言葉のサラダと作話―精神症状の「領域」と「疾患」を正しく結びつける
第102回医師国家試験 G問題 第6問
国試問題にチャレンジ
正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.両価性はうつ病に特徴的である。
- b.言葉のサラダは思路障害でみられる。
- c.緊張病症候群は不安障害でみられる。
- d.Korsakoff症候群では作話がみられる。
- e.感情失禁は統合失調症に特徴的である。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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ドクター
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ドクターまとめ
精神症状は意識・記憶・知覚・思考・感情・意欲・自我意識などの領域に分けて整理し、各用語を典型的な疾患と対応させて理解することが重要です。言葉のサラダは連合弛緩から滅裂思考へと進んだ思路障害の最も高度な形で、両価性とともに統合失調症に特徴的です。Korsakoff症候群はビタミンB1欠乏による健忘症候群で、記銘力障害・逆向健忘・見当識障害に加え作話がみられ、Wernicke脳症の後遺症として出現することが多いです。緊張病症候群は統合失調症のほか気分障害や身体疾患でもみられ、感情失禁は血管性認知症など脳器質性障害に多いなど、思い込みやすい対応関係に注意が必要です。領域と疾患を体系的に結びつけておくことは、精神科の診察で症状を正確に記述し鑑別を進める土台になります。
解答・解説
正解はb, dです
本問は、精神症状を表す用語(精神症状学の用語)と、それが典型的にみられる疾患との対応を問う問題である。 精神症状は、意識・知能・記憶・知覚・思考・感情・意欲(行動)・自我意識などの領域に分けて整理される。例えば、せん妄は意識の障害、健忘や作話は記憶の障害、幻覚は知覚の障害、言葉のサラダは思考(思路)の障害、両価性や感情失禁は感情の障害、昏迷は意欲の障害、させられ体験は自我意識の障害にあたる。 解くうえでは、各用語について「どの領域の症状か」「どの疾患に特徴的か」の2点を正確に対応させることが必要である。特に、統合失調症に特徴的な症状(両価性、言葉のサラダ、緊張病症状など)と、脳の器質的な障害でみられる症状(感情失禁、作話など)を区別できるかがポイントとなる。
選択肢考察
- ×a. 両価性はうつ病に特徴的である。
両価性(アンビバレンス)とは、同一の対象に対して愛と憎しみ、したいとしたくないといった相反する感情や意志が同時に存在し、統合されないまま並び立つ状態である。Bleulerが統合失調症の基本症状(連合弛緩 Association、感情障害 Affect、両価性 Ambivalence、自閉 Autism のいわゆる「4つのA」)の一つとして挙げたもので、統合失調症に特徴的である。うつ病に特徴的な症状は抑うつ気分、興味・喜びの喪失、精神運動制止、罪業妄想・貧困妄想・心気妄想(微小妄想)などであり、両価性ではない。
- ○b. 言葉のサラダは思路障害でみられる。
思考の障害は、考えの内容の障害(妄想など)と、考えの進み方・つながりの障害(思路障害、思考形式の障害)に分けられる。統合失調症では観念どうしのつながりが緩む連合弛緩が生じ、これが高度になると話のまとまりが失われる滅裂思考となる。さらに進むと、単語が意味のつながりなく羅列されるだけになり、これを言葉のサラダと呼ぶ。したがって言葉のサラダは思路障害の最も高度な形であり、統合失調症に特徴的である。
- ×c. 緊張病症候群は不安障害でみられる。
緊張病症候群(カタトニア)は、昏迷(意識は保たれているが外界にほとんど反応しない状態)、カタレプシー(とらされた姿勢を保ち続ける)、蝋屈症、拒絶症、常同症、反響言語・反響動作、緊張病性興奮などを示す症候群である。統合失調症(かつての緊張型)で古くから知られるが、うつ病や双極性障害などの気分障害でもしばしばみられ、さらに脳炎・代謝異常などの身体疾患や器質性精神障害、悪性症候群などでも生じる。不安障害で生じる症候群ではない。なお、現在のDSM-5では統合失調症の病型分類が廃止され、緊張病は多様な疾患に付記される特定用語(または独立した診断)として扱われている。
- ○d. Korsakoff症候群では作話がみられる。
Korsakoff症候群は、主にビタミンB1(チアミン)欠乏により乳頭体や視床背内側核などが障害されて生じる健忘症候群で、慢性アルコール依存症に多い。記銘力障害(新しいことを覚えられない前向健忘)、逆向健忘、見当識障害、作話を特徴とする。作話とは、記憶の欠損部分を実際にはなかった出来事で埋め合わせて話すことで、本人に嘘をつく意図はない。Wernicke脳症(意識障害、眼球運動障害、小脳性運動失調)の後遺症として出現することが多い。
- ×e. 感情失禁は統合失調症に特徴的である。
感情失禁とは、ささいなきっかけで泣いたり笑ったり怒ったりと、感情の表出を抑えられなくなる状態である。多発性脳梗塞などによる血管性認知症をはじめとする脳の器質的障害に多くみられ、高齢者に多い。統合失調症の感情面では、むしろ感情の平板化(感情鈍麻)や両価性、場にそぐわない感情表出(感情の不調和)が特徴的である。
精神症状の領域と代表的な症状
・意識:意識混濁、せん妄、もうろう状態 ・知能:知的障害、認知症 ・記憶:健忘(前向健忘・逆向健忘)、記銘力障害、作話 ・知覚:幻覚(幻聴・幻視など)、錯覚 ・思考:思路障害(連合弛緩、滅裂思考、言葉のサラダ、観念奔逸、思考制止、迂遠)、思考内容の障害(妄想)、強迫観念 ・感情:抑うつ気分、躁状態、感情の平板化、両価性、感情失禁 ・意欲・行動:昏迷、緊張病症状、精神運動制止・興奮 ・自我意識:させられ体験(作為体験)、思考吹入、思考奪取、離人症
思路障害と疾患の対応
・連合弛緩、滅裂思考、言葉のサラダ:統合失調症 ・観念奔逸(考えが次々に浮かび話題が飛ぶ):躁状態 ・思考制止(考えが進まない):うつ状態 ・迂遠(回りくどいが目標には到達する):てんかん、認知症、知的障害など
Bleulerの4つのA
連合弛緩(Association)、感情障害(Affect)、両価性(Ambivalence)、自閉(Autism)。統合失調症の基本症状とされた。
Wernicke-Korsakoff症候群
チアミン欠乏による。急性期のWernicke脳症は意識障害・眼球運動障害・運動失調の三徴を示し、チアミンの速やかな投与が必要である(ブドウ糖を先行投与すると悪化させうる)。慢性期に健忘・作話を主体とするKorsakoff症候群へ移行する。
POINT
・両価性、言葉のサラダ(思路障害の最も高度な形)は統合失調症に特徴的。 ・緊張病症候群は統合失調症のほか、気分障害や身体疾患・器質性疾患でもみられる。不安障害ではない。 ・Korsakoff症候群:記銘力障害、逆向健忘、見当識障害、作話。原因はビタミンB1欠乏(アルコール依存症に多い)。 ・感情失禁は多発性脳梗塞などの脳器質的障害でみられる。
