StudyMed医師国家試験

歩く・つかむ・話す―リハビリ職種の守備範囲を地図にする

第102回医師国家試験 G問題 第36問

国試問題にチャレンジ

第102回 G問題 第36問

医師からの指示と担当する職種の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.発声訓練 ―― 言語聴覚士
  2. b.利き手交換 ―― 作業療法士
  3. c.義足歩行訓練 ―― 義肢装具士
  4. d.食事用自助具の作製 ―― 介護福祉士
  5. e.身体障害者診断書の作成 ―― 理学療法士

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、医師が出したリハビリの指示を、どの職種が担当するかを問う問題だ。リハビリテーションは医師の処方のもとで多くの専門職が分担するチーム医療。それぞれの守備範囲を整理できているかがカギになるよ。
医学生医学生
理学療法士と作業療法士の違いが、いつもあいまいになってしまいます。
ドクタードクター
そこが一番大事なところだね。大まかには、理学療法士は寝返り・起き上がり・立ち上がり・歩行といった「基本動作」、作業療法士は食事・更衣・整容などの「応用動作・日常生活活動(ADL)」を担う。体の部位でいえば、理学療法士は下肢・体幹の大きな動き、作業療法士は上肢・手指の細かい動きが中心だ。
医学生医学生
リハビリテーション科の実習で、PTさんは平行棒で歩行訓練、OTさんは机の上で箸やペグを使った訓練をしていました。
ドクタードクター
まさにそのイメージ。では利き手交換は誰の担当かな。
医学生医学生
手の細かい動作とADLだから、作業療法士ですね。
ドクタードクター
正解。利き手交換は、脳卒中の片麻痺や上肢の切断・外傷などで利き手の機能回復が見込めないときに、非利き手で書字や箸の操作、整容ができるよう練習することだ。上肢の巧緻動作とADL獲得そのものだから、作業療法士の領域になる。
医学生医学生
発声訓練は言語聴覚士で問題ないですよね。
ドクタードクター
そうだね。言語聴覚士は失語症、構音障害、音声障害、聴覚障害、それに摂食嚥下障害の評価と訓練を担う。声帯麻痺や喉頭摘出後の発声、脳卒中後の発語の訓練は中心的な業務だ。嚥下まで担当するのは見落としやすいから覚えておこう。
医学生医学生
義足歩行訓練は、義足を作った義肢装具士が教えるのが自然な気がしました。
ドクタードクター
そこが引っかけポイントだね。義肢装具士の仕事は、医師の処方に基づいて義肢・装具を採型・製作し、体に適合させること。訓練中の歩き方を見てソケットやアライメントを調整するなど関わりはあるけれど、歩行訓練そのものは基本動作の訓練だから理学療法士が担当する。「作る人」と「訓練する人」を分けて考えるといい。
医学生医学生
なるほど。じゃあ食事用自助具の作製も、作るものだから義肢装具士でしょうか。
ドクタードクター
惜しいけれど違う。自助具は、柄を太くしたスプーンや滑り止め付きの皿、ボタンエイドのように、障害があっても自分でADLを行えるよう工夫した道具だ。患者の上肢機能を評価して選び、作製・調整し、使い方を練習するのは作業療法士の役割だよ。上肢用のスプリントも作業療法士が作ることが多い。
医学生医学生
介護福祉士は担当しないんですね。
ドクタードクター
介護福祉士は、入浴・排泄・食事などの介護を行い、本人や家族に介護の方法を指導する職種だ。自助具を使った食事の介助で関わることはあっても、作製の担当ではない。
医学生医学生
身体障害者診断書は医師が書くものなので、理学療法士ではないですね。
ドクタードクター
その通り。診断書の作成は医師の業務だ。さらに身体障害者手帳の申請に必要な診断書・意見書は、身体障害者福祉法第15条に基づいて都道府県知事などの指定を受けた医師、いわゆる15条指定医でなければ作成できない。義肢・装具の処方も医師の仕事だよ。だから正しい組合せは、発声訓練と言語聴覚士、利き手交換と作業療法士の2つだ。
医学生医学生
「基本動作かADLか言語・嚥下か」と「作るのか訓練するのか」の2軸で考えればいいんですね。
ドクタードクター
いい整理だ。臨床での注意点も加えておこう。医師はリハビリの処方を出すだけでなく、チームの統括役でもある。カンファレンスでは各職種の評価を持ち寄り、目標を共有する。退院支援や社会制度の活用では医療ソーシャルワーカーも重要な役割を担うよ。
医学生医学生
OSCEの医療面接でも、退院後の生活を聞く項目がありました。多職種につなぐ視点が大事なんですね。
ドクタードクター
まさにそう。誰に何を頼めるかを知っていることが、患者さんの生活を取り戻す近道になる。研修医になると実際にリハビリ処方や診断書を書く場面が来るから、今のうちに地図を頭に入れておこう。

まとめ

リハビリテーションは医師の処方のもと、各専門職が役割を分担するチーム医療です。理学療法士は歩行などの基本動作(義足歩行訓練を含む)、作業療法士はADLや上肢・手指機能(利き手交換、自助具・スプリントの作製を含む)、言語聴覚士は発声・言語・聴覚・摂食嚥下を担当します。義肢装具士は義肢・装具の製作と適合、介護福祉士は介護の実施と指導が役割であり、診断書の作成や義肢・装具の処方は医師の業務で、身体障害者診断書は15条指定医が作成します。「どの動作を扱うか」と「製作か訓練か」の2軸で整理すると各職種の守備範囲が明確になり、実際の多職種連携でも適切に依頼できる力につながります。

解答・解説

正解はa, bです

リハビリテーション医療は、医師の指示(処方)のもと、多くの専門職がそれぞれの専門領域を分担するチーム医療である。本問は、指示内容とそれを担う職種の対応を問うている。各職種の守備範囲をおおまかに整理すると次のとおりである。 ・理学療法士(physical therapist:PT):起き上がり・座位・立位・歩行などの基本動作や、筋力・関節可動域の改善。運動療法や物理療法(温熱・電気など)を用いる。義肢装着後の歩行訓練もPTの担当である。 ・作業療法士(occupational therapist:OT):食事・更衣・整容などの日常生活活動(ADL)や、上肢・手指の機能、高次脳機能、精神機能の回復を「作業」を通して図る。利き手交換訓練や自助具・スプリントの作製・適合も担う。 ・言語聴覚士(speech-language-hearing therapist:ST):失語症、構音障害、音声障害、聴覚障害、摂食嚥下障害、高次脳機能障害などに対する評価・訓練。 ・義肢装具士(prosthetist and orthotist:PO):医師の処方に基づく義肢・装具の採型・製作・身体への適合。 ・介護福祉士:日常生活に支障がある人への入浴・排泄・食事などの介護と、介護者への指導。 また、診断書の作成は医師の業務であり、身体障害者手帳の申請に用いる身体障害者診断書・意見書は、身体障害者福祉法に基づいて都道府県知事などが指定した医師(指定医)が作成する。 「動作の種類(基本動作か、応用動作・ADLか、言語・嚥下か)」と「製作するものか、訓練するものか」の2つの軸で考えると、各組合せの正誤を判断しやすい。

選択肢考察

  1. ○a.  発声訓練 ―― 言語聴覚士

    言語聴覚士は、音声機能・言語機能・聴覚機能および摂食嚥下機能に障害のある人に対して、評価と訓練・指導を行う国家資格職である。声帯麻痺や喉頭摘出後などの音声障害、脳血管障害後の失語症や構音障害(発語器官の運動障害による発音の障害)に対する発声・発語の訓練は言語聴覚士の中心的な業務であり、組合せは正しい。

  2. ○b.  利き手交換 ―― 作業療法士

    利き手交換とは、脳卒中による片麻痺や上肢切断・外傷などで利き手の機能回復が見込めない場合に、非利き手で書字・箸の操作・整容などを行えるよう訓練することである。上肢・手指の巧緻動作とADLの獲得を扱うのは作業療法士であり、組合せは正しい。

  3. ×c.  義足歩行訓練 ―― 義肢装具士

    義足を用いた歩行訓練は、立位バランスや歩行といった基本動作の訓練であり、理学療法士が担当する。義肢装具士の業務は、医師の処方に基づいて義肢・装具の採型、製作、身体への適合を行うことである。訓練中の歩容をみてソケットやアライメント(部品の位置関係)を調整するなど、義肢装具士も歩行訓練の過程に関与はするが、訓練そのものの担当職種ではないため、組合せとしては誤りである。

  4. ×d.  食事用自助具の作製 ―― 介護福祉士

    自助具とは、障害があっても自分でADLを行えるよう工夫された道具(握りを太くしたスプーンやフォーク、滑り止め付きの皿、ボタンエイドなど)である。個々の患者の上肢機能を評価したうえで自助具を選定・作製・調整し、使用訓練を行うのは作業療法士の役割である。介護福祉士は、入浴・排泄・食事などの介護を行い、本人や家族に介護に関する指導を行う職種であり、自助具作製の担当ではない。

  5. ×e.  身体障害者診断書の作成 ―― 理学療法士

    診断書の作成は医師(または歯科医師)の業務であり、理学療法士は作成できない。特に身体障害者手帳の交付申請に必要な身体障害者診断書・意見書は、身体障害者福祉法第15条に基づき指定を受けた医師(15条指定医)が作成する。理学療法士は医師の指示のもとで基本動作能力の回復のための運動療法・物理療法を行う職種である。なお、義肢・装具の処方も医師の業務である。

リハビリテーション関連職種の整理

・医師:診断、リハビリテーションの処方、義肢・装具の処方、診断書(身体障害者診断書は指定医)の作成、チームの統括。 ・理学療法士(PT):基本動作(寝返り・起き上がり・座位・立ち上がり・歩行)、筋力・関節可動域訓練、物理療法、義足・装具装着での歩行訓練、車椅子操作訓練。 ・作業療法士(OT):ADL訓練(食事・更衣・整容・トイレ動作など)、上肢・手指機能訓練、利き手交換、自助具・スプリント(上肢装具)の作製・適合、高次脳機能障害や精神障害への作業療法。 ・言語聴覚士(ST):失語症、構音障害、音声障害、聴覚障害、摂食嚥下障害の評価・訓練。 ・義肢装具士(PO):医師の処方に基づく義肢・装具の採型・製作・適合。 ・介護福祉士:介護の実施と介護者への指導。 ・医療ソーシャルワーカー(MSW):社会福祉制度の活用、退院支援、経済的・心理社会的問題の相談。

理学療法士と作業療法士の違い

理学療法士は「基本動作(主に下肢・体幹の大きな運動)」、作業療法士は「応用動作・ADL(主に上肢・手指の細かい運動)」と大まかに区別すると理解しやすい。いずれも「理学療法士及び作業療法士法」に基づき、医師の指示の下で業務を行う。

身体障害者手帳

身体障害者福祉法に基づき交付される。申請には、同法第15条により都道府県知事(指定都市・中核市の市長)の指定を受けた医師が作成した診断書・意見書が必要である。

POINT

・発声・言語・嚥下の訓練は言語聴覚士。 ・利き手交換、自助具の作製、ADL訓練は作業療法士。 ・歩行訓練(義足歩行を含む)は理学療法士。義肢装具士は義肢・装具の製作と適合を担う。 ・義肢・装具の処方や診断書の作成は医師の業務(身体障害者診断書は指定医)。 ・介護福祉士は介護の実施と介護指導を担う。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。