StudyMed医師国家試験

CRPが上がらない膠原病―小児SLEの「いまの勢い」を何で測るか

第102回医師国家試験 I問題 第30問

国試問題にチャレンジ

第102回 I問題 第30問

小児の全身性エリテマトーデス〈SLE〉の活動性を示すのはどれか。

  1. a.リンパ節腫脹
  2. b.腹水貯留
  3. c.血尿
  4. d.白血球減少
  5. e.CRP高値

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、小児の全身性エリテマトーデスで「病気がいま活動しているかどうか」を示す所見を選ぶ問題だ。SLEは寛解と再燃を繰り返すから、治療を強めるか弱めるかを決めるうえで活動性の評価がとても大事になる。着眼点は、その所見が病態の中心である免疫反応の強さを反映して、病勢と一緒に上下するかどうか、だよ。
医学生医学生
炎症の勢いなら、まずCRPを見ればいいと思っていました。
ドクタードクター
多くの炎症性疾患ではそれで正しいんだけど、SLEは例外的なんだ。活動期でも赤沈は亢進するのに、CRPは正常か軽度上昇にとどまりやすい。SLEでたくさん産生されるI型インターフェロンが、CRP産生を促すIL-6の作用を抑えることなどが理由と考えられている。
医学生医学生
じゃあSLEの患者さんでCRPがはっきり高いときは何を考えるんですか。
ドクタードクター
まず細菌感染症の合併を疑う。ステロイドや免疫抑制薬を使っている患者さんが多いから、これは臨床で本当に重要だ。ただし胸膜炎や心膜炎といった漿膜炎、強い関節炎があるとCRPが上がることもあるので、CRPは活動性の指標としては当てにならない、と覚えておこう。
医学生医学生
免疫の講義では、SLEは抗dsDNA抗体と免疫複合体が補体を消費する病気だと習いました。活動性もそのあたりで測るんでしょうか。
ドクタードクター
その通り。代表的な活動性指標は、補体価(CH50、C3、C4)の低下、抗dsDNA抗体価の上昇、赤沈の亢進、そして血球減少だ。選択肢の中でこの仲間に入るのが白血球減少で、これが正解になる。
医学生医学生
白血球が減るのは、自己抗体で壊されるからですか。
ドクタードクター
白血球、とくにリンパ球に対する自己抗体による破壊や、骨髄での産生抑制などが関わっている。白血球4,000/μL未満やリンパ球1,500/μL未満は分類基準にも含まれていて、病勢が強まると目立ち、治療で落ち着くと回復する。だから補体や抗dsDNA抗体と並ぶ代表的な指標なんだ。
医学生医学生
血尿はどうでしょう。小児科の実習で、ループス腎炎の子の尿検査を毎回チェックしていました。
ドクタードクター
いい経験だね。新たに出てきた血尿や細胞性円柱は腎炎が活動しているサインになりうる。でも腎障害が慢性化すると、病勢とは関係なく血尿が続くことがあるし、尿路感染症や結石、思春期女子なら月経血の混入でも陽性になる。だから血尿だけでSLE全体の活動性を判断するのは難しいんだ。
医学生医学生
腹水も、腎炎がひどくてネフローゼになった結果として溜まるなら、似たような話ですか。
ドクタードクター
そう理解していい。ループス腎炎によるネフローゼで低アルブミン血症になって溜まる腹水は、腎障害が慢性化していても続きうる。ループス腹膜炎のように活動期の漿膜炎で腹水が出ることもあるけれど頻度は低く、一般的な活動性指標とはいえないね。
医学生医学生
リンパ節腫脹は、SLEでもときどき見られるって習った気がします。
ドクタードクター
確かにみられることはあるけれど、頻度も程度も一定せず特異的でもない。感染症や悪性リンパ腫、組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)でも起こるから、病勢の物差しには使いにくいんだ。
医学生医学生
つまり、免疫学的な反応と連動して上下する検査所見を選ぶのがポイントで、慢性の臓器障害で残る所見や非特異的な所見は外れる、ということですね。
ドクタードクター
よくまとまったね。臨床の注意点も付け加えておこう。白血球減少は免疫抑制薬による骨髄抑制でも起こるから、病勢による減少か薬剤性かを区別する必要がある。実際の診療ではSLEDAIのようなスコアで、臓器症状と補体・抗dsDNA抗体・血球数などを総合して点数化し、経時的な変化で評価するんだ。
医学生医学生
抗Sm抗体は特異度が高いと覚えていましたが、活動性にも使えますか。
ドクタードクター
抗Sm抗体は診断には有用だけど、病勢とは相関しにくい。病勢と相関するのは抗dsDNA抗体のほう、と対比で押さえておこう。それから小児SLEは成人より腎炎を合併しやすく重症化しやすい。治療はステロイドが中心で、ヒドロキシクロロキンや免疫抑制薬、ベリムマブなども使われるけれど、成長障害や骨粗鬆症といったステロイドの副作用には特に気を配る必要があるよ。

まとめ

SLEの活動性は、自己抗体と免疫複合体による免疫反応の強さを反映して病勢と連動する所見で評価し、代表的なものは補体(CH50・C3・C4)低下、抗dsDNA抗体上昇、赤沈亢進、白血球(リンパ球)減少や血小板減少です。SLEの活動期は赤沈が亢進してもCRPは上がりにくく、CRPが明らかに高ければまず感染症の合併を疑います。血尿や腹水は慢性化した腎障害でも持続し、リンパ節腫脹は非特異的なため、単独では活動性の指標になりません。白血球減少は薬剤性の骨髄抑制でも起こる点に注意し、実臨床ではSLEDAIなどで所見を総合し経時的に評価します。腎炎を合併しやすい小児SLEでは、活動性を正しく見極めることが治療強度の判断とステロイド副作用の回避に直結します。

解答・解説

正解はdです

問われていること

全身性エリテマトーデス(SLE: systemic lupus erythematosus)は、抗核抗体、特に抗二本鎖DNA(抗dsDNA)抗体などの自己抗体と、それが抗原と結合してできる免疫複合体が全身の臓器に沈着し、補体を活性化して組織を傷害する自己免疫疾患である。小児SLEは思春期女子に多く、成人よりも腎炎や血球減少などの臓器障害が重く、活動性が高い傾向がある。病勢は良くなったり悪くなったり(寛解と再燃)を繰り返すため、治療の強さを決めるうえで「いま病気が活動しているか」を評価することが重要になる。

考え方

活動性の指標となるのは、病態の中心である「自己抗体・免疫複合体による免疫反応の強さ」を反映し、病勢に連動して上下する所見である。代表的なものは次のとおりである。 ・血清補体価(CH50、C3、C4)の低下:免疫複合体による補体消費を反映する ・抗dsDNA抗体価の上昇 ・赤血球沈降速度(赤沈)の亢進 ・末梢血の血球減少:白血球減少(とくにリンパ球減少)、溶血性貧血、血小板減少 一方で、慢性的な臓器障害の結果として持続する所見や、SLE以外の原因でも生じる非特異的な所見は、活動性の指標としては使いにくい。選択肢の中で、病勢と連動して変動する免疫学的な活動性の指標として確立しているのは白血球減少である。

選択肢考察

  1. ×a.  リンパ節腫脹

    SLEでは全身のリンパ節腫脹がみられることがあるが、頻度も程度も一定せず、SLEに特異的な所見でもない。感染症や悪性リンパ腫、組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)などでも生じるため、病勢を評価する指標としては用いにくい。

  2. ×b.  腹水貯留

    SLEで腹水がたまる主な機序は、ループス腎炎によるネフローゼ症候群での低アルブミン血症(膠質浸透圧の低下)である。ネフローゼ状態は腎障害が慢性化していても続きうるので、腹水があることがそのまま全身の免疫学的活動性を示すわけではない。ループス腹膜炎(漿膜炎)による腹水は活動期の症状になりうるが頻度は低く、一般的な活動性指標とはいえない。

  3. ×c.  血尿

    ループス腎炎では蛋白尿が最も多い所見であり、糸球体の障害を反映して血尿や赤血球円柱もみられる。新たに出現した血尿や細胞性円柱は腎炎の活動を疑うきっかけになるが、腎障害が慢性化すると病勢とは無関係に血尿が続くことがあり、また尿路感染症や結石、月経血の混入などSLE以外の原因でも生じる。したがって血尿単独ではSLE全体の活動性を示す指標とはいえない。

  4. ○d.  白血球減少

    SLEでは白血球(とくにリンパ球)に対する自己抗体による破壊や、骨髄での産生抑制などによって白血球が減少する。白血球減少(4,000/μL未満)やリンパ球減少(1,500/μL未満)はSLEの分類基準にも含まれ、病勢が強まると目立ち、治療で活動性が落ち着くと回復するため、補体低下・抗dsDNA抗体上昇・赤沈亢進と並ぶ代表的な活動性の指標である。なお、免疫抑制薬による骨髄抑制でも白血球は減少するため、薬剤性との区別には注意する。

  5. ×e.  CRP高値

    SLEの特徴の一つは、活動期でも赤沈は亢進するのにC反応性蛋白(CRP)は正常か軽度上昇にとどまりやすいことである。CRP産生を促すIL-6の作用が、SLEで多く産生されるI型インターフェロンによって抑えられることなどが理由と考えられている。そのためSLE患者でCRPが明らかに高い場合は、まず細菌感染症の合併を疑う。ただし、漿膜炎(胸膜炎・心膜炎)や強い関節炎を伴う場合にはCRPが上昇することもあり、CRPはSLEの活動性指標としては当てにならない。

SLEの主な症状

発熱・倦怠感などの全身症状、蝶形紅斑・円板状皮疹・光線過敏・口腔潰瘍などの皮膚粘膜症状、非びらん性の関節炎、胸膜炎・心膜炎(漿膜炎)、ループス腎炎、中枢神経ループス(痙攣・精神症状)、血球減少(溶血性貧血・白血球減少・リンパ球減少・血小板減少)など、多臓器にわたる。

主な免疫学的検査

・抗核抗体:ほぼ全例で陽性(感度は高いが特異度は低い) ・抗dsDNA抗体:特異度が高く、病勢(とくに腎炎)と相関する ・抗Sm抗体:特異度が非常に高いが、病勢とは相関しにくい ・抗リン脂質抗体:血栓症や習慣流産と関連する ・補体(CH50、C3、C4):活動期に低下する

活動性の評価

臨床ではSLEDAI(SLE Disease Activity Index)などの指標を用い、臓器症状(痙攣、血管炎、関節炎、尿円柱・血尿・蛋白尿などの尿所見、漿膜炎、皮疹など)と検査所見(補体低下、抗dsDNA抗体上昇、血小板減少、白血球減少)を総合して点数化する。個々の所見は単独で判断せず、経時的な変化を合わせて評価することが大切である。

小児SLEの特徴

成人に比べて腎炎の合併率が高く重症化しやすい。治療は副腎皮質ステロイドを中心に、ヒドロキシクロロキン、免疫抑制薬(ミコフェノール酸モフェチル、シクロホスファミド、タクロリムスなど)、近年では生物学的製剤(ベリムマブなど)が用いられる。成長障害や骨粗鬆症などステロイドの副作用に特に配慮が必要である。

POINT

・SLEの活動性指標:補体(CH50・C3・C4)低下、抗dsDNA抗体上昇、赤沈亢進、白血球(リンパ球)減少・血小板減少。 ・SLEの活動期は「赤沈は亢進、CRPは上がりにくい」。CRPが高ければまず感染症合併を疑う。 ・腹水や血尿は慢性の腎障害でも持続しうるため、単独では活動性の指標にならない。 ・抗Sm抗体は特異度が高いが病勢とは相関しにくい、抗dsDNA抗体は病勢と相関する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。