性多発動脈炎は中型動脈の壊死性血管炎で、皮膚では皮下結節、網状皮斑、潰瘍、指趾の壊疽が出るんだ。
医学生医学生
そうすると網状皮斑は、抗リン脂質抗体症候群と結びつけるのが正しいということでしょうか。
ドクタードクター
そう、これが正解の1つだ。網状皮斑は皮膚の小血管で血流がうっ滞したり閉塞したりして、紫紅色の網目状・樹枝状の模様が下肢などに現れる所見。抗リン脂質抗体症候群では抗カルジオリピン抗体やループスアンチコアグラントなどで血栓ができやすく、皮膚の微小血栓が網状皮斑をつくる。
医学生医学生
結節性多発動脈炎でも網状皮斑が出るなら、どちらの組合せにも使える所見なんですね。
ドクタードクター
よく気づいたね。網状皮斑はほかにもコレステロール塞栓症やクリオグロブリン血症でもみられる。「血管の流れが悪くなる病態のサイン」と理解すると覚えやすいよ。
医学生医学生
IgA血管炎は、小児科の実習で下肢に紫斑が出た男の子を担当しました。Raynaud現象はなかったと思います。
ドクタードクター
貴重な経験だね。IgA血管炎はIgA主体の免疫複合体が小血管に沈着する血管炎で、下肢や臀部を中心に、少し盛り上がって触れることのできる紫斑が出る。関節痛、腹痛や消化管出血、腎炎を伴うのが典型だ。Raynaud現象は寒冷や緊張で手指が白→紫→赤と変化する現象で、混合性結合組織病や全身性強皮症、SLEでみられるもの。IgA血管炎の所見ではないよ。
医学生医学生
残る混合性結合組織病とソーセージ様手指が、もう1つの正解ですね。抗U1-RNP抗体が高値になる病気だと習いました。
ドクタードクター
正解。混合性結合組織病はSLE、全身性強皮症、多発性筋炎・皮膚筋炎の症状が混在する疾患で、Raynaud現象と、手指や手背がむくんだように腫れるソーセージ様手指が特徴だ。わが国の診断基準でも、この2つが共通所見として挙げられている。
医学生医学生
整理すると、網状皮斑が抗リン脂質抗体症候群、ソーセージ様手指が混合性結合組織病、Gottron徴候と多形皮膚萎縮は皮膚筋炎、ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。最後に臨床的な注意点を補足しよう。混合性結合組織病では肺動脈性肺高血圧症の合併が予後を左右するから、息切れの訴えには心エコーなどでの評価を忘れないこと。皮膚筋炎では抗MDA5抗体陽性例の急速進行性間質性肺炎と、成人例での悪性腫瘍合併にも注意が要る。
医学生医学生
ソーセージ様指という言葉は、整形外科の実習で乾癬性関節炎の患者さんにも使われていた気がします。
ドクタードクター
鋭いね。乾癬性関節炎などの脊椎関節炎でみられる指趾炎も「ソーセージ様指」と呼ばれるけれど、病態は異なる。言葉だけで飛びつかず、Raynaud現象や抗U1-RNP抗体といったほかの所見と組み合わせて判断することが大切だよ。

まとめ

膠原病・血管炎の皮膚所見は疾患ごとに整理しておくと、診断の強力な手がかりになります。網状皮斑は小血管の血流うっ滞や微小血栓を反映し、抗リン脂質抗体症候群や結節性多発動脈炎で代表的にみられ、Raynaud現象とソーセージ様手指は抗U1-RNP抗体陽性の混合性結合組織病の共通所見です。Gottron徴候や多形皮膚萎縮は皮膚筋炎、蝶形紅斑や円板状皮疹はSLE、下肢の触知可能な紫斑はIgA血管炎に特徴的で、IgA血管炎にRaynaud現象は伴いません。混合性結合組織病では肺動脈性肺高血圧症、皮膚筋炎では間質性肺炎や悪性腫瘍の合併に注意が必要です。皮膚所見から全身の病態を推測する力は、膠原病の早期診断と重篤な臓器合併症の見逃し防止につながります。

解答・解説

正解はb, dです

問われていること

膠原病や血管炎では、皮膚に疾患特有の所見が現れることが多く、診断の大きな手がかりになる。本問は、代表的な膠原病・血管炎とその皮膚所見の対応を正確に覚えているかを問うている。

考え方

皮膚所見を「どの疾患に特徴的か」で整理しておくとよい。 ・皮膚筋炎:Gottron徴候(丘疹)、ヘリオトロープ疹、多形皮膚萎縮(ポイキロデルマ)、機械工の手 ・SLE:蝶形紅斑、円板状皮疹、光線過敏、口腔潰瘍 ・全身性強皮症:皮膚硬化、手指の潰瘍、Raynaud現象 ・MCTD:Raynaud現象、手指・手背の腫脹(ソーセージ様手指) ・抗リン脂質抗体症候群や結節性多発動脈炎:網状皮斑(リベド) ・IgA血管炎:下肢の触知できる紫斑 この対応に照らすと、多形皮膚萎縮とGottron徴候は皮膚筋炎の所見であり、Raynaud現象はIgA血管炎とは結びつかない。網状皮斑は抗リン脂質抗体症候群の、ソーセージ様手指はMCTDの代表的な皮膚所見である。

選択肢考察

  1. ×a.  結節性多発動脈炎 ―― 多形皮膚萎縮

    多形皮膚萎縮(ポイキロデルマ)は、色素沈着と色素脱失がまだらに混在し、毛細血管拡張と皮膚の萎縮を伴う所見で、皮膚筋炎の代表的な皮膚症状である(前胸部のVネック徴候や上背部のショール徴候としてみられることが多い)。結節性多発動脈炎(PAN: polyarteritis nodosa)は中型動脈の壊死性血管炎で、皮膚では皮下結節、網状皮斑、潰瘍、指趾の壊疽などがみられる。

  2. ○b.  抗リン脂質抗体症候群 ―― 網状皮斑

    網状皮斑(リベド)は、皮膚の小血管の血流がうっ滞したり閉塞したりすることで、紫紅色の網目状・樹枝状の模様が下肢などに現れる所見である。抗リン脂質抗体症候群(APS: antiphospholipid syndrome)では、抗カルジオリピン抗体・ループスアンチコアグラント・抗β2グリコプロテインI抗体によって動静脈に血栓ができやすくなり、皮膚の微小血栓による網状皮斑が代表的な皮膚所見となる。網状皮斑は結節性多発動脈炎やコレステロール塞栓症、クリオグロブリン血症などでもみられる。

  3. ×c.  IgA血管炎〈Schönlein-Henoch紫斑病〉 ―― Raynaud現象

    IgA血管炎は、IgAを主体とする免疫複合体が小血管に沈着する血管炎で、小児に多い。皮膚所見は下肢・臀部を中心とした、わずかに盛り上がって触れることのできる紫斑(palpable purpura)であり、関節痛、腹痛・消化管出血、腎炎(IgA血管炎腎炎)を伴う。Raynaud現象は寒冷や精神的緊張で手指が白→紫→赤と色調変化する現象で、MCTD、全身性強皮症、SLEなどでみられ、IgA血管炎の所見ではない。

  4. ○d.  混合性結合組織病〈MCTD〉 ―― ソーセージ様手指

    混合性結合組織病(MCTD: mixed connective tissue disease)は、SLE・全身性強皮症・多発性筋炎/皮膚筋炎の症状が混在し、抗U1-RNP抗体が高値陽性となる疾患である。Raynaud現象とともに、手指や手背のむくんだような腫脹(ソーセージ様手指)が特徴的で、わが国の診断基準では「Raynaud現象」と「手指ないし手背の腫脹」が共通所見として挙げられている。肺動脈性肺高血圧症の合併が予後を左右する重要な臓器病変である。

  5. ×e.  全身性エリテマトーデス〈SLE〉 ―― Gottron徴候

    Gottron徴候は、手指の関節(MP関節やPIP関節)の伸側に生じる、角化を伴う紫紅色の丘疹や紅斑で、肘や膝の伸側にもみられる皮膚筋炎に特徴的な所見である。SLEの代表的な皮膚所見は、鼻根部から両頬にかけて広がる蝶形紅斑や円板状皮疹であり、SLEの手の皮疹は関節の間(指節間)に出やすい点が皮膚筋炎と対照的である。

膠原病・血管炎の主な皮膚所見の整理

・皮膚筋炎:ヘリオトロープ疹(上眼瞼の浮腫を伴う紫紅色紅斑)、Gottron丘疹・Gottron徴候、Vネック徴候・ショール徴候、多形皮膚萎縮、機械工の手(手指側面の角化・亀裂)、爪囲紅斑。抗MDA5抗体陽性例では急速進行性間質性肺炎に注意し、成人例では悪性腫瘍の合併を検索する。 ・SLE:蝶形紅斑、円板状皮疹、光線過敏症、無痛性の口腔潰瘍、脱毛。 ・全身性強皮症:手指から中枢へ進む皮膚硬化、手指の潰瘍・陥凹性瘢痕、爪上皮(爪の甘皮)の出血点、Raynaud現象。 ・MCTD:Raynaud現象、手指・手背の腫脹(ソーセージ様手指)。 ・Sjögren症候群:環状紅斑、高γグロブリン血症性紫斑。 ・成人Still病・全身型若年性特発性関節炎:発熱時に出没するサーモンピンク疹。 ・Behçet病:結節性紅斑様皮疹、毛嚢炎様皮疹、針反応。 ・結節性多発動脈炎:皮下結節、網状皮斑、皮膚潰瘍。 ・IgA血管炎:下肢の触知可能な紫斑。 ・抗リン脂質抗体症候群:網状皮斑、皮膚潰瘍、指趾の壊疽。

ソーセージ様手指について

MCTDでみられる指全体のびまん性の腫脹を指すが、乾癬性関節炎などの脊椎関節炎でみられる指趾炎(dactylitis)も「ソーセージ様指」と呼ばれる。疾患によって病態は異なる点に注意する。

POINT

・網状皮斑:抗リン脂質抗体症候群、結節性多発動脈炎。 ・ソーセージ様手指+Raynaud現象+抗U1-RNP抗体:MCTD。 ・Gottron徴候、ヘリオトロープ疹、多形皮膚萎縮:皮膚筋炎。 ・蝶形紅斑、円板状皮疹:SLE。 ・IgA血管炎は下肢の触知可能な紫斑で、Raynaud現象は伴わない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。