汚れた傷に金属は入れない―重度開放骨折は「洗って、外から支える」
第102回医師国家試験 G問題 第38問
国試問題にチャレンジ
広範な軟部組織の挫滅を伴う開放骨折の治療で適切なのはどれか。2つ選べ。
- a.創外固定
- b.遊離植皮
- c.人工骨移植
- d.デブリドマン
- e.プレート固定
対話形式の解説
ドクター
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ドクターまとめ
開放骨折は骨折部が外界と交通しているため細菌汚染を受けており、治療の最大の目標は骨髄炎などの感染予防です。広範な軟部組織挫滅を伴う重症例(Gustilo分類type III)では、早期の抗菌薬投与と破傷風予防に加え、十分な洗浄とデブリドマンで壊死組織や異物を取り除き、必要なら繰り返します。骨の固定は創内に金属を置かない創外固定を選び、プレート固定などの内固定、人工骨や自家骨の移植、皮弁による被覆は、感染がなく軟部組織が落ち着いてから二期的に行います。挫滅した母床には遊離植皮は生着しにくい点も押さえておきましょう。「異物を入れない・壊死組織を残さない」という原則は、外傷全般の創傷管理に通じる重要な考え方です。
解答・解説
正解はa, dです
開放骨折とは、骨折部が皮膚や粘膜の創を通じて外界とつながっている骨折をいう。外界からの細菌汚染を受けているため、治療の最大の目標は感染(とくに骨髄炎)の予防である。いったん骨髄炎を起こすと難治化し、偽関節や切断に至ることもある。 本問は「広範な軟部組織の挫滅を伴う」開放骨折である。挫滅した筋肉・皮下組織は血流が途絶えて壊死に陥りやすく、細菌が増殖する格好の場となる。また骨折部を覆う健常な軟部組織が乏しいため、骨や内固定材料を良好な組織で被覆することが難しい。重症度分類であるGustilo(ガスティロ)分類でいえば、少なくともtype IIIに相当する重症の開放骨折と考えられる。 このような状況での治療の原則は次のとおりである。 1. 抗菌薬の早期投与と破傷風の予防。 2. 十分な洗浄とデブリドマン(壊死組織・異物の除去)を速やかに行い、必要に応じて繰り返す。 3. 骨折の固定は、創部から離れた位置にピンを刺入して体外のフレームで支える創外固定を選ぶ。創内に異物をなるべく残さず、軟部組織の観察や処置もしやすい。 4. 感染のないことを確認し、軟部組織の状態が改善してから、皮弁などによる創の被覆や内固定への切り替え、骨移植などを段階的に検討する。 つまり、感染リスクが高い初期段階では「異物を入れない」「壊死組織を残さない」ことが要点であり、この観点から選択肢を判断する。
選択肢考察
- ○a. 創外固定
適切である。創外固定は、骨折部から離れた健常部の骨にピンやワイヤーを刺入し、皮膚の外に置いたフレームで連結して骨折部を安定させる方法である。汚染された創内に金属を留置しないため感染を助長しにくく、低侵襲で短時間に装着でき、固定後も創の観察・洗浄・デブリドマンを繰り返しやすい。骨の安定化は軟部組織の回復や感染予防にも役立つ。重度の開放骨折では、まず創外固定で安定化し、感染がなく軟部組織が落ち着いてから必要に応じて内固定へ移行する段階的治療が一般的である。
- ×b. 遊離植皮
適切でない。遊離植皮(分層または全層の皮膚片を移植する方法)は、皮膚片が移植床(母床)からの血流で栄養されて生着する。広範な挫滅があると母床の血流が乏しく、汚染・感染の危険もあるため生着は期待できない。また骨や腱が露出した部位には遊離植皮は生着しにくい。受傷早期は創の清浄化を優先し、その後の創閉鎖には、露出した骨を覆う必要がある場合、血流を伴った有茎皮弁や遊離皮弁が用いられる。
- ×c. 人工骨移植
適切でない。人工骨(ハイドロキシアパタイトなど)は生体にとって異物であり、血流のない材料であるため、汚染された創に移植すると細菌が付着・定着する足場となり、感染のリスクを高める。骨欠損の補填が必要な場合でも、感染がないことを確認し、軟部組織の被覆が得られた後に、原則として自家骨移植などを二期的に行う。
- ○d. デブリドマン
適切である。デブリドマンとは、創内の異物や汚染物、血流を失った挫滅組織・壊死組織を外科的に切除し、創を清浄化する処置である。大量の生理食塩水による洗浄と組み合わせて行う。壊死組織は細菌の培地となるため、これを取り除くことが開放骨折における感染予防の根幹となる。できるだけ早期に行い、広範な挫滅がある場合は壊死の範囲が時間とともに明らかになるため、24〜48時間ごとなど繰り返し行う(セカンドルック)ことも多い。
- ×e. プレート固定
適切でない。プレート固定は骨折部を展開して骨の表面に金属プレートをスクリューで固定する内固定法である。汚染創内に大きな異物を置くうえ、展開のために骨膜や周囲軟部組織の血流をさらに損なうため、感染の危険が高い状況では原則として初期治療に用いない。汚染が軽度で十分なデブリドマンができ、受傷から早期(いわゆるゴールデンタイム、受傷後おおむね6〜8時間以内)の軽症開放骨折では一期的な内固定が行われることもあるが、広範な軟部組織挫滅を伴う本問の状況には当てはまらない。
Gustilo分類(開放骨折の重症度分類)
・type I: 創が1cm未満で汚染が少ない。 ・type II: 創が1cm以上だが、広範な軟部組織損傷はない。 ・type IIIA: 広範な軟部組織損傷があるが、骨を軟部組織で被覆できる。 ・type IIIB: 広範な軟部組織欠損があり、骨膜が剥離し骨が露出する。被覆に皮弁などが必要。 ・type IIIC: 修復を要する動脈損傷を伴う。 数字が大きいほど感染率・切断率が高い。
開放骨折の初期治療の流れ
1. 全身状態の評価と、血管・神経損傷の確認。 2. 創の被覆(滅菌ガーゼ)、副子固定。 3. 抗菌薬の早期投与(受傷後できるだけ早く)と破傷風トキソイド・抗破傷風ヒト免疫グロブリンの投与検討。 4. 手術室での洗浄・デブリドマン。 5. 骨折の安定化(重症例では創外固定)。 6. 創の閉鎖・被覆(早期に皮弁などで行うことが望ましいとされる)と、二期的な内固定・骨移植。
ゴールデンタイム(golden period)
受傷から細菌が組織内で増殖し感染が成立するまでの時間で、一般に6〜8時間程度とされる。この時間内に十分な洗浄・デブリドマンを行えば感染を防ぎやすい。
POINT
・開放骨折の治療の第一目標は感染予防である。 ・早期の抗菌薬投与、破傷風予防、十分な洗浄とデブリドマンが基本。 ・広範な軟部組織損傷を伴う場合、骨の固定は創外固定を選び、内固定(プレート・髄内釘)は感染が制御されてから二期的に行う。 ・汚染創に異物(人工骨・金属)を入れない。挫滅した母床には遊離植皮は生着しない。 ・重症度はGustilo分類で評価する。
